ワールドトリガー x ウルトラマンZ   作:全て儚き名も無き遠い理想郷

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二章はワールドトリガーの方がメインになります。
次章はウルトラマンの方をメインとした回にしたいです。
辻斬り事件の犯人はわかる人にはわかるのではないでしょうか。
戦闘描写をもっとうまく書きたい…!
それではどうぞ。


春川夏樹②

「お前が近界民(ネイバー)だと…?」

「うん、そう」

 

三輪の質問に白髪の少年ーー空閑遊真は表情を変えずに言う。

 

「…間違いないだろうな?」

「間違いないよ」

 

再度の質問にも同じように表情を変えずに空閑が答えると三輪は拳銃(ハンドガン)を取り出し、躊躇うことなく発砲した。アステロイドの弾をくらった空閑は後ろに吹き飛ばされる。

 

「秀次…!」

「な、何してるんですか!!!」

近界民(ネイバー)を名乗った以上、見逃すわけにはいかない」

 

夏樹と三雲の声を聞きながらも、三輪はホルスターに拳銃(ハンドガン)を収めると三輪は冷たい声音で言い切る。

 

近界民(ネイバー)は全て殺す。それがボーダーの務めだ」

「おいおい、俺がうっかり一般人だったらどうする気だ」

 

シールドのようなトリガーでガードしてノーダメージだった空閑が難なく立ち上がる。

 

「空閑…!」

「うおっ、マジか。この距離で防いだ!」

 

三雲は空閑が無事だったことに安堵するように声を上げ、米屋は至近距離からの三輪の射撃を防いだ技量に驚きの声を上げる。

 

「あのさ、ボーダーに迅さんっているだろ?俺の事聞いてみてくれない?一応、知り合いなんだけど」

「そ、そうです!迅さんに聞いてもらえればわかるはずです。こいつが他の近界民(ネイバー)とは違うって…」

「…迅、だと…?」

 

三雲が迅の名前を出して三輪を説得しようとするが、三輪は迅の名を聞くと忌々しいと言わんばかりの表情を浮かべる。

 

「やっぱり、一枚嚙んでいたか…。()()()()の玉狛支部が…!」

()()()()…?」

「退け三雲、俺たちは城戸司令の特命で動いている。これ以上、邪魔をするようなら実力で排除するぞ」

「退きません。僕は…」

「三雲君、退いてくれ」

 

三雲を静止して夏樹が三輪の前に立つ。

 

「お前も邪魔するのか、夏樹」

「悪いが少し待ってもらうぞ、秀次」

「まさか近界民(ネイバー)を擁護するつもりか?」

「ストレイジとしてボーダー隊員辻斬り事件の調査中でな、彼ら三人には聞きたいことがある」

「その近界民(ネイバー)の仕業だとしたら?」

「それも込みで今から聴取するんだ。それに俺の前で玉狛支部の事を()()()()呼ばわりするのはやめろって言ったはずだ」

 

夏樹はある事情から玉狛支部とは繋がりがある。

三輪は勿論そのことを知っており彼が玉狛支部と繋がりがある事情についても知っている。

 

「退け、夏樹」

「迅さんの事を信頼しきれない秀次の気持ちも理解できる。けど、俺にとっては恩人なんだよ。あの人が認知していて何もしていないってのには必ず何か理由があるはずなんだ」

「…そうか」

「悪い。だから、少し…」

 

「待ってくれ」と言葉を言い終える前に三輪は拳銃(ハンドガン)を引き抜き、トリガーを引いた。

不意打ちで放たれた弾を夏樹は避けることが出来ず、ノーガードで受けてしまい胴体と両腕、両足に黒い石柱のような物が生え、夏樹は地面に倒れこんでしまう。

 

鉛弾(レッドバレット)…!)

