この素晴らしいウルトラ戦士に祝福を!   作:黄青

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第四章〜その③

 

「ガァアアアアア!」

 

天に向かって吠えた後に体を丸め込めると、エレキベムラーは青く輝く球体に変貌。

宙に浮かび、よろよろと立ち上がる巨人に向かってわざと掠めて攻撃する。

 

『グ!ガァ!ギィ!ウグ!ダハァッ!』

 

擦られる様な痛みを体中にじわじわと与えられ、そして。

 

『ウガァアアアアア!』

 

加速を込めた直球一直線の突進を真正面から受け、3回体を後転させてようやく止まるも、決定打となったのか立とうとした瞬間に糸が切れたかの様に倒れてしまう。

 

『「うぅ…い…いたい…くる、しい…」』

 

力を入れようにも自分の意思に関係なく限界だと言う悲鳴代わりの激しい痛みが体中を駆け巡る。

その痛みが邪魔となり、ズシンズシンと威圧を込めて近付くエレキベムラーの進行を許してしまう。

 

「クォアアア…!」

『「…っ!」』

 

目と鼻の先まで到着したエレキベムラーは、無様に倒れる巨人に今度こそとどめを刺すべく口の中にエネルギーを溜め始め、ダメージのキャパシティ越えとエネルギーの残量低下に動けないじゅんは、殺られると察し思わず目を瞑りこれから来る死の痛みに身構えた、その時。

 

「んっ『狙撃ぃっ!』」

 

その言葉と共に放たれた一本の矢が、エレキベムラーの右目に命中する。

 

「グギィッ!?」

 

アクアから前もってかけた筋力増加の支援魔法『パワード』を付けた状態でも、人間に例えたら砂埃が入った程度でダメージにすらならないが、動きを止める為の足かせとしては充分だった。

 

「こっちだ怪獣!こっちに来い!」

「じゅん!今のうちに離れて!」

 

わざと存在をアピールする為に大声をあげるカズマと逃げる様に促すクリス。

 

『「クリス…カズマ…」』

 

まさか助けに来てくれるなど思ってなかったじゅんはポツリと呟く。

その間に、トドメを邪魔された事で頭に来たエレキベムラーは、標的をカズマ達に変更し近づいていく。

 

『「だ、だめ!まって!みんな、にげて!」』

「(まさかテレビの中の怪獣を相手にする日が来るなんてよ、にしても間近で見るとやっぱこえ〜し逃げて〜!…けどな!)出番だぞアクア!お前のフォルスファイアで」

 

臆する心を抑えアクアに魔法を指示するカズマ。だが。

 

「あああもう!女神の私が怪獣如きに恐れおののくなんて冗談じゃないわよ!見てなさい、取っておきの切り札でとっとと終わらせてやるわ!刮目なさい!『ゴッドォ!ラグナロクッ!』」

「ちょっ!?おまなにやってんだよ!?」

 

困惑するカズマとクリスを他所に、イライラが頂点に達したアクアの耳には入らず両腕と手の平を広げ、エネルギーを溜め込む。

 

「金・酒・金・酒・金・酒・金・酒………ふんっ!うぉおおおおおお!!!」

 

好きな物をぶつぶつ呟きながら両手を組み合わせ、そのままエレキベムラーに向かって叫びながら走り出す。

 

「ア、アクアさん!?(も〜先輩なにしでかしてるんですか〜!)」

「こらぁあ駄女神ぃ!またテメェは勝手に突っ走りやがってー!」

「『ゴッドラグナロク』とは、女神の愛と!怒りと!悲しみ!その他諸々の想いを宿した今世紀最大最強の究極奥義!相手は絶対死ぬぅ!!!」

 

猪突猛進に進むアクアを止める術がなく、アクアは組んだまま突き出した両手をエレキベムラーの足元に直撃させた。

ピカーッと光が広がり、収まるとそこには打ち付けたまま佇むアクアとそんなアクアを顔を下げて眺めるエレキベムラーの姿があった。

 

