ワールドトリガー x ウルトラマンZ 作:全て儚き名も無き遠い理想郷
根付さんや鬼怒田さんもアンチってわけじゃないです。
お二人は原作でも少し嫌味な部分はあるんで仕方ないってことで。
多分、ボーダー隊員はアンチにならないです。
それではどうぞ。
「おかえり夏樹君。被害の方は?」
「怪我した学生が一人だけで死者重傷者共になし。巻き込まれた学生は本部の方で預かるとのことだ」
「了解。お疲れ様」
「ああ」
帰還した夏樹は明日奈に報告を済ませるとトリオン体を解除して作戦室に備えてあるソファに腰掛けると、先に休憩していた暁から話しかけられた。
「災難だったな。戻ってすぐに任務とは」
「仕方ないさ。相手がこっちの都合を考えてくれるわけじゃないからな」
「ま、そりゃそうだ」
暁の言う通り、夏樹が本部から戻ってきた直後に出撃の要請が入った。
セブンガーの専属パイロットは夏樹のため、休憩する間もなく出撃したわけだった。
「別に疲れてたんなら俺か一夏が変わってもよかったんだぞ?」
「一応は俺がセブンガーのパイロットだからな。疲れたからって任務を放棄するわけにはいかないよ」
「そうか。一夏と詩乃は先に部屋に戻った。お前も上がれよ。今日の当直は俺だからな」
「ああ、そうするよ。後は頼んだ」
そう言って夏樹は作戦室を後にする。
ストレイジに所属するボーダー隊員は二つの部隊に分けられる。
一つは夏樹や暁のように作戦行動を行う作戦部隊。
もう一つは特空機の整備や補給、ストレイジ本部の管理を主に行う整備部隊。
作戦部隊は夏樹、一夏、詩乃、暁、明日奈と隊長兼支部長を含めた六人、整備班は整備長をはじめとする六十人ほどの人数で構成されている。
ストレイジ本部には隊員寮と呼ばれる社員寮のような住まいがあり、ストレイジに所属している隊員の大半が利用しており、作戦部隊の六人は緊急の出動に備えて隊員寮に住むことが義務付けられている。
「結城さんも部屋に戻ったら?」
「ううん。まだやることがあるから」
「なら、少しの間だけお願いできる?コンビニ行ってくるから」
「うん」
そう言って暁は作戦室を後にする。
ストレイジ本部の近くにはコンビニがあり、ストレイジに所属している隊員の殆どが利用している。
作戦部隊の六人は一日交替で緊急の任務や呼び出しに備えて作戦室で当直をすることになっており、それに備えて夜食を買いに行くことが多い。
暁が作戦室を後にしてから明日奈は机の引き出しから一枚の写真を取り出す。
「みんな…」
そこに映っていたのは
満面の笑みで夏樹と肩を組む長身の男性。
長身の男性と肩を組みピースをしている夏樹。
笑顔でピースをする部隊の隊長を務めていたショートカットの女性。
ショートカットの女性の隣で同じように笑顔でピースをする女性。
夏樹の横で小さくピースをする
楽しかった。
休みの日には五人で食事や買い物に行くことも何回かあって、ランク戦の時には作戦を出し合って、勝ったら全員で喜んで、負けても改善策を出し合って、勝っても負けても頑張った記念として隊長のおごりで食事に出かけたりした。
ずっとではなくても、長く続くと思っていた。
だが、それは唐突に終わりを迎えた。
未だに思い出すのは
防衛任務があった。
けれど、自分は実家に呼ばれていたから参加できなかった。
空いていたオペレーターの人に代理を頼んで三門市外にある実家に顔を出しに行った。
帰りの車の中で信じられない凶報が入った。
急いで戻った。
けれど、自分を待っていたのは夏樹一人だけだった。
今でも、覚えている。
自分を待っていた夏樹の顔を。
「…私は」
まるで何かに懺悔するように明日奈は声をこぼした。
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深夜、三門市。
「キエテ、カレカレータってね」
夜空の下、胸元を大きく開けたドレスを着た赤髪の女性がニヤリと笑みを浮かべる。
それは優雅さを感じさせるものではなく、ときめくような微笑みでもなく、狂気を感じさせるものだった。
「さぁ、ゲーム開始だ。あたしを飽きさせないように精一杯踊ってくれよ?キハハハハハハハハハハハ!!」