 

鉛弾(レッドバレット)、トリオンを重しに変えて対象を拘束するオプショントリガー。

それは三輪の十八番とも言えるトリガーの一つであり、当然ながら夏樹はそれを知っていた。

 

「秀次、お前…!」

「悪いな、夏樹」

 

地面に倒れこんだ夏樹を一瞥すると三輪は弧月を抜いて空閑と向き合う。

 

「任務中のミスにより流れ弾が当たった、ってことにしてくれ」

「らしくねえじゃないの、秀次」

「下がってろオサム。こいつらが用があるのは俺だ。こいつらとは俺一人でやる」

 

空閑はそう言うと黒い戦闘体に換装する。

 

「オサムはチカに付いててやれ」

「…わかった」

「悪いなチカ。巻き込んで」

「…!」

「えっと、ナツキさんも巻き込んでしまってゴメンナサイ」

「空閑君…」

 

空閑は三雲、雨取、夏樹の三人にそれぞれ言葉を言うと三輪と米屋の二人と向き直る。

戦う姿勢を見せた空閑に米屋が好戦的な笑みを浮かべて楽しそうな声を上げ、三輪はそんな米屋を注意しながらも空閑の方を見て言う。

 

「こいつは二人掛かりで確実に始末する」

()()()()()…?おまえ、面白いウソつくね」

「…!」

 

空閑の言い放った言葉に三輪が反応し、更に駅を見下ろせる屋上がある離れたところのビルの上で三輪隊狙撃手(スナイパー)の古寺章平が通信越しに聞こえた空閑の言葉に驚愕の言葉を漏らす。

 

『勘付かれた…!?噓だ、この距離で…!?』

「落ち着け章平。やつは一度もこちらを見ていない、探知を受けた反応もない。ハッタリで()()をかけてるだけだ」

 

同じく三輪隊狙撃手(スナイパー)の奈良坂透は冷静になるように通信で告げる。

実際に空閑は奈良坂と古寺の位置を把握していない。

三輪隊は知らないが空閑の副作用(サイドエフェクト)は「嘘を見抜く」。

三輪の「二人掛かり」という言葉に副作用(サイドエフェクト)が反応したのだ。しかし「嘘をついているか」だけに反応する性質上、三輪と米屋以外の存在がいることを認識してはいても、人数やどういう攻撃手段を用いるかはわからない。

空閑の放った言葉に米屋は面白いと言わんばかりの笑みを浮かべる。

 

「へえー、やっぱただもんじゃないな。ここはひとつ、()()でじっくりかかるか」

 

言い終えると同時に米屋は踏み込むと槍で正面から空閑の首目掛けて一突きするが、空閑は横に軽く移動するだけで避ける。

 

「不意打ちがミエミエだよ」

 

空閑は余裕のある態度のまま米屋に向けて言うが、対する米屋は変わらず笑みを浮かべたままだ。

 

「…と思うじゃん?」

「…?」

 

空閑が米屋の言葉に疑問を感じた途端、首元に切られた傷口が現れ、トリオンが漏れ出す。

空閑だけでなく三雲と雨取の二人も驚愕の反応を見せる。

 

(なんだ…?今のは絶対かわしたはず)

「浅いな~。いきなり首は欲張りすぎたか~。やっぱ狙うなら足からかな?」

「どういう仕掛けだ…?」

 

三雲が空閑の負傷を見て迅に連絡を入れる中、夏樹は空閑の方を見ていた。

 

(分が悪い。相手は三輪隊、秀次の鉛弾(レッドバレット)と陽介の幻踊弧月は仕組みを知っていても対応するのが難しいし、ましてや初見で対応するのは更に困難だ)

 

夏樹は動きたくても動けない状態にある。

三輪の鉛弾(レッドバレット)は改良型であり、一発約100㎏の重りが夏樹の身には両腕両足に一個ずつと胴体に三個の合計約700㎏の重りが乗っている。まともに立っていることもできず、倒れ伏していても重さがのしかかており首を動かすのがやっとの状態だ。

 

(くそ…!)

