The end of the journey 〜最果ての旅〜 作:カズめぐ
7月10日の朝。
僕は次の日のことを考えていた。
ちなみに、加持さんの暗殺は阻止することができた。
他にも色々と細かいことはあったが、特に取り立てるほど問題は起こらなかったので割愛しよう。
今は明日の第十五使徒戦のことで頭が一杯だ。
この使徒のせいでアスカは何度も苦しめられた。
だけど、今回は絶対に僕が守ってみせる。
しかし、相手は宇宙空間にいるため、策が思い浮かばない。
しばらく、考え込んでいるとアスカが起きてきた。
「おはよー。」
「おはよう。アスカ。」
「真面目な顔してどうしちゃったのよ。」
「明日のこと考えてたんだよ。」
「明日?あぁ、あの使徒ね。」
「今度こそアスカを守るんだ。」
「でも、どうやって倒すのよ。」
「それは、今考え中で…。」
「まっ、任せたわ。」
そう言うと、アスカはシャワーを浴びにいってしまった。
意外と呑気と言うか、気にしてないと言うか…。
アスカならめくじらを立てて、使徒を倒そうとすると思ったのに…。
まあ、今はとにかく倒す方法を考えよう。
確か、ロンギヌスの槍で倒していた気がする。
しかし、あれは最終手段だろう。
父さんがそう易々と出すとは思えない。
他に方法はないのだろうか。
あるとすれば、僕がギリギリまで追い込まれて、槍を使わせることくらいだろう。
アスカが受けるくらいなら僕が受ける。
そうだそうしよう。
しかし、アスカにこれを話すと反対されそうなので話さないことにした。
……
翌日。
7月11日。
『総員、第一種戦闘配置。対空迎撃戦用意。』
『目標は衛星軌道上に停滞中。映像で確認しました。』
「これは…。」
「衛星軌道から離れないわね。」
「降下接近の機会をうかがってるのかしら。それとも、その必要もなくここを破壊できるのか…。」
「とりあえず、エヴァを発進させて、様子を伺いましょう。」
「そうね。全機、戦闘配置について。」
ミサトさんがそう声をかけたが、一人だけその命令に賛成しなかった。
「待て、初号機はケージで待機させろ。」
その声の主は父さんだった。
「碇指令。それはなぜでしょうか?初号機は前回の戦いで大きく損傷しましたが、今はもう修理済みです。」
「これは命令だ。」
「ですが…。わかりました。初号機及び初号機パイロットは第三ケージにて待機。それ以外は発進準備を進めて頂戴。」
「ちょっと待ってよ。どうして僕だけ待機なんだよ!?」
前回と違い、覚醒したわけでもないのに出撃できない理由が分からない。
「これは命令だ。黙って聞け。」
「でも、それじゃあ…。」
「シンジ君。これは命令よ。」
「はい…。」
僕は横にいたアスカを心配そうに見る。
「なによ?」
「ごめん…。肝心な時に力になれなくて…。」
「別にあんたなんていなくても平気よ。」
「だけど、僕は君が心配なんだよ…。」
「大丈夫よ。あんたは大人しく待ってなさい。」
「うん…。気を付けてね…。」
こうして僕とアスカは別れた。
「全機、発進準備できました。」
「二号機を先行させろ。」
「わ、わかりました。二号機発進!超長距離射撃用意!零号機と3号機は2号機のバックアップとして発進準備。」
「了解よ!」
「「了解」」
アスカ、綾波、カヲル君がそれぞれ返事をする。
どうして僕は、いつも肝心な時にアスカのそばにいられないのだろうか。
自分の無力さに心底腹が立つ。
それに、倒産が何を考えているのかもわからない。
そんなことを考えているうちに、2号機はすでに地上に出ていた。
2号機がそれに向かってライフルを構える。
すると、今まで同様、使徒が2号機に光線を浴びせてきた。
「アスカ!?」
やはりこうなってしまった。
くそっ。
僕はここで何をしているんだ。
「敵の指向性平気なの!?」
「いえ、熱エネルギー反応はありません!」
「ですが、心理グラフが乱れていきます!精神汚染が始まります!」
「まさか…。使徒の心理攻撃!?人間の心を探るつもりなの?」
ミサトさんたちとの会話を背に僕は初号機のところに走り出した。
僕は急いで初号機に乗り込む。
「お願いだ!!動いてよ!アスカが!!」
しかし、初号機は動かない。
「くそっ!」
僕は操縦席を殴った。
そして、モニター越しに2号機を見守る。
今の、僕には見守ることしかできない。
ほんとに無力だ…。
……
一方、管制室にて。
「アスカ!?命令よ、撤退しなさい!」
「2号機パイロットから反応ありません!!」
「くっ…。ポジトロンライフルの用意は?」
「最終段階です。強制集束機作動中。地球の自転及び動誤差修正0.03。薬室内圧力最大!全て発射位置!」
「いかせてもらうよ。」
3号機が持つポジトロンライフルから光弾が発射された。
