ギルドでの食事をひとまず終えたじゅん達は、再びカズマパーティーの住む屋敷へと戻った。
漸く本題に入り込める事になり、リビングに着いてそうそう椅子に座らせたじゅんにカズマは質問を投げかける。
「さてと、ある程度落ち着いたようだから、早速だけどじゅん。お前があの黒い巨人にどうやってなるのか教えてくれるか?」
「そうよそうよ!洗いざらい全てを白状しなさい!でないと、あっ!という間に浄化してやるんだからねガキンチョ悪魔!」
「アクアせん…さん、話進みませんので取りあえず黙ってて下さいね?」
女神という名の問題児がチンピラ紛いな脅迫をして噛み付くのを宥めるクリス。
少しビクつくもゆんゆんとクリスが側に居た事もあって安心し、じゅんは首に掛けたネックレス並びに左右の腰に着けた箱をテーブルの上に置く。
更に箱の中に入ってる合計6本のメモリを取り出し並べると、じゅんはペンダントを掴み握る。
聞き慣れない音声が鳴り響くとペンダントは光だし、手の平サイズのそれは数回り大きくなるどころかメカニカルな物へと変貌していた。
「な、何なのだコレは?ペンダントから急に奇っ怪でヘンテコな物に変わってしまったぞ?」
「恐らくマジックアイテムの類い、いやそれとは全く異なる別物の可能性が高いでしょうがこれだけは断言できます………これを作り出した人物の感性は大変素晴らしいものと見受けます!ぜひ我が故郷である紅魔の里の鍛冶屋としてその見事な腕前を披露して貰いたいところです!」
「いやいやいや、そこを褒めてどうするのよめぐみん」
「ふんっ!曲がりなりにも紅魔族だと言うのにこの魂の燻りを感じないとは、これだから変わり者のボッチは!」
「うっさいわよ!て言うかもうボッチじゃないって言ってるでしょうが!」
売り言葉に買い言葉と噛み付きあう紅魔の娘二人を他所に、続けるよう促したカズマに従うじゅんは、銀・青・赤・黒・緑・金のメモリのスイッチを押すと、それが起動したのか銀には人の様な顔、黒・緑・金の3つは其々異なるモンスターの顔が浮かび上がる。なお、残りの青と赤に関しては何も起こらなかった。
「片方は人の顔に見えなくもなく、もう片方は明らかにモンスターなのだろうが…」
「益々唆られてしまう作り込みですねぇ、ですが同時にこの浮かんでるものは」
目を光らせながらも、メモリに浮かぶ顔に一体どんな意味があるのか理解出来ずにいたところで。
「…黒はゼットン、緑はベムスター、金はキングジョー、そして銀はウルトラマンか」
『え!?』
淡々と名を零すカズマに驚きの声を出す一同。
「カズマ!?お前にはコレに写ってる物が何なのか知ってると言うのか!?」
「そう言えば黒き巨人になったじゅんじゅんの事をアクアと共に“ウルトラマン”と仰ってましたねカズマ!一体どこまでご存知なのか包み隠さず正直に吐いてください!もしも隠すようでしたら今この場で爆裂魔法をぶっ放しますよ!?」
「おお落ち着けってダクネス!て言うかめぐみん!んな脅しをかけられりゃ話したくとも話せれねぇだろうが!」
騒ぐ二人を宥めるカズマが知ってるのは至極当然。
アクア(厳密には使いの天使)に転生される前にいた地球で、幼い頃からウルトラシリーズの鑑賞や本やネット等で様々なウルトラマンと怪獣宇宙人の情報や設定を閲覧してた身分である。
とは言え馬鹿正直に言えばアクア同様に可哀想な目で見られるのは確実、故に嘘を交え尚且つ出来る限りこの世界の住人に合わせる内容でカズマは説明した。
曰く、自分の生まれ故郷である日本と言う国には人々が想像し作られた種類豊富の英雄譚が存在し、“ウルトラマン”と呼ばれるそれもその中の一つ。
自分はその作品を幼い頃から見聞きしてきた為に、