 

空閑と三輪、米屋の戦闘は続いていた。

米屋の幻踊弧月による攻撃を空閑は空中でバク転をするように避けるが左足の踵に傷を負う。

すかさず三輪が左手に持った拳銃(ハンドガン)でアステロイドを撃ち、空閑はシールドでアステロイドを防ぐが、三輪は右手で弧月を引き抜いてシールドを破壊する。

 

「挟んだ!」

 

三輪と空閑の死角から回り込んできた米屋に挟み撃ちにされる空閑だったが、

 

『弾』印(バウンド)

 

焦った様子を見せずに足場を出現させると駅の屋根を突き破って広い場所へと移動する。

 

「狭いとこだと面倒だな」

 

瞬間、空閑の視界に光が二つ見えた。

それの正体に気づいた空閑は体を下に傾けた直後、狙撃された二発のうち一発が空閑の右腕を吹き飛ばした。

 

「ちっ…」

『当てた!流石、奈良坂先輩』

「あれは()()()だ。即死させるチャンスだった」

 

奈良坂は空閑を仕留める気で狙撃した。だが、あろうことか空閑は空中でこちらに気づいただけではなく、体を傾けることでダメージを腕だけに抑えた。

完全な不意打ちだった。相手が最初からこちらの位置を知っていたならともかく、直前に気づいただけでダメージを抑える反応をされた。

 

(この距離ではもう当たらないな)

 

奈良坂は空閑の実力の高さを理解した。完全な不意打ちでダメージを抑える反応をした相手には同じ距離からの狙撃ではもう避けられてしまうだろうと奈良坂は確信する。

奈良坂は古寺に指示を送る。

 

「俺はやつが()()()()()()()()()()()()まで近づく。お前はここでやつを牽制し続けろ」

『了解!』

 

だが、幾ら反応しようともかわせなければ最後に倒れるのは空閑の方だ。

古寺をそのまま牽制として残して退路を縛り、奈良坂が確実にダメージを稼ぐ。自分が仕留められずとも三輪か米屋のどちらかが仕留められればいいのだから。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ー???sideー

 

 

「どうだよ、調子は」

 

あたしが声をかけると■■■■■は「悪くない」という旨の答えを返す。

 

「ククク、味気ない回答だな」

 

■■■■■は「そうか?」と返してくる。

 

「まあ、いいさ。お前が言い出したことだからな、どんな結末になろうともあたしは知らないからな」

 

つまらない事に関与したって退屈なだけだからな。

これ以上の接触は面倒になるな、ぼちぼち離れるとしますかね。

おっと、一つ聞くのを忘れていた。

 

「どうだった?春川夏樹の護身用トリガーに()()()()()気分はよ」

 

■■■■■は「別に」と返してくる。

ったく、そういうのがつまらないんだよ。

まあ、いいか。

あたしはあたしで好きにやる。

つまらないやつはつまらないやつで好きにやればいい。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「手古摺らせるな近界民(ネイバー)。そろそろ観念して、大人しく死ね」

 

拳銃(ハンドガン)の銃口を空閑に向けながら三輪は言う。

挟み撃つように立っていた米屋が前に出る。

空閑が米屋の方を向いて対応した所に三輪が発砲する。

 

『盾』印(シールド)

 

空閑は冷静に三輪の方に視線を向けてシールドを展開する。

だが、三輪の撃った弾は空閑の展開したシールドを()()()()()

 

「!?」

 

空閑の目が見開かれる。

三発の弾が左腕に直撃し、空閑の左腕に夏樹と同じような重しが三つ生える。

 

「重っ…。これ、ナツキさんのやつと一緒か…?」

『トリオンを重しに変えて相手を拘束するトリガーだ。直截的な破壊力がないかわりにシールドに干渉しない仕組みのようだ』

「ふむ」

 

