出来る限りキャラの性格・イメージを崩さないよう頑張ってます。
楽しんで頂けたら幸いです。
翌日、馬車で王都へと行くクリスを見送った後のじゅんとゆんゆんは探索する様に街の中を彷徨う。
いきなりの特訓や討伐とそれ以外のクエストを受けるのは気が気であった為に一つ一つ段取りを組む事から始め、まずクリスが帰ってくるまでの間は街の雰囲気に慣れる様にとの事で街の中を歩いていた。
因みに、先にアクセルへと来ていたクリスが服屋へと事前に注文し青を基調としたじゅん専用の冒険者服を作らせて今現在それを着込んでいる。
又、駆け出し冒険者に配給されるショートソードも受け取ったのだか、70以上80未満のサイズで一般の人であれば片手で掴めるがじゅんの身長から少し無理があるため両手持ちを方針にし収める鞘共々背中に背負わせていた。
さてこれからどうしようかなと冒険者として先輩のゆんゆんが頭を捻らせてると、一緒に歩くじゅんがあるお店の前で止まり扉の前をジーっと見詰める。
「どうしたのじゅんくん?」
「……」
「魔道具店みたいだけど、ここが気になるの?」
「…うん」
ゆんゆんの問い掛けに反応しコクリと頷くじゅん。
見た目はこじんまりとした至って普通のお店。
飲食店類ならまだしも魔道具店に興味を示すとはと意外に思い、もしかしてこの先の事を彼なりに考えたからなのではと思考するが、いずれにせよ他に行く場所を思い付いてなかったこともあり目の前の魔道具店に入る事にした。
「いらっしゃいませ〜」
店に入ると、のんびりと温かみのある女性、“ウィズ”の声が耳に入る。
この魔道具店の店主である彼女は先の声に相応しい程の柔らかな微笑みを浮かべる。
──────────ウィズ「このすば♪」──────────
「初めてのご来店ですか?何をお求めでしょう」
「え、えっと…お求めと言いますか何と言いますかその」
まだ人見知りが抜けない事に加え、あくまでじゅんが興味を示したから入っただけで買い物をする意志は無いに等しく、ひやかし同然なのではと思いオドオドしながら心苦しく思ってしまう。
そんなゆんゆんの心境を知らぬじゅんは、周りの商品に目を向けず何故かウィズにのみ向けていた。
「……」
「あの〜…わ、私に何か御用ですか?」
子供とは言え初対面の人から見詰められる事に戸惑ってしまうウィズではあったが、同時にある事に気付く。
「(何故かしら、この子から…
自分の中で生まれた疑惑に対し一つの推測を立てるウィズは、果たして探りを入れてみるか…それとも気付かないフリをするか…だが相手は既に気付き最悪正体を暴露するのでは等と勘ぐり次の行動を移せず困り果てていた。
すると、突然入口のドアがひとりでに開くと3人のグループが店の中へと入って来た。
「こんちわ〜ウィズ、ちょっと頼みたいことが…て」
「あ…」
「あ…」
間の抜けた声を漏らすゆんゆんとは対象的に、「あ、いたのか」みたいな素っ気ない声を出す彼女はゆんゆんのライバル(自称)である“めぐみん”。
その後ろには
「キミは確か昨日の」
「わ、我が名はゆんゆん!よもやこの様な形で再び出会う事になるとは!やはり私達の間に絡み合う
「気持ち悪いですよゆんゆん、絡み合うだなんて」
「ひ、ひどい!」
じゅんが居ることもあって格好良く決めようとしたのだか学生時代からアイも変わらず…否、少し磨きをかけたのかもしれぬ冷めた様な返答にゆんゆんは直ぐ様涙目になりいつもの調子に戻ってしまう。
「まぁそんなことより」
「そんな事って!?」
「ウィズ、ゆんゆんの側にいるそこの幼い少年は何者です、貴方の知り合いですか?」
「なんですってぇ!?さてはクソ店主!アンタ魔力欲しさにそこの子供を拉致ったのね!?」
「ち、違いますアクア様!その子は私でなくてそこのお客様のおつれなのですぅ!」
「…今なんと?…ゆんゆんの連れですって?」
