私はつくづく熱し易く冷めやすい性分なのだと痛感します。
「グガァアアアアオッ!」
雄叫びを木霊し一歩一歩足を前に踏み入れながら、アクセルへ向けじわじわと前進する
エレキベムラー。
「なぁ、冒険者の俺達でアイツを何とかできるのか?」
「デストロイヤーの時だってこんな感じだったんだ…やるしかねぇだろ、
「こんな時にあのウィズさんも居てくれたら頼もしいのに…」
「聞いた話だとあのモンスターと一緒に現れた黒い巨人にやられたそうよ、命に別状はないらしいけれど意識がまだ戻ってないとか」
「マジかよ!あのウィズさんがか!?」
「ヤバいぞヤバいぞ…目の前のモンスターだけでも手一杯なのに、あの巨人がまた出て来たら今度こそお終いだ」
夫々言うことは違えど、どの冒険者達の顔は共通して不安と恐怖を表していた。
「(じゅんくん…絶対に生きて帰るからね)」
「(どこまで通用するか分からないけど…やるしかないよね)」
じゅんの身を案じながら帰って来ることを誓うゆんゆんと、腕輪を見つめながら決意を改めるクリス。
「も〜なんで怪獣相手に私達も参加するのよ〜!このままどっか逃げた方が良いってのにぃ〜!」
「俺だってそうしてぇよ!けど借金は帳消しにならねぇし、折角の屋敷が壊されちゃ住める所も無くなっちまうし、それに今屋敷にはウィズが寝てるんだからしょうがねぇだろ」
「アクア、紅魔族随一の爆裂魔法を扱うこの私が居るのですから恐れる事などありません!あの巨大モンスターだけでなく、あの巨人がまたも現れるようでしたらまとめて消し去ってご覧に入れますよ!」
弱腰のアクアに活と安心を与えるべく、闘争心を剥き出しにし堂々と宣言するめぐみん
そんなめぐみんの姿を見るカズマは今回ばかりは頼もしく思えてしまった。
なにせ相手は巨大モンスター…否、特撮テレビの中の空想の産物でしかなかった怪獣が現実に存在する。
この世界にはウルトラシリーズの様な防衛組織もメカも存在しない…ただ魔法やスキルと言うのがある。
特にめぐみんの使う爆裂魔法の威力は何度も目にしたから信頼できる、現状あの怪獣を仕留める可能性の有る存在だ。
何とか上手く事を運べば勝てる可能性も無い事もない…だがもう一つの問題があった。
「(…頼むから、出てこないでくれよなマジで)」
カズマが懸念してることは他でもないあの黒い巨人の事だ。
昨日の街とウィズに対する行いを目の当たりにしたカズマの中では、奴はベリアルやノアとの因縁のある“アイツ”と同類の邪悪な存在なのだと結論づけていた。
だが同時に間近で見たあの巨人の強さ…ハッキリ言って全員で挑めば勝てるのかと問われれば…答えはNO以外になかった。
只でさえ怪獣を倒そうとするので一杯いっぱいなのに巨人も現れ三つ巴になろうものなら、待ってるのは地獄の如き最悪の全滅エンド。
今回ばかりは冗談抜きに起こらないことを願うカズマだったが、その願いも虚しく現実と化する事になる。
但しそれが、必ずしも悪い意味ばかりとは限らなかった。
その頃、料理を全て胃の中へ詰め込み所持する物を全て揃えたじゅんは、宿屋から飛び出し冒険者達の居る正門の方へと体を向けその場に佇む。
これから自分の行う事はまたも皆に危害を加えるかもしれない…また勝手に暴れるかもしれない…けれどもそんな自分を“大丈夫だよ”と信じてくれたゆんゆんが…“大好き”と言ってくれたクリスがあそこに居る。
「ぼく…にげない!」
じゅんは再び、そして自らの意思で変身する覚悟と大切な二人を守るという決意を固め、首にぶら下げたペンダントを握りしめる。
本来の姿へと戻った変身デバイス“ゼファーローダー(略ZL)”から差込口が展開すると、じゅんは両腰の箱“メモリチャージホルダー(略MCH)”から右側を開け銀色のメモリを取り出す。
「始まりの…戦士!」
