六等星   作:希望光

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お久しぶりでございます。希望光です。
今回は大遅刻の香澄誕生日回となっております。
それでは本編の方どうぞ。


香澄誕生日回:どきどきSing out

 夏休みを目前に控えたその日、普段と変わらない時間に学校へ登校した香澄。だが、彼女はどこか憂鬱さを醸し出していた。

 

「香澄のやつ……なんか元気ないけどどうした」

 

 1人溜息を吐く香澄の隣の座席にて、和希が有咲へと問いかけた。問われた有咲は、香澄を一瞥した後に返答する。

 

練習に使ってたノート、無くしたらしいわ

「あー……そりゃ落ち込むわな」

あそこにかすみんのオリジナル楽曲の原案も載ってたわけだしね……

 

 短い会話を交わした後に、2人が肩を落とすと始業を告げるチャイムが鳴り響き、2人はそこで会話をやめると各々の座席へと着いた。その後、1限目である現代文の授業が始まったが和希と有咲、そして少し離れたところにいたりみまでが香澄のことを心配しており、3人は授業の中身が頭に入らないまま、その日の学業が始まるのであった——

 

 

 

 

 

 その日の放課後、人気の無くなった教室内で1人座席に座る和希の姿があった。すると、教室の方へと向け近づいてくる足音が聞こえてくる。

 

「あ、和希君」

 

 足音共に教室内へ姿を現したのは沙綾。その声に反応するかの様に、両目を開いた和希は彼女の方へと顔を向ける。

 

「沙綾」

「どうしたのこんな時間まで?」

「ちょっと沙綾に聞きたいことがあって、ね」

 

 和希の隣の席に腰を下ろした沙綾は、彼の言葉に対して首を傾げた。

 

「聞きたいこと?」

「うん。実は香澄が、練習用のノートを無くした……らしいんだよね」

「香澄ちゃんが……ノートを」

 

 沙綾の返しに小さく頷く和希。その面持ちは、どこか深刻さを醸し出していた。

 

「それで……香澄ちゃんのノートと私がどう関係してくるの?」

「もしかしたら、沙綾の家にあるのかな、と思って聞いてみた」

「そっか。分かった。帰ったら探してみるね」

「ありがとう……っと、俺はそろそろ出ないとだ」

 

 そう言って和希は、机の傍らにかけてあった荷物を掴むと席を立つ。

 

「気を付けてね」

「おう。沙綾も頑張れよ。後、ありがとう」

「ううん。大丈夫だよ。じゃあ、またね」

 

 短い会話の後、和希は教室を後にした。その背中を見送った沙綾は、1人座席に着くと荷物の中から筆記具を取り出すと、卓上にペンを走らせ始めるのであった——

 

 

 

 

 

 翌日の放課後、香澄は和希に呼び出され江戸川公園へと足を運んでいた。

 

「えーっと……確か」

 

 呼び出した当人の姿を探し、公園内を見渡していると突如彼女の視界が何かに遮られ暗転する。

 

「え、何」

 

 突如起こった出来事に慌てふためく香澄。すると、聞き覚えのある声が彼女の耳に届いた。

 

「相変わらず、背後への警戒が浅いぞ香澄」

「和希……君?」

 

 名前を呟いた後、彼女の視界が開ける。それに合わせ彼女は後ろへと振り返る。そこには、件の少年こと和希の姿があった。

 

「どうしたの……急に呼び出したりしてきて」

「いや、その……今日は、香澄の誕生日だって聞いてたから、えっと……渡したいものがあって」

 

 そう言って和希は、持っていた鞄から1冊のノートを取り出し香澄へと差し出した。

 

「これは……?」

「誕生日プレゼント。みんなで……香澄をイメージした曲を作ったんだ。なんか……すごい落ち込んだ様子だったから、元気になって欲しいな、と思って」

「私を……」

 

 ノートと和希の顔を交互に見た後、香澄はノートを開きその中身に目を通して行った。

 

「どきどき……Sing out……?」

「うん。それが、その曲のタイトル」

 

 和希の言葉の傍ら、ノートに綴られた歌詞全てに目を通した香澄は顔を上げ和希の方へと向き直る。

 

「私、この曲……歌いたい!」

「OK。それじゃ……有咲のところに行くか」

「2人とも!」

 

 2人が公園を出ようとしたところ、後方から聴き慣れた少女の声が飛んできた。

 

「「沙綾(ちゃん)?」」

「はぁ……はぁ……良かった」

「どうしたんだ?」

「香澄ちゃんの……ノート……見つけた」

 

 そう言って沙綾は、荒い息遣いのままで手にしていたノートを香澄へと手渡した。

 

「これって……私のノート。どこに」

「私の部屋に忘れて行ってたよ?」

 

 そう言って微笑む沙綾。それを見た香澄は、いつの間にやら瞳から涙を溢れさせていた。

 

「ありがとう……ありがとう沙綾ちゃん……」

「よかったね、香澄ちゃん」

「うん……和希君も……ありがとう」

「俺は感謝されるようなことしてないよ」

 

 照れ臭そうに後頭部を掻いた和希は視線を逸らす。そんな彼の様子を見た沙綾と香澄は笑みをこぼした。

 

「和希君は、素直じゃ無いんだから」

「ほっとけ。ほら、行くんだろ? みんな待ってるだろうし行こ」

 

 頷いた沙綾と香澄は和希の後を追って、蔵へと歩み始める。その際、不意に和希が香澄の方へと振り返る。

 

「そうだ香澄、誕生日おめでとう」

「私からも、おめでとう香澄ちゃん」

「2人とも、ありがとう」

 

 2人からの祝福を受けた香澄は、今日1番の笑顔を見せた。先程までの涙を忘れさせるぐらいの笑顔を。

 そんな彼女は、この後蔵で盛大なお祝いを受け感極まって涙することになるのだが、それはまた別のお話。




今回はここまで。お読みくださりありがとうございました。
最後に香澄、そしてかすみん、誕生日おめでとう!
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