アクアに問い詰められ涙目になりながら慌てて否定し説明したウィズに対しその内容が余程のことに思えたのか、めぐみんは一瞬目を大きく見開くと、即座に軽蔑する様に目を細めその視線をゆんゆんに向け始めた。
「ゆんゆん…いくらあなたがボッチだからと言ってその様な年端も行かない少年を連れ回すなど…人として恥ずかしくはないのですか?」
「人として!?て言うか何をどうしたらそんな滅茶苦茶な考えになるのよ!」
「あなただからこそですよ。それともアレですか?お金で持ち掛けたのですか?食べ物やお菓子等で釣ったのですか?はたまたその無駄に膨らんだ忌々しい胸で拐かしたのですか?」
「そうじゃなくて〜!」
一方的かつ容赦の無い批判混じりの質問攻めに更に涙目となるゆんゆんだったが、そこへ話題となった人物が遮る様にゆんゆんの前に出る。
「じゅ…じゅんくん?」
「ゆん、ゆん…な、いてる…いじ、め…だめ」
表情こそ薄いが其処にはゆんゆんを庇うと言う確かな意志を体で表し口に出すじゅんの姿があった。
両手を下向きに広げ健気に守る姿にゆんゆんは感極まる意味で涙目となり、対してめぐみんはじゅんのその姿に少したじろぎ一歩後退ると背後からカズマの声が入る。
「そこまでにしろよめぐみん、いくら何でも言い過ぎだぞ?」
「何をおっしゃいますかカズマ!あのゆんゆんがですよ!?寂しさを埋めたい一心で一種の洗脳紛いな事をしでかす程に堕ちてしまった可能性だってあるんですよ!?」
「(ほんっと無茶苦茶な事言うなコイツは)…はぁ、お前ら二人の間柄はよく知らねぇけど目の前のじゅんって子が体貼って守ろうとしてるんだ、これ以上とやかく言うのは無粋なんじゃねぇのか?」
「ですが…」
未だ納得できずに渋るめぐみんに対し、カズマは少しカマをかけるかと思いわざとらしく話し始めた。
「それに“大人”なめぐみんだったら子供の様に何時までも愚図る事はしないで、寛大な心で丸く収められるだろう〜?」
「も、勿論ですとも!“大人”な私としたことが思わず感情的になってしまったようですね。少々
“大人”気なく振る舞ってしまい申し訳ありませんでした」
“大人”と言う部分をわざとらしく強調し上機嫌となるめぐみんに対し、(チョロい)と心の中で呟くカズマとゆんゆん。
尤も、カマをかけたお陰でとりあえずその場を収めることに成功したカズマは最低限の挨拶をすべく自らの名前を名乗り出る。
「悪かったな思い込みの激しいめぐみんが色々と。俺の名前はサトウカズマ、カズマで良いぞ」
「少々気に掛かる言い方ですがまぁ良いでしょう。我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし人類史上最大の攻撃魔法!爆裂魔法を操り極めし者!因みに今カズマの頭にいるのは我が使い魔の“ちょむすけ”です」
「ンニャ〜オ♪」
「最後はこの私ね!耳かっぽじってよ~く聞きなさいよ二人とも!アークプリーストを生業とするこの私は何を隠そう!麗しくも美しい水の女神で有られるアクアその人なのだから!」
「「と言う設定で通してる痛い娘だ(です)」」
「なぁああああんでよおおおおお!!!」
二人の意地悪なツッコミに泣きじゃくるアクア達のコントを余所に、じゅんは自身の名を名乗ろうとしたが既で止めゆんゆんのスカートを引っ張りこちらに向けさせる
「(どうしたのじゅんくん?)」
「(どっち…で…呼べ…ば良い?)」
じゅんが小声で言った内容にゆんゆんは理解する。
一般人と紅魔族それぞれ使い分けれる様な名前なのだが、冒険者登録時を例外にし片方なら兎も角両方居た場合は果たしてどうすべきなのか…それが分からずじゅんはゆんゆんにちょっとした助けを求めたのだった。
「(めぐみんがいる以上は仕方ないわね、私が何とかサポートするからそのまま名乗っていいわよ)」
