ワールドトリガー x ウルトラマンZ   作:全て儚き名も無き遠い理想郷

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2章は原作の黒トリガー争奪戦と同時進行で進んでいきます。
閃光のハサウェイ、再度の延期ですね…。
状況的に仕方ないのはわかるんですけどね。
上層部の印象が悪いかもですがアンチではありません。
それではどうぞ。


第2章 戦士の心得
怪奇との遭遇


宇宙怪獣ベムラーとウルトラマンゼットの来訪事件から一週間が経過した。

被害は一般市民とボーダー共に幸いにも死亡者並びに行方不明者0人だったが、町の被害は甚大な物だった。

ボーダーによる会見が開かれ、被害状況と復旧作業の説明と怪物(ベムラー)巨人(ウルトラマンゼット)については調査中という事が市民へ告げられた。

ボーダーは怪物(ベムラー)巨人(ウルトラマンゼット)の調査以外にも多発しているイレギュラー(ゲート)の件など近界民(ネイバー)関連での後回しにできない問題が山積みであり、近界民(ネイバー)関連ではない可能性の高い前者の問題は調査中としか回答できなかった。

しかし、マスコミからは

「怪物を相手にボーダーはまともに戦えていなかった」

「セブンガーが被害を拡大させた」

「あんなのを相手に未成年を戦わせるのはやはり間違っている」

などと言った非難する声が多く上がっており、事件についての質問などよりもボーダーやストレイジを非難する声の方が多かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ー春川夏樹sideー

 

 

「そうか。嵐山隊も大変だったんだな」

「うん。メディア露出が多いから余計にね」

 

俺は病室で見舞いに来てくれた綾辻と話していた。

ゼットと一体化して怪物を倒してから俺は気を失い、忍田本部長の指示で捜索中だった那須隊に発見され、目が覚めたら病院のベッドの上だった。

今日は嵐山隊のオペレーターである綾辻遥が見舞いに来てくれたので近況報告も兼ねて話していたわけだった。

嵐山隊はメディア露出の機会が多いためか連日質問に会う機会が多いらしく、他の部隊もイレギュラー(ゲート)の事があって息をつく暇もないという。

 

「セブンガーは大丈夫なの?」

「幸い頭部以外は原形保ってたらしくてな。修理すればまた動くって聞いた」

「そうなんだ」

 

怪物の攻撃を受けて大破したセブンガーは右腕と頭部が完全にやられてしまっており、修復にはメーカーに発注して作り直さなければならないらしく、整備班の面々が頭を抱えて悲鳴を上げていると詩乃から聞いた。右腕に関しては班長のアイデアで作られ、以前から温めていた秘密兵器があるらしくそれを暫くの間は取り付けることが決まり、頭部は予備の僅かなパーツを使って新品が完成するまでの間を凌ぐと聞いた。

 

「とにかく、無事でよかった」

「…ああ、ありがとう」

 

俺がゼットと一体化して戦ったことは誰にも話していなかった。

話すタイミングがなかったのもあるが、例え話すタイミングがあっても話すことはなかったと思う。

正直に話してボーダー間で亀裂を生みたくなかったからだ。

ボーダー隊員の中には身内を殺された恨みから所属している者もいれば、分かり合いを理想とする者、この街を守りたい者など様々だ。上層部も表向きはまとまっているかもしれないが、実際のところはそれぞれの派閥でバチバチと睨み合っている冷戦に近い状況だ。当然それぞれの派閥に所属している隊員同士でも似たようなことがある。

自惚れではなく、ゼットという存在をめぐってボーダーは割れる。

 

「…木虎ちゃんの事なんだけどさ」

「俺は気にしてない」

「…でも」

「実際、ああやって言われるだけの事をした。仕方ないこと…」

「何があったのか知らされていないじゃない!!」

「綾辻…」

 

綾辻は涙を零しながら俺の目を見て続ける。

 

「木虎ちゃんも、何も知らないC級の子とかも、みんな夏樹君が仲間殺しだって言う!上層部は何も話すことはないの一点張りだし…!私は嫌なの!夏樹君がそんなことをしたのも信じられないし、信じたくない!何かあったのならきっと何か理由があるはずだって!」

「…綾辻、そう言ってくれるだけでも俺は嬉しい。ほら、マドンナの顔が台無しだぞ?」

 

