暗殺教室へようこそ   作:あやよ

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14:才能の時間

「視線を切らすな。ターゲットの動きを予測しろ。全員が予測すれば、それだけ奴の逃げ道を塞ぐことになる」

 

皆がナイフを振っている中、鳥間先生からのアドバイスが飛んでくる。

 

六月になり、鳥間先生にナイフを当てることができる生徒が増えてきた。

 

男子は磯貝と前原の二人ペア、そして赤羽一人、女子は岡野と片岡の二人ペアだ。

 

鳥間先生にナイフを当てれなくても全員能力が向上している。

 

寺坂、吉田、村松はやる気がないが全力でやれば大きな戦力になるだろう。

 

そう考えていると突然鳥間先生は彼の後ろにいた潮田を全力で振り払った。いつもならもう少し手加減をしているのだが。

 

「いったぁ」

 

「すまん!ちょっと強く防ぎすぎた」

 

「バッカでー。ちゃんと見てないからだ」

 

潮田には不思議な才能がある。川柳を提出するときに暗殺したとき、時々感じる殺気もそれを感じた。そして鳥間先生も潮田の異質さに反射したのだろう。

 

そう考えているとチャイムがなる。

 

「せんせ~。放課後、皆でお茶してこうよ~」

 

チャイムと共に去って行く鳥間先生に倉橋が声をかける。

 

「誘いは嬉しいがまだ仕事が残っていてな」

 

「私生活でもスキがね~な」

 

「なんか鳥間先生って私たちと距離があるっていうか・・・」

 

「私たちの事、大切にしてくれてるけど・・・でもそれってただ任務だからなのかな?」

 

矢田と倉橋がそう言うと砂場で遊んでいた殺せんせーがやってきた。

 

「そんなことはありません。確かにあの人は先生の暗殺のために送り込まれた工作員ですが、彼にもちゃんと素晴らしい教師の血が流れていますよ」 

 

殺せんせーが自信を持って言う。

 

鳥間先生が教室へ向かうと見知らぬ人が大荷物を持ってこちらに歩いて来た。そしてオレたちの前まで来ると荷物を置いて笑顔で挨拶してくる。

 

「やっ!!俺の名前は鷹岡明。今日から鳥間を補佐としてここで働く。よろしくな」

 

今日から新しい先生になるそうだ。そして大量の荷物からケーキやエクレアなどを取り出した。オレたちの差し入れらしい。

 

「いいんですか?こんなに高そうなの・・・」

 

「おう!食え食え!俺の財布を食うつもりでな」

 

磯貝の恐縮した問い掛けにも鷹岡先生は気のよさそうな返事で返してくる。

 

「鳥間先生とは同僚なのに雰囲気とか随分違うんすね」

 

「なんか近所の父ちゃんみたいですよ」

 

「ははは、いいじゃねーか父ちゃんで!!同じ教室にいるからには俺達家族みたいなもんだろ?」

 

木村や原の言葉にも同じ様な対応で答える。

 

皆がスイーツを食べている中オレは鷹岡先生を観察する。表面上は明るい感じだが、なにか裏がある。

 

「綾小路君は食べないの?」

 

オレが考えていると不破が話しかけてきた。

 

「まあな、今はあまり食欲がないからな」

 

「え~。せっかく美味しいのに、もったいない」

 

「オレの分は茅野にあげてくれ」

 

茅野は鷹岡先生がスイーツを出した瞬間に目が輝いていたからな。そして今も凄い勢いで食べている。

 

「あれは・・・同じ女子でもそこまで甘いもの好きはなかなかいないよ」

 

オレはスイーツは食べはしなかったがクラスの皆と日常的な会話をした。

 

 

次の日 

 

 

「よーし、皆集まったな‼︎ では今日から新しい体育を始めよう‼︎」

 

鷹岡先生が来てから初めての体育の時間だ。

ちなみに殺せんせーは海外でジェラートを食べに、烏間先生は事務作業に専念するとのことでグラウンドには来ていない。 

 

オレはある事をする。

 

「ちょっと厳しくなると思うが、終わったらまた美味いもん食わしてやるからな‼︎」

 

「そんなこと言って、本当は自分が食いたいだけじゃないの?」

 

「まーな、おかげでこの横腹だ」

 

中村からの茶々入れにも冗談で返したりしている。

 

「さて‼︎ 訓練内容の一新に伴ってE組の時間割りも変更になった。これを皆に回してくれ」

 

回された時間割を見てオレたちは驚愕した。なんと夜九時まで訓練までというカリキュラムだったのだ。

 

「これくらい当然さ。理事長にもちゃんと許可は貰ってる。では早速…………」

 

「ちょ、待ってくれよ!こんなんじゃ成績が落ちるよ!理事長もそれが狙いで許可してるんだ!こんなカリキュラムじゃ遊べないし……出来るわけねーよ!」

 

前原が抗議の声をあげる。当然だろう。こんなの普通できるはずがない。

 