「(…わかっ…た)」
ゆんゆんからの言葉を受けたじゅんは再びカズマ達に向けると自身の名前を言った。
「ぼく…な、まえ…“じゅんじゅん”…“じゅん”…でもいい…よろ、しく…です」
「じ、じゅんじゅん?…(おいアクア、めぐみん。紅魔族って確か黒髪で赤目だった筈だよな?ありゃどう見ても髪は白だし目だって明らかに赤くもないが?)」
「(私に聞かれたって困るわよ!…あれじゃない?ハーフエルフみたいに別種族の間で産まれたやつとか?)」
「(私は紅魔の里の身ではありますがその様な事例は聞いたことがありませんね…それよりも、生まれは兎も角あのゆんゆんが真っ当な名前を与えるとはちょっと考え難いですね)」
着目点はそこかよ…とカズマのツッコミ含めたひそひそ話にゆんゆんが戸惑い気味にも前に出て話し掛ける。
「あ、あのですね!…詳しくは言えないのですが名前に関してはある人が名付け親となってまして」
「名付け親?その人は紅魔族の人間じゃないのか?」
「ええ、名前は言えませんがその人は紅魔族の人間ではありませんので」
「あれから随分と秘密を抱えてる様ですが…なるほど、あの恥ずかしがり屋なゆんゆんにしては中々の
「めぐみん!それって嫌味ぃ!?」
「それにしても紅魔族でない人間があの様な素晴らしい名前を思いつくとは、これは是非とも会ってみたいものですね」
「ちょっと!無視しないでよ!」
涙目になりながらめぐみんを問い詰めるゆんゆんを余所に、じゅんは更に続ける。
「あと…ぼく…ぼうけん…しゃで、す」
『…はい?』
ゆんゆんを除くその場にいる全員が間の抜けた声を漏らした。
なにせ見た目がどこを見ても5歳前後の少年が冒険者と名乗ったのだから驚かないのも無理はなかった。
「ぼ、冒険者?イヤイヤイヤ!その背中の剣って単なるおもちゃじゃ!」
「ほん…もの」
「本物って…それにどう見たって…と言うか確か冒険者になるには」
「これ…カード」
テンパるカズマに対しじゅんは自身が冒険者の
「名前…じゅんじゅん…年齢…じゅうよんさい!?」
今度はカードに書かれたじゅんの年齢に驚愕する一同。
アクアやウィズに関しては除くとし、カズマ自身は16前後でめぐみんに至ってはゆんゆんと同い年…とんだ詐欺まがいなのではと思いながらも相手を知る機会だと考え更に読み進める。
「職業…学習者?」
「この私でも聞いたことのない職業があるとは、一体どの様な…」
「あの、じゅんくんの職業…学習者はですね」
今度は今まで聞いたことのない
「ふ〜ん、要は他人任せの穀潰し職ってなわけね?」
「駄女神のお前に言われたかねぇな」
「んなぁ〜お」
カズマの皮肉めいた呟きとちょむすけの賛同する様な鳴き声に耳が入らなかったアクアは、自身の威厳を相手に刻む為なのかじゅんとゆんゆんに体を向けると堂々とした姿勢で話し出す。
「まぁ神であり冒険者として先輩のアークプリーストであるこの私が手解きをしてあげても良いわよ~。その分私がお金やら生活やらで困ったりしたら否応でもしっかり働いてもらって……ん?」
「お前なにどさくさに紛れて言いくるめようとしてんだ!…て、どうしたアクア?」
じゅんに視線を向けた途端、いつもの調子を止めたアクアは何故かじゅんに近づき背に合わせる様に屈んで彼の肩をガシッと掴むと、動揺せずぽけ〜としてるじゅんの顔に鼻を近付けスンスンと臭いを嗅ぎ始める。
「スンスン…何かしら…色んな物が無茶苦茶に混じった様なこの匂い…間違い無いわ!アンタ悪魔連中の一味ね!?」
途端に飛び跳ねる様に身を引いたアクアは初対面だと言うのに無作法にもじゅんに人差し指を向けた。
じゅんを除いた全員が驚きの表情を表す中、アクアは興奮冷めやまないまま勝手気ままに喚き散らす。
「このアクア一生の不覚だわ!女神であるこの私が幼い見てくれに騙されるだなんて!
