この素晴らしいウルトラ戦士に祝福を!   作:黄青

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1ヶ月ほどお待たせしました。

新作のブレーザー良いですね。

今回の話は見る人によってはキツイと思われます。


第六章〜その①

第六章「この幼子にウルトラマンとしての決意と覚悟を!」

 

 

 

 

ウルトラマン!ゼットン!

 

WAKE UP!(ウェイクアップ!)ZEPHYR!(ゼファー!)

 

BEGINS!(ビギンズ!)WARRIOR!(ウォーリア!)

 

 

その日、突如として現れたウルトラマンゼファーは。

 

『………』

 

ゆんゆんとクリス、そしてカズマパーティーを含めた人の居ない大草原の真ん中で体育座りをしていた。

少しシュールな光景だが、これにはちゃんとした訳がある。

ウルトラマンに関する知識を持つカズマが懸念した事は、ゼファーの活動時間。

果たして他のウルトラマン同様に3分程なのか、それともそれ以上又は以下なのかを確認する為にこうして変身してもらい調べるがてらにのんびりと寛いでいた。

ゼファーになって15分経過したのだが、未だ胸のコアは点滅せずに青色を保つ中。

 

「じゅんく〜ん、だいじょうぶ〜?」

 

異常がないとは言えやはり心配なのでゆんゆんが呼び掛ける。

尤も、ウルトラマンになって出来ることは首を振ったり体でジェスチャーして伝える事くらいだろうなと踏むカズマだったが。

 

『「…うん…だい、じょうぶ…だよ」』

「そっか、まぁ今のとこ…ろ…は?」

 

今確かにじゅんの声がした。

しかも自分やゆんゆんばかりか、他の連中も驚きながら顔をゼファーに向けていた。

 

「この声は確かにじゅんだが、何と言うか脳に直接入る様な感じだぞ」

「恐らくは一種のテレパシー能力になりますね」

「ほえ~…まさかその姿になってもじゅんくんと会話が出来るなんて」

『「うん…ぼくに…こう、いう…ちから…ある、みたい」』

 

そんな風に和みながら会話(?)をしてる所に、カズマが質問を投げ掛ける。

 

「なぁじゅん、そのテレパシーはどこまで出来る?俺達だけだったり、特定の人にだけだったりとかさ?」

 

ゼファーのテレパシー能力は使い方次第では後々便利にはなるが、正体を知らない赤の他人にまで筒抜けになってしまえば変に勘ぐられてしまう。

新たな問題が生まそうになる中で、突然クリスだけがクスクスと笑い始めていた。

 

「ど、どうしたクリス?」

「ふふふ、いやねじゅんが“こんにちは、ぼくはじゅんじゅんです”ってあたしに呼び掛けるからさ、カズマくん達は聞こえなかった?」

「いや全然…けど、どうやら筒抜けになる事はなさそうだな」

 

取り越し苦労で終わり一安心するカズマ。

そこへアクアが横から無理矢理入り、ゼファーに人差し指を向け指示をする。

 

「んじゃガキンチョ悪魔ウルトラマン、女神のこの私にだけ何か言ってみなさいよ」

 

図々しく言う相手がアクアな以上もう嫌な予感しかないのだが…。

全員の思いが一致してる事など露知らず、ゼファーはアクアにテレパシーを送る。

 

「ふんふん、ほ〜ほ〜、へ〜へ〜」

「はぁ…一応聞いといてやるけどよ、じゅんはなんて?」

「“アクア様サイコー!”、“カズマはヒキニート!”、“めぐみんはロリっ娘!”、“ダクネスは脳筋!”“エリスの胸はパット入り!”ですって〜!」

「ぶっ!?」

「ク、クリス?」

 

正体を知らない故に突然吹くクリスに驚くダクネスを他所に、カズマは答え合わせとしてゼファー事じゅんに尋ねる。

 

「じゅ〜ん、アクアにはなんて言ったんだ〜?」

『「アクアさま…げんき?…いった」』

『なるほどなるほど』

「ちょっと!まさか純心で正直者の清純な私よりも、そこのガキンチョ悪魔ウルトラマンなんかの言ってる事を信じちゃうわけぇ!?」

『当然(です)』

「んなぁあああんでよぉおおお!」

 

日頃の行いやじゅんを常に毛嫌ってる事も後押し、即答で満場一致する面々に泣き喚くアクア。

そんな中、めぐみんがゼファーの方に体を向くと手に持つ杖を指し指代わりに向けながら申し出る。

 