『「………」』

「………」

「「………」」

 

変な意味で沈黙が支配する中、元凶であるアクアはつぶらな瞳を作りながら顔を上げてエレキベムラーを見る。

 

「…ま、まぁ何て素敵な怪獣様ですこと」

 

場違いにも褒めるアクアだが、言葉が通じたのか返って火に油を注ぐ結果となる。

 

「グゥオアアアアア!!!」

「あああああん!食べないでくださぁあああああい!!!」

 

エレキベムラーの咆哮に心が完全に折れたアクアは、腰を抜かし泣き叫びながら命乞いをする。

そんな女神の威厳をかなぐり捨てた哀れなアクアを助ける為にクリスは駆け出す。

 

『セイクリッドエネルギー確認・シーフウェポン起動』

 

右手首のリストバンド製の腕輪を掴み、武器に変化させた“シーフウェポン”。

左太もも並びに左右の両腰に装着された3つの内、両腰に掛けた2丁の銃を引き抜くと、右手のグレネードランチャー式の銃をエレキベムラーに向け引き金を引く。

 

「『フラッシュボム!』」

 

銃口から光り輝く閃光弾が発射されると、エレキベムラーとアクアの間で弾け激しい光を発する。

 

「グガァッ!?」

「ブェア!眩しぃいいい!」

 

突然の閃光に眩しがる1体と1名、続け様にクリスは左手に持つガトリング式の銃を向けた。

 

「『スチームバルカン!』」

 

回転しながら出てくる弾丸がエレキベムラーに命中し大量の煙幕が発生した。

その間にクリスは2丁を戻し、左太ももに掛けた拳銃を抜いてアクアに狙いを定める。

 

「『ワイヤーショット!』」

 

名の通りに放たれたワイヤーがアクアの腰に絡まると、そのままクリスの元まで引っ張る。

 

「よっと、アクアさん大丈夫?」

「ゔぇえええ!グ、グリズぅうう、ああありがどう!ほんどうにありがどねえええ!」

「あ、あははは…(やれやれ、先輩は相変わらずだな)」

 

体ごと肩に担がれ泣きわめきながら感謝するアクアに苦笑いするクリス。

だがいつまでも突っ立ってる訳にも行かなかったので、じゅんが居る場所の反対方向に走ってるカズマと合流すべくクリスも走り出し始める。

そして、煙幕が一通り薄れたエレキベムラーは自分をとことんコケにした彼らに報復すべくカズマ達の方へと走り迫る。

 

「あああこっちに来たわよぉ!クリスもっと早く走ってよぉ!」

「ちょ!?暴れないでよアクアさん!」

「元はといえばお前が勝手に突っ走ったのが悪いんだろうが!兎に角このまま走ればあそこには!」

 

合流し文句を垂れながらも懸命に走り続ける二人(アクアは担がれてるので除外)、そして巨人事じゅんからかなりの距離を引き離した所で、前方で佇むお目当ての人物を目の当たりにする。

 

「今だゆんゆーん!やってくれー!」

「分かりました!『ボトムレス・スワンプ!』」

 

カズマの呼びかけを合図に、佇んでたゆんゆんが発動した魔法ボトムレス・スワンプ。

迫るエレキベムラーの片足付近に巨大な沼が現れ、それを踏んだことでものの見事に倒れ込む。

 

「めぐみーん!トリはお前に任せたぁー!」

「…任されましたよカズマ。詠唱も既に完了し準備万端この上ありません…さぁ!猛威を振るった怪獣よ!しかとその目に焼き付けるがいい!これが人類史上最大の攻撃魔法!そして我が最大最高の切り札!『エクスプロォオオオオオッジョン!!!』

 

杖を突き出すと同時に放たれた、めぐみんが持つ唯一の攻撃魔法エクスプロージョン。

 

「!?」

 

渦巻く光が倒れたままのエレキベムラーに向かって迫り、そして。

 

 

チュドォオオオオオンッ!!!

