Over Your World 作:Satellite WE'RE
〈ガシャコンキースラッシャー!〉
「行くぜ! マキナ!」
ゲームスタートを宣言するムテキ。開幕、唸る波状斬撃がゲムデウスXを引き裂いた。
神の宝盾、マキナランパートを構えるも、その豪勢全ては薙ぎ払えない。
分が悪くなったマキナは徐に何かを取り出した。
「それは、エナジーアイテムか!?」
「これは少年が集めてきたアイテムか。エリクサー症候群が仇になったな! 有効活用してやろう!」
〈全快!〉〈増殖!〉
マキナが使用したのはさながらエナジーアイテムの強化形と言えるもの。
ゴッドスピードが先行プレイヤー用に与えた改造アイテムだと、永夢は推測する。
エンデミックの如く増えていくマキナを前に、ムテキは無限ジャンプで飛び立った。
『くらえ! デウスラッシャー!』
すべてのマキナが空中に向けて一文字を飛ばす。一閃一閃が虐殺級の威力。まともに喰らえば、ムテキでも落下だけは免れない。
「だったら!」
〈デュアルガシャット! パズルファイター! クリティカルフィニッシュ!〉
〈混乱!〉〈継承!〉
合流したパラドクスのガシャットを拝借する。友情の一閃が目前の斬撃を弾いた。しかし、そのバックにある暴威には及ばない。
「それっぽっちで何が……!?」
突如、暴力の方向が反転した。
エグゼイドは光速で、切り飛ばした斬撃波にアイテムを投げ込んでいたのだ。
その効果を得た斬撃は、無秩序に右往左往を駆け巡っていく。さらに、奔った軌道に在ったすべてのデウスラッシュが混乱を〈継承〉した。
エピデミックの如く、広がっていく斬撃群すべてがそのまま地上に下っていく。
数舜後、大爆発が地平線に轟いた。勢いが途絶えた頃、残るマキナはただ一人となっていた。
「ゲッホ! ……んなバカな! アイテムも格も、私の方が──!」
「ふっふっふ。使い方が脳筋じゃ俺には叶わないぜ! さあ、こっからは力比べだ!」
直後、光速ワープでマキナの背後にムテキが出現。そのままマキナスラッシャーを弾き飛ばした。
大きく踏み出した流星の波動を合図にインファイトが始まる。
宝盾をものともせず、連打がマキナの胸を捉え続ける。辛抱も許さず、星の大振りが降り注ぐ。その軌跡すら、マキナは捉えられない。
「ぐっ、ひっ――!」
追い詰められたマキナはマキナランパートの伸縮貫穿器を振り回した。特権により、その旋転にはドレミファビートの音符型ボムが付随する。コンボに伴い、次々と爆発するメロディ。
しかし、ムテキは止まらない。音波は光波に届かない。うねる宝盾の根本まで瞬く間に間合いを詰め、そのまま踏み台にして飛びのいた。
成った図は、衝撃を受けた左腕に体躯をとられたマキナと、切り裂く噴流のままに髪刃を滾らせるハイパームテキ。
「さあ、フィニッシュだ」〈キメワザ!〉
「ぐ、ギギギィ───!」
大気を震わせるほどの必殺宣告。対象を捉えようと見上げるマキナ。しかし、代わるように世界が、視野が下降した。
膝から崩れ落ちた。腕から伝導した衝撃を流せない。偽神の五体はもう、動かない。
「そ、んな」
〈ハイパークリティカルスパーキング!〉
「ハアアアァァァアア!」
マキナが見たのは走る隕星の輝き。その空を、澄み切った心の青空をバックに煌めく足先だけが。
彼の捉えた、最期の光景だった。
