Over Your World 作:Satellite WE'RE
どうしても、許せなかった。あんな奴がここにいていいわけがない。
「……まだ、だ! 私にはマキナの力が残ってるんだ!」
わかってる。俺に決める資格はない。
「やはり、CRはわからなかったようだ……このマスターガシャットは遺伝子技術によって見た目通りのカタチじゃない! 絶対に破壊など出来ない!」
でも、本当はそれよりも。
「この力が手に入ったのは天啓だ! 無駄には、しない! 天国は、必ず……!」
こんな自分がいてはいけなかった。
「私が永遠に、君臨し、楽園を―――!」
―――この楽園から、追放する。
……その野望は未だ途絶えず。ノアは前までの世界とは打って変わって、寂れた路地を彷徨っていた。
まだ、終わらない。これから、始まる。
それはさながら、錆び切った機械仕掛けの空回り。彼は既に人間どころか命ですらなくなりかけていた。
では、それを見て何も思わない者はいるのだろうか。
「久しぶりだな、ノア=ゴッドスピード。世界の外側からの力を濫用する愚か者」
「―――! お、ま、お前は!?」
それは、ありえない。
まして、自分と近しい卑怯な手段を使っていた。
本来、この世界で登場できる権利などなかっただろうに。
「そ、そうか! 今一度、私についてこい! お前がずっと望んでいた、楽園に導いて―――」
そこまで、だった。
声は、通らない。気圧された。
少なくとも、応じるつもりはないだろう。問題は、その心中は。
どうしようもなく、やるせなさだけが飛び交っていた。
「……、……」
やはり、一度芽生えた信仰は、絶えない。
でも、それは自分の見知ったカタチとはまた違って。
一番大きかったのは、その輝きの根源を知れた事だろう。
それで、ようやく。
この身を捧げることを決められた。
初めて出会った時には、捨てられたものだった。
それでも、このためなら再び。
「お前の言う楽園は、独り善がりなハリボテだ」
「そもそもその空虚は前提から間違ってる」
「……なに?」
仕方ないかもしれない。
自分も、知らなかった。
「楽園っていうのは、それが存在するとか、創ったから楽園なんじゃない―――輝く人を中心に成り立つんだ」
どうか、ゆるし……許さないでください。
その命を。
その心を。
その運命を。
……俺でも分かっている、知っている、変えていけると言ってくれた。
でも、違うことにする。
あなたが言うのだから、蓋しそうだと思う。
俺にも、その可能性が……変えられる運命があると。
―――赦してください。
生きる。この瞬間にすべてなげうって。
この死に体でも、心があるのなら。
どうか、振り切らせて。
……ごめんなさい。利用します。
あなたの変えてくれた運命に、俺を見送ってくれたことに背いたら……その背信は、きっと―――
―――悪意、だ。
〈エデンドライバー!〉
「―――な、に?」
線路を、進路を固定するためレバーを引き下ろす。則して、覚悟を承認した音響が連続する。
「……創ろうとするまでもなく、この世界は楽園だった。俺は、声高に叫ぼう。そんな輝かしい世界に、踏み入っていいわけがないと」
ああ、何度目の命なんだろう。
アバターに命を感じず、無駄にし続けた時点で許されないのに。
ああ、何と因果なものだろう。
この世界のゲームが、ここまで
ああ、何で俺なのだろう。
どうして俺は、あの輝きに出会えたのだろう。
〈――ルシファー!〉
そんなことになれば、わかっていた。この瞬間を持って、命の限りを放つというのに。
「…………変身!」
〈プログライズ! ……アーク!〉
〈The creator who charges foward beliveing in paradise.〉
〈"OVER THE EDEN."〉
楽園追放を告げる、終末のカウントダウン。
お前はこの世界の命ではないだろうと、戒めるかのような温度無き骨組み。
その罪を。他でもない自分の手で告白するために。
――その
♰♰♰♰♰♰♰♰♰
今もなお、俺は世界に怒りを抱いてしまっている。
そんな自分が……先生が変えてくれたのに。嫌になる。
でも、今はそれくらいがちょうどいい。そうでもないと、がむしゃらにやってやれない。
〈サウザンドジャッカー!〉
「お、お前は―――!」
不意の振り上げを回避してくるノア・マキナ。
……やはり、腐ってもナノマシンとウイルスの複合体なだけはある。例のマスターガシャットとやらも、それを利用しているようだ。
「お前は、仮面ライダー―――!?」
こちらの思惑を漸く澄み取ったらしい。だが、もう遅い。
〈ヒット! クラウディングエナジー!〉
大剣はブラフ。振り下ろした勢いを殺さぬまま、短剣をアンダースローした。
真っ直ぐにガラクタの胸に突き刺さり、効能が発揮される。
「……そうだ。この限りは!」
「なんだ! この、気味悪い煙は!?―――こ、マスターガシャットが!?」
差し込まれた切っ先から、噴出する死の濃霧。凝縮されたナノマシンが奴の身体に溶け込んでいく。
それは悪意のままに心髄を犯し尽くし、心臓部のマスターガシャットを完全にスクラップにした。
「き、サマはあぁあああ!? 何ということを! ……選ばれたというのに! 何故その権利を無碍にする!」
「……もう、いい。お前も…………俺もな」
大剣を地に突き刺し、生身のまま突っ込んでいく。