 

 

カズマ達やアクセルの面々が聞き慣れた轟音と、見慣れた巨大な大爆発が発生し、エレキベムラーを包み込んだ。

 

『「す…すごい…」』

 

めぐみんの爆裂魔法を直接見たのが初めてのじゅんは、その破壊力に愕然しポツリと呟く。

 

「我が爆裂道にいっぺんの悔い無し………ふはぁ〜感無量ですぅ〜」

 

最高のシチュエーションで放った爆裂魔法に大変満足そうな笑みを浮かべながら前のめりに倒れるめぐみん。

爆裂魔法によってほふられたであろその光景に、門前で佇む冒険者達は歓喜の声を上げ始めていた(一部“頭のおかしい娘がやったぞ!”と口を揃えて言っているが)。

その一方で、森の片隅で終始観察をしていたソノモノは口を開く。

 

「ははは相変わらず凄まじい威力だ、爆裂魔法エクスプロージョン。補給等のサポートがなければ一発しか放てないのがネックらしいが、それに見合う程の高火力…並の怪獣や状態次第ならば融合怪獣も十分に倒せるから中々に興味深い、本当に飽きさせないなこの惑星は…ただ、残念と言わざる負えないのだけど」

 

 

-???「少々詰めが甘かったようだね」-

 

 

倒れたままのめぐみんに合流した一同。

カズマは何時もの様に爆裂魔法で動けないめぐみんを背中におんぶした、が。

 

「グゥゥゥ…!」

 

未だ爆裂魔法で発生した大量の煙からうめき声の様なのが耳に入り、まさかと嫌な予感を横切る一同は爆心地を眺める。

そして徐々に煙が薄れると、そこには至る所に傷を負うも五体満足のエレキベムラーの姿があった。

 

「んな!ウソでしょ!?」

「あり得ません…我が爆裂魔法を受けて消滅どころか原型を残したまま生きているなんて!」

 

驚くアクアと自慢の爆裂魔法で仕留められなかった事に同様を隠し切れないめぐみん。

だがそんな中で、エレキベムラーの体中から暇弱ながらも電気が放出しているのに気付いたカズマは、何故爆裂魔法を受けても生きていたのかを直ぐに理解した。

 

「あの野郎、電気を纏ってバリアにしてめぐみんの爆裂魔法のダメージを抑えやがったんだ!」

「なによそれ!?怪獣の癖に悪知恵働かせるんじゃないわよ!」

 

文句を垂れるアクアだが、よろよろと立ち上がるエレキベムラーの眼中にはカズマ達に狙いを定めていた。

カズマの推測通りに電気を纏った事で爆裂魔法の威力を抑えたが、逆に言えばこうでもしなければ確実に殺られており加えて相当のダメージを負ってるのもまた事実。

故に怒り心頭となり、“こいつ等は絶対に殺す”と言う明確な殺意を込めながら吼えるとカズマ達に迫り始める。

 

「ど、どうしよう!こっちに来てる!」

「カズマくん!こういう時は」

「逃げるしかねぇだろー!」

 

デストロイヤー時の様にドレインタッチで2発目の爆裂魔法を放つ暇などがなく、カズマ達は死に物狂いで迫るエレキベムラーから走って逃げて行く。

そんな光景を未だに倒れたまま見る事しか出来ない巨人のじゅんは懸命に立ち上がろうとするが。

 

ピコンッ! ピコンッ! ピコンッ!