空閑の左腕と一体化していたお目付け役の多目的型トリオン兵であるレプリカが言ったようにこれも鉛弾(レッドバレット)の特性の一つである。

鉛弾(レッドバレット)の弾速はアステロイドに遅いが、これ単体であれば特性を知ってさえいれば実力次第で避けることは難しくはない。しかし、三輪のようにシールドで対処できる通常弾を織り交ぜて攻撃をすることで、直前に夏樹が空閑の前で鉛弾(レッドバレット)の影響を受けて効果が知られていたのだとしても、当てることが出来る。

約300㎏の重しに流石の空閑も膝をついてしまう。

 

「これで終わりだ近界民(ネイバー)!!」

「空閑!!」

 

三輪と米屋の二人が同時に仕掛ける。

三雲が叫ぶが空閑は焦る様子を見せず、表情も冷静なままだ。

 

『解析完了。印は『射』(ボルト)『錨』(アンカー)にした』

「OK」

 

レプリカの声に空閑が短く返す。

 

『錨』印(アンカー)(プラス)『射』印(ボルト)四重(クアドラ)

 

空閑の前に六角形と四重の円が出現し、弾が放たれる。

三輪と米屋は空閑が何かを仕掛けたのに気づく。

 

「うおっ!」

「ぐっ!」

 

放たれた弾は二人に直撃して吹き飛ばすと空閑や夏樹と同じようなトリオンの重しを生やす。

重しを生やされた三輪と米屋は重さに耐えきれず地面に倒れる。

 

「いいなこれ。かなり便利だ」

 

今起きた現象にその場の全員が驚愕する。

 

(相手の攻撃をコピーした…!?)

(いや、この威力はそれ以上の…!!)

「…やっべー」

「まさか…!?」

 

三雲、三輪、米屋、夏樹の四人がそれぞれの反応を示す中、空閑は米屋が攻撃の際に落とした槍を手に取っていた。

 

「おおー、穂先が自由に変形できるのか。だからギリギリで避けても食らったんだな。なるほどなるほど」

 

幻踊、それが米屋の使っていた弧月専用のオプショントリガー。能力は空閑の言う通り穂先の形を自在に変形するというものであり、空閑が避けてもダメージを受けたのは空閑に当たる直前で変形させてすぐに元に戻していたから。

だが、三輪と米屋が倒された状況で奈良坂は空閑を危険と判断し、ここで始末すると銃口を向ける。

 

「よう奈良坂、ぼんち揚げ食う?」

「迅さん!?」

「もうやめとけ。あいつを敵に回すと損するぞ」

 

奈良坂の背後から現れたのは迅悠一。ボーダーに三人いるS級隊員の一人であり、この状況を知っている人物だ。

その一方、地面に倒れ伏した三輪に視線を向けて空閑が言う。

 

「さて、じゃあ話し合いしようか」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

三輪隊と空閑遊真が戦闘になる前のやり取り。

 

 

ー朝田詩乃sideー

 

 

合流予定時間になっても来る気配のない夏樹の居場所を明日奈に頼んで探してもらったところ、旧弓手川町駅でトリガーを起動したまま動いていないのを聞き、私と暁は急いで現場に向かった。

そこで目にしたのは鉛弾(レッドバレット)を食らって地面に倒れた夏樹と三輪隊の二人が白髪の少年と戦闘している光景だった。

経緯がどうあれ三輪隊によるストレイジの任務妨害かもしれないと暁は地上から、私は高い位置から状況を見ることになった。

バッグワームとアイビスを起動して奈良坂と古寺のいないビルから状況を私は見ていた。

 

「全部やっていいかしら」

「いやいや、状況を悪化させるからやめてね。詩乃ちゃん」

 

口にした言葉に返答してきた人物の声を聞いて私はすぐに立ち上がり、アイビスとバッグワームを解除して逆サイドのバックワームを起動し、拳銃(ハンドガン)を構えながら背後を振り向き、銃口をこの男(歩くセクハラ)ーー迅悠一に向ける。

 