「全く理解に及ばないのだが、つまりなにか?ウルトラマンと怪獣と言う存在はカズマの生まれ故郷の人達が一種の娯楽として創り出された空想の産物…と言うことになるのだが?」
「まぁそうなるだろうな」
「そうなるだろうなってお前、そんな他人事の様に…あ〜頭が痛くなってきたぞ」
想像の斜め上を行く内容について行けないダクネスの頭は完全にショートしてしまう。
反対にめぐみんはカズマの語った内容を自分なりに理解した為、うっとりとした表情を浮かべ始める。
「はぁ〜…完全理解とは言わずとも紅魔族にとってなんと琴線に触れる内容なのでしよう!物語として語り継がれた正義の巨人ウルトラマンが空想などではなくこの世に実在する事実!それと同時に現れた脅威となる怪獣に完全と立ち向かう英雄譚活劇が今この瞬間にまで現実となっている始末!もー辛抱堪りませぇえーん!」
「クリス…じゅんくんを最初に見つけたのが私で本当に良かったと思うわ」
「あー…うん」
「…これ…“ゼファー”…いって、くる」
「ゼファーか、さしずめ巨人になったじゅんは“ウルトラマンゼファー”といったところか」
ZLから発する音声を指摘したじゅんの言葉を聞きそう述べるカズマだったか、ここで最も騒がしい存在のアクアがめぐみんを始めとする全員に言い聞かせる様に語り出す。
「そんな良いもんじゃないわよめぐみん、ウルトラマン達ってね沢山の“星星をまたに掛け”てそこに住む住人や生命を怪獣や侵略者から護る存在なのは確かだけど、同時に必ず争いや災いが起こる事間違いなしで疫病神よりも質が悪いんだから。ウルトラマン現れるところ乱ありってね。ましてやこの世界にカズマと降りる前にいつの間にか復活してたウルトラマン“ベリアル”って言う悪魔やリッチー、それこそ魔王が可愛く思える程の大悪党が引き起こした“クライシス・インパクト”のせいで、私やエリス含めた神々が暮らす天界がメチャクチャになっちゃう程の大惨事を招いたのよ!おかげで修復やら補修やらのてんてこ舞いの中で強制的に働かされてストレスが貯まりに貯まりまくったりして…もうこっちはとんだとばっちりの大迷惑を受けたんだからね!」
カズマにとって何だかとんでもない事を口走った気がする中、プンスカと怒りながらマシンガントークを発揮するアクアに対しめぐみんは可哀想な人を見るかの様な瞳と微笑みを作る。
「相変わらずの妄想癖ですねぇアクアは…ですが、“星星をまたに掛ける”、“ベリアル”、“クライシス・インパクト”等…紅魔族のセンスにコレでもかと触れる程の素晴らしい設定は中々のものですね」
「妄想なんかじゃないわよ!全部本当の事なのよ!んでもって私は本物の女神アクアその人なんだってば!も〜!…あ!」
頬を膨らませ涙目になるアクアだったが、突然何かを閃いたようで手を叩くと、徐にじゅんに人差し指を向けながら思いついた事を述べる。
「そうよこれよこれだわ!この際そこのガキンチョ悪魔がウルトラマンになって、魔王をやっつけて貰いましょうよ!」
『はぁ!?』
じゅんを除く面々が驚く中でもお構い無しに、アクアは更に続けた。
「ダクネスはその場に居なかったけどカズマやめぐみん、それにゆんゆんとクリスは見てたでしょ?ウルトラマンになったガキンチョ悪魔があの怪獣を倒す所を。それだけの力があれば魔王や幹部の連中なんてあっと言う間にボコボコのケチョンケチョンになる事間違いなしよ!さっすが水の女神であるこの私!余りの名案っぷりに思わず身震いがおこってしまったわ〜!」
「………」
自画自賛極まりない事を言いながらオーバーリアクションを起こすアクアに対し、賛同しそうな筈のカズマは何故か黙ったまま見詰めていた。
「待ってくださいアクア!それでは我が爆裂魔法による活躍の場が完全に皆無となってしまうじゃありませんか!」