女の狂った笑い声は夜の三門市に響いたが、それを聞いている者は幸か不幸か誰一人としていなかった。
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ー君塚暁sideー
次の日、夏樹が本部から呼び出しを受けた。
夏樹が本部から呼び出しを受けるのはストレイジの活動報告と昨日の定期観察ぐらいで、それ以外で呼び出しを受けるのは忍田本部長からのお呼び出ししかない。
だが、今回のお呼び出しは城戸司令からであり、加えるならば今回は俺も夏樹に同行しろとのことだった。
「一体、何の用だろうな」
「俺だけじゃなくて暁も一緒に呼んだことから考えて重要なことだろうな」
「ま、そうでなきゃサブリーダー的ポジションの俺が呼ぶ必要ないしな」
俺たち作戦部隊は一応役職が決まっており、夏樹がリーダーで俺がサブリーダーとなっている。
リーダーやサブリーダーといってもボーダー本部に呼ばれる代表者というだけだ。
夏樹は本部に何かと呼ばれる機会が多いから半ば本部からの指名的な感じで隊長になり、俺は残るメンバーの中から消去法で決まった。
「失礼します」
二人で会議室に入るといつものメンバーがお揃いだった。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
「今から幾つかする質問に答えてもらいたい」
「はい」
「君塚くん、君も答えてくれ」
「はい」
城戸司令はまず最初に夏樹に対して質問を始めた。
「昨日、三輪隊が現着した現場にセブンガーで出撃したのは事実かね?」
「はい」
「君塚くんは?」
「自分は春川の通信と報告で確認しています」
昨日の出撃は三輪隊が現着した現場の一回限りだけだから間違いない。
「三輪隊の報告で三輪隊が現場に到着する前に大型|近界民(ネイバー)が撃破されていた」
「…お言葉ですが、三輪隊の前に先着した部隊が撃破しただけなのでは?」
「そんなことは言われんでもわかっとる」
「聞きたいのはストレイジが先着して三輪隊が到着する前に撃破したのかどうかです」
鬼怒田さんが俺の質問にめんどくさそうに返した後に根付さんが質問する。
思ったことを聞いただけでこれかよ。
それに対して夏樹は決まりきった回答を返す。
「ストレイジが現着したのは三輪隊が到着してからです」
「信じられないならセブンガーのログを整備部隊に頼んで提出させましょうか?」
夏樹に続いて俺も返答する。
セブンガーは確かに頑張ればトリオン兵を倒せるが、三輪隊から送られてきた報告書に記載されていたような粉々にするまでの事は出来ない。そんなことは百も承知のはずだ。
何なら以前、セブンガーが災害救助以外で役立つところを見せろとうるさかった団体を黙らせるためにトリオン兵を撃破させられた。整備班が口をそろえて文句を垂れていたからよく覚えている。
「なら、トリガーを用いたのでは?特に春川元隊員は過去に…」
「ストレイジには護身用のトリガーしかないだろうが。嫌味を言いたいだけなら帰るぞ。俺たちは俺たちで忙しいんだよ。あんたらはそこに座って出された紙見てるだけでいいんだからな、羨ましい限りだぜ」
「き、貴様!自分が何を言ってるのか理解しているのか!」
「トリガーにつぎ込む予算を食うだけ食ってよくそんな口を叩ける。処分されたいのか?」
「上等だ。やってみせ…」
「暁!失礼だぞ!」
思わず口を悪くしてしまった俺に夏樹が怒りながら口を塞ぐ。
俺の口を抑えたまま城戸司令に頭を下げながら夏樹が言う。
「申し訳ありません。私からも厳しく言っておきますので。後程、自分だけでここに来ます。その際、質問に答えさせていただきます」
「…そうか。準備が出来たらまた来てくれ」
「はい。大変失礼しました。ほら行くぞ、暁」
夏樹に引っ張られるようにして俺は会議室を後にした。
会議室を出てから夏樹にため息を吐きながら口を開く。
「鬼怒田さんと根付さんに失礼だ。お二人の事をよく思わないのはわかるけど、お二人ともボーダーに貢献されているんだから」