スイッチを押して起動し、ZLの右側へと差し入れる。
続くように今度は左側のホルダーから黒色のメモリを取り出す。
「最後…なるモノ!」
ウルトラメモリ同様にスイッチを押して起動させると、残り空いた左側の差込口に入れる。
二つのメモリを差し込み両手で閉じる。
全ての準備を整えたじゅん、落ち着かせるように目を瞑り、直後にカッと目を見開く。
「勇気…出す!!!」
そう強く宣言したじゅんは、中央のスイッチを両手で押した。
銀と黒双方の光に包まれたじゅんは、再び巨人となってアクセル内に降臨した。
『………』
「み、みんな見ろ!黒い巨人だぁ!」
「そんな!い、いつの間に街の中に現れたのよ!?」
「あぁ…前にはモンスターが…後ろには巨人が…俺達もうお終いなんだぁ…」
地響きを上げる事無く突如として再び現れた黒い巨人を目の当たりにする冒険者達。
昨夜の地獄が再び訪れるのか…殆どの者達が恐怖と絶望に支配されていた。
「ちょ〜!?いきなり現れちゃったんですけどあのウルトラマン!」
「おのれ小癪な真似を…!これではまとめてどころか迂闊に放つ事など出来ないじゃないですか!」
「ああもう!どうしてこういう時に限ってフラグ的な事が起こっちまうんだよ!」
絵に描いた最悪の展開に思わず毒づくカズマ。
その一方でゆんゆんとクリスは、巨人の正体がじゅんであることを知っているが故に驚きを隠せずにいた。
「(じゅんくん!?どうして、裏門に逃げてた筈じゃなかったの!?)」
「(あそこには使ってた宿屋がある所…まさかじゅん!?自分からなったって言うの!?)」
逃げるよう促した筈なのになぜ自ら変身するような真似をしたのか理解できず二人が混乱する中、それは起こった。
「グルルルルゥッ!」
昨日の事を覚えてる故なのか、巨人の姿を見たエレキベムラーは途端に敵意をむき出す様に唸り声を上げると、口の中から青白い光が発光し始める。
「く、来るぞ!みんな逃げろ!」
「どこに逃げろって言うのよ!?」
「あああああ!もうお終いだぁあああああ!」
背後の巨人と攻撃準備に入るエレキベムラーの板挟みとなった冒険者達は、一致団結になることも出来ず一部を除いた全員がパニックを起こし大混乱となったいたまさにその時だった。
『…デェヤッ!!!』
ずっと顔を俯かせていた巨人が勢い良く上げた次の瞬間、掛け声と共にその場から大きくジャンプ。
門を飛び越え、集まる冒険者達の前方に土煙を上げ着地し、そして。
「ゴァアアアアアアッ!」
『ヌゥウウウウンッ!』
口から放たれた電撃熱光線をXの形で腕を交差し受け止める巨人。
『グ、グゥウウウウ…ハァアアアッ!!!』
じわじわと押されていくも気合を入れる一声を上げながら交差してる腕を左右に振り下ろし、エレキベムラーの電撃熱光線を弾く。
『ハァッ…ハァッ…ハァッ…!』
暴れ狂った獣の如き戦いぶりから一転し、まるで人間の様に行動する巨人の姿にその場にいた冒険者達は勿論のこと、カズマ達一行そしてゆんゆんとクリスまでもが唖然として見詰めていた。
一方で巨人となったじゅんは、先程の光線を防いだ事により息を切らしながら両腕がズキズキと痛み出すのを感じていた。
初めて自分の意思での変身からの初めての戦い…向き合うエレキベムラーから漂う敵意と殺意。
それを肌で感じ取るじゅんは温厚な性格もあって相手の雰囲気に呑み込まれ始め、恐怖と不安が全てを支配されようとしていた。だが。
叫び声を上げながら、巨人となってるじゅんは勢い良く駆け出すとエレキベムラーに瞬時に近づき。
「グゲェアッ!?」
ラグビーのタックルの様に抱き付き、共に地面に着きながらゴロゴロと転がり込んで行った。
十回前後まで転がり正門に集まってる冒険者達から距離を置くと、前足で蹴り上げ自ら引き離した直後立ち上がり戦闘体制をとる。