綾辻と俺は同期に当たる。当時は何かと荒れていた俺に綾辻は何かと気にかけてくれた。

そんな彼女の事を信頼しているし、話せるのなら話したい。

俺がこうしてストレイジとしてボーダーに残る際に俺は上層部と「()()()ーー1年前の事件について一切の口外を禁じる」事を条件とされた。

俺はボーダーを辞めるわけにいかなかった。だから、綾辻をはじめ本部の全員に何も話していない。

 

「…私、行くね」

「ああ。迷惑かけたな」

「それじゃ、またね」

「おう」

 

そう言って綾辻は病室を後にした。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「これは…!?」

「神谷、貴様これはどういうことだ!」

 

C級隊員三雲修の隊務規定違反とイレギュラー(ゲート)の原因についての会議が終了し、三雲修と彼の同伴として来ていた迅悠一、調査のために席を外した三輪秀次の三名が退室してから会議室内の空気は緊張したものとなっていた。

理由は会議室内の全員に渡された数枚の書類。

鬼怒田が元凶の男を指差し、理由を問い詰める。

 

「見ての通りだ」

「こ、こんな条件を認めろというんですか…!?」

「難しい話じゃない」

 

男ーーー神谷結弦はあっけらかんと言ってのける。

書類に記載されていた内容は主に二つ。

・春川夏樹隊員が所有して()()(ブラック)トリガーを彼を所有者とした上、彼を常時S級隊員ではなくB級隊員として扱い、状況に応じて総武支部の判断でS級隊員として扱うこととする。

・特空機並び総武支部隊員が保有するトリガー並びに護身用トリガーに関連する全ての権限は本部から総武支部へと移譲する。

 

「貴重な(ブラック)トリガーをお前たちに渡すと本気で思っとるのか!?」

「本部には天羽月彦、玉狛には迅悠一、総武には春川。バランスは取れている」

「そういうことではないわ!あの(ブラック)トリガーはわしら本部が所有しとる!既に適正者も見つかって前線にも出ておる!」

「元隊員の春川君に任せるわけにはいきませんねぇ…」

(ふむ…)

 

唐沢克己は神谷から渡された書類とそれぞれの表情を観察しながら状況を整理する。

まずは前者の内容にに対して本部側、正確には城戸派が納得できないのは「春川夏樹の所有していた(ブラック)トリガーを再び春川夏樹を所有者とする」点である。

近界民(ネイバー)殲滅を掲げる城戸派にとって(ブラック)トリガーの損失は何としても避けたいことだった。

(ブラック)トリガーとは優れたトリオン使いが命と全トリオンを注いで作るトリガーのことを言う。通常のトリガーを遥かに凌ぐ強力な性能を持つ反面、製作者の意思が強く反映されるために使用者を選ぶ性質を持つ。ボーダーにおいて(ブラック)トリガーを所有する者はS級隊員として扱われ、現在は天羽月彦と迅悠一の二人、例外を含めたもう一人を加えた三人が該当する。

 

「適正者?そんなのいないだろう」

「い、いえ!既に起動させて近界民(ネイバー)を討伐した実績があります!」

()()()()()()なら全ボーダー隊員が可能な代物だぞ、あの(ブラック)トリガーは」

「その通りだ。あの(ブラック)トリガーの適正者と呼べる隊員は春川君以外には()()()

「忍田本部長!」

「あなたは彼の肩を持つのですか!?」

「何度も言うように春川君はボーダー総武支部の隊員だ。本部から総武支部に異動しただけに過ぎない。我々は()()()()について一切の口外を禁止し、その上(ブラック)トリガーまでも彼から取り上げている」

 

忍田の言葉に鬼怒田と根付の二人は押し黙る。

事実だからだ。春川夏樹の所有していた(ブラック)トリガーは誰でも起動することはできるが、真の性能を発揮するのは春川夏樹以外にはいない。

現在、彼が(ブラック)トリガーを所有していないのは彼がボーダー隊員として籍を残すのと引き換えに()()()()と呼ばれる1年前の事件について一切の口外を禁じることと(ブラック)トリガーを本部に献上する事を条件として上層部が提示し、それを春川本人が承諾したからである。

忍田はこれに対して反対の立場だったが、本人が決めたこともあって口を出さなかった。

 

「後者についてはそもそも認められると本気で思っとるのか!?」

「そもそもストレイジは災害対処を専門とする組織。そもそもトリガーを持つこと自体が異例と思っていただかなければ…」

「そんなお前らに朗報だ。ストレイジは近界民(ネイバー)災害対策から近界民(ネイバー)並びに未確認事象についての調査活動を専門とする組織になった。これには城戸最高司令官が許可を下している」

