Over Your World 作:Satellite WE'RE
記録に手違いがあり、マイティブラザーズXXが使用できないとの表記でしたが、設定上使用可能でした。現在エグゼイドが使用不可能なのはVRXとハイパームテキのみです。この世界に目を通してくださるすべての方々の混乱を招く事態に発展しかねなかったことを、心よりお詫び申し上げます。
大我さんが魁役になり、僕達は少しずつだが学校エリアを進んでいた。
そもそも、元々ここは伝統的な寺子屋と日本の中学校が合わさったような独特な雰囲気を醸し出すエリアだったはずだ。そして、勉強や運動を主とした学校から解き放たれ、一つのアスレチック的ステージとして楽しむことが出来るのがポイントだ。普通の学校の中でその場のアイテムを使いながら、一つのステージとして駆け回る。
まるで僕が昔、学校を一つのゲームエリアとして、色んなキャラを動かすことを想像したときみたいだ。
現実では絶対叶わない、一学校をゲームエリアにして尚且つ、VRにより現実を超えたリアルさで活動できる。
まさしく、リアルな日常の中で成り立っている非日常。『Over Your World』はあなたの日常を超える、という意味なのかもしれない。
しかし、今僕達の目に映る光景は事前情報と比べて異常……というより飾り気がなさすぎる。
おそらく、VRXの力によって、このエリアを元の構造から改変していってるんだと思うんだけど……結果ずっと廊下と教室が続いている無限ループみたいな構造に変わっている。
そして、本来セーブポイントとなっている教室にはエネミーたちが立て籠っていたり、そもそもドアにバリケードが張られていて入れなかったりした。ついでに前の教室で一瞬見られた時間割では、数Bや数2と記されていた気がする。
……つまり、何故か設定が中学から高校に改変されたということになる。
「エグゼイド、そろそろ変身しとけ。もう、今は妨害してこないことはわかったろ」
「! 大我さん、まさか最初から変身してたのは安全を確かめるため……身を挺してまで、ありがとうございます」
「勘違いすんな。いきなりレベル99になったお前に異常が起きたら困ると思っただけだ。それより、次の教室は入れそうだぞ」
「ボクは誘われてるような気もします。どうしますか、永夢先生」
たまにロッカーや教室から飛び出てくるエネミーを撃退してもらいながら進んでいると、他とは違う教室が目に入ってきた。
他の教室は生徒エネミーのバリケードで入れなかったり、攻撃してきたり、変な態度を取られた。まるで不審者が来たときの対応だ。しかしこの教室は明らかに他と比べて普通。逆に異様な光景と言えるのだ。
「いや、新しい情報が必要だ。それに僕の読み通りなら……大我さん。番場くんの護衛、頼みます」
確かに番場くんの言う通り罠かもしれないが、とにかく情報が欲しい。
VRXの力による改変の実験としてこのエリアを使うのは納得できる。しかし、書き換え方が意味不明だ。せっかくのよく出来たグラフィックを、平たんなただの教室に変えるなんて。残念だとしか言えない。
〈マキシマムマイティX!〉
スターターを起動して、俺が覚醒する。同時に最大級なマキシマムゲーマが現れた。
そろそろ考察は終わりだ。この中に潜んでるであろう
〈マキシマ~ムパワ~、エーックス!!〉
マキシマムゲーマに乗り込み、レベル99への変身を完了する。……ムテキが使えない理由が分からないのは大分ヤバいが、今は後回しだ。
俺はガシャコンキースラッシャーを構え、堂々と教室のドアを開けた。
********
エグゼイドに続き、番場を守りながらも教室に入ろうとしたときだった。
「来たなッ! 極悪非道なテロリストめッ! この娘たちはやらせない! ここでオレ様が倒してやる!」
中から熱気を伴ってると錯覚するような大声が聞こえてきた。マキシマムのボディが邪魔で中が見えねえ。
とにかくボスはいたのか。随分凶暴なヤロウみたいだ。
「は? 何言ってんだお前。とにかく、知ってることを言え! バグスター!」
「そっちこそ何言ってんだ。俺はここのボスを任された、選ばれたプレイヤーなんだよ!」
「何!? プ、プレイヤー?」
「そういえば、ここにくるまで結局プレイヤー見ませんでしたね。……まさか、こんな風に洗脳されてたなんて」
「おい、小声で言ったつもりだな、つもりだろ、聞こえてんぞ! 俺はいたって正常だ! じゃなきゃ、このエリアをこんな素晴らしい世界観に塗り替えられないからな!」
「てめえ、いちいちうるせえんだよ! てか、こんな惨状にしたのもてめえかよ……」
まさか、バリケードだとかテロだとか守るだとか、全部コイツが自分の妄想で作り替えたエリアだったからなのか……
「だったら何でプレイヤーがこんなセンスないことしてんだ! お前たちは運営とどう関係してるんだ!」
「あぁん? なぁにイキった口聞いてんだ!」
「え?」
瞬間、エグゼイドが吹き飛んできた。
俺は咄嗟に番場を抱えて横に回避。しかし、マキシマムゲーマが廊下の壁を突き抜けて、オブジェクト設定がされてないデータの海に飛んで行ってしまった。
