アサルトリリィ BOUQUET  ~if~   作:クロスカウンター

7 / 33
ルイセ・インゲルスさん。ほぼビジュアルしか公開されてないので、性格はそれっぽく調整。
山梨日羽梨様。何となくこんなイメージがあったので、性格はそれっぽく調整。


第4.3話 vsヘッドハンティング

「さぁ! 今日も訓練、頑張るよ!」

「はい! 一日も早く皆さんのお力になれるよう! 頑張ってまいります!!」

 気合十分のリリとフミに、

「あ、今日の訓練はお休みです」

 シェンリンが当然のように宣言し、2人はずっこけた。

 

「どうしてですかシェンリンさん!?」とフミ。

「私たちに何か問題が!?」とリリ。

 確かに訓練は辛いものがあるが、そこには成長の実感もあり、何より彼女たちに一番必要な『身を守る』力を身に着ける訓練なのだ。

 必死に詰め寄る2人を、シェンリンは「はいはい」と澄まし顔であしらった。

「まぁまぁ。このところ根を詰め過ぎましたから」と楓。

「何を言いますか! ここは最前線なのですよ!!」とフミ。「早く一人前のリリィになって大輪の花を咲かせるんです!!」とリリ。

「何でお主らはそんなに元気なんじゃ……」

 ミリアムは2人のテンションに着いていけなかった。連日、授業、訓練、研究、授業、訓練、研究……まぁ、今までもほぼ授業か研究しかしてこなかったが、訓練が挟まることで確実に身体への負担は上がっていた。

「貴方に関しては研究のしすぎですよ」とシェンリン。

「なんじゃ! 徹夜は研究の(たしな)みじゃ!」

 そう啖呵を切るミリアムだったが。

「ほら! ミリアムさんが無理をするせいで訓練がなくなったじゃないですか!」

「ミリアムさん! ちゃんと寝てください!」

 藪蛇で2人の無用な怒りを買う羽目になった。

「ええ!? わしか!?」とミリアム。

 まぁ、実際に一番疲労が溜まっているのはミリアムで、休息も睡眠も、もう少し取るべきではあった。

 ただ、必要以上に詰め寄られるミリアムを見かね、楓とシェンリンが助け舟を出した。

「お二人とも落ち着きなさいな。別にミリアムさんの所為で訓練がなくなった訳ではありませんわ」

「そうですよ。今回はユージアさんの都合なのです」

 シェンリンの言葉に、「ユージアさんですか?」とリリ。

 言われてみれば、確かにユージアの姿がない。「……というか、それを先に言ってくれい」とミリアム。

「ユージアさんがご友人と会うそうなのですよ」と楓。

「へぇ、珍しいですね。クラスメイトの方でしょうか?」とフミ。

 なお、このメンバーの内、工廠科のミリアムを除いた4人は椿組で、ユージアのみが李組である。

「アラヤさんとかかなぁ」とリリ。

「いえ、ちょっと想像できない組み合わせなのですが……」

 遠藤亜羅椰(アラヤ)はゴッシプを賑わせる気の多いリリィで、一時はリリも狙われていた程だ。デュエル復古主義を掲げるバリバリの武闘派でもあり、物静かなユージアと気が合うようには思えない。

「まぁ、そもそも遠征中ですから」と楓。

「遠征って?」(リリ)「優秀なレギオンは県内外の激戦区に派遣されるんですよ」(フミ)「え? まだ4月だよ?」(リリ)「4月冒頭の段階でギガント級を軽々討伐されてましたから」(シェンリン)「わしらも見学しとった、あのノインヴェルトじゃな」(ミリアム)「あの数日後には遠征に向かわれましたわよ」(楓)

 ええ!? とリリは驚いた。そういえば最近、壱さんクスミさんたちを見ていないような……。

 リリは知らなかったが、幼い頃から百合ヶ丘に学ぶ生え抜きの面々は、新入生と言えど既に一線級として扱われているのだ。

「それにアールヴヘイムは格付けSSSと目されている超実力派ですからね~」とフミ。

「格付け?」

 リリは首を傾げた。

「『World Legion Rating』と言いまして、世界中のレギオンは、その実力に応じてAからSSSまでの間で格付けされるんです」

 なお、A未満は評価がされない。

 リリは、へぇ~そうなんだ~と納得しかけ、「……ってええ!?」一転、叫んだ。

「それじゃあ、アールヴヘイムってものすごく凄いんじゃ……」

「凄いなんてものではありませんわ。世界に肩を並べる最強レギオンの一角と目されておりますもの」

 (わたくし)のライバルに相応しい一流レギオンですわ、と楓。

「よくもあのスター集団に喧嘩を売れますね……」とフミ。

「あの、私、壱さんに水晶の小物あげちゃったんだけど、田舎者だって思われてないかな……?」とリリ。

 思われてないもなにも、事実、田舎者である。

「大丈夫ですわ。リリさんの魅力は、そのご出自に縛られませんわ」と楓。

「微妙に田舎者は否定してないが、それでよいのか……?」とミリアム。

「気になるようでしたら是非ヌーベル家に嫁入りなさいませ、リリさん」(楓)「これ、どさくさ紛れに既成事実を作るでない」(ミリアム)「と言いますか、出自を変えるなら嫁入りではなく養子では?」(フミ)「お黙りなさい! ちびっこ!」(楓)「あ、あはは……」(リリ)

