修学旅行も終わり、オレたちはいつも通りの学校へ通うこととなる。
鳥間先生から聞いたが今日は転校生が来るそうだ。この時期に来るということは殺し屋で間違いないだろう。
オレたちは教室に入ると奥の席に大きな四角い機械があった。
鳥間先生から説明を受ける。
「ノルウェーから来た自律思考固定砲台だ。」
無理やりな設定を恥ずかしげそうに説明する。鳥間先生に同情する。
そして一時間目の授業が始まる。すると突然自律思考固定砲台が動いた。機械の中から銃やマシンガンがでてきて、授業中にも関わらず、打ち始めた。しかし殺せんせーはチョークではじいたりして難なくよける。
「ヌルフフフ、これでは生徒たちと変わりませんねぇ。」
「はい次の段階に行きます。」
そして再び打ち始める。先ほどと同じ様だと思っている殺せんせーは再びチョークではじく。しかし次の瞬間殺せんせーの指が溶けた。どうやらブラインド(隠し弾)でダメージを与えたようだ。
殺せんせーや皆も驚いた表情をしていた。
「次で殺せる確率は0.002%その次は0.004%・・・卒業までに殺せる確率は99%」
この機械は自分で学習して殺せんせーを追い込むように作られている。そしてこれの開発者は殺したあとことも考えているように思えた。
ほとんど授業とは言えない一時間目が終わり、皆は床落ちている大量の対殺せんせーBB段を見て唖然としていた。
「これ俺たちが片付けるのか?」
「掃除機能とかついてーねのかよ、固定砲台さんよぉ」
松下の問に彼女の返答はない。
「チッ、シカトかよ」
「やめとけ。機械に絡んでも仕方ねーよ」
吉田が松下を抑える。
オレたちが何か言ったところで変わらないだろう。
そして掃除を終わらせる。
結局オレたちはこの後の授業も同じ様に自律思考固定砲台の荒れ狂う暗殺に巻き込まれた。
これから毎日同じように授業の邪魔をされるのか・・・。これで確実に殺せればいいが絶対にそんな事にはならないだろう。こんな簡単に上手くいくなら苦労しない。
次の日学校に着くと機械にガムテープで巻かれていた。
自律思考固定砲台はそれに気づいた。
「殺せんせー。これでは銃を展開できません。拘束を解いてください。」
「うーん、そう言われましてもねぇ」
殺せんせーは困ったように頭を掻いた。
「この拘束はあなたの仕業ですか?明らかに生徒に対する加害であり、それは契約に禁じられています。」
「ちげーよ、俺だよ」
言ったのは寺坂だ。ガムテープを見せつけ不満そうに言う。
「どう考えても邪魔だろーが。常識くらい身につけてから殺しに来いよ」
「わからないよね。機械だから。」
「授業が終わったらほどいてあげるから」
他の皆も止めず、むしろ黙認していた。
結局今日の授業は寺坂の妨害によって昨日みたいになることはなかった。
今日の授業が終わり、オレはガムテープをはがすと言って教室に残っている。
「私も手伝うよ、綾小路君」
そしてなぜか不破も残っていた。
「なんで、不破も残っているんだ?」
「綾小路君が残るから私も残ろうかなって、それにこのまま自律思考固定砲台に妨害したたままでは開発者も黙ったままじゃないしね」
不破もわかっていたようだ。このまま暗殺を邪魔することはできないだろう。
「なんとかならないかな~」
不破は対策方を思いつかず、困っていた。
オレは考えていた案を言おうとしたが気配を感じ、口を閉じる。それと同時に突然機械が動き始める。
「マスター、至急対策をお願いします。」
オレたちの予測通り、開発者に連絡しようとする。
「駄目ですよ保護者に頼っては。」
言ったのは殺せんせーだ。先ほどのオレが感じた気配は殺せんせーだったようだ。
「あなたの保護者が考える戦術はこの教室の現状に合っているとは言い難い。それにあなたは生徒であり転校生です。皆と協調する方法をまず自分で考えなくては」
「・・・協調?」
「なぜ先生ではなく生徒に暗殺を邪魔されたかわかりますか?」
「・・・わかりません」
「では、綾小路君。答えてください」
突然殺せんせーはオレに回答を求める。
ここで模範的な回答は・・・
「オレたちにメリットがないからですかね?」
「そうです。彼らにしてみれば君の射撃で授業を邪魔される上、君が撒き散らした弾の始末に労力を使う。しかも君が殺せても賞金は君の保護者に行くでしょう。あなたの暗殺は他の生徒には何のメリットも無いわけです」
「・・・そう言われて理解しました。殺せんせー、クラスメイトの利害までは考慮していませんでした。」
自律思考固定砲台は学習能力が高い。今の説明で理解する。