『ハァ!…ハァ!…ハァ…!』
肩を上下に上げ息を荒げながらも、腰を落とし右腕を前に突き出し左腕を自身の顔近くまで寄せながら両手の指を尖らす様に立て、さながら獣を表現するかの様に構えるじゅん。
そんな姿を遠くから見守る冒険者達一同が困惑する中、一人の冒険者がある事に気づく。
「な、なぁ…あの巨人の目って
「え?…あ、言われてみれば」
昨夜の出来事を見ていた者達は、今の巨人の目が血のような赤黒い色から明るい黄色へと変わっている事に。
尤も、目の色が変わった所で“だから何だ?”と言う結論にしか至らないだろうが、唯一ゆんゆんとクリスの二人だけは巨人の目の色の変化がいかに重要なのかが分かっていた。
「(あの目の色はあのお方々と同じ…)ゆんゆん、あの巨人はもしかして」
「じゅんくんだ…あれはじゅんくんだよ!」
クリスの問いにゆんゆんはハッキリと答える。
誰よりも人一倍にじゅんと接し、理屈では言い表せない絆を結んだゆんゆんだからこそ言える事だった。
それはクリスも同じ思いであり、かつて自分と上司を邪悪なる者達から救ってくれたウルトラ戦士達と同じ瞳である事を照らし合わせ、あの巨人はじゅんその人なのだと瞬時に理解した。
「グガァアアアアッ!」
ムクリと起き上がったエレキベムラーは威嚇する様に吠え敵意を表す。
それに対してじゅんは怯むことなく駆け出すと、肩を前へ突き出し腹部にタックルをかます。
『ウァアアアアアッ!』
体重を掛けて当て、今度は左右の手を握り拳に変えて振り上げボコボコと殴り始める。
そんな巨人となったじゅんの戦いぶりを見る者達の中で、カズマだけは違和感を抱く。
「(…目だけじゃない、あいつあんな戦い方だったか?…昨日は獣の様に荒々しかった筈なのに、今は別物じゃねぇか…まるで子供の様な…)」
昨日は悪意と殺意に満ちた戦い方なのに、今は子供が駄々をこねた様な別の意味でウルトラマンらしからぬ戦いぶりにカズマは困惑する。
一方で、森から抜け出しエレキベムラー相手にがむしゃらに戦う巨人ことじゅんの姿を見るソノモノはごちり始める。
「やはりイレギュラーが発生したばかりにバグが生じてしまったか、今のゼファーはさしずめレベル1とも言うべき状態…十中八九このままでは確実にエレキベムラーに殺されるだろうな」
他人事の様に呟くソノモノは、口を吊り上げ笑顔を作る。
「死んでしまったらそこまでになるだろうが、この場をどう乗り切るのかなゼファー…それとゼファーをイレギュラーにしたキミ達は」
「ガァアアアア!!!」
『グゥアッ!』
ボコボコと子供の駄々っ子の様に殴るじゅんにうんざりしたエレキベムラーは、目障りに思い右平手打ちをかましよろめかせる。
ソノモノが語った様に、じゅんは訓練どころか喧嘩の様な誰でもする戦いさえもしたことがない。
それ故力も戦い方も備わってないじゅんの攻撃などエレキベムラーには蚊に刺される並にこれっぽっちも堪えていない。
更に続いてエレキベムラーは、長い尻尾を横へ薙ぎ払う様に振り回してじゅんに叩きつけた。
『ガァッ!』
さながら丸太並の太さがあるムチでもあり、体重を掛けたこともあってその衝撃に耐えられず倒れ込むじゅん。
そこへ追い討ちとばかりに地に這いつくばるじゅんへ尻尾を上げ、すかさず振り落として叩き付ける。
『ガハッ!』
何度も何度も尻尾を振り落とし痛め付けるエレキベムラーの猛攻。
その光景に他の冒険者達ですらドン引きする程。
だが、それでも。
『ハァ……ハァ……ハァ……!』
じゅんは立ち上がる。
何度倒されようとも、痛みが襲い掛かっても堪えて何度でも立ち上がり続ける。
『ハァ……ハァ……!』
だがここで、エレキベムラーはよろよろ状態のじゅんに長い尻尾で巻き付き自身の所へ強引に持っていき、そして。
「グェアアアアア!!!」
“ガジュリッ!!!”