「一柳ヌーベル……」(シェンリン)「いえ、それ両方苗字ですから……。ヌーベル・リリ……リリ・J・ヌーベル……?」(フミ)「あら素敵な響きですわね」(楓)「一柳楓さんかもしれないよ?」(リリ)「お主もまんざらでもないのか……?」(ミリアム)

 完全に脇道にそれた一同に「それよりもユージアさんですよ」とシェンリン。

「貴方たちは本題に入る前に無駄口を叩く義務でも課されているのですか?」

「シェンリンさんだって乗ってたじゃないですか」とフミ。

「それではシェンリンさんにお聞きしますが、ユージアさんのご友人とはどなたなのですか? 私たちはクラスも違いますし、普段から一緒にいるシェンリンさんがお詳しいと思うのですが」

 楓の言葉に、シェンリンは紅茶のカップを傾けた。

「…………」(シェンリン)

「…………」(フミ)

「……………………」(シェンリン)

「……………………」(フミ)

「あ、知らないんですか!?」

(わたくし)も四六時中共に過ごしている訳ではありませんから」

 もったいぶっといて酷いオチである。

「でも、シェンリンさんっていつもユージアさんといるよね?」とリリ。

 リリらが見る限り、2人が別々に行動している場面に遭遇したことがなかった。部屋も一緒、レギオン(仮)も一緒、そして食事、入浴、その他恐らくプライベートでも、かなりの時間を共に過ごしているのは間違いない。

「そのシェンリンさんでも知らないとなると……」「女じゃな」

 フミの言葉に被せるように、ミリアムが目を光らせた。

「女って、両方女性ですよ……」

 フミは冷ややかな目線をミリアムに向けた。そもそも、ユージアに関してはそういった噂は聞いたことがない(ただし、シェンリンと『出来ている』という噂はある)。

 一方、リリは「女って?」と首を傾げた。

「おやカマトト」(シェンリン)「リリさんは純粋なのですわ」(楓)

 茶々を無視し、ミリアムはリリに語り掛けた。

「リリよ、これはシェンリンへの宣戦布告なのじゃ」

「宣戦布告、ですか?」

「そうじゃ。シェンリンとユージアは、誰しもが認めるカップルじゃ。余人が入る隙はない。なかった。その筈じゃった。しかし! 何者かがそこに楔を打ち込んだのじゃ! 今、ユージアは、シェンリンすら知らぬ何者かと密談を決め込んでおる……」

「み、密談……!」

 よく分からないが、何かリリの琴線に触れるものがあったらしかった。

「そこで何が行われるか……言わずとも知れよう。そう! 謎の刺客がシェンリンとユージアの仲を引き裂こうと画策しておるのじゃ! いわば略奪愛!」

「略奪愛……!」

「このままではシェンリンはユージアに捨てられてしまうじゃろう……」

「シェンリンさんが……そんな!」

 真に迫ったリリのリアクションに、すぐ横で、その話を聞いていた、当の本人シェンリンは、「…………」無言だった。

「よく当人がいる前でこんな話ができますね……」とフミ。

「まぁ、ヘッドハンティングは十分あり得ますけど。何分(なにぶん)、まだ正式に発足していないレギオンですから。『正式に発足したら抜けてくれて構わない』とか何とか騙くらかして引き抜かれてもおかしくありませんわ」と楓。「……その発想が出てくるということはその経験がおありで……?」(フミ)「…………」(楓)

 怖っ。

「まぁ、何にせよ、ユージアの動向を掴んでおく価値はあるじゃろ」とミリアム。

「そうだよ! シェンリンさんの為にも、ユージアさんの密談をスパイしないと!」

 リリはミリアムに大変感化された様子だった。

「まぁ、レギオンメンバーの交友関係を把握しておくこともリーダーには必要ですわね」と楓。

「私としましては新聞のネタにもなるので賛成ですけど」とフミ。

「……全く、貴方たちの野次馬精神には眩暈がします」とシェンリン。

「ああ。参考までに、会合は16時からカフェテリアにて行われるようです。部屋のアルバムを持っていかれたので、もしかしたら旧友とお会いになるのかもしれませんね。百合ヶ丘にもフィンランドやアイスランドに縁あるリリィがいらっしゃるでしょうから、そこから絞り込めるやもしれません」

「……滅茶苦茶やる気満々じゃないですか」とフミ。

 その用意周到さに眩暈がしそうだった。

 

「あ。あれです」

 カフェテリア奥の一席に、ユージアはいた。

「こんな奥まった場所を使うとは……!」「やっぱり密談だね……!」

「……いえ、単に近くを通る人が少なくて集中出来るからじゃないですかね……?」

 ある程度腰を据えて話す場合は、人の往来が少ない奥まった場所が人気である。

 まぁ、腰を据える必要があるということはヘッドハンティングの可能性も高まったのであるが。

「向かいに座っている(かた)は……」「あれはルイセ・インゲルスさんですね」

「ルイセさんですか。強化リリィの御方ですね」とシェンリン。

「強化リリィ?」とリリ。

 強化リリィとは、人工的な強化を受けたリリィのことである。マギ量が増えたり特殊能力を与えられたりと、確かに強力な存在なのだが、副作用として精神が不安定になりがちだ。