 

いよいよ終わりが近付いたのか、先程から鳴り光る胸のコアが更に早く点滅していく。

 

『「ゆ…ゆんゆん…クリス…みんな、イヤだ、ぜったい…イヤだ!アイツ、たおす、ちから、ちから、ちから!」』

 

じゅんは心の底から求めた、エレキベムラーを倒し大切な人達を守れる力を。

そう強く念じた瞬間、じゅんの脳裏に様々な数字に加え今の自分によく似た赤と銀の配色をした何者かが、腕を十字形に組む姿が映し出される。

 

『「(…“融合式閃光破壊熱線”…)」』

 

唐突に浮かぶその名だが、それが一体何なのかをじゅんは察する。

 

「やべぇ、カズマ達が襲われてるぞ!」

「あの紅魔族の娘の爆裂魔法ですら倒せなかったけど、ダメージを受けてる今なら私達でも!」

「ま、待て!あの巨人が動き出したぞ!?」

 

一人の冒険者の指摘に全員が視線を向けると、立ち上がろうとする巨人の姿を見て動けなくなってしまう。

もっとも、恐怖の眼差しを向けられるじゅんは気にする暇も眼中もなく、痛む体にムチを打って無理矢理立ち上がり、掛け声を上げると同時に大きくジャンプする。

 

『デェヤッ!』

「グギャ!?」

 

巨人が再び立ち上がったのに気付かず、横からのドロップキックをもろに受けて吹き飛ばされるエレキベムラー。

 

『じゅん(じゅん)(くん)!?』

「なになに!?私抱えられたままで全然見えないんですけど!」

 

一人を除いて、ドスンと地煙を上げて着地する巨人を見て驚きの声を上げる一同。

倒れてるエレキベムラーに視線を定めたまま直立すると、巨人は握り拳を作りそのまま両腕を水平に広げ、即座に両腕を腰の元まで下ろし柔道等で見掛ける押忍のポーズをとった、その瞬間。

 

『「…っ!?」』

 

コワスコワスコワスコワスコワスコワスコワスコワスコワスコワス

   ハカイハカイハカイハカイハカイハカイハカイハカイハカイハカイ

      ホロビホロビホロビホロビホロビホロビホロビホロビホロビホロビ

 

耳元から誰かの声が囁く。悪意と狂気が孕んだおぞましいその声がじゅんの意思を漆黒に染め始めていく。

 

『「コワス…ハカイ…ホロボス…タノシイ?」』

 

タノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイ

   タノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイ

      タノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイ

 

『「タノシイ…タノシイ…タノシイ…コワス…コワシタイ…ミンナ…コワス…ハカイ…ホロボス…ミンナ…ミンナ…」』

 

声に導かれるがまま、脳裏に映る全て物に対し破壊衝動が湧き上がる。

町に建てられた建造物、門前に佇む人々、自身の背後にいるであろうカズマ、アクア、めぐみん…ゆんゆんとクリスを。

 

『「っ!?………ガウ…チガウ、チガウ、チガウ!」グゥウゥウウウゥウウウウ!』

 

二人の名前によってハッとしたじゅんは、首を横に振ってその声を振払おうと唸り声を上げながら必死に抵抗する。

その苦しみを表すかの様に、巨人の目が赤と黄色交互に点滅しながら身体中を赤黒い稲妻が激しく迸る。

 

「何よ何よ!?何なのよこの鳥肌が立ちまくりで底なしのドス黒いオーラは!」

「おおお!?もしや撃つのですか!?今から物凄くイカした何かをぶっ放すのですか!?」

「お前こんな時に目光らせて興奮してんじゃねぇよ!」

「くぅ…じ、じゅん!」

「じゅんくん…!」

 

稲妻によって吹き荒れる風を手で防ぎながら辛そうに見守るゆんゆんとクリス。

だがその一方で、不意打ちを受けたエレキベムラーはムクリと起き上がり、前方で構える巨人見るな否や自身もまた攻撃体制に入る。

 

「コォォアアアア…!」

 

口内、両手、角の3ヶ所から電撃を念入りに溜め込む、目前に居る奴を確実に仕留める為に。

 

破壊、破滅、殲滅、絶滅、消滅

   死、絶望、憎悪、憤怒、殺意

      シネシネシネシネ!ホロベホロベホロベホロベ!

         コワセコワセコワセコワセ!コロセコロセコロセコロセ!

