Over Your World   作:Satellite WE'RE

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第十五話

 大量のバグスターが次々とファーストステージに降っていく。ポッピーにプレイヤーの護衛を任せ、仮面ライダーが立ち向かおうとしていた。

 

「ニコ、これを使え」

 

「えっ、これドライバー……いいの!?」

 

「ああ、VRXを弄ってドライバーだけは完全に自由になった。俺はレベル50で行く。仮面ライダーカーニバルが起動してる世界なら、お前のプレイデータから……」

 

「私もイケるってわけね! 大我、あれ! あれよこしなさい! ほら」

 

「おいっ、触るな! 引っ張るな!」

 

 いつもの調子で大我に迫るニコ。今のところ変身しても変わりない大我の様子に安堵する飛彩。そしてパラドが大我にこの戦いのキーアイテムを渡す。

 

「スナ……クロノス。お前はこれを使う機会を見つけろ」

 

「これは……だが、俺一人じゃムテキは捉えられないかもしれないぞ」

 

 だったら直ぐに駆け付けてやるよ。そう目で示した三人がドライバーを装着した。

 三者一様にガシャットを構える。

 

「さあ、天才ゲーマーNの力、見せてやる!」

 

〈タドルレガシー!〉

 

〈パーフェクトパズル〉

 

〈バンバンシミュレーションズ!〉

 

「術式レベル100(ハンドレッド)」「第伍拾戦術……なんてね!」

 

「「「変身!」」」

 

〈辿る歴史! 目覚める騎士! タドルレガシー!〉

 

〈パーフェクトパズゥル……!〉

 

〈スクランブルだァ! 突撃発進! バンバンシミュレーションズ! ……発進!〉

 

 白磁の鎧を身に纏った騎士、ブレイブ・レベル100。

 アイテムを自在に、意のままに。パラドクス・レベル50。

 そして、主治医をサポートするために砲門を担ぎ出したニコスナイプ・レベル50。

 

 四人の仮面ライダーが、今ここに集結した。

 ゲムデウスクロノスが彼方の殺意を睨みつける。

 

「俺はゲムデウスムテキを食い止める。その間に他の奴らを蹴散らせ!」

 

「オッケー。私はバーニアとガットンを。ブレイブはカイデン、パラドはモータスとチャーリーね!」

 

「何故お前にオペの順序を指図されなければならない」

 

「まあまあ、ここは天才ゲーマーNのコマンドに乗ってやろうぜ、ブレイブ」

 

「はあ? 地味にアンタたち煽る相性良いのムカつくんですけど!」

 

 微笑ましいといった感じで軽い物言いになったパラドクスがニコに詰められる。その間にブレイブは敵の頭数を確認した。

 かつて仮面ライダーカーニバルにおいて心を取り戻したバグスターはソルティ、リボル、アランブラ、グラファイト。ゴッドスピードが不穏因子を急いで除去したなら、彼ら以外のクロニクルに登場したバグスターがすべて襲い来るのだ。

 

 

 

 

 

 

      ●●●●●●

 

 

 

 

 

 

〈ポーズ!〉〈ガシャコンスパロー!〉

 

 停止した時の中で、唯一縛られない二つの影が空に飛び出した。

 片や、ゲムデウスクロノスがラブリカのバラを纏わせたスパローを放り投げた。投擲した獲物は花弁の噴流で揺らぎ、双方から迫る不可視の鋭刃となる。

 片や、ゲムデウスムテキがクダケチールですべてを消し飛ばした。小賢しい襲撃は無敵の悪意には通じない。

 

 両者ともに宿した力は全知全能。

 全バグスターを統べる王の力を振り撒く彼らは、拮抗が必然だった。

 ムテキが刀身に昏き波動を奮わせ始める。その射程圏内に下方のプレイヤ―がいることを察したクロノスがその手で呼びつけた。

 

「こい、リボルバグスター突撃部隊!」

 

 召喚と同時に放たれるドドド黒龍剣。凶悪な牙を光らせる龍波が、部隊を瞬く間に壊滅させていく。しかし下に届かないなら十分。クロノスは被爆した隊員を踏み越え、ムテキと肉薄した。