も〜許さないわよ!そこのガキンチョ!海のように深〜く広〜い私の心を弄んだその卑劣極まりない腐った根性を叩き直してやるから覚悟しなさい!!」
「…?」
怒涛の罵倒ラッシュをするアクアに対して、じゅんはアクアが自分に言ってくる内容に加え怒る理由がよく分からずただ首を傾げるだけだった。
「そんな可愛らしい仕草をしたって騙されないわよガキンチョ悪魔め!」
「ま、待ってください!じゅんくんをいきなり悪魔呼ばわりしないでください!」
只事じゃない雰囲気にゆんゆんは当然居ても立ってもいられず、先程の恩返しも込めてじゅんを守る様に抱き寄せる。
因みにそのせいで、じゅんの顔はゆんゆんの開けた豊満な胸の中へと埋もれてしまう。
「(ウォイイイイあのヤロオオオ!体が小さけりゃ何されても許されるってのかぁ!?何処ぞの“見た目は子供、頭脳は大人”キャラ見てぇな美味しい目に合いやがってぇ!羨まし過ぎんぞコンチキショオオオオオ!!!)」
「あのカズマさん、心の声が駄々漏れになってますし…何より血走った表情で怖いですよ?」
苦笑いでカズマに指摘するウィズだが、その間にもアクアの勢いは止まる事がなかった。
「そこを退きなさい!紅魔のたゆんたゆん
「たゆ〜んたゆ〜ん!?」
「おいコラ、何故カズマが反応するのですか?と言うか先程から何処に目を向けているのですか?」
とことん軽蔑を込めた目でカズマを睨むめぐみん。
その間にも、ゆんゆんとアクアのやり取りは更にヒートアップしてしまう。
「イヤです!絶対に退きません!それと私の名前はゆんゆんです!」
「どっちだっていいわよそんな事!そうまでしてそのガキンチョ悪魔を庇うつもりね?…良いわ!ついでに後ろにいる腐れアンデッド共々神の名の元に怒りの鉄槌を御見舞いして徹底的に懲らしめてあげるわ!」
「ひぃっ!?ややややめてくださいアクア様ぁ!ついで感覚で私諸共消そうとしないでください~!」
いよいよ収拾が付かなくなり始めたどんちゃん騒ぎの店内で、アクアのボルテージは最高潮に達していた。
「神に背けし背教者め!その決断がいかに愚かだったかをその身を持って思い知りなさい!先ずはガキンチョ悪魔とクソリッチーからトッチめてやるわ!『セイクリッド・ターン!』」
ごつんっ!
