“駆け出し冒険者の街アクセル”、この世界の魔王が住む城…から最も遠く離れており現れるモンスターが弱い事や例外を除けば魔王どころかその幹部にすらも目を付けられずにいる為治安が良く平和的な街となっている。
もっとも、先の言った例外の魔王幹部デュラハンの2度の登場に加え機動要塞デストロイヤーの討伐から討伐の結果で齎されたある人物の裁判沙汰等等と最近のアクセルは大騒ぎとなっていた。
そんな怒涛の騒ぎも一旦収まり再び平和へと戻ったこの街に二人の人物が訪れていた。
「着いたよじゅんくん、ここがアクセルの街だよ」
「…あく…せる?」
ゆんゆんにそう返すこの幼い少年こそ落ちて来た物体の中にいた子供であり名前を“じゅんじゅん”、“じゅん”とも呼ばれている。
何故この様な名前なのかと言うと、最初に見つけた事もあってゆんゆんが名付け親をと考えたものの自信の無さや常識的性格やらで紅魔族を始めとした他の人から名前の内容次第で今後白い目で見られる可能性を懸念し難儀したのだが、ある人物の提案で“紅魔族相手ならフルネーム、一般の人になら略して名乗れば良いだろう”との事からその人物が名付け親となりじゅんじゅんと名付けられたのだった。
「クリスさんは冒険者ギルドの所で待ってるからまずそこへ向かおうね」
「…うん」
ほへ〜とした雰囲気と無表情で頷くじゅんにゆんゆんは思わず笑顔でじゅんの頭を撫で、彼の右手を握りながらギルドのある場所へと歩いて行く…見ようによっては姉弟とも危ない感じにも見えてしまうが。
──────────ゆんゆん「このすば!」──────────
酒場、食場、そして受付等が揃いし冒険者ギルド。
一人一人異なる種族や職業を持つ冒険者達はこの街が基本平和な事もあり、今日も昼間から酒を飲み食い物を喰いながら駄弁り合っていた。
その場にいる冒険者達をただボケ〜と眺めてるじゅんとは対象的にギルド内のガヤガヤした空気の中をゆんゆんはキョロキョロと当たりを見回し待ち人のクリスを探した、すると。
「やっほ〜!ゆんゆん、じゅん、こっちこっち!」
「あ、クリスさん!お待たせしました」
「ク、リス…いた」
先に向こうが気付いた様で呼び掛けながら手を振り、それを目印にしたゆんゆんはじゅんの手を引いてクリスの座る席に向かい座り込む、因みにじゅんは二人の間に自然と座らされていた。
「着いて早々手初通りに行くけど、準備は良い?」
「は、はい!?だ、だだだだいじょじょぶぶですすす!」
「…いや、とても大丈夫そうには見えないんだけど…じゅんも良い?」
「…いい…よ」
何か始める前からダメっぽいかも…そんな心の声を表す様に苦笑いを作るクリスを先頭に3人は受付の方へと向かう。
──────────クリス「このすば!」──────────
「お次の方どうぞ…あらクリスさん、それに確かゆんゆんさんでしたか?お久しぶりです。それと小さいぼく、こんにちわ」
「こん…にち、わ」
親しみのある笑顔で喋る受付の女性は“ルナ”、スタイルはかなり良く特に身体の中心のふくよかな2つの物は男達にとって釘付け間違い無しの品物である。
因みにゆんゆんも、ルナ程ではないがそれでも14の少女が持つには発育の良すぎる物をお持ちになり、クリスに至っては………察してあげてください。
「随分と引っ掛かる言い方をするねキミぃ…」
「あの〜、一体誰に向かって仰ってるのですか?」
「え?ああゴメンゴメンこっちの話だから気にしないで」
3人の頭に?マークが浮かぶのを他所にクリスは本題へと入った。
「実は冒険者登録をして欲しい子がいるんだけど」
「はぁ、冒険者登録と言いますとどちら様で……え?」
じゅんと目があった途端、ルナは唖然となる。
目の前のクリスは勿論の事ゆんゆんの場合はかつて掲示板にある意味彼女らしい依頼を募集してた事が印象に残ってた為冒険者であることは覚えていた。
ではクリスの言う冒険者希望は誰なのか…消去法で考え辿り着いた答えに戸惑いながら恐る恐る尋ねる。
「ま…まさか」
「お察しの通り、じゅんを冒険者として登録して欲しいんだ」
「………えええええええ!?」
周りで飲み食いしていた冒険者が注目する程ルナの声が響いた。
荒くれ者や最近有名なあるパーティー達など兎に角破天荒な連中が多い中で、クリスはルナにとって数少ない良心的且つ常識的な考えを持つ冒険者。