「そうだぞアクア!折角の魔王や幹部達による濃厚プレイのチャンスが今後一切訪れなくなってしまうではないか!」
「ダクネス…けどまぁ、アクアさんには悪いけどあたしもその案に賛同する事なんて出来ないよ」
「私もです!じゅんくんをそんな使い勝手の良い道具扱いするなんて絶対に許しませんからね!」
親の敵でも見るかの様な眼差しを作りながらじゅんを守る様に抱き寄せるゆんゆんと同時に、片手でじゅんを庇うクリス。
方やエゴで方や思いやりと、動機が正反対ながらも共通して否定する態度にアクアはまたも涙目になって頬を膨らます。
「むぅ〜!なによなによ!皆して好き勝手に言ってくれちゃってさ!そんなに責めないでよね!逆にいっぱい、い〜っぱい褒め称えてよね!ったくも〜…そう言えばカズマ?さっきからずっと黙りっぱなしだけどカズマは賛成でしよ?ここだけの話なんだけどね、本当はあのいけ好かないウルトラマンに頼るのは癪だけど逆に絶好のチャンスでもあるのよね!魔王は倒され世界は平和になりカズマは魔王絡みのトラブルが無くなって望んだ安息を得られるし、何よりもこの私が漸く天界に帰る事が出来るのよ!一石二鳥どころか三鳥になって万々歳この上ないんたからさ〜!」
そう言ってカズマを唆すアクアを見ためぐみんとダクネスはこの後のやり取りを想像する。
『アクア〜お主もわるよのぉ〜♪』
『うへへへへ〜カズマさん程ではありませんよぉ〜♪』
面倒臭がり且つ小心者でクズが基本のカズマの性格を熟知してる二人は、十中八九ごますり合いながらこの様な意地汚い笑みを浮かべ結束するであろうと、予想を超えた確信を抱いてた為にさてどう抗議しようものかと考え始めた。
そして注目の的になったカズマは、閉じっぱなしの口を開き第一声の言葉を発する。
「ダメだ」
『………え?』
それはまさかの反対意見。
じゅんの一件を除くとしてゆんゆんとクリスもある程度はカズマの人柄を知り得たのか、めぐみん達と同様に良からぬ事を考えてる物とばかり決めてた所での予想外の返答に、開いた口が塞がらずにいた。
「き、聞き違いかしら?もう一度仰って下さらないカズマさ〜ん?」
「“ダメだ”…って言ったんだよ俺は」
恐る恐るもう一度尋ねるアクアだが返答は変わらずだった。
「いやいやいやいや!なに言っちゃってんよのカズマ!?何時もの貴方らしくないじゃない!?散々トラブルに巻き込まれるのはゴメンだって愚痴ってたあんたにとって願ったり叶ったりでしょ!?そうよほら!あのバニル討伐の際に貰った報奨金、あれを使ってガキンチョ悪魔を餌付けにするのよ!美味しい物を沢山食べさせればこっちのお願いを快く引き受けてもらって!」
一応女神だと言うのに口から出る内容が三下のチンピラそのもの。
裏を返せばそれだけカズマの考えを掴んでた筈のアクアにとっては完全な想定外。
人目を憚からず、それでもこちら側に付かせようと徹底的にまくし立てようとした、次の瞬間。
「………」
カズマは無言のままアクアの両肩を掴み、そのまま乱暴に壁際に押し付けた。
「ちょ、カ、カズマ…さん?」
抗議しようにもカズマからただならぬ雰囲気を醸し出すのを感じたアクアは思わず狼狽える。
名を呼ばれる中、俯くカズマはすぅっと鼻から空気を名一杯吸い込み許容量に達すると。
「ダメだって言ってんだろうがぁあああっ!!!!!」
「ひぃっ!?」
『!?』
口から出たのはアクセル全体に響き渡るのではと錯覚する程の、荒れ狂った激情を含ませた咆哮。
これまでにも怒鳴る機会は度々あったが、ここまで真剣且つ凄味のある怒りの声を荒げた事など一度たりとも聞いたことが無く、全員押し黙ってしまう。
「…二度とんなくだらねぇ事ほざくんじゃねえよ…!」
“眼で殺す”と言う言葉を具現化したその鋭い眼と言葉をアクアに送るカズマ。