「待って待って!俺、何もしてない!」

「黙って撃たれなさい。あんたがぼんち揚げを食べながらセクハラをするカスだってのはストレイジの女性隊員全員が知っているわ」

「俺の扱い酷くない!?」

「安心なさい。あんたが夏樹に施した洗脳も必ず解いてあげるから」

「言いがかりもここまでくると逆に凄いよね!」

「聞いてるわよ。ぼんち揚げを食べながら狙う次の獲物は男だって」

「ちょっと!?それ言ったの誰!?」

「さあ?」

 

言ってもいいが、言わない方が後々面白いから言わないでおこう。

 

「それで?何の用?」

「悪いけど三輪隊のことは俺が引き受けるからさ。下にいる暁に記録だけ取らせて手は出さずに終わるまで待っててよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

「…納得できないんだけど?理由がどうあれ、あたしたちが邪魔されてるのには変わりない」

「ここで手を出すとストレイジの立場が悪くなるよ」

 

引き金を思わず引いてしまった。

発射された弾は迅悠一の足元に着弾するが、迅悠一は何も言わない。

立場が悪くなる?どの口が言っているんだ。

 

「私たちはボーダー隊員辻斬り事件の調査をしてるのよ。三輪隊が何を目的として来てるのかは知らないけど、私たちはこれ以上の被害者を出さないために動いてる。邪魔される筋合いなんてないわ」

「わかってるけどさ、俺のサイドエフェクトはそう言ってるんだよね」

「あそこで夏樹が動けなくされているのもどうせ全部夏樹自身の怠慢が原因ってだけで片付けるものね。あんた達は気楽でいいわよ、偉そうにそれっぽい理由を並べて適当言うだけなんだから」

「そんな事はないよ。俺が絶対にさせないからね」

「…はぁ、もういいわ」

 

これ以上、話している気にもなれず私はトリガーを解除してその場を離れようとする。

今ここで話しているだけ時間の無駄だ。

迅悠一の副作用(サイドエフェクト)は知っている。それによる忠告を無視して面倒が起きるぐらいならここで話を切り上げて了解の意を示して終わらせた方が精神的にいい。

 

「ありがとう」

「あんたらとは違うから」

 

礼を言ってくる迅悠一に私は、本部(あんたら)とは違う。

そう自分に言い聞かせ、通信で暁に「邪魔が入ったから合流する」とれ連絡を入れて拳銃(ハンドガン)を解除し、バッグワームを起動したまま私はその場を去った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お前らがやられるのも無理はない。なにしろ遊真(こいつ)のトリガーは、(ブラック)トリガーだからな」

「…!?」

「マジで!?」

(ブラック)トリガー?)

 

奈良坂と古寺を連れて三輪たちの元にやってきた迅が告げた事実に三輪と米屋の二人は驚愕の反応を見せる。奈良坂と古寺は事前に聞かされていたのか二人に比べて驚愕の反応は薄い。

一方、三雲は(ブラック)トリガーについての知識がないため疑問の反応を示す。

 

「むしろ、お前らは善戦した方だな。遊真(こいつ)にお前らを殺す気がなかったとはいえ、流石A級三輪隊だ」

「…レプリカ、(ブラック)トリガーって何だ?」

『ふむ』

 

三雲の疑問にレプリカが答えようとした時、暁と詩乃に支えられて移動してきた夏樹が代わりに答え始める。

両腕は切り落とされ、両足も切り落とされてスコーピオンで義足を形成し、暁と詩乃の二人に支えられて何とか立てている状況だった。

 

「…(ブラック)トリガーは優れたトリオン能力を持った使い手が死後も己の力を世に残すため、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()特別なトリガーのことを言う。(ブラック)トリガーには作った人間の人格や感性が強く反映され、使用者と相性が合わなければ起動できない難点を持つ代わりに通常のトリガーとは桁違いの性能を有する」

「自分の命と全トリオンを…」

 