故にそんなクリスが何処をどう見ても冒険者になる為の年齢を大幅に下回る程の姿をしてる
「あーその…因みにこう見えてじゅんは14歳なんだよね」
「はぃいいい!?じゅうよんんんんん!?」
またもやトンでも発言するクリスに2度目となるルナの叫び声、同時に野次馬感覚で見ていた冒険者達の間に“ざわ…ざわ…”と何処ぞの世界観の如くざわめき始めていた。
「ク、クリスさん…いくら何でもその子供が14だなんて流石に無理があるのでは」
「まぁ信じられないのは百も承知だけどね」
「…仮に、仮に本当だとしても冒険者稼業としてやっていける様には見え」
「そ、その為に私達が面倒を見るんです!」
やはりじゅんの見た目に加え口調や雰囲気が足枷となりすんなり通る筈もなく渋るルナだが、そこへ黙っていたゆんゆんが口を開き語り出し始めた
「詳しくは言えないんですが…その、じゅん君は色々あってこれからは自分の力で生きないといけない事情があるんです。
ですから、私達でじゅん君に沢山の事を教えてあげないといけない…その為にもどうしても冒険者になる必要があるんです!お願いします!」
「…お、ねがい…しま、す」
「アタシからも頼むよ、この通り」
3人揃って頭を下げる姿を見たルナは一旦目を瞑り考える。
個人的に気になるものの受付係として相手のプライバシーに深入りし関わるのはご法度でもあり、クリスの人柄を知る者としてはじゅんと呼ばれる子供を悪い様にするとは思えず、加えてゆんゆんの方は頼り無さそうながらもじゅんの為に進んで話通そうとする芯の強さと人の良さを感じ取り、少なくとも犯罪に走る様な事はしないしさせないだろうと判断、再び目を開け3人に対し口を開く。
「分かりました、どの様な事情であれ基準の年齢を超えてる以上は登録する資格がありますし承りましょう」
ルナの了解を得た事でゆんゆんとクリスは安心の溜息から即座に喜びの笑顔を表し、じゅんの方は表情こそ変わらないが「よかった」とのんびりそうに呟く。
同時に新たな冒険者が誕生する様を見るべく外野がこぞっとじゅん達に詰め寄っていく。
「おお、地獄の一丁目に踏み出す奴がまた現れたか」
「にしてもあのナリで14たぁ、全く冒険者稼業は何が起こるか分かんねぇなあ」
「ほぁ〜ちっちゃくて可愛いなぁ、じゅん君だから男の子よね…後で頭ナデナデしてあげよっと」
「…おれ…何だか目覚めちまいそうだぜ」
一部危ない発言をする輩を無視し登録手続が始まる。
登録料をゆんゆん達に払ってもらった後は冒険者に関する内容、差し出されたカードに記載してるレベルやらポイント等の説明を一通り終え、次にルナから差し出された書類に自身の名前と年齢、身長、体重、特徴部分等を書くように促されたじゅんだが、何故か受け取らず立ち尽くしてしまう。
「ど、どうしたのじゅん君?」
ゆんゆんが徐に尋ねると、じゅんは何時ものたどたどしい口調で答える
「ぼく…しん、ちょう…たいじゅう…しら、ない」
コテッと全員が軽くずっこける。
しょうがないと言わんばかりにルナ以外のスタッフが調べてもらい、漸く書き終えることができた。
「お名前じゅんじゅんさん、身長110センチ、体重19キロ、年齢14歳…突然変異で白髪になった紅魔族の人間…ではありませんよね?」
「ありません」
名前がいかにも紅魔族らしい事もあって勘ぐるルナを真っ向から否定する紅魔のゆんゆん。
「では次にこのカードに触れてください。ステータスが表示されてそこに書かれてる数値に応じてなりたい職業が選べます、また職業によって専用スキルも異なりますのでよく考えてから選択してくださいね」
ルナの説明を理解したじゅんはコクリと頷くと、指定のカードに触れる。
淡い光を発し、それが収まると早速ルナはじゅんのステータスが載るカードを確認し始める。
「それでは確認致しますね……う〜ん申し上げ難いのですが……筋力、知力、魔力、その他諸々のステータスは全体的に低いと言わざる終えませんね」
「……」
「あ、あのですね!今でこそ低いですがレベルアップ次第で化けちゃうなんて事も十分あり得ますしそう気を落とさないでください、まだ始まってもいないのですから!」
落ち込んでいると思ったのか必死にじゅんを励ますルナは別の話題に変えようと思い今度は職業項目に目を通した、すると。