 

『「…ボクハ…ボクハ…ボクハ…コ…コ…コロ…コワ…!」』

 

抵抗した途端に囁きの声がより一層激しくなり始め、じゅんの心は悪意と言う底無しの闇に堕ちようとした。

 

「じゅんくん」

「じゅん」

 

その時、自分の名前を呼ぶ声が耳に入る。

脳裏に映るのはいつも優しく微笑んでくれる自分が最も大切な人達、“ゆんゆん”と“クリス”。

二人の姿を確かに見た瞬間、赤に染まりかけた瞳が再び黄色へと変化。

 

「ガァアアアアアア!!!」

 

それと同時にチャージを完了させたエレキベムラーは、咆哮と同時に放たれた電撃熱光線と両腕と角から放出した電撃、その3つが収束され更に強化された一本線の光線となって巨人に迫る。

 

 

 

『「ぼくはぁ!まもるぅ!!!」』

 

『「うわぁああああああ!!!」』

 

『ディィヤアアアアアアアアアア!!!!!』

 

 

邪悪な囁きを完全に振り払い大切な人を守るべく、握り拳を手刀に変え、右腕を斜め上に引き左腕を横に伸ばすと、じゅんは雄叫びを上げながら両腕を十字型に組んだ。

その瞬間、クロスした腕から光と闇が混じり合った光線が放たれ、エレキベムラーの強化電撃熱光線を真正面から打ち消しそのまま頭部に命中。

 

「!?!?!?」

 

膨大な熱量がエレキベムラーの身体中を駆け巡り、そして遂に。

 

 

ズドーーーーーンッ!!!

 

 

めぐみんの爆裂魔法に勝るとも劣らない爆発と轟音を引き起こしながら、巨人の光線を浴びたエレキベムラーは粉々に弾け飛んでしまった。

 

『………』

 

完膚なきまでエレキベムラーを粉砕したじゅん。だが同時に激しく点滅してたコアが止まり、両目と共に光を失うとそのまま前のめりに倒れ、土煙を上げながら光の粒子へと帰りはじめていった。

 

「じゅんのやつ、まさか!?」

「じゅ…じゅんくぅうううううんっ!!!」

「ああ!待ってくださいゆんゆん!」

「っ!アクアさん、ごめん!」

「へ?ちょ、ふぎゃ!」

 

目の前で消えていく巨人に悲痛の声を荒げながら駆け出すゆんゆんに、クリスは抱えてたアクアを乱暴に下ろし後を追った。

お願い、どうか死なないで…必死に願いながら懸命に走り、巨人が倒れクレーターとなった所の中心にうつ伏せになって倒れてるじゅんの姿を目にする。

 

「じゅんくぅん!…じゅんくぅん!」

 

肉体ばかりか衣服すらも痛々しい程ボロボロで傷だらけのじゅんを、駆け付けたゆんゆんが抱えゆっくりと自分の方へ向けさせながら声を掛けるが目を覚ます様子がない事に焦り始める。

直後に追い付いたクリスは抱えられてるじゅんの姿をくまなく見ると、彼の両腕が見るに耐えない程に焼けただれてるのが目に映ってしまう。

 

「(酷い…両腕がこんなにも…あの光線を撃ったせいでじゅんは…!)」

「クリスぅ、どうしよう、じゅんくんが!」

「落ち着いてゆんゆん!…ひとまずこの場から離れないと」

 

そう言うクリスだが、内心かなり焦っていた。

なにせスキル『敵感知』を応用して駆使したところ、門前にいた冒険者達が一斉にこちらに近づきつつあったからだ。

もし鉢合わせになりじゅんの正体がバレてしまえば…昨日の件もあり彼等が何をしでかすかは目に見えている。

そんな最悪の事態を何としても避けるべく立ち上がろうとした、その時。

 

「ちょっとクリス!女神の私を乱暴に捨てるなんて酷いじゃないのよ!」

 