そう呟いた三雲の脳裏に転校初日の空閑の台詞が思い出されるが、夏樹が話し終えたタイミングで暁が口を開いた。

 

「三輪隊長、夏樹に鉛弾(レッドバレット)を撃ち込んでストレイジの任務妨害をした件、しっかりうちの隊長に報告しますから」

「…ああ」

 

暁の言葉に三輪は短く返す。

 

「悪いが、先に帰ってる。俺を緊急脱出(ベイルアウト)させたらまっすぐ帰って来いよ、二人とも」

「わかってるよ」

「言われなくてもそうするわ」

「…本当にだからな?フリじゃなくて」

「はいはい。心配しすぎよ」

 

本当だからな?と念を押した夏樹は息を吐いて言った。

 

緊急脱出(ベイルアウト)

 

そう言った途端、夏樹の体が光に包まれて上空に飛んで行った。

 

「さてと。戻るか」

「そうね」

 

夏樹が緊急脱出(ベイルアウト)した後、暁と詩乃の二人はそそくさとその場を離れていく。

一度も三輪隊と迅の方に視線を向けることをせず、近くにいた雨取に暁は「迷惑かけてごめん」と言い、詩乃は会釈をすると二人は旧弓手川町駅を後にした。

 

「朝田先輩、相変わらずでしたね…」

「…仕方ないさ」

 

古寺と奈良坂の二人は思うところがあったのか、それぞれの感想を零した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ー三雲修sideー

 

 

旧弓手川町駅での三輪隊との騒動後、迅さんと一緒にボーダー上層部との会議で空閑の親父さんがボーダー創設期のメンバーだと知り、迅さんに連れられて来た玉狛支部で空閑がこっちの世界に来た理由と過去をレプリカから聞いて、空閑と千佳の二人と三人で部隊を組むことになって数日たった日の事だった。

僕たち三人はそれぞれの師匠となる先輩たちとの訓練を一旦終えての休憩の時、空閑が何の気なしに烏丸先輩に質問したことがきっかけだった。

 

「そういえばさ、ナツキさんって(ブラック)トリガー持ってるのか?」

 

その質問を聞いて僕と空閑、千佳の三人以外のメンバー全員(迅さんと林道支部長はいない)の手が止まった。ただならない雰囲気を感じて千佳が僕の方に視線を向けてくるが、僕も何が何なのかわからない。

不機嫌な表情をした小南先輩が空閑に聞く。

 

「…遊真、あんたそれどこで知ったの?」

「三輪隊と戦った時にレプリカが話す前に話してたから気になって」

(そういえば…)

 

思い出されるのは三輪隊とのいざこざの後の事。僕がレプリカに(ブラック)トリガーについて聞いた時、あの人はレプリカが答えるより前に答えていた。三輪隊の皆さんが知っていたからてっきり知識として知っていただけだと思っていたけど。

 

(もしかして、違うのか?)

「ただ知ってるだけにしては話してる口調が似てたんだよ」

「誰に似てたの?」

(ブラック)トリガーを手にしてる人の反応に」

「どういうこと?」

『私が答えよう』

 

千佳の疑問に出てきたレプリカが答える。

()()()の世界で(ブラック)トリガーを手にしていた人は大きく分けて三種類に分かれると言う。

一つは空閑のように思うところはあっても比較的平静を保つ者。

一つは製作者と関係がない適性者が大きな力としてだけ認識し、使用する者。

一つは自罰的になり目的を果たした後もひたすら何かに向かって進み続ける者。

春川先輩は三つ目に当てはまる反応をしたとレプリカは言う。

 

『三つ目の人物に多く見られる共通点として(ブラック)トリガーを持ったことを自分への罰として受け止めるというのがある。特にこの場合、(ブラック)トリガーの製作者は家族、友人、恋人だったりと所有者にとって重要な人物であることが殆どだ』

