シロ・・・・・いやオレによってな。
「寺坂、お前は退学する道を選ぶのか。だとしたらそれは逃げの選択だ。お前は逃げずに皆の所に行くべきなんだ。そうした上でどうするか自分で考えるべきだ」
「綾小路・・・」
オレは立ち上がる。
「それに一つだけ間違いを正さないといけない所がある。それはお前はこのクラスに必要な存在ということだ」
そう言ってオレは皆のいる所に行く。今頃イトナと殺せんせーが戦ってるからな。
殺せんせーの所に行くと予想通りイトナと殺せんせーが
戦っている。いや戦っているというよりは殺せんせーが防戦一方だった。それはそうだろう、なぜならあの水をかなり吸ったせいで、殺せんせーの動きがかなり遅く、明らかに殺せんせーが不利だからだ。しかもそれだけではない。
「でも押されすぎな気がする。あの程度の水のハンデなら、何とかなるんじゃ…?」
「水のせいだけじゃねぇ。力を発揮できねぇのは、お前らを助けたからだよ。見ろ、タコの頭上を」
すると寺坂が来た。寺坂の言う通り殺せんせーの頭上を見ると、原と村松と吉田が崖の上にいる。まだ村松と吉田は崖に捕まっているから良いが、原は崖の上にある木の枝に捕まっている。今にも木が折れそうだ。
「あいつらの安全に気を配るからなお一層集中できない。
あのシロの奴ならそこまで計算してるだろうさ。恐ろしい奴だよ」
「のん気に言ってんじゃねーよ寺坂!!原たちあれマジで危険だぞ!!
おまえひょっとして、今回の事全部奴等に操られてたのかよ!?」
前原が寺坂に言う。それに対して寺坂はフッと笑った。
「あーそうだよ。目標もビジョンも無ぇ短絡的な奴は、頭の良い奴に操られる運命なんだよ。だがよ。操られる相手ぐらいは選びてえ」
そう言った寺坂先ほどと違い、もう逃げずに立ち向かうと決心した顔たった。
もう大丈夫だな。
「奴等はこりごりだ。賞金持って行かれんのもやっぱり気に入らねぇ。だからカルマ、テメーが俺を操ってみろや!
その狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろ!!カンペキに実行してあそこにいるのを助けてやらァ!!」
「…良いけど、実行できんの?俺の作戦…死ぬかもよ」
「やってやんよ。こちとら実績持ってる実行犯だぜ」
赤羽が作戦を考えている時寺坂はオレの方を見てきた。
(これでいいか?)
(ああ)
と目で語り合えう。
そして
「思いついた!原さんは助けずに放っとこう!」
赤羽がそう言うと皆げんなりしたのは言うまでもない。
「おい、カルマふざけてんのか?原が1番あぶねぇだろうが!ふとましいから身動き取れねーし、ヘヴィだから今にも枝が折れそうになったんだろうが」
寺坂が大声で怒鳴る。確かにふざけているようにしか思えないよな。
「まぁまぁ、良いから。それより気づいた?寺坂、昨日と同じシャツなんだ」
なるほど赤羽も気づいていたか。大体赤羽の作戦がわかった。寺坂にしかできない作戦だ。
「ズボラなんだよねー、やっぱ寺坂は悪巧みは向いてないわ」
「あ!?」
「でも、頭は悪くても体力と実行力はあるから、お前を軸に作戦立てるの面白いんだ。俺を信じて動いてよ。悪いようにはしないから」
「…バカは余計だ。良いから速く指示よこせ」
寺坂のシャツのボタンをちぎり、カルマは作戦を話しはじめた。
赤羽が寺坂に作戦を話している時、崖の下にいる殺せんせーの様子を見る。当たり前だけど、殺せんせーが不利だ。パンパンに体が膨らんでいて、かなり動かし辛そうにしている。
「さぁて、足元の触手も水を吸って動かなくなってきたね。トドメにかかろうイトナ、邪魔な触手を全て切り落とし、その上で『心臓』を…」
‥‥『心臓』かそれが殺せんせーの弱点なのか?まあそれがどこにあるかわからない以上意味ないか。
「おいシロ!イトナ!」
そう考えていると寺坂がイトナの方に近づく。
「…寺坂くんか。近くにいたら危ないよ?」
「よくも俺を騙してくれたな」
「まぁそう怒るなよ。ちょっとクラスメイトを巻き込んじゃっただけじゃないか。E組で浮いてた君にとっては丁度いいだろ?」
「うるせぇ!てめーらはゆるさねぇ!」
寺坂はシャツを脱ぎ、水溜まりに足を踏み入れた。
