The end of the journey 〜最果ての旅〜 作:カズめぐ
目を覚ますと、目の前には知らない天井が…。
いや、知っている天井があった。
ここは、ネルフだ。
いや、ちょっと待て。
今の僕には今までの世界の記憶がある。
どうして、こんな突然…。
もしかして、アスカが何かしたのか?
まあいい。
そんなことより、今はいつなんだ?
早く世界を変えるために動かないと…。
そんなことを、考えていると、扉から紅い瞳の少女が入ってきた。
「碇君。目を覚ましたのね。あなた、ディラックの海に取り込まれてから3日も寝たままだったのよ。」
「そっ、そうなんだ。」
「えぇ。ちょっと待ってて。今、赤木博士呼んでくるから。」
そう言うと、綾波は部屋から出て行った。
僕は綾波の後ろ姿を見送ると、綾波の発言から現状についての考察を行った。
綾波はディラックの海と言っていたので、どうやら今は第12使徒戦の後らしい。
まあ、今思えば目を覚ます時は絶対にこの時なのだが、今まで、あまり気にしていなかったので初めて気づいた。
それもこれも、記憶があるからだろう。
こんなことは初めてなので、僕は戸惑いを隠せない。
しかし、戸惑ってる場合でもないのだ。
もしかしたら、記憶があるのはこれが最初で最後のチャンスかもしれない。
なので僕は、何が何でも世界を変えることを成功させなくてはいけない。
確か、次は3号機もとい、第13使徒が来るはずだ。
その対策をならなきゃいけない。
しかし、アスカはどこにいるのだろうか。
もしかしたら、アスカにも記憶の継続性があるかもしれない。
そしたら、協力してこの世界を変えれるはずだ。
協力してくれなくても、アスカ自身に記憶があるのであれば、アスカが傷つくような最悪な結末にはならないだろう。
もう僕はアスカが傷つくのは見たくないのである。
理由は自分でもわからない。
多分、責任を感じてるんだろう。
今までの僕は責任から逃れて散々アスカを傷つけ、裏切ってきた。
でも、今回はそんなことはさせない。
そう心に誓った。
しばらくすると、扉が開きリツコさんと、ミサトさんが入ってきた。
「シンジくん大丈夫?異変ない??」
ミサトさんが心配そうに聞いてくる。
「えぇ。今のところ大丈夫そうです。」
「そう?ならいいんだけど…。リツコはどう思う?」
「本人が大丈夫と言っても、シンジくんは使徒に取り込まれていたのよ。だから、一応精密検査はしておくわ。」
「やっぱりそうよね。シンジくん精密検査受けてね。」
「わかりました。それより、アスカはどこにいます?」
「あら、気になるの?」
ミサトさんがにやけながら聞いてくる。
「あっ、いや。姿を見ないなと思っただけですよ。」
「ふーん。まあ、アスカにも伝えたんだけど、『そっ。』て言っただけでどこか言っちゃったわ〜。きっと、照れてるのよね〜!」
「そんなことないと思いますよ…。」
僕は苦笑いしながらミサトさんに返事をする。
今のところ、ミサトさんの発言だけではアスカに記憶の継続性があるかどうかはわからない。
仕方ないので家に帰ってから確かめることにしよう。
そんなことを考えていると、またミサトさんがニヤニヤしながら話しかけてきた。
「もー、そんなに真剣な顔でアスカのこと考えるなんて青春ね〜。」
「別にアスカのことなんて考えてないですよ。」
「またまた〜。」
「ミサト。その辺にしときなさい。」
ミサトさんが僕のことを揶揄っていると、横からリツコさんが止めに入った。
「シンジ君もこんな、脳内お花畑の人はほっといて精密検査に行くわよ。」
「わかりました。」
ミサトさんは何やらぶーぶー文句を言っていたが、リツコさんが華麗に無視をきめ、僕とリツコさんは検査場へ行くのであった。
…………
2時間後。
僕は精密検査が終わり、自宅に帰ってきた。
「ただいまー。」
しかし、返事はない。
どうやら、まだ誰も帰ってきていないらしい。
時刻は17時。
まあ、待っていればそのうち帰ってくるだろう。