「綾小路君と不破さんも手伝ってください。彼女を性能アップさせます」
危害を加えるのは契約違反だが性能アップさせることは禁じられていない。
殺せんせーがマッハでプログラムを組む。どうやら殺せんせーはプログラムもできるそうだ。
「凄いよ殺せんせー、律も手入れしちゃうんだ」
不破が言う。本当に何でもできる殺せんせー。オレは一つの疑問が出てくる。
それはいつその知識を手に入れたのか・・・。
まだそれはわからないだろう。
オレもホワイトルームで学習しているからプログラムについて理解している。
オレたちは殺せんせーの後ろで手伝いをしている。殺せんせーが組むプログラムを見るとオレたちクラスメイトと協調して射撃した場合の演算ソフトを作っていることがわかる。
「できました。ウイルスは入っていませんので受け取ってください。」
完成したそうだ。殺せんせーはそれを律に渡した。
「・・・これは!!たしかに皆で協力したほうが暗殺確率が各段と上がります」
「暗殺における協調の大切さを理解できたと思います。どうですか?皆と仲良くなりたいでしょう」
「・・・方法がわかりません」
「ヌルフフフ、安心してください。今からさらに性能アップさせます。」
マッハでドライバーなど様々な道具を持ってきた。
「綾小路君と不破さんはもう帰ってください。これ以上いるともう夜になってしまいますから」
「わかりました」
そうしてオレと不破は教室を出て家に帰る。
さらに次の日、教室に入るとやはり改造されていた。
そして電源がついた。
「おはようございます。皆さん。今日は素晴らしい天気ですね。こんな日を皆さんと過ごせて嬉しいです」
にこやかな表情であいさつをしてきた。皆は驚いた表情をしている。それはそうだろう。明らかに昨日までとは違うのだから。
「親近感を出すため全身表情液晶と体・制服のモデリングソフト、全て自作で8万円!!豊かな表情や明るい会話術、それらを操る膨大なソフトと追加メモリ12万円、先生の残高5円」
殺せんせーが後ろで言う。というかそこまで改造するとは思わなかった。
授業中に銃を撃つことなく平穏に過ごし、空き時間になる。
思いのほか大人気でクラスの皆が自律思考固定砲台に集まり、遊んでいた。
「このこの呼び方決めない?自律思考固定砲台っていくらなんでも」
片岡が皆に提案する。
「・・・何か一文字とって・・・律とかは?」
不破が言う。安直だが、悪くないと思った。
皆も律賛成のようだった。
「嬉しいです。では律とおよびください」
これで平穏な日常になると思いたいが、所詮は機械。これを見て開発者が黙ってはいられないだろう。
次の日、オレの予測通り律は元に戻っていた。無駄なものを削除や初期化されたのだろう。
「生徒に危害を加えないという契約だが、今後は改良行為も危害と見なすと言ってきた。」
鳥間先生が説明する。そして寺坂の所まで行きガムテープを奪う。
「そして君たちもだ、彼女を縛って壊れたりしたら賠償を請求するそうだ」
開発者は殺せんせーが改良することやオレたちが妨害することもできなくなるようにした。
これでまた律が転校した初日みたいに戻るというわけか。
「開発者とはこれまた厄介で・・・親よりも生徒の気持ちを尊重したいのですがねぇ」
さすがに殺せんせーも困った表情をしていた。
「攻撃準備を始めます。どうぞ授業に入ってください。殺せんせー」
そして一時間目が始まり機械が動き始める。また銃を展開されるかと思いきや、花が出てきた。
「殺せんせーは私のボディーに計985点改良しました。そのほとんどが削除、撤去、初期化してしまいました。しかし私個人は『協調能力』が必要不可欠だと判断し、消される前にメモリの隅に隠しました」
「素晴らしい律さんあなたは」
「はい。私の意志で親に逆らいました。殺せんせー、こういった行動を反抗期というのですよね。私は悪い子でしょうか?」
「とんでもない、中学三年生らしくて大いに結構。」
問題が解消されてよかった。
・・・もし律が開発者に反抗せず、転入初日と同じ様に戻っていたら・・・
殺せんせー程派手ではないが、オレたちに有利になるようにプログラムを組むつもりだったのだが・・・。
改良行為をしていけないのは殺せんせーだけだ。そしてオレたちは故障さえさせなければいいだけだからオレの改良行為は許される。
まあオレが手を打つ必要がなくなったわけだからもう関係ないが。
こうしてE組にメンバーが一人増えた。
読んでいただきありがとうございます。
誤字などがあれば訂正します。