『ガアアアアア!!!』
生々しい音と共にエレキベムラーはじゅんの首筋に容赦無く噛み付き、じゅんはその痛みの余りに叫び声を上げる。
「じゅ、じゅんくぅんっ!!!」
「やめてぇ…もうやめてよぉお!!!」
あまりに酷い仕打ちをするエレキベムラーの非道な行為を見て、ゆんゆんとクリスの二人は思わず叫ぶ。
だが、そんな二人の悲痛な叫びを嘲笑うかの様に噛み付きを維持したまま、エレキベムラーは電撃を放出し外と内部両方へと攻撃する。
『アアア!アアアアアア!』
体中を駆け巡る電気に苦しむじゅん。
これだけ浴びせればもう終わりだろうと確信したのか、エレキベムラーは尻尾を緩ませると巨人はドスンと倒れてしまう。
同時に青色だった胸のコアが赤色に変わりに、危険を表すかの様に音を立て点滅し始める。
それは、エネルギー残量が残り少ない事を意味していた。
「っ!」
それを見た瞬間、ゆんゆんは駆出そうとするも直前にクリスに止められる。
「ゆんゆん待って!」
「離してクリス!このままじゃじゅんくんが!」
口論になり掛ける二人だったが、その間にエレキベムラーは次の標的を出入り口で屯う冒険者達に向ける。
「やべぇ!アイツこっち見てるぞ!」
誰かが言った言葉に気づき、再び恐怖する冒険者達だが。
「?」
『グ、グゥゥ…』
歩き出そうとするエレキベムラーを止めるために奴の片足にしがみつくじゅん。
強引に持ち上げ倒すと、馬乗りになって抑え込む。
その死に物狂いな行いを唯見ることしか出来ない中、クリスは語る
「あたしだってじゅんの事助けたいよ、でもアレを倒すには生半可な援護も攻撃も許されないんだよ!それこそ一発で仕留めなきゃ…ん?」
「一発………あ!」
感情的に言ったクリスの言葉の中に、この事態を打破できる存在が居たのを二人は瞬時に思いつく。
そしてすぐさまお目当ての彼女を屯う冒険者達の中を探し回り、遂にその人物であるめぐみんを見つけるのだった。
「なんかさっきから見苦しいと言うか無様に戦ってるわね、あのウルトラマン」
「昨夜とは別人みたいな行動をしていますが、いったい何がどうなってると言うのでしょうか」
「……」
「めぐみーん!!!」
抑え込む巨人の姿を眺める3人の耳に声が入り、そちらに向けるとクリスと共に必死な表層でこちらに来るゆんゆんを目にする。
「ゆんゆんそれにクリスまで、いったい何を慌てているのですか?今目の前にはあの巨大モンスターと巨人との戦いが」
そう抗議するめぐみんの言葉を、ゆんゆんは強引に遮って話し出す。
「お願いめぐみん!貴女の爆裂魔法であの巨人の人を助けてあげて!あのモンスターを倒せるのはもう貴女しかいないのよ!」
「はぁっ!?いきなり何を言うのですか貴女は!確かに我が
「それじゃあ「ですが」…え?」
ゆんゆんの喜ぶ顔が止まると、めぐみんは目をつむりながら一言だけ言う。
「お断りします」
ハッキリとした拒絶に、ゆんゆんとクリスは驚きを露わにする。
「な、なんでよめぐみん!?貴女さっき言ったじゃない!“この様なシチュエーションは紅魔族として持ってこい”って!」
「ええ確かに言いましたよ…ですが、今の私はあのモンスター…カズマが仰る怪獣は勿論倒すつもりですがそれは二の次になります。むしろ私がいの一番に倒したいのは、あの怪獣と戦っている漆黒の黒き巨人の方なのですよ!」
怒りが込められた叫びと共に、じゅん改め黒い巨人に向かって杖を指すめぐみん。
「ど、どういうことなの?」
「ねえ、どうして!?どうしてあの巨人なのよ!?」
「ゆんゆんはウィズと面識しお店にも訪れてましたよね…あの巨人はウィズのお店を壊し、挙げ句ウィズを攻撃したばかりに彼女は未だに目を覚ましていないんですよ!」