〈HIT!〉〈HIT!〉〈HIT!〉〈HIT!〉〈GREAT!〉〈HIT!〉〈GREAT!〉〈GREAT!〉〈HIT!〉〈HIT!〉〈GREAT!〉〈HIT!〉〈HIT!〉〈GREAT!〉〈GREAT!〉〈HIT!〉〈HIT!〉〈GREAT!〉〈PEFECT!〉
「ギャああああああああああぁぁぁああ!?」
「アドル!」〈究極の一発!〉
消滅を待たず、爆炎を抜けて腕を伸ばすエグゼイド。
果たしてその腕の先には。
しっかりと、患者の心を掴む手があった。
〈完全勝利!〉
「──これで、僕の運命は変わったんですか……?」
「もちろん。そして、これからも。一つの命を持つ限り、何度でもだ」
硝煙が晴れた頃、二人が目にしたのは雲一つない地平線。そこには陰影も、仄暗さの一片もなく、ただ。
───生きる限り輝き続ける
●●●●●●
「……それが、お前達の選択か」
選別の鑑賞を終えたノアは、システムに組み込まれたゲームを起動する。
〈仮面ライダー■■■■■! 起動、融合プロセススタート〉
新たに投影されたモニター。示すエリアはファーストステージ、『Heaven's gate』。
そこに映るのは、交錯し続ける夢と、
夢の切符を手に、選択を迫られる有象無象を前に思わず口角らしき部位が上がる。
道標は既に示された。箱舟に導かれる人々と、向かってくる宝生永夢を心待ちにするノアに、一切の憂慮は見られない。
●●●●●●
「永夢、ガシャットを幾らか貸してくれ。俺はファーストステージの『Heaven’s gate』に戻る」
「ああ。みんなを、人類を頼んだ」
「そっちこそ。この世界に命の輝きを叩きつけてやれ!」
パラドが粒子となって世界を下っていく。僕達は最後の、プレイヤーが眠る天守閣に向かうことになった。
一分も経たずに、頂上に辿り着く。
目に入ったのは何やらモニターを見ながらVRXを転がすゴッドスピードだった。
「お前の野望はここまでだ! みんなをこの世界から解放しろ!」
「まだわからないのか。この世界こそが絶対硬度の幸福だと」
「僕達は、命を無碍にすることは絶対にしない。お前の誘いに乗ることはない」
「お前の意思はいい。もっと大勢の、人間達の旅立ちを見届けようではないか」
そう言ったゴッドスピードがモニターを拡大投影して僕達にも見えるように展開した。
でも、そんなことより……
「あいつを倒したとき、ゲームクリアの音声が鳴らなかった。番場くんに感染させたゲムデウス
そこまで言ってから気付いた。さっき遭ったときに比べて、こいつのウイルスが活性化していることに。
……ゲムデウスだけじゃない? いや、そもそもどこでゲムデウスウイルスを手に入れたんだ?
「彼の抱えるであろうストレスは愚の骨頂であった前社長をある程度復元させるには十分だった。あとは私の方で培養すればいいのだから。これで残るVRXを取り込められれば、私は完成する」
「完成? お前は世界を乗っ取るのが目的じゃなかったのか。それにその言い草、今までのゲムデウスとは違うものになるつもりなのか……?」
どこからか調達したゲムデウスウイルス。
番場くんを利用して活性化させたゲムデウス
そして、ずっと狙ってたであろうマイティクリエイターVRX。
これらすべてを取り込んで、一体どうするつもりなんだ?
