The end of the journey 〜最果ての旅〜   作:カズめぐ

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第十二話

6月7日の朝。

僕は学校に行く準備をしていた。

結局、夜が明けても、アスカの考えてることは分からなかった。

でも、これだけはわかる。

アスカが僕のために用意してくれたんだ。

それだけでも嬉しい。

僕はアスカからもらったリングを紐に通し、首からぶら下げて、いつも肌身離さず待つことにした。

お守りみたいなものだ。

これを見ると、不思議と力が湧いてくる。

そんなことを考えながら僕は家を出た。

 

……

学校にて。

 

「おっ、センセ久しぶりやのー。元気にしておったかー?」

 

「うん。トウジこそ元気そうで良かったよ。」

 

「ワイはいつもぴんぴんしてるでー!」

 

トウジはその場でジャンプする。

どうやら、後遺症はないみたいだ。

本当によかった。

 

「ところで碇?」

 

僕がトウジのことを考えていると、横からケンスケが話しかけてきた。

 

「ん?どうしたの?」

 

「その首からぶら下げてるものってまさか…?」

 

「ん?なんや?何ぶら下げてるんや?」

 

ケンスケの言葉を聞き、トウジが僕の首元を見てくる。

 

「なんや!?指輪なんてどないしたんや!?誰からもらったんや!?」

 

「トウジ!?声が大きいよ!!」

 

トウジがあまりにも大きな声で言うため、クラス中が僕らの方を見ている。

ちなみに、アスカは朝僕が起きた時点で家にはいなかったが、ちゃんと今は教室にいる。

つまり、全部聞かれているということだ。

しかし、アスカに反応はない。

 

「綾波からもらったんか?それとも惣流か!?」

 

トウジは興奮冷めやらぬ様子で僕を問い詰めてくる。

 

「昨日、誕生日だったからもらったんだよ…。」

 

「なっ!?昨日誕生日やったんか!?はよ教えてくれや!祝い損ねたやないか!?」

 

「ご、ごめん。自分から誕生日言うのは恥ずかしかったから…。」

 

「ワシらでも知らんかったいうことは、やっぱり惣流か綾波やな。」

 

「だな。それしかない。」

 

トウジとケンスケが僕を見ながら、推理を続けている。

こんなことなら、服の下に入れておくべきだった。

 

「くっー、羨ましいのう。シンジにもとうとう春が来たんか。」

 

「そんなんじゃないよ。」

 

「隠さなくてええんや。それよりも、今日は惣流のやつがやけに静かやのう。やっぱり惣流からやったんか?」

 

「言わないよ…。」

 

こんな時だけ勘が鋭いトウジを恨んだ。

そんなに勘がするどいなら、委員長のことも気付いてあげればいいのに…。

 

「ちょっと、かまかけてみようやないか。」

 

なにやら、トウジが悪い顔をしている。

きっと、何かしでかす気だ。

 

「おう、惣流。お前、とうとうシンジと付き合うようになったんか?」

 

!?

まさか、アスカに喧嘩を売るなんて…。

僕はトウジの予想を超えてくる行動に固まってしまった。

しかし、この後さらにすごいことが起きるのであった…。

 

「そうよ?悪い?」

 

「えっ…。いや、別に…。悪くはないんやないか…?」

 

「ならほっといてよ。」

 

「す、すまん…。」

 

トウジが言い負かされている。

それよりも、今はアスカだ。

とんでもないことを口走っていた。

アスカの発言のせいで、教室中がざわついている。

 

「アスカ!」

 

僕はアスカの手を取り、教室を出る。

冷やかしの声がしたが、今はそれどころではない。

アスカに事情を聞かなければ。

僕はアスカの手を引き、屋上に来た。

 

「ちょっと、急に何よ。痛いじゃない。」

 

「ご、ごめん。でも、どうしてあんな発言を?」

 

「アンタがそれを学校に持ってきたからでしょ?他にどう言えば良かったのよ。」

 

「確かにそうだけど…。流石にあれはやりすぎじゃ…。」

 

「はぁ?全部私のせいにするわけ?」

 

「違うけど…。元はと言えば、アスカはどうして僕にこれを?」

 

僕は昨日の夜ずっと悩んでいたことをアスカに聞く。

 

「…。なんとなくよ。」

 

「なんとなくってなんだよ。」

 

「そのままの意味よ。」

 

「…。じゃあ、あの彫ってある文字はなんなんだよ。」

 

「別に深い意味はないわ…。」

 

「アスカが何を考えているのかわからないよ…。」

 

「そうね。私にもわからないわ。でも、これだけは言えるわ。」

 

「何さ…。」

 

「私はアンタが好きよ。」

 

「えっ…。」

 

僕はアスカの思いがけない言葉に固まる。

しかし、アスカはそんな僕にお構いなしに話し続けた。

 

「でも、これは純粋なものじゃない。私はアンタが憎くてたまらないわ。でも、その中にアンタが好きっていう感情もある。お子ちゃまなアンタにこんな重い気持ちが受け止め切れるかしら?」

 

アスカは言葉は挑発的だが、目は悲しそうだった。

アスカは勇気を出して、僕に気持ちを言ってくれた…。

でも、僕は…。

 

「アスカ。僕は確かにアスカのことを大切に思っているよ。でも、この気持ちがなんなのか分からなかった。」

 

「そっ。なら、この話は終わりね。教室に戻りましょ。」

 

アスカが僕の話を聞かずに、帰ろうとしている。

 

「アスカ!でも、今はこの気持ちをちゃんと言葉にできるんだ!」

 

僕の言葉にアスカの歩みが止まる。

 

「何よ。」

 

アスカは後ろ向きのまま僕に聞いてきた。

 

「僕はアスカのことが好きなんだ。好きって言葉じゃ、表現できないほど、君のことを想ってる。憎まれてたっていい。だから、アスカさえ良ければ、僕とずっと一緒にいてください。」

 

やっと言えた。

アスカを好きだと。

アスカとずっと一緒にいたいと。

 

「アンタ、それ本気で言ってんの…?」

 

「僕は本気だよ。」

 

「私はアンタのことが死ぬほど憎いのよ。」

 

「それでも僕はアスカと一緒にいたい。」

 

「バカじゃないの…。」

 

「そうだね。バカかもしれない。でも、アスカが好きなんだ。」

 

「わかったわ。そこまで言うならいいわ。その指輪に書いてある通りにしてあげる。」

 

「それって…。」

 

「『I will never forgive you. But if you want, I give you all of me.』 私はアンタを許さない。でも、アンタが望むのであれば私はアンタに私の全てをあげるわ。好きよ、シンジ。」

 

アスカはそう言うと、僕に抱き付いてきた。

僕はそんなアスカを優しく腕で包み込む。

 

「ありがとう。アスカ。こんな僕を受け入れてくれて。」

 

僕はアスカを抱きしめながら、僕たちの明るい未来を絶対に掴むと、再度、心に強く誓ったのであった。

 

 

 

 

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