「っ!?」
「なっ!?それじゃあ……」
二人が驚き困惑する中、めぐみんは話を続ける。
「決して深い仲と言える程の間柄じゃありません…ですが、デストロイヤーの討伐で共に戦った仲間だと私は認めてます。だからこそ私はあの巨人を決して許そうとは思いませんし、ましてや助けようなどと言う酔狂で愚かな行為など私は絶対にいたしません!」
「そんな…カズマくんやアクアさんも何か言ってあげてよ!」
そう言って二人にふるクリスだったが、カズマもアクアも考えは同じなのかそらす様に目を瞑る
「………っ!」
だがここで、無言だったゆんゆんがめぐみんの肩を掴むと強引に壁際へと押し付けた。
「うぐっ!ゆ、ゆんゆんっ!?」
彼女の事を知るめぐみんにとってこの様な乱暴な行いをするなどあり得なかったので驚き、更に視線を下に向けるとゆんゆんの右手は腰に着けてあるダガーの鞘付近に止まり、何時でも抜ける様に構えていた。
「めぐみん、貴女の言いたい事は分かったわ…でも私にはもう形振り構ってる余裕がないのよ…貴女の事はライバルで友達だと思ってる…だからこそお願い…私にコレを抜かさないで…」
その声は普段の彼女からは考えられない程低く、加えて瞳は赤く光らせ涙を浮かべている。
それを見ためぐみんは、彼女が本気で自分を斬ろうとしている事を悟ってしまう。
だがそれでも、めぐみんは首を縦には振らなかった。
「…嫌です、いくら貴女のお願いでもその様な脅しをされようと聞き入れません…そもそも何故なのですか?何故貴女はこの様な暴挙に出てまで…何の関わり合いを持たない無関係なあの巨人を…どうして貴女はそこまでして助けようとするのですかぁ!!!」
彼女がお人好しなのを知るめぐみんでもその対象は余りにも大きすぎる。故にゆんゆんの行動が理解に苦しむ余りに頭に血が上っためぐみんは、心から湧き上がる疑問を激しくぶつけた。
「…まじゃ……からよ」
俯くゆんゆんは震える声でぶつぶつと呟き、そしてダガーを抜かずめぐみんの左肩を掴むと、顔を上げ大量の涙を流しながら叫んだ。
「このままじゃあ!!!じゅんくんが死んじゃうからよぉ!!!」
「え………」
ゆんゆんから発した自身もよく知る人物の名前に、思考が追い付かず絶句するめぐみんを他所に、ゆんゆんは激情に身を委ねながら己の心情を暴露する。
「私はぁ!じゅんくんの事が好き!大好きなのぉ!だから死んで欲しくないし、あんな奴の為に傷ついて欲しくもないのよ!例えそれが私のわがままだって分かっててもぉ!ひっぐ、うぅ…うぅああああああああん!」
「………」
そう言うとゆんゆんは掴んだ手を放しそのままへたりこむと両手で顔を覆い泣き出し始め、それをめぐみんは只呆然と見たまま立ち尽くす。
「本当…なのか?あの巨人がじゅんだって?」
同じくその場で聞いたカズマとアクアも同様に驚き、カズマは恐る恐る尋ねるとクリスは静かに頷く。
「…マジかよ」
「あたしも最初は信じられなかったけどね……じゅんはただ操られてたのかも知れないし、何よりも…あの子泣いてたよ…あたしやゆんゆん、この街の皆を傷付けたって…得体の知れない力に振り回されたって言うのに…それを使ってでもあの子は…じゅんは…!」
取っ組み合う巨人と怪獣の光景を見ながら、湧き上がる感情を抑えられないクリスは、ゆんゆんと同じ様に涙を流して語りだす。
「本当は誰よりも怖い思いを、辛い思いを、苦しい思いをしたのに…じゅんは…じゅんは自分の意志で巨人になってまで戦ってるんだよ!あたし達を守る為にさぁ!…まだ小さい子供のあの子がだよ?…あたしもあの子に死んで欲しくない、これ以上じゅんが傷付くのを見たくない!だからカズマくん!アクアさん!めぐみん!見返りが欲しいのならあたしがキミ達の借金を肩代わりにする!だからぁ!…協力してください…お願いします…!」
