The end of the journey 〜最果ての旅〜 作:カズめぐ
私は何をしているのだろうか。
自分で買ったリングを見つめながら思う。
しかも、文字まで彫っている。
たしかに、シンジに喜んで欲しかった。
でも、これはやりすぎだ。
加持さんのアドバイスは聞くべきではなかったのだ…。
……
シンジの誕生日の一週間前。
とあるマンションの一室にて。
「よっ、久しぶりだな、アスカ。」
加持さんがエプロン姿で出迎えてくれる。
家の中にずっといて暇だったのか、料理に目覚めてしまったのだ。
まあ、それは今は置いておこう。
「加持さんに相談があるんです。」
「なんでも聞いてくれ。」
「男の人って何をもらったら嬉しいですか?」
「それはシンジ君のことかい?」
「…。違いますよ…。」
「隠さなくていいんだよ。シンジ君は確か来週誕生日だったね。」
「はい…。」
私はあっさりバレてしまったので、ばつが悪い。
「まあ、シンジ君なら何をもらっても喜ぶんじゃないか?」
「そうですけど…。いざ、決めようとすると…。」
「んー。そうだな、リングなんてどうだ?」
「リングって指輪のことですか?」
「あぁ、そうだよ。シンプルなやつにして、中に文字でも彫ってみたらどうだ?そしたら、シンジ君の女除けにもなるぞ。」
「別に私は…。」
否定しようと思ったが、他の女がシンジ近づく想像をしただけで、虫酸が走ったので否定するのをやめた。
はぁ。
私はこんなにもシンジのことが…。
「どうしたんだ?」
一人で物思いに耽る私に加持さんが声をかける。
「どうすればいいのかわかんないです。」
「シンジ君とのことかい?」
「はい。たしかに私はアイツに特別な思いを抱いているかもしれません。でも、それを認めてはだめなんです。」
「どうしてだい?」
「…。それは言えません…。」
「そうか。なら言わなくてもいい。何か事情があるんだろう。」
「はい…。」
「まあ、気持ち云々は置いておこう。その代わり、自分がしたいことに素直に従ってみたらどうだ?」
「私のしたいこと…?」
「あぁ、そうだ。」
「わかりました…。頑張ってみます…。」
「あぁ。また、いつでも相談に来ていいからな。なんせ俺はずっと暇だからな。」
「わかりました。ありがとうございます。」
……
そして今に至る。
私は加持さんのアドバイス通り、リングを買い、素直な気持ちを文字にして彫ってしまった。
ほんとにバカである。
こんなの気持ちを認めてるのと同じだ。
それでも、私は心に嘘をつき続ける。
私には最後に果たさなくてはならない役目がある。
たとえ、シンジに嫌われようとも。
でも、その時までは今の気持ちを尊重してもいいのではないか。
そんな考えが頭をよぎる。
私は私の気持ちがわからない。
きっと、何もなければ私は素直に気持ちに従えるのだろう。
私はシンジに見てほしい。
シンジに触れてほしい。
シンジに…。
そんなことを思っても、一歩が踏み出せない。
きっと、恐れているのだ、失うことを。
はぁ、私はここまで弱い人間に成り下がったのか。
昔の私が見たらどう思うだろうか。
いろんなことを頭の中でぐちゃぐちゃと考える。
でも、答えは出ない。
結局私はそのままねてしまったのであった。