暗殺教室へようこそ   作:あやよ

14 / 19
野球です。


13:野球の時間

梅雨が明け、暑くなってきた。

 

「クラス対抗球技大会ですか・・・健康な心身をスポーツで養う、大いに結構」 

 

球技大会、3年生全生徒のイベントの一つだ。

 

「ただトーナメント表にE組がないのはなぜです?」

 

「E組はエントリーされないんだ。1チーム余るという素敵な理由で。その代わり、大会の最後にエキシビジョンに出なきゃいけない」

 

トーナメント表の隅のところに確かに書かれていた、『E組対野球部』と。

 

つまり見せ物だ。男子は野球部と、女子はバスケ部と戦わなければならない。

 

「・・・なるほど、いつものやつですか」

 

殺せんせーが言うと寺坂グループが席を立つ。

 

「俺ら晒し者とか勘弁だわ、お前ら勝手にやっとけ」

 

寺坂がそう言って教室から出ていく。寺坂グループはこの教室にあまり馴染めていない。彼らがクラスの為に全力で挑めば大きな戦力になるんだけどな。

 

「野球なら頼れるのは杉野だけど、何か勝つ秘策とかねーの?」

 

前原の質問に杉野は首を振る。

 

「無理だよ。三年間野球してきたあいつらと、ほとんどが未経験の俺ら。勝つどころか勝負にならないね。それにさ、かなり強いんだ、うちの野球部」

 

この学校の野球部は強い。大会で表彰をもらうほどだ。

 

 

「でもさ、殺せんせー俺たち勝ちたいんだ。このE組で」

 

相手が強いことをわかった上で杉野が言う。

 

「ヌルフフフ、イトナ君の暗殺以降君たちは目標をはっきり言うようになりました」

 

そして殺せんせーはマッハで野球のコスプレをする。

 

「いいですよ。先生一度はやってみたかったんです。熱血教師」

 

見事にちゃぶ台まで用意している。・・・随分とノリノリだな。

 

「いいでしょう。その心意気に応えて、殺監督が勝てる作戦とトレーニングを授けましょう!!」

 

そして球技大会当日。

 

 

『それでは最後に……E組対野球部選抜の余興試合エキシビションマッチを行います』

 

 

放送後に入って来た野球部のメンバーは念入りにウォーミングアップを始める。

 

「何であんな気合い入ってんだよ」

 

「俺等相手じゃコールド勝ちで当たり前最低でも圧勝が義務だからな。マジで容赦なくるぞ」

 

向こうは向こうで活躍したい訳か・・・。

 

「そういえば殺監督は?」

 

菅谷がオレに聞く。

 

「・・・遠近法でボールに紛れ込んでいるな」

 

オレはいくつか転がっているボールの方を指しながら言う。潮田から聞いたが顔色とかでサインを出すらしい。

 

そして殺せんせーはサインを出す。潮田曰わく『殺す気で勝て』・・・だそうだ。

 

「確かに俺等にはもっとデカイ目標がいるんだ。奴等程度に勝てなきゃあの先生は殺せないな」

 

磯貝が言い、皆が顔を引き締める。

 

「よっしゃ!!殺るか!!」

 

「「おう!!」」

 

先行はE組、一番は木村。杉野以外は野球未経験、野球部の人達は明らかに舐めている。

 

一球目、進藤が投げる。急速の速さに木村は冷や汗をかいて棒立ちになってしまう。

 

進藤の球の速さは140キロ、中学生のレベルを超えている。

 

速いと思いつつもどこ呑気な木村。ふと殺監督の方を向くと早速指示を出して来た

 

 

(りょーかい)

 

理解した木村はバットを構え直した。

 

 

進藤は2球目を投げるこれもストライクになると思っていた観客達だが木村はバントの構えをしてボールに当てた。

 

『あーっとバントだ‼︎しかも良い所に転がしたぞ‼︎』

 