「突然ですがじゅんじゅん。折角ゼファーになってるのですし、貴方があの怪獣を屠る決め手となった必殺光線と我が爆裂魔法による威力比べを是非とも所望したいのですが」

「威力比べって、めぐみん?」

「ゆんゆん、コレばかりは譲れませんよ。あの光景を目の当たりにしてから…我が内なる魂が叫んでいるのです、“爆裂魔法に敗北などあってはならぬ!”と。爆裂道を現行極めし以上は白黒ハッキリと着けなければ私は気が済みません!尤も負けるつもりは毛頭ありませんし、寧ろ勝つ自信は微動だにしませんがね!」

 

どうやら必殺光線ことスパークシュトロームで倒されるのを見た事で、めぐみんの中の対抗心に火が付いたようだ。

こうなっためぐみんは止まらないし、彼女の爆裂魔法に対する想いは理解してるが、力比べだけに使わせるのはどうかとも考えるカズマだが。

 

「そうだねぇ…じゅん、めぐみんの力比べに付き合ってくれるかな?」

『「え?」』

 

ここで意外にもクリスがめぐみんの要望に賛同したのだった。

 

「クリス、お前なに言って」

「まぁ待ってよ、あたしは決して面白半分で言った訳じゃないよ?あの光線がアレっきりなのか、また出せるならどんな場面でも撃てる様にしておかないといざって言う時に一番困るのはじゅんなんだから…本音を言えばこわいよ…またじゅんの腕があんな風になったらって思うとさ…」

 

脳裏に浮かぶのは光線の影響と思われるじゅんの焼けただれた痛々しい両腕。

カズマやその他の皆も納得すると同時に、クリスの苦悩を察した。

ウルトラマンで言うスペシウム光線の様な必殺技を意図的に放てなければやられるのはじゅん自身。

これからの事を踏まえれば確かに良い機会であるが、同時にまたじゅんがあんな風になってしまうのか…そう不安を抱く中で、じゅんはテレパシーで自分の思いを伝える。

 

『「…ぼくも…アレ、うつ…こわい」』

『怖い?』

『「アレ…うつとき…こえ…きこ、えた…とても、こわいこえ…みんな、こわ、したい…ぼく…おもっちゃった」』

「なんですってぇ!?やっぱりソレがアンタのむぐむぐ〜!」

「ま〜たややこしくなるから黙ってろよな噛み付き女神」

 

相も変わらず噛み付くアクアを強制的に黙らすカズマ。

やはりじゅんに関係のある第三者が存在してたかと思うも、これだけではまだ分からない事に加えあの温厚なじゅんが破壊衝動に飲み込まれかけたのだから、その存在の得体の知れなさと魂胆や底が見えず険しい顔つきに変わる。

そんな皆の表情をみたじゅんは、安心させようと考えその次を伝える。

 

『「でも…ゆんゆん、クリス…まもる…おもった、から…できた…だから…だいじょうぶ…おもう」』

「「じゅん(くん)…」」

「(まだ幼いと言うのに心配させまいと気丈に振る舞う…か)」

『「めぐみん…いいよ」』

「よ、宜しいのですね?…コホン!…“黄泉の門開かれし時深淵なる漆黒の闇浮上せしなり。我、浮上せし闇を己が糧としてその身の内に宿す事を此処に記載する。渦巻け…轟け…叫べ!森羅万象に刻まれし記録を我が力によって消滅すべし!究極極限限界超越せし時!今!祝福の鐘鳴り響く時来たれり!『エクスプロージョン』!”」

 

 

チュドォオオオオオン!!!

 

 

詠唱と共に杖を向けた瞬間、爆破と爆音が響き渡りし爆裂魔法エクスプロージョン。

相変わらず威力と攻撃範囲だけは凄まじく。

 

「ナイス…爆裂♪」

 

全てを出し切り満足げのめぐみんはそのまま前のめりに倒れる。

そんなめぐみんに近付きおんぶするカズマだが、彼だけはめぐみんの爆裂魔法に半ば強制ながら人一倍携わってるので、その違いを見抜いていた。

 

「ナイス爆裂!なんだけど、今日はいつにも増して気合が入ってたなめぐみん」

「当然です。何せ相手はあのじゅんじゅん事ウルトラマンゼファーなのですよ?勝利だけでなく我が爆裂魔法の威力を骨の髄まで刻み染み込ませる所存だったのですから」

 