「城戸司令!?」

「…神谷の言う通り、私が許可を出した。他の隊員たちには追って連絡を入れる」

「市民にはどのような説明をするのですか!?」

「それを何とかするのがお前らの仕事だ。嵐山隊でも他の隊員でも使って上手いことやれ」

 

立ち上がって抗議する根付に神谷は視線を向けることすらせずに言う。

 

「後者の条件は呑もう。だが、(ブラック)トリガーに関しては保留だ」

「まあ、この破格の条件を吞んでくれたからな。それだけでも十分だ」

「…何を考えている、神谷」

「何がだ」

 

顔の傷に指を当てて城戸は鋭い視線を神谷に向けながら言う。

 

「お前は自分の提示した条件を全て承諾させるまで引かない男だ。そんなお前が何も言わずに引くとは思えん」

「さあな?大事な隊員のためを思って身を引いてるだけだ、俺は」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ー春川夏樹sideー

 

 

トイレから病室に戻る廊下の途中、突然俺がゼットに変身した光のゲートが出現した。

 

『夏樹、話したいことがある。来てくれ』

「…わかった」

 

頭の中にゼットの声が聞こえ、疑問はあったが言われた通りに光のゲートに入る。

ゲートに入ると俺と同じぐらいの大きさになったゼットが待っていた。

 

「よう、元気そうでございますな」

「まあな。そういえば礼を言ってなかった。ありがとうな、ゼットのおかげで被害を食い止められた」

「気にすることはないでございますよ。ウルトラマンとして当然のことをしたまでであります」

「そうか。ところで頭の中にゼットの声が聞こえてきたのはどういうことだ?」

「それも含めて今から説明するでございます」

 

そう言ってゼットは説明を始めた。

ゼットは地球から300万光年先にあるM78星雲・光の国からやってきた宇宙の平和を守る宇宙警備隊の一員であり、凶悪な宇宙怪獣ベムラーを任務で輸送している最中に突然ベムラーが暴れだし逃亡。それを追って来たのがゼットがこの地球に来た理由。

ベムラーとの戦闘にて俺とゼットは互いにウルトラやばい状態、つまりは死にかける寸前までの状況になり、一体化することで俺は一命を取り留め、ウルトラゼットライザーとウルトラメダルを使いウルトラフュージョンすることでゼットと一体化して戦うことができるとのこと。

 

「このゼットライザーがないと変身できないのはわかったけど、この大きさを常に持ち歩かなくちゃならないのか?結構しんどいんだけど」

「心配するな。ゼットライザーは前に落として失くして変身できなくなったことがあったから変身するときに手元に現れるようになった」

「前例あったんかい…」

 

まあ、そりゃそうだろうなと納得もしてしまう。

大きさはそこまで巨大ってわけでは無いが、少なくとも懐にしまっておけるような大きさではない。

 

「このウルトラメダル入れてる箱は?結構目立つ気がするんだけど」

「問題ない。全然見えてないし、誰も気づかないし、そもそも目立ってないからな」

「そこまで言うなら大丈夫か」

 

流石にこれだけゴリ押しといて見られることはないだろう、多分。

 

「今度はこっちからも聞いていいか?」

「ああ。いいぞ」

「ボーダーとか近界民(ネイバー)ってのは何なんだ?」

近界民(ネイバー)ってのは近界(ネイバーフッド)と呼ばれる「向こう側の世界」に住む者たちの事で、ボーダーは近界民(ネイバー)の侵攻から「こちら側の世界」を守る組織の事だ。俺はそのボーダーの隊員で、見舞いに来てた綾辻ってやつも同じボーダーの隊員だ」

「そうなのか。感謝申し上げるぜ」

 

頭を下げてお礼を言うゼットに俺は気になっていた質問をした。

 

「そういえばゼットはあのベムラーを倒したのに戻らなくていいのか?」

「最初はそのつもりだったんだけど、おかしい状況だから調査のために暫くは残ることにしたのであります」

「おかしい状況?」

「ああ。逃亡したベムラーはまるで何かに誘導されるように、ここに来るまでにいくつかの星を素通りしてこの地球に来た。それが偶然なのか、誰かが意図的にそうしたのかを知る必要があるからな。それにこの地球は宇宙の中でも数少ない怪獣の存在しない星だからな」

「そうなのか…」

「夏樹はボーダーの隊員としての活動を優先してくれていいでございますよ。こればかりは確認の使用がないでございますからな」

「ああ。暫くの間よろしくな、ゼット」

「こちらこそでございますよ夏樹!」

 