なんだ、何をした。どうしてあの巨体が、こうも簡単にやられたんだ。
エグゼイドも同じ心情なのか、飛ばしてきた相手に釘付けだ。俺もさっきは見えなかったボスの姿を漸く拝むことができた。
その身体はまさにゴリラ。バグスターの反応があるが、人型。モヒカンを強引に横に流した暴走族みたいな学ラン姿で、傲岸不遜にこれでもかと筋肉を見せつけてくる。……なんか見せ方がボディビルとかと違ってヘタクソだな。
教室の中には自分で設定したと思われる少女体のエネミーが何体か居た。いよいよ三流小説の出来損ないみたいな光景だ。
「はぁ~? んなのきまってんだろ。俺が、俺の望むままに世界をつくる! 運営に選ばれた特別な存在である俺たちだけが持つ特権! そんな素晴らしい世界を誰が手放すってんだ! 口を慎め!」
やっぱり出てくる言葉は無茶苦茶だ。今のままじゃ碌に会話もできないだろう。ここはショック療法でそのふざけた幻想からたたき起こしてやる。
「マジで何言ってんだ! それに何でマキシマムが押し返されたんだ!?」
「まぁぁだ解んねえのか!? オ、レ、の、支配する世界で、俺が負けるわけないだろ。そう、ムテキモードなんだよ!」
「なッ、チートかよ!」
俺たちはすぐに地面を蹴り、踵を返す。どこまでがあの筋肉ダルマの管轄かわからねえが相手の土俵では戦えない。
素早くその場を後にして、別の教室に転がり込む。意外とあっさり撒くことが出来た――と思った次の瞬間だった。
「なんだ、横から振動!?」
「うわあ! 膨張して、向かってくる……!」
「逃~がさねえ! オレ様の筋肉でこねくりぶん回してやるぜ!」
なんと筋肉ヤロウが上半身を伸ばし、さらには肥大化させて廊下を張ってきていた。これじゃ筋肉じゃなくて風船だ。気味の悪さには目を伏せ、俺は対抗策を考える。
いつもエグゼイドの機転ばかり当てにしてるのは癪だ。記憶を辿り、使えるものを考察し、想到した。
「エグゼイド! 俺が時間を稼ぐ。お前はデバッグモードでマキシマムが効くようエリアを調整しろ!」
「おい待て、スナイプ! ……デバッグモードって、あのデバッグか?」
「さっさと行け! ――チーム医療だろ、俺を信じろ!」
「――! ……ああ、もちろんノったぜ、スナイプ!」
「…………頼んだぞ」
俺の戦略を汲み取ったであろうエグゼイドはさらに後退して、教室に飛び込んでいった。……ここは俺の正念場だ。
「あん? 何駄弁ってんでゃ……いてっ、いた、痛ぇっん、痛えんだよ! グミ撃ちのくせに!」
「グミダルマなのはてめえだろ!」
巨体に押されないよう、重点的に滑り迫る部位を狙い撃つ。どうやらノックバックはするようだ。ガタイの割に強靭じゃないみてえだな。……怯むだけでも十分だ。
「アドル、隠れてろ。…………ホントにデバッグモードが搭載されてたなんてな」
どうやらエグゼイドはモード移行を完了させたようだ。
俺は知っていた。レベル1と2にはデバッグモード機能が搭載されていることを。
昔、ゲンムの六つ目のゲーマドライバーをポッピーピポパポが回収してきたとき、説明書が同梱されていた。その時載っていたドライバーの機能を何とか思い出したのだ。
そんな作戦もつゆ知らず、襲いかかってくる筋肉グミ野郎にガシャコンマグナムを撃ち続ける。が、バネみたいに身体を縮めだした。
恐らく一気に突っ込んでくるつもりだ。勿論、こっちにも対抗策はあるがな。
〈キメワザ! バンバンクリティカルフィニッシュ!〉
身体の進む面積を増やしたきた筋肉を具現化した戦車で押し返す。さらに、必殺の砲撃が天井を突き破って迫る顔面に直撃する。
……ダメージねえ癖に参ってきてるみてえだ。ハリボテなのは助かるが、こっちも危うい。
俺たちのデバッグ機能では、展開したゲームエリアの調整が可能だ。それを展開した状態で『ライダーがゲームに介入するゲーム』を利用すれば相手のエリアを改ざんできるかもしれない。
要するに、ダメージが通るようになるかもしれないが、運ゲーだ。それでも、運命を変えるエグゼイドなら……
「てめえ、いい加減にしろ! もっとかっこよくたたかわせろや!」
「うるせえ見せ筋ヤロウ! これでも食らってろ!」
〈キメワザ! バンバンクリティカルストライク!〉
振り下ろしてくる拳を帯電させたマントを滑らせて回避する。突然のヘビの如き動きに面食らうヤツを尻目に飛び上がり、強烈な蹴撃を果たす。
なんとか怯ませたが、ヤツの勢いは止まった訳じゃない。
「ゥウ~、こんのヤロウ! ちょこまかと蜚蠊みたいに! ……だぁが、ここまでだ。結局、ダメージ通せないお前らテロリストに、負けるわけがないんだよ!!」
「……ここまでなのはてめえだ、見せ筋ヤロウ」
そういって俺は後ろ背後に指を指す。どうやらやりやがったようだ。
俺は選手交代の意思を込めて教室に飛び戻った。
********
「……待たせたな。ここからは、この天才ゲーマーMが、ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」
「何をしても無駄だ! 俺が夢見た学生生活は誰にも邪魔させねえ!」
スナイプが稼いでくれた時間、無駄にはしない!