 即座に召喚した宝盾デウスランパートを押し付け、余波を裂きながら打擲する。

 それをムテキはすぐさま身体を捻り回避。対象をその髪の尖鋭で切り落とす。体勢は逆転しない。下方に晒されたクロノスに重力が加えられた鉤突きが炸裂する。

 腹部の衝撃に引っ張られ、落下していくクロノス。その好機を見逃さず、畳みかけようと無限ジャンプで仕掛けに入るムテキ。だが、それこそがクロノスの狙いだった。

 

〈ステージセレクト……!〉〈リスタート!〉

 

 突如世界が切り替わる。落ち着いた場所は静寂の白き教会。

 デバッグで使えるようになった選択で、プレイヤーを危険に晒すことなく舞台を整えた。

 ここからは消耗戦。決して心髄に馴染むことがないゲムデウスウイルスと折り合いをつけつつ、ムテキの間隙を伺うことが大我の第一ミッションだった。

 

 

 

      

      ●●●●●●

 

 

 

 

〈シャカリキスポーツ!〉〈キメワザ!〉

 

「悪いが遊ぶのは次の機会だな!」

 

 自転車を乗り回して二機を撹乱するパラドクス。小回りが利きにくいバイクを駆るモータスと、それが邪魔でパフォーマンスを発揮できないチャーリーを着実に追い詰めていた。

 

「ニコ、受け取れ!」

 

〈伸縮化!〉「まさかあんたと組むとはね!」

 

 天才ゲーマーのタッグバトル。ライダーとしての経験値が浅くとも、そのエイム力は本物。

 的確な絨毯爆撃にガットンとバーニアは手も足も出なかった。後者は飛行ユニットすらも既に破壊され、退路が断たれている。

 

〈挑発!〉〈睡眠!〉

 

「あ? あら~!?」

 

「Motors!? Buzz off!」

 

 飛ばされたエナジーアイテムは一つではなかった。〈睡眠〉を飲み込んだモータスヴァイパーが就寝したかのように停止し、バイカーを放り出す。

 不幸にもその先に走るのは〈挑発〉で進路を固定されたチャーリー。二人は見事に正面衝突し、目を回しながらパラドクスの目前に転がり出た。

 

〈パーフェクトクリティカルコンボ!〉

 

「はあぁああああ!」

 

 すかさずペダルを踏み込むパラドクス。目的地は真正面。重力を無視して、地面と平行に突撃していく。

 敵を上下に轢き裂く、弾ける車輪。竜巻の面影が見えた頃、対象は爆散した。

 

〈オールクリア!〉

 

「あ~! 何あたしより早く上がってんのよ!」

 

〈キメワザ!〉

 

 愚痴を吐きつつも砲門を固定していくニコスナイプ。

 殺意のロックオンから逃れるために二体は身を投げて回避しようとする。この距離なら、確実に当たらない。そう認識した瞬間、目の前に()()があった。

 

「──エ?」

 

〈バンバンクリティカルファイア―!〉

 

「くらいな!」

 

 伸縮化により、バリアすら張れない懐に延ばされたキャノンアーム。

 放たれた零距離砲撃は彼らの胴体を吹き飛ばし、恒常の位置にある肩部ユニットの追い撃ちで完全に爆散した。

 

〈ミッションコンプリ―ト!〉

 

「よっし、上りぃ!」

 

「やるな、ニコ!」

 

 そして、二人から離れた位置で交わる刃の旋律にも、終焉が近づいていた。

 

「ぬぅ~~……ここまで太刀筋が極まっているとは……ブレイブ!」

 

「当然だ。俺は進化し続ける。世界で一番のドクターに、不可能はない」

 

〈キメワザ!〉

 

 ガシャコンソードに装填されるタドルクエスト。騎士の構えに呼応し、対極の属性が迸る。

 一瞬その居合に見惚れたカイデンは、脚部が凍結されるのを防げなかった。

 

〈タドルクリティカルフィニッシュ!〉

 

 放出した属性の勢いを埋めるかのように、もう片側のエネルギーが増大する。

 横薙ぎ。炎の一閃が、身動きの取れないカイデンを寸分違わず捉えた。

 

「…………見事なり」

 

 切り口から消滅していくカイデン。それを一瞥したブレイブはすぐさま二人と合流する。

 

「大我がステージを変えてくれてる。あたしたちも行くよ」

 