ゼットとの話を終えてゲートを出る。

ゲートを出てから病室に向かう道中、俺はゼットとの会話を思い返していた。

 

(誰かが意図的に…)

 

思い出すのは1年前の()()()()

ベムラーは何かに導かれて地球にやってきた、のかもしれないとゼットは言っていた。

怪獣の存在しない星だとも言っていた。

 

「まさかな…」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

その日の夜。

夜9時頃、那須隊所属の攻撃手(アタッカー)、熊谷友子はいつもより遅い帰りだった。欠席が出た別の隊の防衛任務の代理として出ていたため、帰りが遅くなってしまったのだ。

 

(明日が非番でよかったわ。結構、眠いわね…)

 

慣れない時間の出動だった事もあり、あくびをしながら歩いていた熊谷は気配を感じて足を止め、後ろを振り向いた。

 

「誰もいない?」

 

気のせいだったかなと思いながらも、この時間に出歩くのは幾らボーダー隊員と言っても危険だったかなと考えながら熊谷は歩くスピードを早める。

しかし、今度は足音が聞こえた。

 

(トリガー起動(オン)

 

戦闘員としての勘が働いたのか不穏な空気を感じ取り背後を振り向きながらトリガーを起動し、孤月を構える熊谷。

視線の先には夜の闇が広がるだけだったが、程なくして足音がだんだん近づいてくると、やがてその姿を見せた。

 

「っ!」

 

姿を見せたのは黒マントを羽織ったスリムな体型をした長身の人物だった。何よりも熊谷の目を引きつけたのは両腕の鋭利な刃。長さとしては弧月の刃と同じぐらいだ。

すぐに只者ではないと感じ取り、熊谷は孤月を握る手に力を入れる。

 

「誰?随分な格好だけど」

 

熊谷が質問をすると目の前に人物は一言も発さず跳躍し、空中で一回転して熊谷の背後に回った。

 

(早い…!?)

 

熊谷が反応した時には相手は既に背後に立っており、対応するべく振り向こうとした時、相手は両手の刃で熊谷の体を胴体から容易く切断した。

 

「え…?」

『戦闘体活動限界緊急脱出(ベイルアウト)

 

驚愕よりも先に何が起きたのかを把握できなかった熊谷は光に包まれ本部へと緊急脱出(ベイルアウト)した。

その日を境に謎の黒マントの人物が夜になるとボーダー隊員を次々と襲っては緊急脱出(ベイルアウト)させるという謎の怪奇事件が頻発するようになった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ボーダー隊員辻斬り事件、ですか?」

 

小型トリオン兵ラッドによるイレギュラー(ゲート)発生事件が解決して一周間が経過したある日の事。

ストレイジの作戦室に集まり、隊長である神谷を含めた6人は一周間前から続いているボーダー隊員辻斬り事件について話し合っていた。

 

「ああ。一週間でボーダー隊員が7人、一日1人やられてる」

「被害の方は?」

「襲われた隊員は全員B級だったおかげで怪我人はなしだ」

 

襲われた隊員は全員襲われる寸前にトリガーを起動して戦闘体になっていたことで難を逃れた。

最初に襲われた那須隊の熊谷をはじめ何人かの隊員は抗戦を試みたが、抗戦するまでもなく一方的にやられている。

 

近界民(ネイバー)じゃねえの?」

「その可能性は低いそうだ。本部の方で(ゲート)が開いた形跡は確認されなかった」

 

一夏の言うように当初は近界民(ネイバー)の仕業であると考えられていた。

だが、本部の方で(ゲート)が開いたような形跡は見られなかったため、近界民(ネイバー)の可能性は低いとの見方が出てきた。その一方で新手の近界民(ネイバー)の仕業ではないかと言う見方も同様にあった。

 

「上層部としてはイレギュラー(ゲート)の問題がようやく解決したもんな」

「そこで近界民(ネイバー)並びに未確認事象についての調査活動を専門とする組織、俺たちストレイジの出番ってわけっすね?」

「そういうことだ。さて、作戦を命じる。夏樹、詩乃、暁の三人は周辺の調査、一夏は整備班とセブンガーの修理、明日奈はここでオペレート。俺は次の正式入隊の事で詰めることがあるから忍田と城戸と話してくる」

「春川了解」

「朝田了解」

「君塚了解」

「神崎了解」

「結城了解」

 