 実質的にゲヘナ主導の研究・実験なのだが、リリィへの非人道的な扱いが横行しているようで、強化リリィはゲヘナに対して恨みを抱えている者が多い。

「……というのは一般論ですけどね。強化リリィだからと言って、必ずしも荒れていたり、恨み骨髄(こつずい)、という訳では決してありません」とフミ。

 現に、ルイセは楽しげな様子でユージアと談笑をしていた。そうと言われても分からない程、一見して普通のリリィに見える。

「へぇ。そうだったんだ。私、前にチャームの構え方を教えてもらったよ」とリリ。

「流石のコミュニケーション能力ですね……」(フミ)「どうせ貴方も取材をしてるでしょうに」(シェンリン)「まぁ、そうですけど……。強化リリィってお堅い印象だったんですけど、気さくで姉御肌って感じの方でしたよ」(フミ)

「別に妖怪や物の怪ではありませんもの。変に身構える方が失礼ですわ」と楓。

「まぁ、壮絶な経験をしてるようじゃから、迂闊なことを聞くべきでないがの」とミリアム。

 事実、過去の経験から心を閉ざし、他者とのコミュニケーションを拒むリリィもいる。同じく強化リリィのタヅサは、どちらかと言うとそのタイプだった。

「しかし、どうしてルイセさんとユージアさんが……? 接点ってなにかありましたっけ?」

 ルイセとユージアは、そもそもクラスが違う。また、リリたちと同じ椿組であるが、2代目アールヴヘイムの面々や、リリのルームメイトの(シズ)と比べると、リリたちのグループとはあまり交流がない。

 そんな中、2人の共通点は何だろうかと疑問に思うのも当然だった。

「やっぱりヘッドハンティングでしょうか」とフミ。

「それにしても、何か共通点、取っ掛かりがある筈ですわ。例えば、リリさんをヘッドハンティングするなら、警戒されているアラヤさんより、信頼されている壱さんの方が成功率が高いでしょう?」

 なるほど、楓の言葉は一理ある。……というか、そういったことにすぐに頭が回るのは一流の司令塔として当然なのか、楓が特別そうなのか。後者なら、楓との関係を考え直すべきかもしれなかった。

「インゲルス(Ingels)と言いますと、イングランド系の姓ですわ。ご出身がそちらだとすると、地理的には比較的近いですわね」と続けて楓。

 急にインテリなことを言われると、先程までと振れ幅が大き過ぎて混乱するのだが。

「まぁ、アイスランドも英国も島国ですからね。近いと言っても、東京と沖縄程度には離れていますが」とシェンリン。

「中学はフィンランドの(ほう)じゃろ? まぁ、そっちは陸路もあるとは言え、やはり距離感覚は似たようなものじゃが」(ミリアム)

「それでも、あの辺りは国を跨いで共闘する文化が根付いていますから。どこかで接点があったのかもしれません」(フミ)

「まぁ、少なくとも日本人が行くよりかは遥かに通りが良いじゃろうな」(ミリアム)

 一同の解説に、「へ~。みんな詳しいんだね」とリリ。

「まぁ、私は乗っかっただけですが」(フミ)「と言いますか、ご出身など基本情報はアナタの専門分野ではありませんか?」(楓)「強化リリィだからか、微妙に機密がかかってるんですよぉ」(フミ)

 騒ぎ始めたフミらを、「しっ! 見ろ。ユージアが何か取り出したぞ」と、ミリアムが(しず)めた。

 見ると、何か分厚い冊子のようなものを机の上に広げていた。

「『何か』と言いますか、シェンリンさんが言っていたアルバムですね」とフミ。

「しかしこちらからは何をお話しされているのかさっぱり」と楓。

 そこでこほんとわざとらしく咳をすると、ミリアムは「実は」と口を開いた。

「実は、わしは読唇術を使えるのじゃ」

 自信満々にそう宣言するが、どうも胡散臭い話であった。

「本当!?」とリリ。

「ああ。実は私も使えます」とシェンリン。

「本当ですか……?」とフミ。

 ともあれ、実際にやってもらわなくては分からない。どちらにしても現状、会話を知ることはできないのだから、やってみて損はない筈だ。

「ではわしはルイセの奴を……あー、うん、『へぇ。ユージアって昔はこんなに小さかったんだね』」

「声真似まですることですか?」(フミ)「ルイセさんってこんな気障(きざ)ったらしい御方でしたか?」(楓)「でも本当に読唇出来てるよ……!」(リリ)

「お静かに……こほん、『うん……今では大きくなっちゃったけど』」

「シェンリンさんも声真似ですか……」(フミ)「でも、上手だよ?」(リリ)「また妙な特技を……」(楓)

 