「アいだっ!?」
今まさに神の力がこもった浄化魔法を放とうとするも、カズマが自身の得物である剣を鞘に入れたまま鈍器代わりとしてアクアの後頭部を容赦無く叩きつけた事で未遂に終わってしまう。
「いった〜!何すんのよこのヒキニート!」
「やっかましいわこのボケナス女神がぁ!こちとらウィズに借金の相談で来たってのにその相談相手を消そうとしてどうすんだぁ!」
尤もらしい事を言うカズマであるが半分はその通りで、もう半分はじゅんが味わってるラッキースケベを目の当たりにした事で生まれた妬みを晴らす為のはけ口としてアクアをしばいたのである。
「だって〜!」
「だって〜じゃねえ!それにそこのゆんゆんって子が必死で守ろうとしてる奴を倒すとか、仮にも女神で通してるお前がんな胸糞悪い事したら、それこそ罰当たりな行為になるんじゃねぇのか?」
「カズマの意見は最もです…アクア、同じ“大人”なのですからここは海の様に深〜く広〜い心で穏便に済ませましょう?」
「ニャンニャン!」
何とか宥めようとするカズマ達ではあったが、それでも納得できず神の威厳に関わると言うプライド的な理由が勝り涙目になりながら再びじゅん達の方へと向けた。
「む〜!なによなによふたりして〜!もういいわよ!意地でもやっつけてやるんだから!
『セイクリッド!』」
すっかり駄々っ子となるアクアの姿は最早女神のめの字すらなく、呆れ果てたカズマはため息を長〜く吐きながらアクアの後ろ首をガシッと掴むとウィズから習得したあるスキルを発動させる。
「『ドレインタッチ』」
「むぎゃあああ〜〜〜!!!」
──────────アクア「こ!のすば〜…」──────────
それから数十分後。
「むす〜…」
「美味しいですか?」
「はむ…むぐ…おいひい…で、ふ」
「んにゃ〜」
「うふふ、まだまだありますからね〜♪」
「…ふんだ!」
カズマの活躍が功を奏しどんちゃん騒ぎな展開を収拾する事が出来たウィズの魔道具店。
ようやく落ち着いた事を確認したウィズは良き交流関係を築く為にじゅんやちょむすけ達に自家製のケーキとお茶を提供した。
モグモグと美味しそうに頬張るじゅんとちょむすけの愛らしい姿にすっかり虜となってしまうウィズとは対象的に、離れた場所のテーブルに居座るアクアはじゅん達を忌々しく睨みながらも直ぐに不貞腐れてソッポを向いてしまう。
「(ホンットに大人気ないなぁ…)」
そんな幼稚な態度を取るアクアに呆れ、心の中でツッコむカズマ。
因みに、ゴタゴタ故にあらわとなった互いの秘密をいくつかだか知ってしまい、折角だからと夫々の持つ情報を出せる範囲で交換し合っていた。
「それにしても…まさかクリスがゆんゆんの仲間だったとは、世間は広い様で狭いもんだな〜」
「ええ…未だに信じられませんよ、あのボッチのゆんゆんがよもやパーティーを組んだばかりかクリスの事を呼び捨て且つ友達だと仰るのですから…さてはあなた!ゆんゆんに成り済ました真っ赤なニセモノですね!?」
「ちっがうわよ!私は本物で正真正銘あなたのライバルのゆんゆんだから〜!」
またも滅茶苦茶な言い分をするめぐみんに必死になってツッコミを入れるゆんゆん。
そんな二人のコントに「やれやれ」と呆れ気味に呟くと、今度はケーキを頬張っているじゅんに視線を変えた。
「(空から女の子改め男の子か…アクアが看破するまでは俺と同じ“転生者”の部類かと思ってたけど…)」
カズマは生前地球で暮らしてたのだが、ある事が原因で亡くなりアクアにその事でバカにされた腹いせに“物”としてアクアを選択しこの世界へとやって来た。
又カズマ以外にもこの世界に転生した人物がおり、何度か出会ってるのだが自身の苦労やら転生特典やら性格面やら等の要因で基本は仲が悪い。