俺はドライバーからキースラッシャーにマキシマムマイティXを挿し替える。狙うのはヤツの心臓部。必殺の波動を纏う銃口に悪寒を覚えたのか、膨れた腕と顔面でプレスしてくるがもう遅い。
〈マキシマムマイティクリティカルフィニッシュ!〉
放たれる消滅の光線。煌めく軌跡で一直線にヤツの中心を貫き、吹っ飛ばした。もうアイツになすすべはない。
「オレ様はサンドバッグじゃねぇんだぞ! そろそろおとなしk、な、なんだ!?」
「お前のゲームはリプログラミングした。ムテキモードもスナイプの裏ワザで消させてもらったぜ。よーく効いただろ? ……さあ、知ってることを話してもらおうか」
「そんなっ、え? ひっ、マジじゃん! イヤだ! カラダが~~ッ!?」
リプログラミングによってヤツを構成する筋肉が穴の開いた風船のようにしぼんで、消えていく。そして残ったのは……ガリっガリの男だな。
どうやら随分と盛ってたらしい。逆に言えば、どんな改変もお手の物って事なのか。
「そんなぁ……ヒッ、こわ、怖いですよ! 睨まないでッ!? 話すからッ全部!」
「はあ、とにかく何でお前が改変出来たのかとか、先行プレイヤーはどうなってるんだとか……あっ、おい、逃げんな!」
「なんて、やっぱ無理無理ムリムリ! なんでこんな目に合わなきゃンだよ! オレは選ばれたはずなのに!!」
ものすごいスピードでヤツが逃げていく。しまった、先んじた。
俺はすぐに廊下を走って追いかける。が、床が滑って上手く進めない。おまけに何故か作られていた大量の個室トイレに籠られた。なんだこのいやらしいジャマーは!
どうやらステージまではリプログラミングされてないようだ。管轄は別なのかもしれないな。
何とか到着し、すぐさま乱暴に個室のドアを開いていく。
「おいっ、いい加減あきらめろ!」
「――――やめてぇぇぇえぇーーー…………」
「ど、どうした!? 大丈夫か? ――なっ、巨大化した!?」
断末魔のような慟哭が耳をつんざく。同時に、トイレに逃げたはずのエリアボスはさっきと比べ物にならないくらい、歪に膨張した。
それは個室を突き破り、俺は外に押し出されてしまう。さらに、倒壊するように巨体がなだれ込んで来た。
――もう、躊躇してられるか!
〈キメワザ! マイティクリティカルストライク!〉
「とにかく、フィニッシュは必殺技できまりだ!」
咄嗟にキメワザスロットホルダーにマイティアクションXを装填。一気に跳躍し、連続キックを叩きこむ。HIT!が大量に表示され、俺は勝利を確信する。今度は完全に鎮圧できたみたいだ。
「なんとかなったか、エグゼイド。――おいっ、ヤロウはどこ行った?」
「え、なんで!? 確かにウイルスの反応は消えたのに! …………まさか、消滅した?」
「違う、落ち着け。確かにバグスターの反応は消えたが、ここはゲームだ。ログアウトでもないし、今まで見てきた反応でもねえ。消滅じゃなくて、文字通り
「え、は、はい。ゴッドスピードは先行プレイヤーを貴重なものとしてるようですし……回収したのだと、思います」
相手を倒した瞬間よぎった、俺の最悪な予想は杞憂らしい。スナイプと何か考え込んでたアドルのつぶやきに救われた。
俺は変身解除し、僕に戻った。
「ありがとうございます、二人とも。でも、ゲームクリアにはならなかった……少し休憩したら、先へ進みましょう。そこにいきなり現れた、明らかに怪しいゲートを通って」
「! ……確かに、次に行くんならあそこを通るしかねえのか。あのニセ筋ヤロウ、好き勝手しやがって」
僕が示したのはやたらキュートにリボンで装飾されたゲート。いつの間にか現れたものだ……
ここのエリアボスが改変したせいで、次のエリアに進める正規ルートが消えている。危険だが、ここは誘いに乗るしかないだろう。
僕は番場くんを見遣った。少し難色を示した顔になっている。無理もない、やはり不安なんだろう。
――絶対に誰もゲームオーバーにさせない。
僕は気を引き締め、これから迫る脅威に屈しないよう覚悟を再確認した。