 

内野手は誰が捕るかで一瞬迷った。その一瞬さえあれば俊足の木村なら楽々とセーフにできた。

 

そして二番は潮田、進藤が投げたストレートに同じくセーフティーバントをする。

 

「今度は三塁線に強いバント!!前に出てきたサードが脇を抜かれた!!」

 

強豪とはいえ中学生、バントの処理もプロ並とはいかない。

 

まあ、向こうはこちらが狙った場所にバントできるなんて思ってもいなかったのだろう。当然だ、バントをするのは見た目に反して難しいからだ。

 

ではなぜ素人ができたか・・・それは殺せんせーで練習したからだ。オレは竹林と偵察していたからしていないが。

 

300キロで投げたり、分身で守備をしたり、囁きで集中力を乱したり、とにかく無茶苦茶な練習をした。

 

あまりにも早い球に見慣れたことで進藤の球が止まって見えるようになり、バントだけなら成功できるというカラクリだ。

 

野球部も焦り、試合の空気が変わり始める。

 

三番の磯貝もセーフティーバント、これでノーアウト満塁。そして・・・

 

四番は杉野、自信満々にバントを構える彼に対して、相手のピッチャーは明らかに動揺していた。

 

進藤は落ち着こうとして、球を強く握る。そして、一度深呼吸して、投げた。

 

だが、動揺が原因でコースとスピードが甘い。

 

杉野はそれを見逃さず、持ち方をバントから打撃に変え、打った。

 

球は外野を抜け、スリーベース。E組は一気に3点を獲得した。

 

このままいけば勝てる。そう思ったのもつかの間、理事長が来たのだ。

 

そして相手の監督に何か囁いた。そして野球部の監督が泡を吹いて倒れてしまった。

 

『えー只今入った情報によりますと野球部の顧問の寺井先生は試合前から重病で、部員達も先生が心配で野球どころではなかったとのこと』

 

上手いな・・・観客達にそう思わせることで空気がリセットされる。実際に監督が倒れているから信憑性を持たせることができる。

 

『それを見かねた理事長先生が急遽、指揮を執るそうです‼︎』

 

理事長が指揮を執ることでどうなるか・・・見せてもらうとしよう。

 

そして試合が再開する。

 

『なんと、これは!?』

 

外野選手を含めた守備全員が内野に集まる。本来ならこんなことをすればバッターの集中を阻害する極端な前進守備として審判による注意があるだろうが、審判はあちら側、注意するはずがない。

 

理事長が来たということはこちらが勝つのを阻止しようとしているということだ。自分の教育理念のために。

 

まあ、オレからE組の対応に集中してくれるとこちらも楽になるんだが。

 

前原がバッターボックスに立つ。練習したバントをしようとするが理事長に教育された進藤の威圧感から上に打ち上げてしまう。

 

続く岡島もバントでは難しいと考えて殺監督に指示を仰いだのだが、打つ手なしという返事に為すすべもなく討ち取られて3アウト。

 

 

一回裏、杉野の変化球とコントロールの良さで三者三振で終わる。杉野も十分強い、野球部にも通用するほどだ。

 

「ひょっとしたらこのまま勝てんじゃないか?」

 

「どーだろうな、あちら側のベンチで理事長が進藤を改造中だ」

 

理事長はベンチで進藤を改造している。正確には進藤の精神をだが。先ほどから理事長の言葉を繰り返して何度もブツブツと呟いている。このままいけばますますE組が不利になるだろう。

 

二回表、九番赤羽、しかし赤羽は打席につこうとせずに理事長に話しかける。

 

「こんだけ邪魔な位置で守ってんのにさ。審判の先生も注意しないの…観客(お前ら)もおかしいと思わないの?あー、そっか。お前らバカだから守備位置とか理解してないんだ」

 

赤羽が突然煽り始める、そんなことすると・・・

 