「目的ってなんだ?」

「そうだな。例えば(ブラック)トリガーを作るに至った原因の排除とかみたいな復讐が殆どかな」

『その目的を果たすために進み、その目的が果たされた後も何かに囚われたように進み続けるのが殆どだ。そして、そういう場合の人物に共通して見られる人物の特徴として(ブラック)トリガーについての話題が上がるとそれを少しでも早く終わらせようとする反応を見せる。彼の場合、オサムの質問に私が答えるよりも先に答えることで一刻も早く会話を終わらせたかったのだろう』

 

レプリカが話し終えるとお菓子を持ってきたレイジさんが答えた。

 

「ああ。春川は(ブラック)トリガーを持っている」

「レイジさん!」

「小南、修たちは玉狛支部(ウチ)の隊員だ。知っておく必要がある」

「正確に言うと、持って()()っすけどね」

「とりまる!!」

「小南先輩、修たちはわかってくれます」

「小南、玉狛支部(ウチ)に所属している以上は話しておかないと」

「…わかったわよ」

 

小南先輩はそのままソファに勢い良く座る。

 

「聞いちゃいけないことだったか?」

「せ、先輩、聞いちゃいけない話題だったのなら…」

「いや、お前たち三人にもいずれ話すつもりではいた」

 

レイジさんはそう言ってソファに腰を下ろすと話し始めた。

空閑もいつになく真剣に聞く姿勢で、千佳の方に視線を向けると「大丈夫だよ」と返されたので僕もレイジさんの方を向いた。

 

「まず、春川夏樹には三人の姉がいる。一人は玉狛支部(ウチ)に所属している春川真希と本部所属の春川由衣」

「真希さんは訳あって今は謹慎中でね。明日には戻ってくるよ」

「由衣さんはA級1位部隊の所属だ」

「そして、もう一人は春川冬海。夏樹の(ブラック)トリガーを製作した人物だ」

「お姉さんが(ブラック)トリガーに…」

 

それは………いや、僕が言っていいことじゃない。

次は烏丸先輩が口を開いた。

 

「さっき、(ブラック)トリガーを持って()()って言っただろ?」

「は、はい」

「今、春川さんの(ブラック)トリガーは本部が管理してる」

「適正者じゃなかったのか?」

「…春川先輩から本部に権限が移動したってこと、ですか?」

「…ああ。修の言う通りだ」

 

だから持って()()って言っていたのか。

それは、でも…。

 

「おかしくないか?適正者じゃなかったのか?」

「違うわよ。寧ろ夏樹しか起動できなかったわ」

 

空閑の質問に小南先輩が不機嫌に答える。

 

「じゃあ、なんで…」

「本部が取り上げたのよ。無理矢理ね」

 

聞き慣れない声が僕の疑問に答えた。

声の方を見るとそこにいたのは、旧弓手川町駅で春川先輩の隣にいた女の人だった。

 

「駅にいた女の人」

「詩乃!何よ急に!」

「ちゃんとチャイム押したわよ?陽太郎が開けてくれたわ」

「陽太郎!あんた勝手に…!」

「レイジがだいじなはなしをしていたからな」

「まあまあ、落ち着きましょう。どうしたんすか朝田さんは?」

迅悠一(お宅のエリート)からこの時間に来るように言われたからよ。まあ、何となく事情は察したわ」

 

 

 

 

 

 




三雲修、空閑遊真、雨取千佳は玉狛支部で何を知るのか。
朝田詩乃の口から語られる夏樹の過去とは。
狙われる夏樹、ゼットから告げられる辻斬り事件の犯人の正体とは。
そして、ついに帰還する遠征部隊。

次回、【春川夏樹③】







キャラクター簡易紹介



朝田 詩乃(あさだ しの)

ボーダー総武支部所属
ポジション:狙撃手(スナイパー)


トリガーセット

メイントリガー
・イーグレット
・アイビス
・バッグワーム
・シールド

サブトリガー
・アステロイド:拳銃(ハンドガン)
・スパイダー
・バッグワーム
・シールド
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