「我慢できなかったんだよ。貢献してるからって何言ってもいいわけじゃないだろ。それにあの人らはお前が真面目で俺や一夏みたいに食いつかないし反論もしないのをわかってて言ってるからむかつくんだよ」
上層部、特に鬼怒田さんと根付さんは夏樹が反論できない立場にあるのをいいことにこれでもかと言ってくる。トリガーの事とか広報の事でボーダーに貢献しているのは理解しているし、凄いと思う。
だが、そうであっても、何を言っても許される立場ではないだろう。
セブンガーの件で迷惑を掛けているのは知っているが、だからってあんなにあからさまに八つ当たりすることはないだろう。それに開発の段階で二人とも了解を出しているのだから、言ったことには責任を持ってもらいたいものだ。
「後は俺が何とかしとくから先に戻っててくれ。他の部隊と出くわしても余計なことするなよ?」
「わかったよ。納得はいかないけどな」
そう言って俺は踵を返し、夏樹は会議室に戻っていった。
夏樹はストレイジと本部の間でよくやっていると思う。本当に。
過去、俺以外で上層部に呼ばれたのは一夏だ。一夏は俺のように役職で呼ばれたわけでは無く、あいつに関連する事情からだが今は置いておこう。一夏も俺と同じように食って掛かったが、俺と違って終いには中指を立てようとしたらしくそのことで出禁を食らっている。
あの二人も夏樹が頭を下げるから渋々だが許しているのだと前に隊長が言っていた。
「…大人になれってか?」
高校にこそ通っていないが俺はまだ17歳。世間一般でいえば高校生活の中で馬鹿やって怒られてを繰り返しながら大人になっていくんだろうが、俺のようなやつは早めに大人になった方がいいのかもしれない。
そんな関係ないことを考えながら歩いていると珍しい人を見かけた。
(あの人って、確か…)
夏樹ほど目がいいわけではないが、覚えている人の事は遠目からでもわかるものだ。
(鳩原さん…?)
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ー唐沢克己sideー
君塚くんを連れて会議室を出てから程なくして春川くんは戻ってきた。
戻ってきた春川くんは根付室長と鬼怒田室長に深々と頭を下げてから城戸司令の方を向いた。
「先ほどは失礼いたしました」
「いや、構わない。先ほどの件だがストレイジは関与していないということで間違いなかったな?」
「はい。間違いありません」
「では聞こう春川くん。君は今回の一件、どう考える?」
城戸司令の質問に春川くんはしばらく悩んだ後、再び口を開いた。
「考えられるのは君塚が言ったように三輪隊の前に到着した隊が撃破していたか、撃破したどこかの隊が報告を怠ったかでしょうか。それかもしくは、こちらが認知していない
「ふむ。我々が認知していない
「断定はできませんが、そのように自分は考えました。ここ最近、警戒区域外にイレギュラーな
目の付け所がいい。流石は
「イレギュラー
「断定はできませんが、そのように自分は考えています」
「…そうか」
目下の問題はイレギュラー
ボーダー本部の誘導装置を使って基地周辺の警戒区域に門《ゲート》を誘導しているため、警戒区域外に
現状は根付室長の働きや隊員たちの働きで反感を抑えることができているが、具体的な対策がないのもまた事実だ。被害の方も死者が出ていないのが幸いと言えるが、この調子だとそうも言ってられない。
(正直、ストレイジへの風当たりは強くなっているからな)
市民からの評価が悪いのは前からだったが、イレギュラー
理由としては理不尽極まりないものだが、不安で押しつぶれそうなのを何とか堪えている姿の裏返しなのだ。
(相変わらず、真っ直ぐな目をしている)
仲間殺しと呼ばれる前から変わらない目だと彼がこの場に来るたびに思う。
いろんなことがあったにも関わらず未だにその目は曇っていない。
彼を知る隊員から好かれるのも理解できる。
「ご苦労だった。下がってくれて構わない」
「はい。失礼します」
城戸司令に一礼すると春川くんは会議室を後にした。
彼と入れ違いになる形で迅悠一が入ってきた。