乱暴に彼女を解放させると怒り心頭のままドアの前までズカズカと歩き、自身の心情を表すようにバンッ!と激しい音を上げながら閉め、一人リビングから出て行ってしまう。
少しの沈黙が流れると、立ち尽くしてたアクアがヘナヘナと力なく床にへたりこむ。
「カ、カジュマしゃん、とてつもなく怒ったんですけど…もの凄い怒鳴り声だったんですけどぉ…メッチャごわがっだんでずげどぉ〜…ぢびりぞうになっじゃっだんでずげどぉ〜…ゔぇええええええあ〜〜〜〜〜ん!!!」
カズマの剣幕で完全に心が折れたアクアは、また何時もの様に大声で無様に泣き喚く。
そんなアクアを毎度の事と無視しためぐみんとダクネスは、カズマが出て行ったドアを呆然と眺め続けていた。
「(あの様な怒り狂うカズマの姿…じゅんじゅんへ爆裂魔法を放とうとした時と全く同じじゃありませんか…いや、それより前に暴れ出したじゅんじゅんに叫んだ時になりますね…私はまだ貴方の全てを知り尽くした訳ではないようです…カズマ、一体何がそこまで貴方を駆り立ててると言うのですか?)」
「あんなカズマは初めてだ。鬼畜でぐうたらでダメダメな男があそこまで真剣になって激昂するなど………い、良いぞ、これはこれで味があって良い、こ、今度は是非私にもあの鋭い眼差しと激怒の声を浴びせて貰えないだろうか!?」
「ダクネスぅ…キミって奴はさ~…」
こんな時でも全くブレずに興奮し始めるダクネスに、親友な事には変わらずも呆れ果てた表情を作るクリス。
「……」
「じゅんくん?…あ」
一方、泣き喚くアクアの姿を見詰めていたじゅんは、何を思ったのか徐に椅子から降りアクアの元へ近づく。
「ひっぐ、えっぐ、ぐずん」
未だに泣き続けるアクアの前に立ったじゅんは、自身の手を彼女の頭の上に置き。
「…なか、ないで…」
そう言いながら優しく撫で始める。
ゆんゆんやクリスにそうしてもらって泣き止み安心した事もあってか、こうしてアクアにも泣き止んで欲しく行った行為…なのだが。
「びぃいいいええええええん!!!ガキンチョ悪魔ウルトラマンに慰められたぁあああああああ!!!」
完全に逆効果となってしまい毛嫌ってるじゅんからの慰めに、女神の威厳やプライドその他諸々がズタボロのボロクソになったアクアはより激しく泣き叫びながら、涙を滝のように流しまくる。
因みに水の女神な事もあってか、彼女の涙に微弱だが聖なる力が込められてる。
故に涙が当たるたんびにじゅんは熱がっていた。
ここでのカズマさん、ウルトラマン絡みになるとぶちギレ案件待ったなしになります。
あと活動報告にも書いた、原作5巻及び劇場版の紅魔の里における話の中での思い付いたプロットを載せてみます。
紅魔の里での話。
怪獣が現れ倒すゼファー
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飛び去る直前にボトムレス・スワンプを受け転び、そこへ狂喜乱舞になった紅魔の人間がぞろぞろとゼファーに集まる
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喝采しながらベタベタ触ってくるせいで時間経過と共にコアが鳴りはじめる。
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『「どうしよう…ぼく、かえれない…うぅ」』困り果て涙を浮かべるじゅん
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プークスクスと笑うアクアを除いた面々があ然とする
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「頭おかしいんじゃねえのかコイツら!?」激しく突っ込むカズマ