「賛成だ。直ぐに出発する」

 

 直ぐに息の合った二人を見て浮き立つパラドクス。一方で、この場にまだクロニクルのバグスターが出そろっていないことに気付いていた。

 

「まだアイツが……ラブリカが残ってるはずだ」

 

 やはり自分のゲーマーとしての勘は捨てたもんじゃない。

 持ち出したガシャットの感覚を確かめて、パラドクスは周囲に溢れている尖兵から倒すことをやんわりと提案するのだった。

 

 

 

 

          ●●●

 

 

 

 

 疾走する本能。

 モータスヴァイパーを駆り、教会の外の死角からガシャコンマグナムを撃ち続けるクロノス。しかし、先ほどから対象は指先一つ動かす素振りも見せない。

 

 ムテキとはいえ、仕留めにこないのは不自然だ。

 訝しみつつも姿勢を整えようとした間際、一弾が捉えなかったことに気付く。

 忽然と消えたゲムデウスムテキ。光速の不覚をとったことを悟ったクロノスの軌跡に気配が現れる。

 

「ぐっ──!」

 

 すぐさま射線上から脱出するゲムデウスクロノス。伴って重厚の爆音が響いた。見遣ると、ロボットアームがバイクごと野を蹂躙した惨状が目に入る。

 顧みず、すぐさまローブを翻して勇み足で突撃するクロノス。

 ムテキはデウスラッシャーを取り出し、剣豪の如き佇まいを模倣する。だが直後、突撃してくる対象に別な尖鋭を感じ取った。

 

「…………!」〈ガシャット!〉

 

 彼我の距離が十メートルに至ったとき、その予感は確信に変わる。クロノスの背後から、数十の得物が射出された。

 螺旋を描きながら迫りくるバンズ、パティ、トマト。すべて切り落とした頃、クロノスがセットしたガシャコンソードを天高く振り上げていた。

 逆袈裟に斬り払わんと構えなおすムテキ。その切っ先が足元に向いた瞬間、クロノスの腿裏から更なる子機が飛び出す。

 バーニアのジェットエンジン。その擦れが発生させた電磁風に剣を引っ張られたムテキは、打ち合いに後れを取ってしまう。

 

〈コ・チーン!〉〈キメワザ!〉

 

 頭上から振り下ろされた伝説の剣が、遂にムテキに直撃した。

 斬り込んだ軌道に沿って鎧が氷漬けになっていく。流れを渡すまいと直ぐに振り払い、背後に跳躍するムテキ。だが着地後、その視界が突如反転した。

 

〈キメワザ! クリティカルサクリファイス!〉

〈バンバンクリティカルフィニッシュ!〉

 

「おらぁあああ!」

 

 寸前、足元に見えたのはケチャップとマヨネーズ。ハンバーガーの具と共に奥まで発射されていたそれは、的確にムテキを滑らせた。

 瞬間移動の余裕も持たさず、クロノスが斬り放ったのは大光輪と無限軌道。その二振りは地平と水平で交わり、過剰な程にエネルギーを溜め込んでいく。

 大気を震わせ十字の具象と成った瞬間、それはさらに加速した。軋む履帯の喚叫が轟いた直後、確かにムテキはその噴流に飲み込まれていった。

 

 

 

          ●●●

 

 

 

「……、……やっぱり、そう長くは持たねえ」

 

 地平線まで向かう勢いで飛んで行ったムテキを尻目に、呼吸を整えるゲムデウスクロノス。装甲、マスターマインドガードによってこちらの受けるダメージは常に全回復するが肝心の中身が持たない。 

 

 舌打ちを零す大我の脳裏には、かつてムテキと共にこの鎧に向かって行った戦闘場面が巡っていた。

 互いに決定打は一切与えられない。この展開を冗長させた場合に起こる事態を憂慮し、眉を顰める。

 そんな疲労も露知らず、キャピキャピした気配があることに大我は気づいた。

 

「大我、お待たせ! 道中のヤツら全員ぶっ倒したよ!」

 

「それで、状況はどうなってる……あまり良好ではなさそうだな」

 

「俺の見立てだと、一人が抑えに回らないとどうにもならないぞ」

 