「ん?…ラーニング…学習者?」
じゅんのステータスから最弱の“冒険者”と推測したが見事に外れると同時に聞いたことの無い職業名が目に写りルナは困惑する。
新しく生まれたのかそれとも過去に現れたことがあるのか…少し時間が必要と判断したルナは「上の方に確認をとりますので少々お待ち下さい」と言うとこの場を去っていった。
予想外の展開に“もしや凄い才能の持ち主なのでは”とじゅんに対し各々が期待を膨らませていると、「お待たせしました」と言いながら戻って来たルナは直ぐに学習者について説明し始める。
「じゅんさんの職業である学習者、簡単に言いますと基本職の“冒険者”…その上位版みたいなものなんです」
「冒険者の上位版?」
「ご存知かと思われますが冒険者は他の職業のスキルを得ることが出来るのが特徴ですが能力の質は本家より劣ってしまいます…ですが、学習者の場合は冒険者と違いスキル習得は勿論のことその質は本家と全く同じものとなっているのです」
本家スキルより落ちる“冒険者”と違い“学習者”はそのデメリットを克服してることもあって、ルナの説明を聞いた一同は学習者の特性に関心を抱く。
ただ唯一、クリスだけは悪い意味で何かあるなと勘づき徐に尋ねる。
「その分、デメリットなところもあるみたいだね?」
「…その通りです、スキル習得に必要なポイントやレベルアップに必要な経験値等が冒険者含めた他の職業以上に多く必要なのです。
数値で例えますとスキル習得だと他の職業なら1〜5、冒険者は2〜10、そして学習者の場合は10〜100必要になり、レベルの方も一つ上げるのに通常100程なら、学習者の場合は1000近く必要になるそうです。
ただその分得られるポイントも他の冒険者以上になるのですが…習得に必要な事を考えると…」
『………』
「以上の事から冒険者の上位版は名ばかりで余りにも時間や浪費を賭ける職業なので選ぶ人は勿論、直ぐに転職する人も続出し…結果調べない限り知れ渡る事のない“忘れ去られた職業”となってしまったそうなのです」
うまい話に裏があるとはこのことかと期待した途端落胆の表情を浮かべる冒険者一同。
駆け出しには荷が重いだろうし、かと言って今のじゅんに適する他の職業は冒険者くらいしか残っていない、出来る限り傷つけない様注意しながら冒険者をお勧めようとした矢先、ルナが口を開く前にじゅんから話しかけてきた。
「ぼく…がく、しゅうしゃ…でいいよ」
「え!?で、ですが」
「これで…いい」
静かに言うじゅんに戸惑い気味のルナだか、合わないと判断したらステータスを上げ転職する事が出来るし何より本人が決めた以上はその意志を尊重しなければと割り切る事にした。
「あんだけ説明を聞いても変えねぇたぁ、変わり者のガキだな」
「まぁチャレンジ精神的な所は嫌いじゃねえぜ」
「膝に掛けた状態であ〜んさせてご飯を食べさせる…あ〜いいわいいわ〜」
「…おれ…やっぱり目覚めちまいそうだぜ」
呟く他の冒険者を他所にルナから手渡されたカードを眺めるじゅん。
“学習者”の名と共に全体的に低いステータスが記載されていた。
「決して無理はなさらないでくださいね?何も焦る必要はありませんしゆっくりと自分のペースと出来る範囲で頑張ればよろしいのですから」
「…はい」
「体調管理も怠ったらダメですよ、沢山食べて沢山寝て常に元気でいることが一番ですし、あともし今の職業が合わなければ直ぐにでも転職を行えば」
「ストップストップ!もう十分だからそのへんにしときなよ」
「…ハ!?すすすみません、私ったら」
一応14歳となってるものの見た目が5歳前後の姿に加えじゅんから醸し出すほへ〜としたオーラが母性本能を擽られたのかズカズカと話すルナを思わず止めに入るクリス。
自身の行いに顔を赤くしながらも気を取り直し、受付嬢としてじゅんに出迎えの言葉を送った。
「コホンッ!…では改めましてようこそじゅん様、冒険者ギルドへ!
貴方様の冒険活劇に幸あらぬ事を祈りながら、スタッフ共々今後の活躍をご期待致します!」
そう伝えるとルナやスタッフを始め、クリスとゆんゆんも含めた冒険者達が歓迎の拍手を送る。
その拍手を浴びながら、今日じゅんは全ての冒険者の仲間入りとなった。
──────────じゅん「この…すば」──────────