道理で音や爆風のしなやかさ等が一味違っていたのか。

爆裂魔法の違いが分かるカズマがその様に考える中で、めぐみんは杖を再びじゅんに向ける。

 

「私は全てを出し尽くしました…お次は貴方の番ですよじゅんじゅん!」

『「…うん、わかった」』

 

促されたじゅん事ゼファーはむくりと立ち上がる。

方角をめぐみんの放った爆裂魔法による爆心地に向け、構えをとり始めた。

 

『フン!…ハァアアア…!』

 

両腕を腰に落とすと、エレキベムラー時の様に身体中を赤黒い稲妻が駆け巡る。

 

「ぐるる〜…!きしゃ〜…!」

「せんぱ…アクアさん、気持ちは分かるけど抑えて抑えて」

 

ゼファーから醸し出す力に感化され神の本能のまま威嚇するアクアを宥めるクリス。

その間にもじゅんは湧き上がる力をその身で感じながらも心を落ち着かせ集中し続ける。

 

『「(…だいじょうぶ…)」』

 

囁く声も聞こえない、両腕は熱く感じるが焼け爛れる程ではない。

目を瞑り吸って吐いての深呼吸で整え、目を大きく見開きキッと鋭く作りながら振りかぶると、その光線のもう一つの名称を呼んだ。

 

『「スパークシュトローム!」』

『ジュワッ!』

 

十字形に腕を交差した途端に放たれるスパークシュトローム。

青白い光と赤黒い闇、対極的な色で構成され、その名の通りに流れる様に放出。

 

 

ズドーーーーーンッ!!!

 

 

爆心地に直撃しそのまま出し切った直後に大爆発を引き起こした。

 

「アレがカズマやクリス、そしてアクセルの皆を救った光線なのだな………」

「“あれを食らったらどれだけの衝撃が来るのだろう”…なんて事を考えて興奮しただろう?」

「なななカズマ!?お前何を言って!?」

「ダクネス、いつまでも親友だから正直に言っても大丈夫だからね?」

「クリスまで何をいうか!」

 

煩悩が出始めるのを看破した二人の指摘に動揺するクルセイダー。

 

 

ピコンッ! ピコンッ! ピコンッ!

 

 

それと同時に、青だった胸のコアが赤に変わり点滅し始めた。

 

『…デュワッ!』

 

点滅し音を鳴らすコアを一目見ると、両腕を下ろしX字に交差してから一声を出した途端、ゼファーは光に包まれじゅんじゅんの姿へと戻った。

 

「…ふぅ」

 

謎の声や腕の事も問題なく終えて一息吐くじゅん。

そんな彼の元にゆんゆんやクリス達がゾロゾロと駆け付ける。

 

「じゅんくん」

「腕とか平気?」

「ん…だい、じょうぶ…あん、しん…して」

 

そう言いながら自身の手の平を二人に見せるじゅん。

外見相応の小さな手は綺麗に保たれており、一安心したゆんゆんとクリスはじゅんの頭を優しく撫でる。

目を瞑り二人の手の温もりを感じ安息する中で、カズマの背に乗るめぐみんはと言うと。

 

「ま、まぁ流石じゅんじゅんと言わざる終えません…が!まだウルトラマンや冒険者としてもなりたてホヤホヤでありますし、その点私の方は今に至るまで我が爆裂魔法による幾千の戦いに光明を見出し魔王の幹部やデストロイヤーを屠った実績と先輩冒険者である以上、私の方が一枚上手の様なのでこの勝負は私の勝ちになります。ですよねカズマ?」

「いやなんで俺に振るんだよ!て言うかそこまでして負けたくねぇとか逆に感心するぞ!」

 

くど過ぎるこじつけにツッコミを入れるカズマ、その一方で。

 

「悪魔倒すべし…!魔王しばくべし…!」

「き、気にしなくていいぞじゅん、私が盾になるから安心しろ」

 

青い目を光らせアクシズ教の教えをブツブツ呟きながら迫るアクアを遮る様に抑えるダクネス。

何時もの様に騒がしくなりながらも、今回の件に加えじゅんからの証言を含めてまとめると。

 

・変身アイテムのZLから様々な情報が齎され、それを眠る中で覚え学習している事。

・一度ゼファーになってから再び変身するにはケース事MCHに入れて充電する必要があり、半日の12時間を必要とし、無理に早く変身すればその分活動時間が短くなる事。

・戦闘時に受けるダメージや光線等を考慮した結果、約3分を目安にする事。

 