「イトナ!テメェ俺とタイマンはれや!」
「やめなさい寺坂くん!君が勝てる相手じゃない!」
赤羽が考えた戦術だと知らない殺せんせーは
「すっこんでろ膨れタコ!」
「…布1枚でイトナの触手を防ごうとは、健気だねぇ。黙らせろイトナ、殺せんせーに気をつけながら」
…完全にイトナと寺坂の戦闘モードだ。シロが命令したら、イトナは間違いなく寺坂を攻撃する。正面から戦って勝てないのは目に見えている。
「カルマ君!」
「いーんだよ、死にゃしない。シロは俺たち生徒を殺すのが目的じゃない。生きてるからこそ殺せんせーの集中を削げるんだ。原さんも一見超危険だけど、イトナの攻撃の的になることはない」
そう赤羽が話している間に大きな衝突音がする。寺坂がイトナの攻撃を受けた音だ。
普通ならイトナの攻撃を受ければ一発で気絶するだろう。しかし寺坂は耐えたのだ。
「だから寺坂に言っておいたよ。気絶する程度の触手は喰らうけど、逆に言えばスピードも威力もその程度、死ぬ気でくらいつけってさ」
赤羽はそれをわかって寺坂を使ったということだ。そしてこの瞬間シロの計画は破綻した。
「よく耐えたね。ではイトナ、もう1発あげなさい。背後のタコに気をつけながら」
シロの言葉に従い、イトナは触手を引き戻す。さっき寺坂が持っていたシャツがその触手に引っかかっている。イトナはそれに構わず第2撃を繰り出そうとしている。
「…ッ?くしゅんッ!」
突然くしゃみをするイトナ、
「寺坂のシャツが昨日と同じって事は、昨日寺坂が撒いたあの変なスプレーの成分をたっぷり浴びたシャツって事だ。それって殺せんせーの粘液をダダ漏れにした成分でしょ?イトナだってタダで済むはずがない」
そしてその隙に殺せんせーが原を助ける。これで状況が変わり始める。
さらに赤羽は皆に指示をだす。理解したオレ達は一気に飛ぶ。
「殺せんせーと弱点同じなんだよね。じゃあ同じ事やり返せばいいわけだ」
崖の上から俺たちが一斉に水溜まりに着地する。その衝撃で水が飛び散り、イトナの触手が水を吸った。
「どうする?まだ続けるならこっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」
オレ達はそれぞれ水を構える。
「…してやられたな。丁寧に積み上げた作戦が、たかが生徒の作戦と実行でメチャメチャにされてしまった。ここは退こう。触手の制御細胞は、感情に大きく左右されるシロモノ、この子たちを皆殺しにしようものなら、反物質蔵がどう暴走するか分からん。帰るよイトナ」
イトナとシロは無理だと判断して逃げていった。
「ふー、なんとか追っ払えたな」
シロがいなくなりみんな安堵する。
「良かったね殺せんせー、私たちのお陰で命拾いして」
岡野が殺せんせーに言う。
「ヌルフフフフ、勿論感謝してます。まだまだ『奥の手』はありましたがね」
オレは殺せんせーと岡野との会話を聞きながらオレは寺坂の方を見る。
寺坂はもうクラスに馴染んでいる。もう問題なさそうだ。
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三人称視点
その日の夜ある場所シロはある男と待ち合わせをしていた。
「まったく、今回も失敗してしまったではないか、あと少しで上手くいくはずだったんだけどな」
そう独り言を言っているとその男が来る。
「遅かったじゃないか、綾小路君」
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オレは今シロの所にいる。この一連の事件が終わった後会う約束をしていた。今回シロが仕掛けたこの事件についてだ。少し前に遡る。
寺坂とシロが話しているのをオレは気配を消して聞いたいた。
そして寺坂がいなくなった後オレはシロの前に姿を表す。
「シロ、今回ので確実に殺せるのか?」
オレは確認する。
「ああ、殺せるさ」
とシロは自信満々に答える。こいつはオレに作戦を教えていない。どんな仕掛けをしたかわからないが、こいつは間違いなくまともな方法で暗殺しない。
「オレが更に協力すればより確実に成功するぞ?」
今回オレは大したことはしていない。