『そんなことないさ。今でも小さくて可愛らしい女の子じゃないか』【ルイセ】

『もう……。またそんなこと言って……』【ユージア】

『本当さ。可愛いよ、ユージア』【ルイセ】

『ルイセ……意地悪』【ユージア】

『そんな意地悪な女について来たのは誰だったかな?』【ルイセ】

『……やっぱり意地悪』【ユージア】

 

「うわあ……! 大人の会話だ……!」(リリ)「というか本当に言ってるんですか? ルイセさんはともかく、ユージアさんは思いっ切り向こう向いてますけど」(フミ)「まぁ、『レジスタ』や『軍神の加護』(※レジスタのサブスキル)にも俯瞰視野能力がありますから……」(楓)

 

『さあ。身も心も私のモノになる準備はできたかい?』【ルイセ】

『でも……やっぱり』【ユージア】

『ふぅん? あの女か?』【ルイセ】

『違う……! シェンリンは関係ない』【ユージア】

『やっぱりそうじゃないか』【ルイセ】

『違う……シェンリンとはそんな関係じゃ……』【ユージア】

『だったら好都合だ。さぁ。私のレギオンに入ってあんな女なんて忘れてしまえ』【ルイセ】

 

「修羅場だよフミちゃん……!」(リリ)「いえ、絶対違いますよ……。談笑されてますって」(フミ)「しかし、少々続きが気になりますわね」(楓)

 

『駄目……私にはシェンリンが……』【ユージア】

『そんなこと言って。私について来たってことはそのつもりだったんだろ?』【ルイセ】

『……あっ……』【ユージア】

『さぁ。素直になろうユージア』【ルイセ】

『ぁ……駄目……! 人もいるのに』【ユージア】

『誰も見てないさ。さぁ、いつもの可愛いユージアを見せてくれ』【ルイセ】

『……もぅ、意地悪』【ユージア】

 

「フミちゃん!? ルイセさんがユージアさんの隣に……!」(リリ)「いえ、一緒にアルバムを見ているだけですって」(フミ)「と言いますか、このセリフを言わせるミリアムさんってかなり鬼畜ですわよ」(楓)「いえ、言ってるシェンリンさんもシェンリンさんだと思いますが」(フミ)

 と、フミたちは真面目に取り合わない中、リリだけが妙にヒートアップしていた。

「こんなの駄目だよ! 私、ユージアさんを止めてきます!」とリリ。

 そう言って立ち上がると、ユージアたちの席へすんずん歩み出した。

「あら、やりすぎましたか」とシェンリン。「まだまだ青いの」とミリアム。「……止めなくていいんですか?」(フミ)「まぁ、リリさんがお望みであれば」(楓)「前々から思っとったが、お主、リリには甘いの……」(ミリアム)「リリバカという奴ですよ」(シェンリン)「愛情! と申し上げてくださいな!」(楓)

 まぁ、止めないフミもフミであったが。

 そんな一同の視線の先で、リリはユージアとルイセの席に飛び込んでいった。

「『駄目だよユージアさん! シェンリンさんがいるのにこんなこと……!』」(シェンリン)

「あらお上手」(楓)「まぁ、読唇するまでもなく聞こえてますからね」(フミ)「わしは構わぬが、また変な噂になるぞい」(ミリアム)

 しかし、その後なにやら二言・三言話したと思うと、リリは2人の間に体を滑り込ませ、3人でアルバムを捲り始めた。

「あれ? 止めに行ったはずでは?」(フミ)「まぁ、どう見ても口説いてる風ではないからの」(ミリアム)「ぶっちゃけましたわね」(楓)「分かってましたが、取り繕う努力はしてくださいよ」(フミ)

 一方、フミらの観察の他所に、リリらは写真を指差し笑い合っている。

「あらあら仲睦まじくされて」(シェンリン)「何や、両親の馴れ初めを聞く娘みたいになっとらんか……?」(ミリアム)「まぁ、純粋な(かた)ですから……」(フミ)「少々幼いとも言えるがな」(ミリアム)

「そういうことはリリさんの前でおっしゃらないでくださいよ」(楓)「もちろん良い意味でじゃぞ?」(ミリアム)「リリさんの魅力でもありますから」(フミ)「それでもです!」(楓)「貴方、またリリさんを自分の物だと思って」(シェンリン)「お黙りなさい! ち……えー。アナタ、揶揄しにくい見た目ですわね」(楓)「そんな悪口、初めて聞きましたよ……」(フミ)

「まぁ、この様子だと何事もないようじゃの。2人の繋がりは後でリリに聞けばよかろう」とミリアム。

 確かに、この和やかな様子から一転、ヘッドハンティングも口説き落とされることもないように思えた。

「全く。これだから必要ないと申しましたのに」とシェンリン。「一番やる気だったじゃありませんか」(楓)

「どうします? これ以上ちょっかいをかけてもお邪魔でしょうから、私たちは解散しましょうか?」とフミ。

「ま。ここで解散して、あとで2人とも引き抜かれとったら笑うがの」(ミリアム)「実はこの辺りの客席はグルで、隙を見て周囲を封鎖しサインを強要するという可能性も……」(楓)「どうして穏やかじゃない発想ばかりでてくるんです?」(フミ)「職業病ですわ」(楓)「お主はリリィを何だと思っとるんじゃ」(ミリアム)「でしたら良い病院を紹介しましょうか? 頭の」(シェンリン)「あら。アナタの行きつけですか?」(楓)「喧嘩は止めましょうよ……」(フミ)「売り言葉に買い言葉じゃな」(ミリアム)