 駆け付けた仲間達の声を聴き、緊張が解れる。独りでは成し得ないことは、チームなら達成の先にでも行ける。

 問題は、目前に戻ってきたウイルスの反応も明らかに増えていることだろう。

 

「久しぶりだねぇ、素敵なアベックさんッ!」

 

「今回は謎解きゲームじゃないので、力業で押し通らせてもらいましょう~!」

 

 追加されたバグスターは、ラブリカと数字付きハテナバグスター。

 目配せた彼らは再び即座に散開した。今度は直ぐに合流すると誓って。

 

「お前ら、これ使え!」

 

 さらに伝説の勇者より、ライダー達は新たな得物を賜った。

 

〈ガシャコンブレイカー!〉「これは……二刀だろうと、オペを完了させて見せる」

 

〈ガシャコンパラブレイガン!〉「やっぱ慣れた武器は心が躍るな!」

 

〈………………〉「……ってちょっと! 私の分は!? 何ハブってんのよ!?」

 

「お前両手塞がってんだろ!」

 

 ……ラブリカに挑むのは旧友のパラドクスと因縁のブレイブ。しかし、彼らは恋愛ゲームに付き合う気など毛頭なかった。

 

「面白い組み合わせで僕も少し羨ましいけど、どう考えても寝返るのは無理なのでゲームに溺れてもらうよ! 出ておいで、僕のラブリー☆ガールズ──ってエエ!?」

 

 現れたと思えば一瞬で掻き消えた取り巻きバグスター。仰天して振り向くとそこには、ガンから煙をたたせるパラドクス。リプログラミングは既に終了していた。

 

「悪いなラブリカ、脅威になるなら眠っててくれ」

 

「さあ、これで完全切除だ!」

 

〈〈キメワザ!〉〉

 

「ええ、えちょ、待って! 待てないのかい、ブレイブ!? そういう男は小姫ちゃんに嫌われるよ!」

 

〈ドレミファタドルクリティカルフィニッシュ!〉

 

 狼狽えるラブリカに巻き付いていく五線譜型拘束。その口まで塞がれた目前で白き勇者が空に舞い、突いた。

 無慈悲にもその心髄に一筋、極光が差し込んだ。

 

「う、う、あぁあぁぁ…………何度だって、I miss you……」

 

「……悪いが、そう何度も俺と小姫の愛を他人に見せつけるつもりはない」

 

「ちょっと手伝ってよ二人とも! コイツ全然攻撃通んないんだけど!」

 

 ニコが担当していたのはハテナバグスター。

 パラドクスはニコに3と9の部位を同時に狙わないとダメージが入らないのだと、攻略法を共有した。

 

「ていうか、お前クロニクルのバグスターじゃないだろ。何で出てきてるんだよ」

 

「はっはっは。その謎を解くのがゲーマーの役割でしょう。では、力ずくで!」

 

「やっぱコイツ何もないって! ただの脳筋じゃん!」

 

〈キメワザ!〉

 

 何か引っかかるパラドクスを尻目に必殺のチャージを完了させるニコ。

 迫るハテナにブレイブの援護、輝く光矢が刺さる。たたらを踏んだところに爆撃が開始された。

 

〈ジェットクリティカルストライク!〉

 

「全部狙ってくるの!? ……ずるいけどせいか~い!!」

 

 放たれたのはガトリングの如き弾道ミサイル。同時に数字を狙うくらいなら、全部一気にぶっ飛ばせばいい。

 天才の名に似つかわしくない、スマートな暴力があっけなくゲームを終わらせた。

 

「大我ちゃんと貸してくれてんじゃ~ん。ほんっと素直じゃないんだから」

 

「──危ない!」

 

「え?」

 

 残身の直後、今までにない衝撃がニコとかばったブレイブを襲う。

 一体何が起こった。事態を確認しようと手をついた時、彼らは変身が解けてしまっていることに初めて気づく。

 

「──大我! しっかりして!」

 

 まず見えたのは今もなお邪心が揺るがないゲムデウスムテキ。

 もう一方はゲムデウスウイルスに侵され続けた花家大我だった。

 

「いや、問題ない。ここで終わらせる! ──パラドクス!」

 

「ああ! ドライバー返してもらうぜ、ニコ」

 

 あの邪心を砕くことしか、ムテキを止める手段はない。

 天国を謳う世界での最終決戦が、今始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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