すると鷹岡は突然前原の腹に膝蹴りをした。

 

前原が崩れ落ちる。

 

「出来ないじゃない。やるんだよ。言ったろ?俺は父親だ。父親の命令を聞かない子供が何処にいる?」

 

なるほど、これが鷹岡の本性だったという訳か。恐怖を植え付けることによって教え子を従わせるということか。

 

「さぁ、まずはスクワット百回かける三セットだ。抜けたい奴は抜けてもいいぞ。その時は俺の育てた屈強な兵士が代わりに入る。一人や二人入れ替わってもあのタコは逃げ出すまい」

 

鷹岡はあえて逃げ道を提案する。しかし逃げるということは退学すると同じ意味だ。

 

「けどな、俺はそういう事したくないんだ。お前らは大事な家族なんだからよ。家族全員で地球の危機を救おうぜ‼︎ なっ?」

 

白々しいな。鷹岡はそんなこと微塵も思っていない。こいつはオレ達の中から大半を潰すつもりだ。そして残った生徒が殺せんせーを殺すといったところか。

ついていけなくなった者から脱落する、まるであの場所のように。

 

「な?お前は父ちゃんに着いてきてくれるよな?」

 

そんな鷹岡が次に狙いをつけたのは神崎だった。彼女は先生に対する恐怖から表情は強張り脚を震えさせている。躊躇なく暴力を振るってくる男が目の前にいたら恐怖するのは当たり前のことだ。それが女子なら尚更だ。

 

「・・・は、はい。あの、・・・私は嫌です。烏間先生の授業を希望します」

 

拒絶すれば殴られるとわかっていながら神崎は自分の意見をはっきりと言った。この状況で自分の意見をはっきり言える人は中々いない。

 

しかし今ので鷹岡は神崎を殴るに違いない。

 

「鷹岡。オレもあんたの授業より鳥間先生の授業の方がいい」

 

鷹岡が殴る動きに入る前にオレは言葉を出す。女子である神崎が殴れたらどうなるかわからない。オレはあえて呼び捨てにする。それが気に障ったのか、鷹岡はオレを殴る。・・・いたい。

 

「父親を呼び捨てするとはいい度胸だな、もう一度舐めた態度すれば、本気で殴るぞ」

 

「ごめんなさい、鷹岡先生」

 

オレが折れたように見せると鷹岡はニヤリとする。

 

 

「文句があるなら拳と拳で語り合う。そっちの方が父ちゃんは得意だぞ?」

 

鷹岡はあくまで暴力で恐怖をさせるようだ。

 

「やめろ鷹岡!大丈夫か?前原君。それに綾小路君」

 

鳥間先生が駆けつけて心配する。

 

「大丈夫です。」

 

前原はお腹を押さえながら言う。オレもそれに合わせて答える。

 

「ちゃんと手加減してるさ鳥間、大事な俺の家族だ。当然だろ」

 

「いいや、あなたの家族じゃない、私の生徒です。私が目を離した隙に何をしている」

 

「「殺せんせー!」」

 

殺せんせーが来たことにより皆は安堵する。

 

「文句があるのかモンスター?短時間でお前を殺す暗殺者を育ててるんだぜ。厳しくなるのは当然だろう。それとも何か?多少教育論が違うだけでお前に危害を加えていない男を攻撃するのか?」

 

鷹岡の言うことに対して殺せんせーは何も言えずにいた。そしてオレ達は鷹岡の授業を受けさせられた。

 

手始めにスクワット300回、皆が必死に食らいつく中オレはスクワットをしながら考える。結論から言うと鷹岡の方法では殺せんせーを殺す事はできない。なぜなら人数を減らしてまで個の能力を上げるという考えそのものが間違っているからだ。皆がこの一年でいくらレベルを上げた所で殺せんせーどころか鳥間先生を倒すことはできないだろう。

 

だから鷹岡には退出させたいのだが・・・

 

「鳥間先生~」

 

耐えられなくなった倉橋が助けを求める。それを鷹岡は聞き逃さなかった。

 

「おい。鳥間は俺達の家族の一員じゃないぞ、おしおきだなぁ、父ちゃんだけを頼ろうとしない子は」

 

鷹岡が倉橋を殴ろうとする。しかしそれは失敗に終わる。鳥間先生が鷹岡を止めたからだ。

 

「それ以上生徒達に手荒くするな。暴れたいなら俺が相手を勤める。」

 

「「鳥間先生」」

 

鳥間先生が止めたにも関わらず鷹岡はまだ余裕の表情だった。

 

「これは教育なんだ、鳥間。けど生徒たちも俺を信用してないみたいだし。そこでこうしよう。こいつで決めるんだ」

 

そう言って彼が懐から出したのは対殺せんせーナイフ。

 

「お前が選んだ生徒と俺が闘い、一度でもナイフを当てられたら、お前の教育は俺より優れていたのだと認めよう。その時はお前に訓練を全部任せて出てってやる」

 