こうしてストレイジによるボーダー隊員辻斬り事件の調査が開始された。

夏樹、詩乃、暁は本部に在籍していた時に使っていたトリガーが本部からストレイジ所有になり、本人たちに返還されたためそれを使って調査を始めた。

寄せられた犯人の特徴として黒マントと両手に弧月と同じぐらいの長さの鋭利な刃物を持っているのと人間離れした身体能力。いずれの被害者も背後から近づかれて襲われていることから犯人はボーダー隊員を追うようにして近づくのを手口としていることが予想され、警戒区域や放棄区域、もしくはその周辺の地域に潜んでいるのではないかと考えられた。

そこで夏樹、詩乃、暁の三人は後で合流する事を決めてから、それぞれ分かれて調査することにした。

夏樹は旧弓手町駅付近を調査していた。

 

(久々だな、この隊服…)

 

トリガーの設定は最後に使っていた時のままのため夏樹が所属して()()隊の隊服、部隊章(エンブレム)もそのままである。

複雑な心境を頭の隅に追いやって調査に意識を向け、あたりを見回しながら歩いて行くと夏樹の視線の先に旧弓手川町駅に入って行く三人の集団を見つけた。

 

(確か、警戒区域に近いからって閉鎖されたはずだが…)

 

まさか彼らが辻斬りを?と夏樹は思いながらも調査のため尾行することを決めた。

夏樹はバッグワームを起動して距離を保ちながら三人の後をついて行くと三人は旧弓手町駅のホームに上がって何やら話した後、白髪の少年ーー空閑遊馬の指から黒い浮遊物ーーレプリカが現れ、眼鏡をかけた少年ーー三雲修とおかっぱ頭の少女ーー雨取千佳のトリオン量を計測し終えたタイミングで夏樹はグラスホッパーを起動して一気に近づき、三人のいるホームに立った。

 

「君たち、ちょっといいか?」

 

夏樹の存在に気づいた三人は一斉に振り向く。

三雲が雨取を庇うように前に立ち、空閑が夏樹に警戒しながら声をかける。

 

「あんた、どこにいたんだ?全く気付かなかったぞ」

「目はかなり良くてな。それよりも、それはボーダーのトリガーじゃないな?説明してもらえるか?」

 

夏樹はバッグワームを解除し、レプリカを指さして言う。

割って入るようにして三雲が説明を始める。

 

「迅さんに聞いてもらえればわかるはずです。こいつの事とか…」

「迅さん?もしかして、ぼんち揚げ勧めてきたか?」

「え?あ、はい…」

「…そっか。脅かして悪かった。それでも説明してくれるか?迅さんとここ最近は話せていなくてな、事情を知りたい」

 

夏樹は両手を挙げて敵対の意思がないことを示す。

 

「すぐに信用してよかったのか?」

「迅さんとは面識あるし、信用してるからな。言い方は悪いが君たちを完全に信用してるわけじゃない」

「ふむ、なるほどな。オサム、どうする?この人、ウソはついてないぞ」

「そうだな…」

 

三雲が口を開こうとした時だった。

 

「動くな、ボーダーだ」

「!?」

 

夏樹が来たのとは逆の方向から二人のボーダー隊員が現れた。

その二人を夏樹は知っていた。

A級7位三輪隊の三輪秀次と米屋陽介だ。

 

「秀次、陽介…」

「あれ、夏樹いるじゃん」

「間違いない、現場を押さえた。ボーダーの管理下にないトリガーだ。近界民(ネイバー)との接触を確認、処理を開始する」

 

三輪が通信を終えると二人はトリガーを取り出して起動する。

 

「トリガー起動(オン)

 

戦闘体への換装を終えると米屋が笑みを浮かべながら聞いてくる。

 

「さて、近界民(ネイバー)はどいつだ?」

「今、そのトリガーを使っていたのはそっちの女だ。夏樹、どうなんだ?」

「…残念ながら見てない。それも込みで今から聞くところだったからな」

「初の人型近界民(ネイバー)が女の子か~。ちょっと()る気削がれるな~」

「油断するなよ。どんな姿だろうと近界民(ネイバー)は人類の敵だ」

「ま、待ってくださいこいつは…」

 

事情を説明しようとした三雲の声を遮るように空閑が口を開いた。

 

「違う違う。俺だよ、近界民(ネイバー)は」

 

 

 

 

 

 

 




戦闘を開始する空閑遊真と三輪隊。
それを止めようとする夏樹だったが…。
(ブラック)トリガーとは何か。
玉狛支部で明かされる夏樹の(ブラック)トリガーの正体とは…。

次回、【春川夏樹②】
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