しかし、使徒には届かない。
「ダメです。この遠距離でATフィールドを貫くにはエネルギーがまるで足りません。しかし、最大出力です。もうこれ以上は…。」
「2号機心理グラフシグナル微弱。」
「LCLの精神防壁は?」
「ダメです!触媒の効果もありません!」
「生命維持を優先。エヴァからの逆流を防いで!」
「はい!」
「2号機活動停止!生命維持に問題発生!パルス微弱。パイロット危険域に入ります。」
「目標は変化なし。相対距離依然変わりません。」
「ミサトさん!僕を出撃させてください!アスカを助けに行きます!」
「シンジ君…。わかったわ。初号機出撃準備。」
「ダメだ。目標は精神を侵食するタイプだ。今初号機を侵食される事態は避けねばならん。」
「じゃあ、アスカを見殺しにしろっていうのか!?」
僕は父さんを睨みつける。
「レイ。ドグマを降りて槍を使え。」
父さんがようやく重い腰を上げ、ロンギヌスの槍を使うことにした。
「碇!?それは…。」
「ATフィールドの届かぬ衛星軌道上の敵を倒すにはそうするしかない。急げ。」
「碇。あれを使うのはまだ早いのではないか?」
「委員会はエヴァシリーズの量産に着手した。チャンスだ。冬月。」
「しかし…。」
「時計の針は戻らない。だが、自らの力で進めることはできる。」
「老人たちが黙ってないぞ!」
父さんと冬月副指令が何かを話しているが、聞こえない。
しかし、今はそれどころではない。
とにかくアスカを助けなければ。
「零号機は第二層を通過!地上に出ます!」
「零号機。投擲体制。目標確認。誤差修正よし。」
「カウントスタートします。10.9.8…3.2.1.0!」
零号機が空に向かって槍を投げた。
「目標消失!2号機解放されます!機体回収は二番ケージへ。」
アスカ…。
動か無事でいて…。
……
病室にて。
「アスカ!?」
僕は勢いよく部屋に入る。
するとそこにはリツコさんがいた。
「シンジ君。そっとしといてあげて。精神に負担をかけすぎたのよ。」
そう言われ、アスカを見た。
アスカは虚ろな目で虚空を見ている。
「そんな…。僕はまた…。」
僕は膝から崩れ落ちた。
「アスカ…。ごめん…。」
僕はアスカの手を握り、謝る。
すると、後ろからカヲル君が入ってきた。
「赤城博士。セカンドチルドレンはここでこのまま治療を?」
「ええ。そのつもりだけど。」
「なら、精神衛生上、自宅でシンジ君と一緒にいさせてあげるほうが彼女のためになるのでは?」
僕はカヲル君の発言を聞き顔を上げる。
「確かにそちらのほうが良いかもしれないけれど…。」
「リツコさん。お願いします。」
僕はリツコさんに頭を下げてお願いする。
「はあ。仕方ないわね。その代わり何か異常があったら、すぐ連絡すること?わかったかしら?」
「はい。ありがとうございます。」
「じゃあ、私は車の手配をしてくるからここで待ってて頂戴。」
そう言うと、リツコさんは部屋を出た。
「カヲル君。ありがとう。」
僕はカヲル君のほうを向き、礼を言う。
「いいのさ。僕はこれが最善だと思っただけだからね。」
こうして、僕とアスカは自宅に戻ったのだった。
……
自宅にて。
僕はアスカをアスカのベッドに運び終え、アスカのことを見ている。
「じゃあ、シンジ君。私はネルフに戻るから。何かあったらすぐに連絡ちょうだいね。」
「わかりました。ここまで、運んでくれてありがとございます。」
「いいのよ。あなた達のためだもの。アスカのそばにいてあげてね。」
「はい。わかりました。」
ミサトさんは家を出てネルフに向かった。
僕は再びアスカを見る。
すると、突然アスカがむくりと、起き上がったのである。
「アスカ!?」
僕が驚いた顔をしていると、アスカが僕を睨んできた。
「何よ。」
「何よじゃなくて…。どうして!?」
「私が今さら、あんなのにやられるわけないでしょ?トラウマなら全部克服済みよ。」
「じゃあ、どうして今まで…。」
「フリよ。」
「何で、そんなことを…?」
「私はここで退場した方が都合がいいからよ。」
「どうしてさ。」
「そういうシナリオなのよ。」
「よくわかんないよ。」
「まあ、わかんなくていいわ。そのうちわかるから。」
「そっか…。それより、本当に大丈夫なんだよね…?」
「大丈夫よ。まあ、心の中を覗かれるのは何度経験しても気持ち悪いけどね。」
「本当によかった…。」
「心配しすぎなのよ。」
「当たり前だろ!僕はまたアスカを失ったかと思ったんだ…。」
「まあ、安心しなさい。しばらくは、大人しくしてるから。あとことは頼んだよ。」
「うん。今度こそ何とかしてみせるよ。」
アスカが無事で、本当によかった。
もう絶対にあんなことにはさせない。
こうして僕たちは眠りにつくのであった。