場違いな事でプンスカ怒るアクアとめぐみんを背負うカズマの3人が近付く。

 

「アクアさんその事は本当にごめんって、それよりも」

「行く宛がないなら俺らの屋敷に来いよ、匿ってやるから」

「え?」

「い、良いんですかカズマさん?」

 

意外な提案に驚く二人にカズマは苦笑いを浮かべる

 

「しょうがねぇだろ、“クズマ”やら“カスマ”って言われてる俺だけど、命懸けで守ってくれたじゅんを見捨てる程そこまで落ちぶれちゃいねぇんだから」

「…なんだか今日のカズマは少々カッコつけてませんか?」

「うっせぇ、置いてくぞ爆裂娘」

 

余計な一言を口出すめぐみんに噛み付くカズマ。

そんな何時ものやり取りをしながらもまごまごしてる暇がないのも事実であり、やって来る冒険者達から離れるべくカズマを先頭に、目を覚まさないじゅんをお姫様抱っこで抱えるゆんゆんと共にそそくさと立ち去っていった。

そんなカズマ達…否、ゆんゆんに抱えられてるじゅんを見詰めるソノモノは口を開く。

 

「融合式閃光破壊熱線スパークシュトローム…かつて地球に訪れたウルトラ兄弟の次男、通称初代ウルトラマンのスペシウム光線…その半分下の20万度までが限界なのを踏まえて組み込んだが…エレキベムラー撃破時の瞬間最高温度は想定した本来の数値から約3.57倍近く上の71万3580度………ふふ、んふふふ、はははは」

 

肩を小刻みに震えると、誰もいないその場で狂喜の笑い声を上げる。

 

「アーハハハハハァ!!!すごい!すごいよゼファー!私が限界と想定したデータを自らの意志で覆したんだ!なんて素晴らしいことなんだろう!こんなにも嬉しい事はない!あ〜これから先どの様に進化し強くなっていくのか高揚昂ぶるワクワク感が収まることがないよゼファー!ハーハハハハハ!!!」

 

傍から見ればまさに狂人の如き大笑い。何を考えてるのか底の見えないソノモノが一通り笑い収まると、口元を微笑ませながら宇宙を見上げ、何者かに対し語り始める。

 

「ありがとう…()()の方から干渉してくれたおかげでゼファーは大いに成長する事ができた」

 

 

 

-???「感謝してるよ」-

 

 

 

時刻は深夜の0時と少し過ぎたころ。

カズマ達の暮らす屋敷の一室だけ、ほんのりと明かりが灯す。

そのベッドには、ただれた両腕含め体中を包帯で巻かれた痛々しい姿のじゅんが眠り、側にはゆんゆんとクリスが小型の椅子に座り見守っていた。

あの後、カズマの案内で他の者に見つかる事なく屋敷に到着。

普通ならばアクアの様なアークプリーストの回復魔法で治す所だが、聖なる力が込められたソレは悪魔やアンデッドには毒でありじゅんも例に及ばず当てはまる。

故に出来る事は消毒や薬、包帯などで対応し後は本人の自然治癒力に任せるしかなかった。

因みにその際、魔力を分け与えれば治癒力が活発化するのではと考えたカズマはドレインタッチを試みようとした。

だがめぐみんは爆裂魔法でガス欠、アクアは嫌なだけでなく聖なる力を直接流し込むので返ってとどめを刺す事になると自ら説明したので却下、クリスに関しては自身がエリスなのを隠してる事に加え分け与えればアクアの言う通りになってしまうので渋り、そこへまだ余力があるゆんゆんが自分の魔力を与える事を推薦。最終的にゆんゆんの魔力をじゅんに分け与え、現在に至る。

 

「入るぞ二人とも」

 

ノックと共にドアが開き、カズマが部屋の中へと入る。

 

「じゅんの様子は?」

「まだ眠ってるけど落ち着いてるよ、ただいつ目覚めるか分からないのが現状かな…」

「そっか…そのなんだ…あんまし無理すんなよ」

 