直後、拳の応酬が始まった。叡智の、夢のカタチがひしゃげていく。何度も、何度も。奴の心臓を捉え続ける。
「ぬ、うお、おおおお……!」
「じゃ、まするなあああ!」
馬乗りの体勢になって尚、抵抗を続けてくるノア。
それは死とともにその時が、硬度が止まったルシファーの外骨格には響かない。
しかし、身体が。限界値を超えているのは俺の、俺自身の体だった。
「―――グ、ぎいっぎ、ュらrrrrrrあrあアアrァアアァ!?」
言葉に届かない、悲鳴がこみ上げる。
この身はナノマシンとはまた違った、限りなくヒトのもの。命無きアバターとはわけが違った。無数の悪意が、身体を壊していく。
腕が、ベクトルを無視してうねる。
脚が、神経を嘲笑ってひん曲がる。
それでも纏った死装飾が、強制的に躯体を維持し続ける。
まるですべてぶつけるまでは逃がさないぞと、宣告しているかのように。
「あ、ぁああ! 私の、コアがアあ!?」
「ひィ、ひっ、ひひrい……と、っ取ったアぁあああ……ァァァァァぁ……!」
殴って、裂いて、潰して、掻いて。
ゴミ山を荒らし続けて、ようやく得物を取り戻した。奴のコアを傷つけた剣からキーを引っこ抜く。
しかし骨の髄から砕けていく感覚に侵され、そのままたたらを踏む事すら出来ずに後方に投げ出された。
「う、ああ、アアアアアァァアアァァ―――!」
「この、お前は、なぜそこまで」
ふと、気付いた。
俺たちの慟哭を裂くかのように、ボトボトと雨が降っている。
いつもなら、傘と擦れて響く雑音にいちいち不快になるのだが。
今はどうにも、運命の岐路を用意されたようにしか思えない。
〈Progrise key confirmed.Ready to break.〉
「フッ、ひィ、は……はあ」
転がった先の杖。
突き刺したジャッカーを支えに立ち上がり、戻ったキーを装填する。
「なんで、なんでだ!」
「…………もちろん、楽園の為さ……」
〈Thousand rise!〉
……いよいよ走馬灯が走ったのか。この世界で目覚めた時から今に至るまでの記憶がほとばしる。
ただ、その中で感じ取れたのは。
輝き続けるあの人に決まっていた。
「わかったのさ、俺でも。楽園は、心を抱いて生きようとする者の前に顕れる」
〈THOUSAND BREAK!〉
杖替わりにしていたのを、力任せにぶん投げる。
もう、ここからは自分の脚で。
投擲物は寸分違わず奴を捉え、ナノマシンをまき散らしながら再び心臓を抉る。それはそのまま溶け出し、纏わりついていく。
……もはや、アレすらも醜い心の残滓なのだ。
「ブッ、ああああああああああ!」
「そして最も輝く者が居てこそ、その人がいるからこそ―――その人が笑う世界が、楽園だったんだ」
ドライバーを、最後のキーを押し込む。世界を越える門の扉を、開いた。突き刺さる雨が霧消していく。
掌に、足裏に、飛び立つ為の骨流が渦巻いていく。そして、それは背側に励起していった。
……不思議なものだ。骨粉が巻き上がったはずなのに、ソレは真っ白に染まっていって。
やがて、この身に相応しくない翼へと成った。
…………ありがとう、先生。
許さないでほしい。赦されなくていい。
楽園はもう、観た。
あれは、あれだけは……消えてはならない。
私は、ここに居てはいけない。あの楽園を、俺が守れるのなら。
―――全力でこの命を駆け抜けよう。
〈パラダイスインパクト!〉
その翼のはためきのままに、この身は空へと還っていく。
然れど、この身は罪過にまみれるが全て。一直線に脚から地上へ堕ちていく。
もはや、身体の軋みすら掻き消え。きっと、遍く命すら失せ。
曇天だったはずの空から、一筋の光、進路が指され。
やがて、その心すらも―――いや、唯一それだけは。
間もなく、私達は――
―――楽園から、追放された。
……そうしてその路地から、その世界から。
本来有り得ざるナノマシンは完全に痕跡を絶った。
やがて、空も元の青きを取り戻していく。
後に、残るのは、白いたった一枚の。
―――罪と心を背負って旅立った者の、生き抜いた証だった。
――ここまでご観賞下さり、本当にありがとうございました。
誰かが見守って下さることにより、世界は強度を、存在感を増していくのです。
たくさんの奇跡がこの物語で起こったと思います。
しかし、この世界に下される◼◼を伝えられるまでは――
番場アドル
・番場
→輓馬
=車を引かせる馬。案内だけで楽園の居住権などない。
・アドル
=「正義」「公平」「誠実」
・番場アドル
→バアル、アバドン
→ベル
その他
・エグゼイド世界のシンクネット幹部がその欲望を見込まれ、各層のエリアボスに就任するという因果な事態になった
・ノア=ゴッドスピードは本来このゲームを発売するに至らない。ナノマシン技術を利用出来ず、リプログラミングを提供されないからだ。
・残る干渉対象……仮面ライダーは、ただ一人。
……目覚めた時、彼の元にあったのは仮初の身分証明道具だけではなかった。その身をその世界に設置した何者かにより、エデンドライバーをも授けられていたのだ。
紆余曲折あってゲーム病に感染した彼は、永夢に遭遇する寸前にそれを草むらに投げ出してしまっていた。
それまでにその力を使用しなかったのは、意味不明な環境に設置されたことと一度逮捕された事が大きいだろう。
そして宝生永夢と出会った後の顛末は、ご存じの通りである。
彼はその命を心のままに、確かに生き抜いたのだ。
―――『P.S. 紡がれしソレが始まり』解放予定。