「ああ大丈夫、君の協力はいらないよ。私が計画し、イトナが殺すんだ。寺坂君はその駒でしかないよ」
こいつは人を道具としか見ない。扱えきれる道具しか使わないということか。
「お前は確か‥‥あの赤髪のとなりの席のやつだったか」
‥‥と考えているとイトナがオレに殺気立ちながら睨んで言う。オレはそれに対し表情が変わることはない。
「…訂正しよう。お前はあの赤髪のやつより強い。」
そんなオレを見たイトナからそんなことを言われた。
「だが俺より弱い、だから殺さないでやる」
触手持ちに真正面から戦って勝てるはずもない。
「成功するといいな」
オレはそれだけ言ってここから立ち去った。
こうしてシロの計画が実行されたが失敗に終わった。
「それにしても驚いたよ、まさか君がプールに入っていたなんて。私を信用していた訳ではないんだろ?」
オレはシロから作戦を聞いていないからな。普通なら何が起こるかわからないからプールに入ることはしないだろう。だがオレは危険だとわかっていながらあえて入った。
「あんたがどんな手を打ってくるかは大体わかっていたからな。それにオレだけ違う行動をしていたらみんなから怪しまれるだろ?」
「殺せんせーが助けると信じていたのか」
「まあそれも少しだけあるが完全に信用したわけじゃない。」
少なくとも殺せんせーはオレ達に何か隠しているのは事実だ。
「信用してないとしたらそれこそ恐ろしいよ。君は普通じゃない」
「オレのことはもういいんですよ。それよりあんたに聞きたいことがある。」
「なにかな?」
今イトナは触手の調整中でいない。ここでオレは思ったことを言うことにした。
「イトナは捨て駒なんだろ?」
そうオレが言った瞬間シロは驚いた表情になった。
「どうしてそう思ったのかい?」
「今回あんたの計画が呆気なく失敗したからだ。仮にオレがあんたならもっと念入りに計画した」
「いや、私の計画は完璧だった。生徒達が邪魔しなければね」
「だからそれを含めて呆気ないって言っているんだよ」
仮に今回ので本気で殺そうとするなら持久戦をした時点で生徒が邪魔をすることくらいわかったはずだ。今回は寺坂が起点となったが他にも邪魔をする方法はあるからな。
それに殺せんせーも一回目のイトナと戦闘した時より焦りがなかった。
「それにしても君は恐ろしい人だ。人が思っていることを的確に読んでくる。」
そしてシロは観念したようにため息を吐きながら答える。
「そうだよイトナはまだ実験段階だよ、まさかこうも早くバレるとは思えなかった。本当に恐ろしい人だよ。でもそれでも問題ないよ。私は絶対にヤツを殺す」
そう言ったシロはすごい殺気を放っていた。その意気でやれば少しはマシになったんじゃないだろうか。
「じゃあね、綾小路君。また会おう」
そしてシロは去っていった。
今回オレの目的は2つあった。一つ目は寺坂を利用しそして再起させる事。二つ目はシロの戦略を把握し、情報を得る事だ。
だから今回オレがしたことは二つ。一つ目は寺坂の帰りの時間やルートをシロに教えシロが寺坂を利用するようにした。シロは不用意に動くことはできないからな。そして二つ目は寺坂の暗殺をスムーズに進むようにみんなを説得して協力させた。
寺坂が全力でやればオレも裏で動きやすくなる。オレの戦略も広がるだろう。そしてシロの情報に関してわかったことがある。それはシロはあらゆるもの全てが道具でしかないということ。
‥‥そして触手を信じてやまないということだ。それはつまり一度目にイトナが来る前シロがある生徒を見つめていた人が触手を持っていると考えて間違いないだろう。
それはオレにとって最悪でもありそして最高でもあった。
ミスをすれば最悪死ぬ。だが成功すればオレの駒になということだ。
そして成功するために必要な鍵はイトナだ。今はシロといるがこのままでは使い捨てられ死ぬ可能性が高い。
‥‥だいぶ計画からズレたが結局やる事は変わらないということか。
オレは殺せんせーを殺す計画を立て直した。
以上が寺坂編です。今後は期末試験編ですが、綾小路が今よりも行動するかもしれないですね。
最近投稿することが全然できませんでましたが今度よろしくお願いします。