「私はこの世界の創造主権だ。私が世界を満たす夢を見守り続けよう。万が一にも管理者になる私が破れてはならない。力があるに越したことはないだろう?」
「それは違う」
卒然、番場くんが言葉を発した。
その目はどこか、相手を憐れむようなものだった。
「あなたはその俯瞰できる位置から自分が作ったシステムによる人々の夢に浸りたいんだ。元々持ってた幸福論は消えたんだろう? 一人だったであろうあなたは、そうやってきっと―――」
「だまれ…………私の気が変わらないうちに」
その言葉が最後まで紡がれることはなかった。
優位から俯瞰に徹しようとしてる奴自身も、最早自分の正確な希望など分かっていないのかもしれない。ここでその夢を終わらせる。
「ならば見せてやる。私が辿り着いた力を。世界のだれもが望む最高機関! すべて余すことなく導く絶対存在! 腐敗した混沌はここで終息する。私こそが、天国を俯瞰する神───」
そう叫んだゴッドスピードから、三種類のバグスターウイルスが噴出した。それらは奴の身体を軸に統合し、収まりゆく。
背景の大樹が共鳴している。まるで悪夢にうなされる人々の悲鳴のように。
そうして完成したのは、未知の侵略者のような機械と、始まりの枝木が絡み合う、等身大の新型ゲムデウスだった。
「お前が、神でラスボス……」
「そう、私こそが全バグスターを凌駕し、神の名を思いのままにし、VRを自在に操る──ゲムデウス
機械仕掛けの、世界収束の舞台装置を名乗ったゴッドスピード。それが奴の正体で、本性だった。
でも、まだ分かってないことがある。
「じゃあその根源のゲムデウスウイルスは……?」
「言っただろう、共に見届けようではないか、と。私達の運命は、彼らの門出を祝福した後に決まるんだ」
「先生、ファーストステージにこいつと同じようなウイルスが、大量に!」
モニターを見ていた番場くんが怯える。
その視線にあったのは、この天守閣の方角から放たれたバグスターウイルスが、ファーストステージに降り注ぐ様だった。
そして、その最奥で揺らめいているのは───
「ゴッドスピード! まさか、お前が取り込んだゲームは!?」
「お察しの通りだ。さあ、最期の
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混沌が続くファーストステージ。
膨大なプレイヤーの頭数は、未だ留まることを知らない。
花家大我はその窮状に顔を顰めていた。
「幸いなのはどこに行くわけでもなく、ここに全員いるってだけか」
噂を信じて来た奴ら、藁にもすがるような顔でいる奴ら、ただゲームのつもりで来た奴らなど、いろんなのがいる。それを見てると、何か心に引っかかるものがある気がする。
今、そいつらと俺たち全員が、空に広がっている夢の群集を見ていた。
それはオーロラのように神秘的なはずなのに、どこかペンキをひっくり返したかのように奇抜で不気味で形状しにくいというか……
「なに? また一人で浸ってんの? どうせ寂れたあんたじゃ気のいい喩えなんか浮かばないんじゃないの」
「はあ? ひた、そんなんじゃねえよ! ただこの世界にどう関係してんのか見てただけだ」
いきなり耳をつんざく声が横から襲ってきた。
いつものように上から目線でいちいちうるさいニコの声だ。
その声音にもいつものように嘲笑や憐れみが……待て、憐れみって何だおい。
「てかこの変な色合い、お前のリュックとそっくりじゃねえか。親近感持ってんのはお前の方だろ」
「はあ? 全然違うし! あんた全然ちゃんと見てないじゃん。こんなぐちゃぐちゃのと一緒にしないでよね! 大体、あんたはそういうセンスが欠片もわかってない! あんたはね───」
ああ、始まった。
しばらく国を越えて会ってねえせいでうまく接する戦術が狂っちまった。ほら見ろ。ニコの一層うるさくなった愚痴が、マシンガンのように突き刺さる。
まあ今は良いように言わせてやるか。
国が違うのにコイツがここにいるのは『Over Your World』を買ってログインしてるからだ。
何でも変な噂が立ってるこのゲームに俺が関わると読んで、いちいち俺に突っかかるために日本から取り寄せたらしい。最初から海外展開なんてことになってないのはマシだった。ゴッドスピードも前社長と同じように日本好きだったから、この国から販売を始めたのかもな。