皆の顔が明るくなる。ナイフのトレーニングを毎日しているオレ達なら可能性は大いにある。

 

「ただし使うナイフはこれじゃない」

 

鷹岡は鞄から本物のナイフを取り出し、地面に刺した。

 

「殺す相手が人間なんだ、使う刃物も本物じゃなくてはなぁ」

 

「よせ!!彼らは人間を殺す訓練も用意もしていない」

 

鳥間先生が抗議するが鷹岡は余裕そうに言う。

 

「安心しな、寸土目でも良い。俺は素手なんだ。ちょうど良いハンデだろ?さぁ、烏間一人選べ。選ばないなら俺に服従だ!」

 

鳥間先生は鷹岡が投げた本物のナイフを拾い、皆の方へ向かう。果たして誰を選ぶのだろうか。

 

「渚君、できるか?」

 

選んだのは潮田だった。潮田は覚悟を決めナイフを受け取り構える。

 

二人の闘いが始った。

 

鷹岡は油断している。それに対して潮田はどうするか・・・。

 

潮田の取った行動は普通に歩いて近づいた。いつも通りに歩くように。そして鷹岡と身体がぶつかる距離まで近づき、全力でナイフを振った。

 

あまりの不意打ちに、鷹岡の姿勢は崩れた。

 

そして服を引っ張りながら背後に回って目を隠し、首筋にナイフを突きつけた。

 

「・・・捕まえた」

 

潮田が勝った。その事実に皆は驚き言葉をなくしていた。

 

「あれ?ひょっとしてミネ打ちじゃダメなんでしたっけ?」

 

きょとんとしている周りの雰囲気に、首を傾げる潮田。

そこに殺せんせーが潮田からナイフを奪う。

 

「そこまで、勝負ありですね、鳥間先生。」

 

殺せんせーが潮田から奪ったナイフを食べながら言う。

それにしても潮田はすごいな、プロである鷹岡に勝ったのだから。ルールがなければ鷹岡は死んでいたんだ。

 

オレにはあんな暗殺はできないだろう。

 

「このガキ……まぐれの勝ちがそんなに嬉しいか⁉︎ もう一回だ‼︎ 今度は油断しねぇ、心も身体も全部残らずへし折ってやる‼︎」

 

鷹岡は潮田に対して怒りを表す。今すぐ襲いかかりそうなほど余裕を失っていた。そんな鷹岡に物怖じすることなく鷹岡と向き合う。

 

「確かに、次やったら絶対に僕が負けます。でも僕らの担任は殺せんせーで、僕らの教官は烏間先生です。これは絶対に譲れません。本気で僕らを強くしようとしてくれてたのは感謝します。でもごめんなさい、出ていって下さい」

 

しかし既にキレている鷹岡に大人の対応をする余裕などない。

 

「黙っ・・・て聞いてりゃ、ガキの分際で・・・大人になんて口を・・・」

 

 

言葉が途切れ途切れになるほど怒りが限界を迎えており、潮田の言葉を聞き取った鷹岡は枷が外れたように襲い掛かった。

 

しかし烏間先生が駆け込み、鷹岡の顎に肘うちを決めた。そして鷹岡先生は仰向けに倒れ込む。

 

 

「……俺の身内が迷惑を掛けてすまなかった。後の事は心配するな。俺一人で君達の教官を務められるように上と交渉する。いざとなれば銃で脅してでも許可をもらうさ」

 

烏間先生の言葉で皆の顔に笑顔が浮かぶ。

 

それを聞いていた鷹岡が上体を起こしながら烏間先生に反発する。

 

「くっ……やらせるか、そんなこと。俺が先に掛け合って……」

 

「防衛省との交渉の必要はありません」

 

と、そこに理事長が姿を現した。

 

悠然とした足取りで歩いてくる理事長に殺せんせーが問い掛ける。

 

「……ご用は?」

 

「経営者として様子を見に来ました。新任の先生の手腕に興味があったのでね。鷹岡先生、あなたの授業は非常につまらなかった。今すぐクビにしたいところですが・・・もうしばらくだけチャンスを与えましょう。それまでに結果を残してください」

 

理事長がそう言いここから立ち去る。その時一瞬だけ、それも他の人には気づかない程度にオレを見て薄く笑う。

 

権力を握っているのは防衛省ではなく、理事長だったということだ。

そして鷹岡を残すことにしたのだ。

 

チャイムが鳴る。

 

鷹岡は助かったと言わんばかりに高らかに笑いながらグラウンドから去っていった。

 

次の体育も鷹岡が授業をするということだ。

 

 




読んでいただきありがとうございます。

今回は少し原作改変しました。鷹岡の話はもう少しだけ続きます。

こうしたら面白いなどのリクエストがあれば感想の所などに言ってください。(それを実行する保証はありませんが)

誤字などがあれば訂正します。

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