「小さい事でガタガタ言うなE組が!」

 

「たかだかエキシビジョンで守備にクレームつけてんじゃねーよ!」

 

「文句あるならバットで結果出してみろや!」

 

当然怒る。そして赤羽は殺監督の方を見てダメだったというような顔をする。それに対して殺監督はそれで良いというように顔に丸を出している。赤羽の煽りは殺監督の指示ということだ。

 

そして二回裏、改造された進藤が杉野の球を打ってツーベース。そこから流れるように打たれ2点取られてしまった。

 

三回表、E組は一人も累に出ることなく攻撃が終わってしまった。

 

三回裏、あと1点以上取られたらオレたちの勝ちが無くなる。ここでどう守かで試合が決まる。

 

 

「手本を見せなさい」

 

突然理事長が大きな声で言う。そして杉野が投げた瞬間バントの構えをする。

 

「ああっと!!ここでバントだー!!」

 

先ほどの仕返しと言わんばかりの連続のバント、こちらの戦術を丸々返された訳だ。しかも守備は全く練習していないから楽々セーフにされてしまう。

 

そして・・・

 

『さぁ、真打登場!我が校が誇るスーパースター進藤君だー‼︎』

 

このノーアウト満塁の状況にきて理事長が改造した進藤、ここで強者の圧倒的な一撃で試合を決めるつもりだ

 

止めなければ確実に負ける。

 

「磯貝、監督の命令だって」

 

「マジっすか」

 

そんな中赤羽が磯貝に言う、そしてバッターの方へ近づいていく。

 

『こっこの前進守備は!!』

 

「さっきそっちがやった時は審判は何も言わなかった。文句無いよね理事長?」

 

先ほどの挑発はこのためだったということだ。

明確な打撃妨害と見なすには守備がバットに触れた時だが、このような前進守備が集中を乱す妨害行為と見なすかは審判の判断次第である。しかし先程カルマのクレームを脚下した以上今回も黙認するしかない。

 

「どうぞご自由に、選ばれた者はこの程度で心を乱さない」

 

理事長の言うとおり進藤は全く表情を変えず集中している。

 

「へーえ、言ったね。じゃあ遠慮なく」

 

そして赤羽と磯貝はさらに近づく。バットを振れば当たる、ほとんどゼロ距離だ。

 

「は?」

 

ここで進藤はようやく動揺した。

 

「気にせず打てよスーパースター、ピッチャーの球は邪魔しないから」

 

「フフ、くだらないバッタリだ。構わず振りなさい、進藤くん。骨を砕いても打撃妨害を取られるのはE組の方だ」

 

理事長の指示でやけくそ気味にバットを振り抜いた進藤だったが、赤羽と磯貝は余裕でそれを躱した。

 

「ダメだよそんな遅いスイングじゃ。…次はさ、殺すつもりで振ってごらん」

 

追い討ちをするように赤羽が静かに煽る。 

 

この時点でもはや理事長の戦略に体がついていかないようになってしまい、第二球はどうにか振るが腰が引けたスイングになる。ホームベースに当たってバウンドしたボールをすぐにキャッチャーの潮田に投げ、そのボールを三塁に投げツーアウト。そしてそれを一塁に投げる。進藤は完全に力が抜けへたり込んでしまい動いてないポンポンとバウンドするボールを冷静にキャッチ。トリプルプレーだ。

 

三対二でこちらが勝利した。

 

理事長は試合が終わると無言で立ち去っていった。

今回の理事長を見せてもらったが中々のものだ。生徒を眼力言葉で洗脳し、普段以上の能力を出させる。もちろんあれが全てではないだろうが。まあ、理事長の洗脳とやらを見れただけでも良しとしよう。

 

 

こうして野球部との試合が終わった。

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

こうしたら面白いなどのリクエストがあれば感想の所などに言ってください。(それを実行する保証はありませんが)

誤字などがあれば訂正します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。