ある程度のインターバルが存在する以上、使いどころは慎重に見極めなければならない。

それを知れただけでも確かな収穫でもあり、今日はここまでにする事となった。

 

「ところでじゅん、さっきの光線に名前とかあるのか?」

「えっと…ゆう、ごうしき…せん、こう…はかい…ねっせん…スパーク、シュトローム」

「…ながっ」

「お〜!その琴線に触れまくりの名称、大変素晴らしいですよじゅんじゅん!」

「…あり、がとう…」

 

 

-じゅん「この、すば」-

 

 

怪獣並びにゼファーが現れてから約3週間。

始まりの街アクセルに出現して以来、双方の存在はアクシズ教団の総本山“アルカンレティア”、ゆんゆんとめぐみんの故郷“紅魔の里”、魔王軍との国境が重なってるが故の最終防衛ラインとも言われてる“ベルゼルグ王国”等、大規模な国や小規模な街を問わず全世界に知れ渡る事になった。

また、同時期になって新種のモンスターが時折確認され、かつその大きさがどれも40から50メートル級の特大サイズ。

下手なドラゴン以上の大きさをほこるそのモンスターは、アクセルに出現したエレキベムラーで囁かれた“怪獣”と言う名称で統一する事になっていた。

静かにだが確実に変化をし始めるこの世界、それでも人は各々の日常に取り組んでおり、アクセルの住人も同じだった。

冒険者達の憩いの場ギルド。そこの掲示便に貼り付けてあるクエストの内容をじゅんを始め、ゆんゆんとクリス、そしてじゅんの初クエストと言う事もあって同行したカズマパーティーも含めた面々が挙って閲覧していた。

 

「私達の様な名高いパーティーに並びたいのなら、最低でもこの『繁殖期を迎え始めた初心者殺し6匹討伐』をする事ねガキンチョ悪魔!」

「お前バカか!?なにあからさまに無理難題なモン指してんだよ!」

「6匹の初心者殺し…その鋭い爪と唾液を垂らす牙…お、押さえつけられながら私のあられもない素肌を前に発情する獣に迫られるシチュエーション…んふぅっ!…た、たまらん!」

「ダクネス、貴女にその様な辱めなどさせません!我が爆裂魔法で一網打尽にしてみせますから!」

 

とんとん拍子に己の言いたい放題呟き散らす面々。

よくもまぁその勢いを毎度出せる物だと色んな意味で感心する中、じゅんだけは掲示板に貼られる中の1枚の紙の内容に目を通し、それに釣られる様に他の面々もその内容を確認した。

 

『臨時募集。

依頼者、保育施設ピース園長ルミ。

従業員数名の体調不良により、代理人を要望致します。

仕事内容は、施設の子供達との触れ合い。

出来れば料理に携わる人がいれば尚の事良し。

報酬は時給700エリスを提供致します』

 

「ピース…ルミ」

「それって、あたしが戻ってくる前に二人が知り合った人だよね?」

「ええ、ちょっと大変だったけど私やじゅんくんと施設の皆と一緒に遊んで楽しかったわ」

 

懐かしみ笑みを浮かべるゆんゆん。

ただ、内容や報酬からしてクエストと言うよりも完全にバイトのそれに当たる。

冒険者活動をする者なら体を張った内容を前提かつ最優先にする事もあり、半ば場違いとも言える依頼を引き受ける者はまず居ないだろうと考え始めてた所に。

 

「ぼく…これ、にする」

 

ただ一人、じゅんはバイト同然のソレを初クエストとして選ぶのだった。

 

 

-じゅん以外の一同「えっ?」-

 

 

保育施設ピース。

仕事や冒険者活動、並びに身寄りの無い子供たちを預け引き取り、多少の勉学を教え遊戯をしながら食事を提供するアクセル内にある施設の一つ。

規模はそこまで大きくはなく至って普通の施設、その広場の中心で。

 

「よ~く見ておきなさ~い♪よ!は!花鳥風月♪」

「顕現せよ!エクスプロージョン!フ…とまぁこの様に放つのが我が爆裂魔法の醍醐味なのです」

「中々に元気のある子供達だな、ハハハ」

 