「そもそもですね。引き抜きも何も、ルイセさんはまだ、どこのレギオンにも所属されてなかったと思いますよ」とフミ。

「お?」(ミリアム)「ふむ?」(シャンリン)「ほう?」(楓)「……その悪いことを思い付いたみたいな反応、止めていただいてよろしいですか?」(フミ)

「いやな。やはりユージアとリリが引き抜かれないかと心配でな」とミリアム。

「大人数で圧迫されれば心細くなるものですからねぇ?」と楓。

「相手は一人。片やこちらは六人……。いえ、これは独り言ですが」とシェンリン。

 こ、この人たちは……!

「まんまサイン強要(さっきの)を実行する気じゃないですか!」

 フミは吠えた。

「何をおっしゃいますか。まだどこにも所属されていないのでしょう?」と楓。

「正式に決まっていないだけで、ほぼ確定というレギオンはありますよ」(フミ)

「まぁまぁ。4月の内にお決めにならなくても、別の選択肢を検討することも大切ですわ」(シェンリン)

「物は言い様ですが、悪行の片棒を担ぐのには断固反対しますよ」(フミ)

「別に取って食ったりはせんわ。ユージアと繋がりがあったのも何かの縁、ちょっと話すくらいよかろう」(ミリアム)

「どこの世界に六人で一人を取り囲む歓談があるんですか」(フミ)

 とは言っても、皆がぞろぞろ向かっているのに傍観を決め込むわけにもいかず、結局、その片棒を掴ませられている気がするフミであった。

「ごきげんよう! ルイセさん」

 楓の挨拶に、ルイセらは顔を上げた。そして何かしら反応を起こす前に、ルイセの横に楓とミリアムがササっと入り込み、反対側にシェンリンが座った。

 ……やはり妙に手慣れてますね。

「ごきげんよう。お邪魔してすみません……」

 フミは謝罪しつつ、空いているシェンリンの横に腰を下ろした。

 これでUの字の掛け椅子の中央にリリがいて、その左にルイセ、楓、ミリアムが。その右にユージア、シェンリン、フミが並ぶ格好になる。最奥ではないが、ルイセが抜け出すのはかなり困難な位置である。

「何ですかオマエたちは?」

 ルイセは、丁寧なのか粗雑なのか分からない言葉遣いをしながら楓らを胡乱(うろん)げに見つめた。

「いえいえ、私たちはユージアさんのお付きの者ですから」とシェンリン。

「わしらのことは気にせず続けてくれて()いぞ」とミリアム。

 気にせずも何も、どかどかと4人の人間が現れて何事もなく話せるほど図太い人間などそうはいない。

「……と言いますか、オマエたち、どうせ私をヘッドハンティングしようとでも思ってやがりますね?」

「ヘッドハンティング……? まさかこの純粋無垢な私たちがそんなこと……」

 楓はとぼけた。

「さっきからちらちら見てやがったでしょう!」

 滅茶苦茶バレバレだった。

「有難いことに、私はサングリーズルから声を掛けていただき、既に内定しています。まだ正式加入していないのは、4月中はロスヴァイセの奴らに声を掛けられる可能性があるからです。残念ですが、お誘いは断らせていただきます」

 ルイセは丁寧ながら毅然とした態度で言い切った。取り付く島もないというやつである。

「あー、やっぱり『サングリーズル』ですか」とフミ。

 サングリーズルは超実力派かつ超個性派ばかりが揃う異色のレギオンである。教導官や生徒会の指示に従わないことも多く、レギオンとして正式に認められるまでかなりの時間を要した。

 いわゆる百合ヶ丘の『問題児』であり、制御不能のレギオンとさえ呼ばれている。実力は高いのだが、その戦績や格付けに反して、学院からの扱いがやや不遇気味であったりする。

 ちなみにロスヴァイセは強化リリィ特務レギオンで、特定任務を課すために学院側が作ったレギオンである。強化リリィには4月の段階で一応、声が掛けられていたらしい。

「まぁまぁ。正式に加入していないのでしたらお試しで……」(楓)「それは引き抜きの常套手段でしょうが」(ルイセ)「バレバレじゃないですか」(フミ)

 まぁ、リリィとしてそれなりに活躍していれば、それなりにその『裏側』も知っているものだった。

「しかたないの。こうなったら実力行使じゃな」とミリアム。

 不穏な言葉に、楓らが臨戦体勢へと移る。

「ちょっ! 本気ですか!?」とフミ。

「ダメだよみんな……!」とリリ。「そうだよ……ルイセは私の友達だから……」とユージア。

「でしたら同じレギオンで活躍できた(ほう)がよろしくはないでしょうか?」(シェンリン)

「ん…………」(ユージア)「おいユージア」(ルイセ)「悩まないでくださいよ!? ダメなものはダメです!」(フミ)

 つーかコイツら、普段からこんな勧誘してやがるんですか……?