まったく、呼んでもねえのに現れるなんて厄介なのもいいところだ。命を懸ける理由が増えちまったんだからな。
……絶対に、お前を危険には晒さない。
「あ~! また何か変な目で見てる。あんたがそういう顔するとき、上からなカンジになってんの知ってんだからね!」
「はいはい、別に何でもねえよ」
……こいつのエスパーにはもう揺るがねえぞ。
「そもそも、ここゲーム何だから私の方が上手いし? まあ、何て言うか、あんた一人じゃないってことね」
「…………」
「……あー悪いな、いいとこだったのに。戻ったぞ、スナイプ」
変な空気になりかけたところで、パラドが戻ってきた。
どうやらエグゼイドは無事最上階に辿り着いたようだ。今回何度も引き離されたことには参るばかりだけどな。
「ゴッドスピードはプレイヤーに永夢たちに向けて言ったのと同じように告知したみたいだな」
「ああ、さしずめこの景色は実演商法ってとこだ」
「ねえ、何とか言っとかないとまずくない? こんなのに惹かれてる奴らいっぱいいるんだけど」
そういってもう一度見渡すと、見たことのある顔が幾らかあることに気付いた。
あれは、身内がゲーム病で消滅した人々だ。
……消滅者の復元方法は未だ確立していない。喪失感に苛まれて、現実がいやになってしまったのか。
それから他のプレイヤーを見遣ると何か見覚えのある、デジャヴというのだろうか。そんな感覚が俺の脳裏を巡る。
「何か『あーもうこの世界どーでもいいわー』みたいな顔してる人もいるね。……ねえ、大我どうしたの」
……そうだ。これは、俺が見覚えあるわけだ。
あの、あいつらのこの世の終わりみたいな投げやりになってる顔は、そう。
鏡に映った、かつての俺の顔と同じだ。
パラドはよくわかんなかったみたいだが、俺は先行プレイヤーが選ばれた理由がわかる気がする。
必死に取り組んでたことがあったのに、気付いたら何もない、上手くいかない、というようになってしまった人間達だ。
何もかもどうでもよくなって、持ってたはずの熱量が曖昧になり、自堕落なところにいってしまう。
俺は海外にいってそういう暗いもんを忘れようとしたことがあるが、結局うまくいかなかった。
ましてやそういう発散すら出来ない人もいるかもしれない。
どんなことがあったか知らねえが、アイツらはかつてのくたびれた俺と同じように絶望してるんだ。
理由や背景なんてわからない。お隣とか同級生とか、上司や会社かもしれない。もしかしたら世界そのものを憎んでるかもしれない。
俺だって、そんな風になってもおかしくなかった。ただ、心のどこかで医者を諦められなくて、幽鬼のように彷徨い、求め続けてただけだ。
「ちょっと大我、聞いてんの! も~ちゃんと耳通じてんの!」
ならば何故今、自分は彼らと違ってここに信念を持って立っているのだろうか。
色んな事があった。そもそも俺やブレイブ達の人生を狂わせたのは一人の男で、闇医者の俺はライダーに復帰して、いつの間にかチーム医療までするようになって。
それでもグラファイトに、妄執に囚われ続けた俺は結果的にブレイブの恋人の生き返る手段を不意にした。それで檀正宗やジョニー・マキシマ、檀黎斗の脅威を退けて、ブレイブの恋人のデータも何とか消失せずに残った。
今でも過去を振り返っては、どうしようもなくやるせなくなる俺は何故ここにいるのだろうか。俺には、今の俺にあるのは───
「ねえってば! 私の話聞けないの!? 他でもないこの私が言ってんだけど!」
「! …………ああ、そうだな」
そうだ、何もおかしなことじゃない。
──コイツがいる。そしてゲーム病に苦しむ人々がいる。
ドクターとして、コイツの主治医として確かに守りたい命があるからだ。
俺はコイツの主治医だが、ドクターとして守るべき奴らもいる。
それは、運命。多分、きっと、最初からじゃなかったかもしれないが、それでも…………
「え? ちょっと大我どこ行くの? ええ!?」
「スナイプ……」
別に最初から生きる意味があるわけじゃない。
でも今、此処にいる俺が、あんな顔してる奴らをほっとくのは癪だ。
俺は葛藤の渦にいるプレイヤーの踊り場に向かって行った。
感想、アドバイス等お待ちしております。