しかし、彼の表情はいつもの飄々としたものとは違い、真剣そのものだった。
「城戸さん、少しいい?」
「迅か。何の用だ」
「今日、ものすごくヤバイことが起きる。それに備えてできるだけの隊員を基地に待機させておいてほしい。三門市外にいたりするのは難しいけど、学校に行ってる面子はできるだけ全員」
「…読めないな。お前が何の脈絡もなく要求をしてくるとはな。何が起きる?」
それはこの場にいる誰もが思ったことだろう。
迅悠一。ボーダーに二人いるS級隊員の一人。
その彼がこれほどの要求をしてきたのには何かあることの表れだと感じた城戸司令が尋ねた。
「正体不明の
「迅、冗談はよせ。子供の絵空事を聞く時間などない」
「城戸さん、冗談だと思うかもしれないけど
「…最悪の未来は?」
「一般市民が数えきれないほどに死ぬ。根付さんの味付けでも上手くできないくらいの相当のヤバイ数。それでもって本部が落とされる」
迅くんの視えた未来を聞き、この場にいた全員に緊張が走る。
忍田本部長が立ち上がり「最善の未来は!?」と聞いた。
それに対して迅くんは表情を変えずに言った。
「夏樹が死ぬ」
その言葉に城戸司令の目が一瞬、開く。
最善の未来ですら死亡者が出る。
特に彼の犠牲は城戸司令にとって大きなものだ。
顔の傷を指でなぞりながら「どうすればいい」と聞く。
「今すぐ集められるだけの正隊員を集めて一般市民を避難を開始させて。事が起きてから動いてたんじゃ絶対に間に合わない。最悪、天羽を出すことも視野に入れた方がいい」
「!それほどの事態か」
天羽、本名を天羽月彦。迅悠一と同じS級隊員。
単純な実力では迅くんを上回るとされているが、「人間離れしている」と評される苛烈な戦いぶりと普段の素行の悪さから市民への影響を考え、彼を出すかどうかは慎重に扱う事が徹底されている。
彼を出さなければならない状況、それは大規模侵攻レベルの状況がやって来ると言っても過言じゃない。
そして彼は我々の意思を決定づける一言を放った。
「俺のサイドエフェクトがそう言ってる」
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ー春川夏樹sideー
本部から戻ってすぐ出撃命令が出た。
場所は三門市立第三中学校。
『
「ああ。最近多いな」
一夏の言うようにここ最近、警戒区域外に
上層部も問題視しており、エンジニアをはじめとする隊員たちが原因を究明しようとしているが未だに原因を突き止められずにいるのが現状だ。
これまでに死亡者が出ていないのは奇跡と言える。近くに非番の隊員がいたから何とかなっていたが、もしそうでなかった場合、被害はもっと大きなものになっていたのは火を見るよりも明らかだ。
『学校の方にも
詩乃の言う通りだ。
三門市の学校は警戒区域外にあったから安全に一般市民は通えていた。イレギュラー
そのことについては俺たちが心配することではないのだが、詩乃は根付室長の事が嫌いだからあの人の困る顔が見たいからなのかもしれない。
そうこうしているうちに現場に着いた。
『セブンガー着陸します。セブンガー着陸します』
アナウンスを響かせながらゆっくりと着陸する。
シートベルトを外し、コックピットハッチを開いて目前の校舎の様子を確認する。校舎の所々が破壊されているが建物としての原形を保っていた。瓦礫が所々に転がっているが軽く見渡した限りでの重症の者はいない様子だった。
コックピットから降りて先に駆けつけていたボーダーの部隊ーーー嵐山隊の所へ向かう。
俺が向かうと嵐山さんと時枝くん、不満そうな表情をした木虎さんの三人がいた。
「ストレイジ現着しました。お疲れ様です。被害状況の方は?」
「負傷者なし。生徒教員共に全員無事だ」
「了解しました。それではこれから作業に入り…」
「春川さん」
「はい?」
作業をするべくセブンガーに戻ろうとしたら突然木虎さんに呼ばれた。
「あなたはどう思いますか?C級隊員が規律違反をしたことについて」
「規律違反、ですか?」
「ええ。彼がそうです」
指差した方にいたのは眼鏡をかけた男子生徒。気まずそうな表情をしており、明らかにまずいことをやってしまったと言わんばかりだった。