その事もあってかじゅんに対し、特にゆんゆんの方からしたあの羨ましい行為を見て、嫉妬混じりだが「喋りも性格もわざとか?」「転生特典で何かしてもらったのでは?」等と勘ぐるのだがアクアの言葉で的外れだったと改める。
加えてゆんゆんから、じゅんとの出会いや年齢等を一通り聞いた事でますますじゅんが何者なのか分からなくなり始めた。
アクアはじゅんを悪魔だと言うが果たして…空からと言うことは、曲がりなりにも剣と魔法が蔓延るファンタジーな世界にSFの擬人化とも言える宇宙人とか?等と深く思考しながら、カズマはじゅんを隈なく観察する。
「あらあら、口元が汚れてますよ?」
「…んぅ」
ウィズがそう言いながらじゅんの口元をハンカチで拭く光景を目にした途端、カズマは自嘲の思いと共に頭を横に振った。
「(…ハァ、やめやめ。あんなボケ〜とした子供を相手に勘ぐるなんてそれこそ俺はアクアかっての。ただまぁ…いつも通りの裏があったりオチがあればその時はその時で対処すりゃいいか)」
その様に結論づけたカズマは視線を未だ言い争ってるめぐみんとゆんゆんに戻した。
それと同時にじゅんの方では、食べる事を一旦中止しここに来て初めてウィズが展示してる商品の1つに注目した。
「どうしましたかじゅんさん?」
「…きれい…あ、れ…なに?」
指さす方に視線を向けたウィズの目に写った物、それは透き通った丸い水晶玉だった。
「ああアレですか、“仲良くなれる水晶”と言います。但しですね、熟練した魔法使いでないと使えないのですよ、例えばそこに居る紅魔族のめぐみんさん達とか」
ウィズの丁重な説明に反応したのは、めぐみんとのやり取りを一旦中止し同じく聞いていたゆんゆんだった。
「じゃあソレを使いこなしたらもっと仲良しになれるのですね!?」
「ええまぁ…それでしたら試しにご利用してみますか?」
「クリスやじゅんじゅんが同じ魔法使いだったらまだしも、私にとっては無用の長物ですね」
如何にも興味なさげな素っ気ない態度をするめぐみんだか、方やじゅんに改めてカッコいい所を見せたいためなのか調子に乗るようにゆんゆんは挑発をする。
「あ〜ら、怖じ気ついたのかしらめぐみん?」
「あぁっ?」
「つまりはあの水晶をより良く使いこなした方がいかに上なのか証明にもなるわ!勝負よめぐみん!」
「よろしいでしょう!仲間を得て有頂天に舞い上がってるあなたの長っ鼻をへし折る良い機会です、受けて立ちましょう!」
売り言葉に買い言葉とはこの事か、種族的にもめぐみん個人的にも喧嘩早い性格に突き動かされ、結局勝負事になってしまう。
「我が魔力の強大さに恐れ戦くがいい!」
「今こそ決着をつける時よ!」
「「ハァアアアアアア!!!」」
二人の間に置かれた水晶に手をかざすと、互いの魔力が並々と水晶に注がれていく。
流石は紅魔族と感心するウィズと共にいく末を見守る三人…そして。
「お~…」
間の抜けた様なじゅんの感心する声と共に辺りが薄暗くなるとまるでテレビ画面の様なものが複数出現し各々異なる映像が流れ始めていた。
「こ、これは!?」
驚愕するカズマの目に映ったもの、それは。
~むぐ!…もぐ!…ふぐぅ!~
こそこそと学校の食道内に忍び込み、死に物狂いでパンの耳を食べながら袋に詰め込むめぐみん。
~お誕生日、おめでとう♪~
ケーキに数人前の料理を揃えながら1人だけ自分の誕生日パーティーをはじめるゆんゆん。
~おね~ちゃんすっご~いっ!~
~かじかじかじかじ…ふっ!~
他人の畑から野菜を盗み、妹のこめっこと共に噛り食いながらサムズアップするめぐみん。
~ん~やるわね、それなら!~
ふたりでするのがチェスだと言うのに、交互に移り1人でたしなむゆんゆん。
~おね~ちゃんすっご~いっ!~
~ガツガツガツガツ…ふっ!~