ありきたりな言葉しか出せない事に申し訳なさを抱くも、これ以上何もできないと思ったカズマは部屋を後にする為ドアを開けたところ。

 

「カズマさん、じゅんくんを助けてくれた事もこうして匿ってくれた事も…本当にありがとうございます」

 

徐に立ち上がり深々と頭を下げるゆんゆんの姿を目にするカズマ。

前回の時の様に気恥ずかしくなり、苦笑いを浮かべながらも「ゆんゆんも無茶するなよ」と言って部屋から出ていった。

カズマが居なくなり再びイスに座るゆんゆん、そこへクリスが唐突に語り掛ける。

それはある意味、自分の正体をバラすこと以上に苦痛を伴う内容だった。

 

「ゆんゆん…こんな時だからこそ、本当の事を打ち明けるね」

「クリス?」

「じゅんと初めて出会った時から薄々だけど邪悪な気配を感じてた、仲間になったのもじゅんがこの世界に災いを齎す存在かどうかを見極めるためだった…それでじゅんが黒い巨人になってこのアクセルを滅茶苦茶にして…あたしは友達のダクネスやカズマくん達が傷付くのが嫌で…昨日の深夜に…寝ているじゅんを…あたしは…………」

「………」

 

それはさながら懺悔をする罪人のそれであった。

 

「でも出来なかった、何よりあたし自身じゅんが大好きだって事に気付いたの………軽蔑するよね…失望したよね」

 

自分の罪状を言い終えたクリスは、ゆんゆんからキツい一発をお見舞いされる事を予期し歯を食いしばって目を瞑る。

だがクリスの予想とは裏腹に、ゆんゆんはクリスの握り拳を上から優しく添える。

 

「ありがとうクリス、本当の事を言ってくれて…だからもう良いんだよ?」

「っ!…でも…あたしは…!」

「クリスも私と同じでじゅんくんの為に頑張った、そしてじゅんくんはまだ目を覚ましてないけどこうして生きてる…それだけで私はもう充分だから…ね?」

 

どんな裁きを受けるつもりなのに、包み込む様な微笑みを浮かべるゆんゆんにクリスは動揺を隠し切れずに抗議を言おうとした丁度その時。

 

「ん…んん……ゆん、ゆん……ク、リス…」

 

眠るじゅんの口から自分達の名前をその耳で聞き取り、目を覚ましたと思い詰め寄る。

 

「もう終わったよ?あの怪獣はもう居ないんだよ?」

「私達が…私達がここに居るから大丈夫だよ?」

 

安心させる様に言い付けながらも、更に続くじゅんの言葉に二人は耳をすませる。

 

「すき…だい、すきぃ…ま、もる…ぼく…ぜったい…まもるぅ…」

 

健気げで一途なじゅんの想いを耳にしたゆんゆんとクリス。

その言葉は結局は寝言でしかない事に理解しながらも、それでも自分達への想いを口にするじゅんに、ゆんゆんとクリスは一滴の涙を流しながら、包帯で巻かれたじゅんの手を添える様に掴み自身の湧き上がる想いをさらけ出す。

 

「じゅんくん…」

「じゅん…」

 

 

 

-ゆんゆん・クリス「…ありがとう…」-

 




これで第四章は終わりです、読んで頂きありがとうございます。

じゅんの行った事は、例えるとレベル1のなりたてホヤホヤの冒険者がいきなり爆裂魔法や上級魔法を無理矢理ぶっ放す様なもの。

スパークシュトロームのチャージ〜放射までを
ウルトラマントリガーOP「Trigger」
でイメージ再生してます。

次回は現在のウルトラマンで言う総集編的な立ち位置の話。
物語の進行上居なかったダクネスが漸く登場します。

また、前もってネタバレをします。
原作のダクネスの実家訪問〜バニル戦まではじゅんが眠ってる間に起こった事にしてバッサリとカットするのであしからず。
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