両手を絡め跪き、神に乞う様なポーズを取りながらクリスは深く頭を下げて懇願し、その姿を見た3人の内、カズマは2体の戦いに視線を変えて眺める。
「ギィエィ!」
『ウァ!』
全身から発した電撃に怯み、その隙にじゅんを退かし立ち上がるエレキベムラー。
尻尾を振って攻撃するも、じゅんはそれを掴んで抵抗する。
だがダメージの蓄積とエネルギーの消耗もあり力が入らず振り払われてしまった。
それでもすぐさま起き上がり、またもラグビー選手の様にタックルして倒し馬乗りとなって抑え込む。
傍から見ると何とも無様な光景で、カッコ良さを信条にしてる紅魔族から見れば評価はよろしく無い戦いぶりかも知れない。
けれどカズマだけは、その光景を現世の時からテレビ画面でずっと見てきていた。
「…同じじゃねぇかよ」
忘れる事など出来る筈もない。
テレビの中で必死に怪獣や宇宙人を相手に、時には泥まみれ時にはびしょ濡れにそして時にボコボコのボロボロにされながらも、最後まで諦めないで戦った皆のヒーロー…初代ウルトラマンを始めとした多くのウルトラ戦士達。
その姿を目の前の巨人、じゅんと重ねるカズマ。
「…ウルトラマン…」
誰かに聞こえる事なくポツリと呟くカズマ。
「はぁ…やれやれ、これではまるで道化師じゃありませんか…私が」
「めぐ、みん?」
カズマと違いわざとらしく呟くめぐみんにゆんゆんは思わず顔を上げると、めぐみんのその顔は優しく微笑んでいた。
「仕方ありませんね、ゆんゆんの気持ちは痛い程分かりましたし、私も覚悟を決めましょう。それにクリスが肩代わりしなくとも、あの怪獣を倒せば街を救った報酬として借金が帳消しになるかもしれないでしょうし…ですよね、アクア?」
「めぐみん…!」
アクアにふるめぐみんの姿を見たゆんゆんは、感極まって再び涙を流す。
だが一方で、肝心のアクアはと言うと、全く隠す素振りもなくあからさまに嫌なそうな表情を作る。
「えー…なんか勝手に振られちゃったんですけど?何でこのタイミングでそんなフラグ立てちゃう様な事を言っちゃうのよ?ますます嫌な予感しかしないんですけど?て言うか私は嫌よ!怪獣相手もそうだけどあのガキンチョ悪魔ウルトラマンを助けるだなんて!」
「あはは、確かにアクアさんの言いたい事も分かるよ?いくら何でも虫が良すぎるもんね。カズマくんは…言わずもなかな」
アクアの会話を聞いたクリスは苦笑いを浮かべながも、申し訳なさそうに顔を俯きながら頬の傷痕を掻く。
一方でクリスに名を言われても無反応のカズマにアクアは近付く。
「ちょっとカズマ、さっきから何黙って取っ組み合いの観賞してるのよ、まさかクリス達の話を飲むんじゃないでしょうね?アンタそんなヒロイックなキャラじゃないでしょう!て言うか私は悪魔もそうだけどウルトラマンの事なんてだいきら、ムグ!ムグゥウウウ!」
「カ、カズマくん?」
言いたい放題言い放つアクアの口を俯きながら片手で強引に閉じるカズマの姿に困惑するクリス。
そして顔をゆっくりと上げながら深呼吸をし、もう一度息を吸うと腹の底から叫びだす。
大変お待たせしましてすみませんでした。
そして待って頂いた方々、及び読んでいただき本当にありがとうございます。
ゆんゆんがめぐみん達にじゅんの正体を暴露する辺りを、
ウルトラマンジードから「GEEDの証 感動(M-2a)」
を脳内で流しています。
次回はエレキベムラーとの決着になります。