カズマパーティーの各々が、施設の子供達と共に遊び相手をしていた。

アクアは花鳥風月をお披露目し、めぐみんは爆裂魔法を放つ際のカッコいいポーズをとり、ダクネスは鍛え抜かれた二の腕に捕まる子供を持ち上げ戯れる。

一方でカズマの方は、自分の居た世界にある競技“野球”を子供達に教え行わせていた。

尤もカズマ自身もそこまで詳しくは無く、投げる側・打つ側・受け止める側と言う最低限を用意した程度になってるが、そんな中にじゅんがバット代わりの棒切れを持って構える。

 

「いいかじゅん、玉をしっかり見て振るタイミングは間近に迫った瞬間だぞ。それとこれは遊びだから軽く当てる程度にな」

「うん…やって、みる」

 

野球の提示者であるカズマにそう説明されたじゅんは、再びピッチャーに向ける。

そして、投球されるボール(相手も幼いので下から投げる形)に対しタイミング良く軽くスイングし、カコンという音を立てながら見事に打ち返す。

 

「おお〜!」

「当たった当たった!!」

「ね〜ね〜もっとやろうぜ!」

 

じゅんがボールを打ち返した事で周りの子供達は大はしゃぎになり、そんな無邪気に笑う子供達をカズマを始め遠くから眺めるゆんゆんとクリスも同じ様に微笑んでいた。

因みに二人が皆の輪に入らないのは、子供が苦手でなく好きな方なのだが単に園長であるルミと会話をする為であった。

 

「お久しぶりですねゆんゆんさん。それとお仲間のクリスさんやその他の方々も、今日は私達の募集を引き受けて下さって本当にありがとうございます」

「いえいえ、ルミさんや施設の子供達が元気でなによりです」

「はじめましてルミさん。今回はじゅんの初クエストと、一緒に遊んだ子供達が気になってじゅん自身が選んだ、言わばあたし達は付き添いみたいなものですから」

「それでも構いません。皆様のおかげであの子達は元気一杯にはしゃいでいらっしゃいますから…それに」

 

何か思い詰める様な表現を作るルミは、地面に下ろしてた視線を再び子供達に向けると重々しく続きを述べる。

 

「あの怪獣と巨人…ゼファーが争った事であの中に居る数人の子供達やその親が巻き添えを受けてしまったのです」

「「…っ!」」

「その事もあって少なからずの緊張感をあの子達は持ち続けていました…だからこそ、皆さんがこうして遊んでくださる事で笑顔になったのは大変有り難い事です」

 

感謝の思いを込めて笑顔を送るルミ、だが事情を知る二人にはとても重くのしかかってしまった。

だがそれだけでなく、特にじゅんにとって更なる追い打ちが起き始めようとしていた。

じゅんと交代した子供が打ったボールがベランダ付近で1人座る少女の足元に転がり、それを拾おうと近寄ったじゅん。

 

「こん、にちわ」

「………」

 

初めて来た時に居なかったのか、見慣れない少女な事もあって一通り見る。

少し汚れた赤い靴を履き、他の子たち同様の質素な服装だった。

しかしその少女の瞳は光を失った様な虚ろ気味であり、じゅんの挨拶に顔を向けても返事を返さないまま、ずっと手に持つ一枚の紙に再び視線を向ける。

 

「それって………っ!?」

 

好奇心に刺激され許可を取ることなく覗き見たじゅん。その紙には絵が描かれていたが、描かれてる内容に思わず硬直してしまう。

エレキベムラーを思わせる怪物と自身のもう一つの姿であるゼファー、2体の足元は瓦礫と炎を表す様な仕上がりとなり、極めつけは仰向けになって倒れる二人の人の前で涙を流す一人の女の子らしき人物がおり、色鉛筆で描かれ如何にも子供が描いたかの様なタッチだが、それ故に内容も相まって生々しくそしておどろおどろしい絵となっていた。

 

「…」

「あ」

 

じゅんに絵を見られた少女は、拒絶する様に立ち上がりそそくさとその場を去ってしまう。

そこへ、一向にじゅんが来ない事を気にしてたカズマと子供達は、二人のやり取りを見てから佇むじゅんの元へ駆け寄る。

 

「じゅん、今の女の子は?」

「しら、ないこ…でも…」

「アイツの…“ルーベル”の両親は死んだそうなんだ…怪獣とゼファーの争いに巻き込まれて」

 

一緒に野球をしてた一人の男の子が影を落とした表情でルーベルの事を話し、それを耳にしたじゅんとカズマは心臓を掴まれるかの如く驚きの表情を顕にする。

 

 

-カズマ「なん…だって?」-

 

 