彼、三雲修くんについての事情を木虎さんから教えてもらった。
イレギュラー
木虎さんは三雲くんを処罰すべきと主張。
一方、三雲君に助けられたという白髪の男子生徒は「遅れてきたのに偉そうにしてるんだ?」と主張している。
「…彼の行動は確かにルール違反です。処罰されるべき対象だ」
この例外を認めてしまえば彼以外のC級隊員がマネするとも限らない、下手をすればこのことを理由にルール違反を犯すような者まで出てきてしまうかもしれない。他のC級隊員に示しをつけるため、ボーダーの規律を守るために彼を処分するのは確かに正しいことだ。
「そうでしょう?」
「でも…」
訓練生であることを理由に目の前の命を捨てろと言われたなら、そうすることが本当に正しいのだろうか。
もし、それが間違っていると言われたなら。
自己責任だと、さっさとB級に上がらなかった自分を呪えばいいのか。
運がなかったと、そんな状況に出くわしてしまった自分の運の悪さを呪えばいいのか。
どちらもそうだろう。
自分の実力がなかったのは確かに事実だ。
自分の運がなかったのは確かに事実だ。
そうする事が望まれていて、そうする事が他の人のためになるというのだから。
「自分個人の意見としては、仕方なかったとしか言えません」
「…!」
「へぇ…」
「…そんな言葉で片付けろと?」
「トリガーを使わずに助ければよかった。それが本当の取るべき行動でしょう。避難指示をするなり、先生に協力するなり取れる行動は確かにある。ルール違反は確かによくない事です。
でも、逃げ遅れた命を捨ててまで、ルールを守るのは違っている事だと考えます」
ルールを守らなければならない状況がいつもだとは限らない。
じゃあ、逃げ遅れた人を「自分は訓練生でトリガーが使えないから」と見捨てるのが本当に正しいのだろうか。
じゃあ、逃げ遅れた人を逃すために素手で挑めばいいのか。
じゃあ、逃げ遅れた人の代わりに死ねばそれでいいのか。
なら、仕方なかったとしか言えないのではないか。
それ以外にできた行動があったのならそれを誰かが教えてやればいい。
「最初に違っていた点を誰かが教えてあげればいい。次に正しかった点を教えてあげて、その上で処分を下せばいい。…何にしても、自分が決める事じゃありませんから」
詭弁だ。俺の言っている事は詭弁だと理解している。
それでも彼に助けられたという人がいる。彼に感謝している人がいる。
それは、それだけは、教えてあげていい事だと思うから。
「…言葉が過ぎました。作業に入ります」
そう言った直後だった。
地面が揺れた。
それから数秒後、けたたましい音が響いた。
それからさらに数秒後、衝撃波のような体全体を叩きつけるような強い風が吹いた。
「な、何…!?」
「何が起きたんだ…!」
音の方に目を向けた。
瞬間、言葉を失った。
「あれは…!?」
怪物がいた。
巨大な巨体に加えて赤い背びれと頭の2本の赤い角が特徴的だった。
悪魔を連想させるような見た目にただ圧倒された。
「ーーーーーーーーーー!!!」
怪物は大きな咆哮をあげるとけたたましい音を立てながら進行を始めた。
すぐに避難させなければと頭で理解してはいるが、体が動かない。
セブンガーに戻らねばと告げているのに言うことを聞いてくれない。
『おい夏樹!』
「…暁か。どうした」
暁からの通信に務めて冷静に返すが、言葉を返すだけでも精一杯だった。
『空から
「なんだと…!?」
そう言われて半ば反射的に怪物の方に視線を向ける。
俺が視線を向けるのとほぼ同時のタイミングで今度は強い光が視界を覆った。
「今度は何…!?」
「あれは…」
光が収まり、そこにいたのは巨人だった。
銀と青を基調とした体色、頭部のスラッガー、Zの形をした胸部のランプ。
「光の…巨人」
巨人は構えるとそのまま駆けていき、怪物に背後から掴みかかった。
凶悪な宇宙怪獣ベムラーが避難所に迫る。
被害を食い止めるべく出撃するボーダー隊員。
ベムラーに決死の戦いを挑むセブンガー。
光の巨人と夏樹の邂逅。
次回、【その名はウルトラマンゼット】