 ルイセは怒るというより呆れてしまった。

「て言いますか、それ以前にオマエんとこまだ7人だろ? 私が入ってもまだ足りねぇでしょう」とルイセ。

「どうせお友達の強化リリィも誘われているのでしょう?」(楓)

「そんなフリーの強化リリィがぽんぽんいる訳ねぇでしょう!」(ルイセ)

 ……と言いつつ、実は『黒川・ナディ・絆奈』も強化リリィで、同じくサングリーズルに誘われている。鋭い奴ですね……と心の中で毒づいた。

「どちらにしても、私はこんなとこで暴れるほど無分別なリリィじゃないんですよ。他をお当たりくださいな」

 ルイセは取り合わず、シッシッと腕を払った。

「そうだよ。ルイセさん、ユージアさんの昔のお友達のお友達なんだよ?」とリリ。

「……えー、『ユージアさんの昔のお友達』、と言いますと?」(フミ)「……うん、愛ちゃんと……」(ユージア)「愛ちゃん?」(楓)「愛永・ウツソンさんですね」(シェンリン)「どうして知っとるんじゃ……?」(ミリアム)「あー、ヘイムスクリングラトレードゴードの」(フミ) ※ユージアが中学まで通っていたスウェーデンのガーデン。

「シェンリンには何度か話してるから……」とユージア。

「それじゃあユージアさんとルイセさんには浅からぬ縁があったのですね」とフミ。

「ちっ、命拾いしましたわね」と楓。

「物申してやりてぇですが、流石にオマエとシェンリン相手では厳しいですよ……。まさかと思いますが、普段からこんなことをしてるんですか?」

 ルイセの疑念の声に。

「まさか」と楓。「そんな訳なかろう」とミリアム。「してませんよ?」とシェンリン。「してないよ?」(ユージア)「してません」(フミ)「してないよ?」(リリ)

「何でオマエらはそう胡散臭いんですか」

 本当のことを言ってるだけなのに、どこか嘘くさかった。

「あーそういえばオマエ、あのヒバリ様に目ェ付けられたんですよね」

 不意に、ルイセはフミに話を振った。

「ヒバリ様?」とリリ。

「現サングリーズルの司令塔、そして『魔術師』の異名を持つ、独特でモダンでハイセンスな戦い方をされるリリィです」とフミ。

 そして初代アールヴヘイムの茜様のライバルを自称・世間からも認められる程にその実力は高い……のだが、ハッキリ言って、変人だった。

「何ですあのドイツ語かぶれは。何て指示してるかよく分からねぇし、先輩に聞いても『雰囲気で理解しろ』って、何で司令塔の指示をそれとなく察さなくちゃいけねぇんですか……」

「まぁ、トップレギオンは目で会話すると申しますし……」

「口で会話してんのに伝わらねぇのが問題なんですよ」

 4月の頭、急に話しかけられたにもかかわらず、あのフミが鼻血を出す暇もなかったと言えば、どれだけ変人であるか、その一端が伝わるだろう。

「オマエをサングリーズルに入れるって話もあったみたいですけど」「いや、あれはリップサービスですって……」「サングリーズルの誘いを蹴るとは剛毅(ごうき)な奴だと思いましたが、まぁ、あんな奴がいるなら納得ですね」

 酷い言い様だが、色々エピソードがあるだけに擁護はできないのだった。

「『貴方が求める力は私が持っている』とか何とかおっしゃってましたよ」とフミ。「そんな魔王みたいなことおっしゃるんですか?」(楓)「日本語で話してくれるならいいじゃねぇですか。急に『ブラボー! ビシュライニゲン!』と言われてもぽかんとしますよ」(ルイセ)

「ビシュ……なんて?」(リリ)「beschleunigen……まぁ、意訳すれば一気呵成といったところでしょうか」(シェンリン)「む、難しいんだね……」(リリ)「でも、カッコいいよ?」(ユージア)「ちょっとハイセンスすぎて私には分かりませんが……」(フミ)

「アナタもヨーロッパ育ちでしたらドイツ語くらい分かるんじゃありません?」と楓。

「無茶言わないでくださいよ。向こうの公用語は英語って決まってるんです。挨拶や簡単な指示くらいは分かりますが、専門用語っぽいのは無理ですよ」(ルイセ)

「昔、Allegro(アレグロ)! と指示する奴はおったがの。ドイツ語もその亜種なのか?」とミリアム。

「まぁ、beschleunigenも音楽用語のドイツ訳ですから」と楓。

「はぁ!? じゃあドイツ語かぶれの音楽用語かぶれなんですか!? 救いようねぇですね……」(ルイセ)

「一応先輩ですよ……」とフミ。

 しかし何となく『一応』と付けてしまうのは何故だろうか。入学直後からフミに目を掛けてくれたヒバリには申し訳ないのだが、実力の高さに反して、どことなくポンコツ感が滲んでいるのである。