丁度同じ頃、じゅんとルーベルのやり取りを遠くから見守ってたゆんゆんとクリスも、一緒にいた園長のルミの口からルーベルの事情を聞き始めていた。

 

「ルーベルちゃんがここへ来た時から一言も声を発していないのです、その原因は今でも肌見放さず持つ絵の内容が全てを物語ってました…彼女を救助した団員から促されてあの絵を描いたそうなのです…恐らくあの怪獣とゼファーがアクセル内で争ってる最中にルーベルちゃんや親御さん共々巻き添えになって…只でさえ両親を失ったのに声を出せない程のショックがあるとすれば…ルーベルちゃんは目の前で両親が亡くなる光景を目の当たりにしたのかも知れません」

「「………」」

「ごめんなさい…依頼を受けて頂いた手前なのに、このような事を」

「いえ…御気になさらないでください」

「…そのルーベルさん…何時もあんな感じなのかな?」

「いえ、他の子達と共に遊ぶ事もあります…ですが、6か7歳のあの子の抱える心の傷は深く…先程の様になってしまうことが時々あります…」

 

ルーベルに関する事を語ったルミも、そしてそれを聞いていたゆんゆんとクリスも視線を下に向けて暗い表情を表していた。

初めて出現して暴れた行為がじゅんの意思でない事は既に分かっていた事だが、かと言って家や建物を破壊し犠牲者をこうして出してしまった事実は変わらない。

思わずじゅんの様子を遠くから見ると、案の定その表情はショックで目を見開くと同時に体を震え上がらせていた。

だがじゅんの正体を知らない施設に居る子供達は、それ故にゼファーに対する憤りを各々がこぼし始める。

 

「ゼファーは償うって言ってたけど、俺は許さねぇよ!」

「そうだよ!勝手に出て来て勝手に暴れて、そのせいで私達の家が壊されちゃったのよ!」

「僕のお父さんもアイツらが暴れたせいで死んじゃった、アークプリーストの人のおかげで生き返ったけど…けどだからって許す事なんて出来ないよ!」

「なんであんなのが居るのよぉ…あんな奴等なんて皆消えちゃえばいいんだ!」

「お、おいお前ら落ち着けって!」

 

溜めていた負の思いを連鎖的に吐き出し始める子供達にカズマは慌てて止めに入る。

それを見ていたゆんゆん・クリス・ルミ達もカズマ同様に子供達を落ち着かせる為に加勢に入ろうとした。

このまま人騒ぎが起きるのではと思われたが、一人の人物の行いで急速に収まってしまう。

 

「うぅ…ご…ひっぐ…なさ…ぐす…めんな…ひっく…うぅ…!」

 

大粒の涙を流し、他の者達に聞こえない程の小さな声で謝るじゅん。

両手で拭っても全く収まらず未だ滝の様に涙を流し続ける。

その姿にそこに居る全員が思わず押し黙ってしまう中、これ以上此処に居られない、耐えられない、限界だと言うじゅんの心境を表す様に一目散に駆け出しその場を離れていく。

 

「じ、じゅんくん!?」

「ま、まってよじゅん!」

 

突然の行動に驚くも、見失う訳にはいかないゆんゆんとクリスはじゅんの後を追った。

全員が佇む中、ルミはカズマに話し掛ける。

 

「カズマさん、貴方も行って大丈夫ですよ」

「え?」

「この子達は私に任せてください、貴方はあの子…じゅんくんの為に何かできる事がきっとある筈ですから」

「…すんません、必ず戻りますから」

 

体を軽く曲げながら謝罪したカズマは先に行った二人と同様に駆け出す。

追い詰められ泣いてるじゅんに対し、自分に出来る事は果たしてあるのか?

それはまだ分からないが、少なくともこのまま見過ごす事はできない事だけはハッキリしていた。

 

「(まったく…俺って奴は本当にしょうがねぇ男だよな)」

 

変にお人好しな所がある自分を自虐しつつも、じゅんを始めとしたウルトラマンや怪獣絡みには自分にできる限りと範囲で関わる様にしようと決めていた。

彼らウルトラマンの様になれずとも、せめて真っ直ぐに向き合えて良い様な人間で在りたい。

それが、今のカズマが抱く思いであり決意でもあった。

 

 

-カズマ「このすば!」-

 

 




タロウのトータス事件の様に、怪獣被害に遭った人にフォーカスしました。

故にこの話はじゅんにとって向き合いそして乗り越えなきゃいけない試練にもなります。

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