それまでにアスカにさりげなく記憶の継続性があるかどうか聞く手段でも考えよう。
ストレートに聞くのが1番手っ取り早い方法ではあるが、これでもしアスカに記憶の継続性がなかったら、気まずくなる。
なので、少し遠回しに聞く必要がありそうだ。
しかし、その匙加減が難しい。
僕がそんなことで悩んでいると、玄関の扉が開く音が聞こえた。
「バカシンジ帰ってたのね。それより、ご飯は?」
部屋に入ってくるなり、アスカはそんなことを聞いてきた。
アスカは僕のことを心配してる素振りはない。
まあ、今までもこういうことはあったし、気にしないでおこう。
「ごめん。今から作るから少し待ってて。」
「早くしなさいよ。私、部屋にいるから。出来たら呼んで。」
「うっ、うん。わかった。」
アスカはそう言い残すと、さっさと自室に入ってしまった。
うーん…。
今の会話では何も判断できない。
やはり、何かこちらから仕掛けないとダメだろう。
僕はそんなことを考えながら、夕飯の支度に取り組むのであった。
……
1時間後。
夕飯の支度が出来たので、僕はアスカを呼ぶことにした。
「アスカ。夕飯できたよ。」
「わかった。今行く。」
こうして、僕たちは食事の席に着いた。
「ミサトは?」
「今夜は遅くなるって言ってたよ。僕のことで色々しなきゃいけないことがあるらしい。」
「そっ。」
会話が途切れ、しばらく沈黙が続いた。
そんな中、僕はなかなかに確かめる手段が思い浮かばないため、少し強行策に出ることにした。
「式波…。」
僕はボソッとそう呟く。
「何言ってんのあんた?」
アスカが怪訝そうな顔でこちらを見てくる。
どうやら、知らないみたいだ。
「いや、何でもないよ…。」
僕は少し残念がりながら、下を向く。
「二度とその名前を口にしないで。反吐が出るわ。」
「ご、ごめん…。えっ…?」
僕は顔をあげアスカにも視線を送る。
「何よ?」
「アスカも覚えてるの?」
「当たり前じゃない。何言ってんのよ。」
アスカはさも当然の如く言ってくる。
「当たり前ではないと思うんだけど…。」
「当たり前よなのよ。そんなこともわからないなんてやっぱりバカね。」
「覚えてるなら、言ってくれればよかったじゃんか…。」
「逆に覚えてないって選択肢があること自体おかしいのよ。」
「何でさ。」
「そんなの自分で考えなさい。」
「そんなのわからないよ…。」
「ふんっ」
また会話が途切れた。
しかし、今はこんなことで言い争ってる場合ではない。
アスカに協力してもらわなければ。
「アスカ。記憶があるなら僕に協力してくれないか?」
僕はアスカの目を見て真剣に尋ねる。
しかし、アスカの返事は僕の期待していたものではなかった。
「嫌よ。」
「何でよ…。」
「あんたの力だけでどうにかしないと意味ないからよ。」
「どうしてさ…。」
「そんなこともわからないなんて。はぁ。先が思いやられるわね。」
「教えてくれたっていいじゃないか。」
「嫌よ。私は協力もしないし、邪魔もしないわ。あんたの力で頑張りなさい。」
「わかったよ…。その代わり、ひとつだけ約束して。」
「何よ。」
「アスカは自分が傷つかないように立ち回って。お願いだから。」
アスカは僕の発言に少し驚いていたが、すぐに眼光鋭い顔に戻り聞き返してきた。
「何でそんなこと言われなきゃいけないわけ。」
「そっ、それは…。」
「何よ。はっきり言いなさいよ。」
アスカが真剣な目で聞いてくるので僕は答えることにした。
「僕は世界を変えることが最終目的だけど、目的の中にはアスカを救うことも含まれてるんだ。だから、君が傷ついたら意味がないんだよ。」
僕がそう言うと、アスカが睨みながら言ってきた。
「気持ち悪い。偽善者ね。」
「それでもいいから。お願いだよ。」
僕は頭を下げてお願いする。
「はんっ。わかったわよ。まあ、もう痛いのは嫌だし、自分の身は自分で守るわ。」
「ありがとう。僕も出来るだけ、守るようにするから。」
「勝手にしなさい。」
こうして、この世界に来ての初日を終えるのであった。