「そんな面倒な御仁(ごじん)に指示されるなら、わしらんとこの方が幾分気楽ではあるまいか……?」

 ミリアムは割と真面目に提案し、ルイセもちょっと心が揺らがなくもなかった。

 しかし、「ま。遠慮しておきます」とルイセ。

「折角、名高いサングリーズルからお誘いがあったんです。自分の力を試してみたい、先輩方の技術を吸収したいと思うものでしょう? まぁ、オマエたちとわいわいするのも楽しそうですが……それは来年の楽しみにしておきますよ」

 ニヤリとして答えた。

「それ、断る時の常套句じゃありませんか」と楓。

 来年になったら先輩が抜け、新人が入ってくるので易々とは抜けられないのだ。

 とはいえ、これ以上引き下がる理由もないのだが。

「あの~、邪魔しちゃってごめんね?」とリリ。

 むしろ、真っ先に言うべき言葉はこれだった。

「ホントですよ。愛永から連絡があって機会を伺ってたんですが、なかなか一人にならねぇですし、メールで話をしても忙しそうですし。オマエたちのレギオンに休みはねぇんですか」

「土日はフリーの時間も多い筈ですけど……」(フミ)「月月火水木金金……」(ユージア)「ちょっと、ルイセさんが信じたらどうするんですか!」(フミ)「いや、マジで土日も捕まらねぇんですけど」(ルイセ)「まぁ、戦闘やら訓練やらはありますから」(楓)「最近は私と外出することも多いですね」(シェンリン)「シェンリンはユージア以外の友達を作ってくださいよ」(ルイセ)

 シェンリンさんって友達少ないの? と小声でリリ。いつの間にか、厳重な囲いを抜け出し、フミの横に来ていた。

 フミを挟んだ横に当のシェンリンがいるのに、よく質問したものだった。

「居ますよ。壱さんやしおりさんとも知らぬ仲じゃありません」

 シェンリンは澄まし顔で答えた。

「その割にあまり会話しているところは見んがの」とミリアム。「止めましょうよ、本人が目の前にいるんですよ」(フミ)「それは陰で色々言っているってことですわね?」(楓)「フミ……酷い」(ユージア)「そんなフミちゃん……」(リリ)「いや、言ってませんよ! ルイセさんが誤解しますって!」(フミ)

 まぁ、正直フミも、ユージア以外の誰かと絡んでいるシーンを見たことがなかったが。

「そうそう、シェンリンに聞きたかったんですけど……」「はいはい。私の陰口は私のいないところでなさってくださいな」

 シェンリンは、ルイセの言葉を軽くあしらった。

「……そんなんだから友達がいないんですよ?」とルイセ。「仲良しごっこの相手を友達とは言いませんよ」(シェンリン)「オマエ……ちゃんとコイツらに感謝しなさいよ?」(ルイセ)「シェンリンさんにはいつも助けられてるよ!」(リリ)「いや、オマエじゃなくてですね」(ルイセ)「まぁ、私たちが頼んだ側ですから……」(フミ)

 レギオン加入の件については、シェンリンとユージアに頭が上がらないのだった。

 ここ最近も色々なリリィにそれとなく声を掛けてみるのだが、色よい返事を貰えた試しがない。後々、考えれば考えるほど、よくこれほどの実力者が無名のレギオンに入ってくれたものだと思えるのだった。

「そういえばちょっと気になってるんですけど……ルイセさんってそんな口調でしたっけ?」とフミ。

 以前取材した時は、もっと丁寧口調だった覚えがある。少なくとも『オマエ』やら『やがる』やら気風(きっぷ)の良い言葉は使っていなかった。

「ああ、これですか。私の日本語は愛永とかに面白半分に教えてもらいまして、その後に正式に覚えたんですけど、まぁ、油断してるとちょっと出ますね」

「それじゃあ、私たちはもう仲良しだね!」とリリ。「さっきまで恋の密猟者とか何とか言ってやがった気もしますが、まぁいいですよ……」(ルイセ)「リリさんの御言葉ですわ、心にお刻みなさい」(楓)「そういえばオマエはそんな奴でしたね……」(ルイセ)

「でも、独特な口調も、そうなった経緯も、何だかミリアムさんみたいですね」とフミ。

 ミリアムも、確か父親が(勘違いで)この喋り方を教え、この語り口調になった筈だ。もしかしたら、お互いに親近感があるかもしれない。

 と思ったのだが。

「はぁ? 私は隠そうと思えば隠せるんですよ。常に珍妙な口のちんちくりんと一緒にしないでください」

「何を言うか、わしはこの口調にアイデンティティを感じているのじゃ! こっちこそお主のような(よもぎ)リリィと一緒にされるのは心外じゃ」

 むしろ、やや険悪だった。

「喧嘩はダメだよ!」(リリ)「同族嫌悪……」(シェンリン)「ぼそっと言うの止めましょう」(フミ)「同族嫌悪ですわ!」(楓)「いや堂々言いすぎるのもどうかと……」(フミ)

「2人とも!」

 役に立たない外野どもを差し置き、(いさか)いを止めたのは、ユージアだった。

「ダメだよ、2人で喧嘩しちゃ……」

 その悲し気な瞳は、いがみ合っていた2人の熱気を冷ました。2人はばつが悪そうに視線を外し合う。

「ルイセ……。ミリアム……」

 (いさ)めるようなユージアの言葉に、2人はようやく視線を交わした。

「何と言うか……」「その、何と言いますか……」

 そしてユージアは優しく諭すように言った。

 

