いーちにーさんしー
みんな同時に数えながらナイフを振っている。
「どんな姿勢でもバランスを崩さない!!」
指導してる人は副担任である烏間先生だ。といってもただの先生ではなく防衛省を務めている。オレたちに暗殺を依頼した人だ。
殺せんせーが寂しそうに烏間先生に何か言っている。
「ちょっと寂しいですね」
「今日から体育の時間は俺の受け持ちだ。それにこの時間はどっかに行ってろと言っただろう。」
「酷いですよ烏間先生。私の体育は評判よかったのに・・・」
・・・どこがだろうか。前の体育は殺せんせーが担当していた。
しかしあまりにも速すぎる動きをする殺せんせーは不評だった。
「異次元すぎてねー」
「体育は人間の先生に教わりたいわ」
「にゅや!?わかりました」
オレたち生徒からも不評だったことを知り殺せんせーは砂場で悲しそうに遊び始めた。
「やっとターゲットを追っ払えた。授業を続けるぞ」
「でも烏間先生。こんな訓練意味あるんすか?しかもターゲットがいる前でさ」
「勉強も暗殺も同じ事だ。基礎は身につけるほど役に立つ」
しかしほとんどの生徒はまだ疑問のままだった。
「例えば・・そうだな磯貝君、前原君、そのナイフを俺に当ててみろ。」
「え・・いいんですか?」
「二人がかりで?」
「対先生用ナイフなら人間に怪我はない。かすりでもすれば今日の授業は終わりでいい。」
鳥間先生がそう言うと磯貝は戸惑いながらも先生にナイフをさそうとする。
「そんじゃ・・・あれ?」
「さあ」
「くっ」
「このように多少の心得があれば素人の二人のナイフくらいは俺でも捌ける。」
磯貝と前原は運動神経がいい。しかしそれを鳥間先生は余裕で捌いていた。しばらく二人の攻撃が続くが当たる気配がまるでない。殺せんせーもこをらの方をみてニヤニヤしている。
二人は疲れて攻撃をやめた。
「俺に当てられないようではマッハ20のやつに当たる確立はほぼ0だろう。それに今の間の攻防にやつは砂場に城を作った上に着替えて茶まで立てている」
((腹立つわー))
「クラス全員が俺に攻撃を当てれるようになれば少なくとも暗殺の成功率は各段に上がる。ナイフや狙撃、暗殺に必要な基礎の数々、体育の時間で俺から教えさせてもらう」
鳥間先生がそう言って授業が終わった。さっきから後ろの方から気配を感じていたのでオレは後ろを向く。誰だあいつ?
他の皆は・・・
「六時間目小テストかー」
「体育で終わってほしかったよね。」
「!」
どうやら潮田たちも気づいたようだ。
「カルマ君・・・帰って来たんだ。」
「よー渚君久しぶり」
「あれが例の殺せんせー?すっげ本当にタコみたいだ」
そう言って殺せんせーの方へ向かっていく。それに殺せんせーが気づいた。
「赤羽業君ですね。今日が停学明けと聞いてました。」
どうやら停学明けの生徒だったようだ。
殺せんせーを見てあまり驚いていない。政府の人から前々から聞いていたのだろう。
「初日から遅刻はいけませんねー」
殺せんせーは顔にバツ印を出しながら赤羽に注意する。
「あはは、生活リズムが戻らなくてさー。下の名前で気安く呼んでよ、とりあえずよろしく先生」
そう言って赤羽は手を差し出す。
「こちらこそよろしくお願いします。」
殺せんせーもそれに答えるようにして、握手をする。
次の瞬間殺せんせーの手が溶け始める。おそらく右手に対先生用を仕掛けてあるのだろう。
殺せんせーは慌てて赤羽から離れる。
それを見た皆は驚いていた。それはそうだろう。なぜなら殺せんせーにダメージを与えた生徒は今までいなかったのだから。
「へー本当に効くんだ対先生用ナイフ。細かく切って貼っつけてみたんだけど、けどさあ先生こんな単純な手に引っかかるとか・・・しかもそんなに離れるなんてビビり過ぎじゃね?」
赤羽は殺せんせーにゆっくり近づく。
「殺せないから『殺せんせー』って聞いてたけど・・・あれー、せんせーひょっとしてチョロい人?」
「ムキーーーー」
赤羽の煽りに殺せんせーはわかりやすいほど効いていた。
「渚、私E組来てから日浅いから知らないんだけど彼どんな人なの?」
オレと同じことを思っていた茅野は潮田に聞く。
「・・・うん、1年2年は同じクラスだったんだけど2年の時続けざまに暴力沙汰で停学食らって、このE組にはそういう生徒も落とされるんだ。」
そうだったのか。成績は悪くなくてもE組に落とされることもあるらしい。
「でもこの教室では一番の優等生かもしれない」
「どういうこと?」
「凶器や騙し討ちの『基礎』なら多分カルマ君が群を抜いている」
確かに先ほどの騙し討ちも成功していた。不自然さを感じさせずに相手を騙すことはとても難しいことだ。そしてそれはこの教室で大きな武器となるだろう。
こうして赤羽業がE組に加わった。
赤羽業が参戦しました。