「同じ穴の狢なんだから仲良くしよう……?」

 

「そうじゃな、わしらは同じ……っておいいい!!」「誰が四足歩行の穴倉に住むタヌキみてぇな奴ですか!」

 感動が台無しだった。

「てか、オマエが一番ひでぇですよ!?」

「多分、人類皆兄弟って言いたかったんですよ」とシェンリン。「まだ日本語がお上手じゃありませんから……」とフミ。

「嘘つけ! ネイティブ張りに話してたでしょうが!」

 ルイセの叫びを聞きつつ、なるほど、全力でツッコんでくれる人がいると楽しいものだなぁと、実質、ほぼ唯一のツッコミ担当としては新鮮な気持ちだった。

「やっぱり仲良しじゃないですか。息ピッタリですわ」と楓。

「いやですから私はですね……」「良かった! 2人は仲良しなんだね?」

 反論したいルイセだったが、純粋な瞳のリリに見つめられると非常にやりづらかった。

 くそ、覚えてやがれですよ……。

 そう思いながら、形ばかりの握手をミリアムと()わすのだった。

「仲直りして良かった……」とユージア。

「ルイセさん、ユージアさんとも仲良(なかい)いじゃないですか」とフミ。「オマエもなかなかいい性格してやがりますね……」

「まぁ、実際、ユージアとは面識があったのかの?」とミリアム。

「どうですかね……多分なかったと思いますけど」とルイセ。「うん、私も……覚えてないかな」とユージア。

「へぇ、それでは本当に愛永さん繋がりで出会われたんですね~。まさに海の向こうのリリィが紡いだ友情! これ、記事にしてもいいでしょうか?」(フミ)「オマエはいつもそれですね……」(ルイセ)「愛ちゃんにも……話、聞いてみる?」(ユージア)「是非! 是非!」(フミ)

 何となく話が取材モードに流れた矢先。

「そういえば、ルイセさんはどうして日本に来られたんですか?」

 不意にリリが投げかけた質問に。

 一瞬で、ルイセの空気がピリッと刺々しく変わった。

 ミリアムはしまったと思った。過去のことなど聞くべきでなかった。一つ過去を聞けば、二つ三つと過去のことに話題が及ぶのは当然だった。

 強化リリィの過去について聞くことは、『迂闊なこと』だった。

 が。

「どうせ観光とかに決まってますわ。大方、食い倒れツアーの最中に仲間とはぐれたのでしょう」と楓。

「いえいえ、お仲間の巣穴に帰ってきたじゃないですか。良かったですね」とシェンリン。

「ですから狢じゃねぇですよ!」

 その重い空気を全く意に介さない2人に、ルイセは一先ずツッコミだけは入れておいた。

 こやつらは凄いの……とミリアム。心の中で頭を下げた。

「まぁ、時間も時間ですし、愛永さんの件は後日ということで。代わりに、今のレギオンでの抱負などをお聞かせいただいてもよろしいですか?」

 そう言うと、フミはちゃっかりメモとペンを取り出していた。

「抱負も何も……まぁ、せっかく呼ばれたからには出来る限りのことをしてやりますよ」

 そこでニヤリと笑うと、

「ま、オマエら如きのレギオンに入らなくて良かったと思うくらい活躍してやりますよ」

 挑発的にリリの方を見た。

「ううん……! 私、ルイセさんのレギオンに負けない立派なレギオンを作るよ!」とリリ。「ほう? SSSレギオンに宣戦布告とはなかなか太ぇタマしてますね」

 え……? ルイセの言葉に、リリは横にいるフミに目線を向ける。

「あれ、言ってませんでしたっけ? サングリーズルもアールブヘイムと同じく、格付けSSSを獲得している超実力派レギオンですよ」

「フミちゃん! それ先に言ってよ!」

 なお、そこに誘われるルイセも当然一流のリリィであり、気軽にアルバムの写真を差して一緒にうふふあははできる相手ではなかった。

 まぁ、今更ではあるのだが。

「リリさん。今、ルイセさんを引き抜けばサングリーズルはSSに降格し、私たちはSSSに一歩近付きますわ」と楓。

「……言いたかないですが、私一人にそこまでの実力はねぇですよ」(ルイセ)「SSとSSSの差は主に控え要因の有無ですから。ルイセさんを引き抜けば降格の憂き目に遭う可能性は十分あるかと」(シェンリン)「確かに私と絆奈が引き抜かれれば痛恨かもしれませんが……」(ルイセ)「何ですか。やっぱりお友達も一緒なんじゃないですか」と楓。

 しまった……口が滑りましたよ……。

「言っておきますが、絆奈にまでこんなことはしねぇでくださいよ?」

「……」(楓)「……」(ミリアム)「……」(シェンリン)「……」(ユージア)「……」(フミ)「……」(リリ)

「て、てめえら、本当に信用ならねぇ奴らですね!!」

 何も言ってないのに、どこまでも胡散臭い集団だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。