川のザリガニを捕りこめっこと共に貪り食ってサムズアップするめぐみん。
~かわいい~…え?~
触れようとした途端、犬は全速力で逃げ出し今度は側の花に顔を近づけ香りを嗅ぐと、その花すらも何故か二足歩行で立ち上がって逃げだし1人になるゆんゆん。
~おね~ちゃんすっご~いっ!~
~ふふふ…ふっ!~
セミを捕まえ串焼きにし、サムズアップしながら不敵に笑うめぐみん。
~もう…悪魔が友達でも良いかな?~
不気味な魔方陣を作り暗い表情で呟くゆんゆん。
「……」
「ちょっと…なにこれ?」
「マジでセミ食ってる…」
「悪魔召還まで…」
無表情のじゅんを除き、アクア・カズマ・ウィズの面々はそのとんでもない映像内容にドン引き全開の表情を表していた。
「「わあああああはあああああ!?」」
自身の
「ななななんなのですかこれわぁ!?」
「ててて店主さん!これって仲良くなれる水晶の筈じゃ!?」
「は、はい…それは“お互いの恥ずかしい過去をさらけ出しあう事でより相手を理解し親睦な友情を深める”と言われる、それは有難い水晶なの…で…す…」
あからさまに気まずい表情で目をそらすウィズ、それに感化するかのようにゆんゆんは泣き喚きながらめぐみんに問い掛ける
「ねぇめぐみん!?こんなので本当に私たち仲良しになれたのぉ!?」
もう先のどんちゃん騒ぎに引けを取らない二名限定の騒動だが、直後にめぐみんが目の前の水晶を掴みそれを頭上まで上げると。
「んどっせぇええええええええいっ!!!」
ガシャーンっ!!!
仮にも売り物だというのにその水晶玉を地面に投げつけ堂々と壊してしまったのだった。
「「「「ああああああああ!?」」」」
「お〜…」
──────────めぐみん「このすばあああ!」──────────
それからそれから。
「この水晶玉ですが、カズマさんに付けておきますね?」
「何で俺なんだよ?こう言うのは壊した張本人のめぐみんが払うのが筋ってもんだろ?」
「私ではなくて、水晶玉を勝負事に持ち込んだゆんゆんが支払うべきです」
等と理屈を捏ねて指差し責任転嫁をするめぐみん、一方で指されてるゆんゆんはと言うと。
「ショウブガ…ジュンクンニミラレチャッタ…」
「ゆん…ゆん?」
ハイライトな目でぶつぶつと呟き、じゅんの話し掛けに耳を傾く余裕がないほどどんよりと落ち込んでいた。
「慣れない見栄を張るからそうなるのですよ、自業自得と言う奴ですね」
「だってこんな事になるなんて思わなかったんだもの!ねぇこの勝負は引き分けでも良いよね?」
「何を仰るのやら…と言いたい所ですが、一々勝負事に拘るほど私はもう子供ではありませんから」
何故か余裕の態度を取るめぐみんに“どうしてそこまでの余裕が”と疑問に思うも、あえて挑もうと決めたゆんゆんは指を指して発破をかける。
「それじゃ紅魔の里でもやった発育勝負何てどうかしら?子供じゃないのなら受けて立つわよね?」
「そう言う意味ではないのですよゆんゆん」
「え、どういうこと?」
真意が掴めず思わず問いかけるゆんゆんに、未だ余裕の態度を崩さないめぐみんはやんわりとした笑みを浮かべ語り出す。
「私は既に一歩前へと進んだのですよ…何せ此方にいるカズマとは
「ちよっおまっ!?」
めぐみんからのとんでもない爆弾発言に一瞬の沈黙が店内に広がり、次の瞬間にはゆんゆんから驚愕の悲鳴が木霊した。
「ええええええええええ!?」
「おっまえふざけんなぁ!この口か!?このでまかせしか出さねぇ口が俺の悪評を招きやがるんだなぁ!?!?」
「あえ~!ひへふははへ~!」
「き、今日の所は私の負けにしといてあげるからぁ!うぇ~~~ん!!!」
頬を引っ張り制裁を加える中、ライバルが大人の階段を登ってしまったと解釈したゆんゆんは、泣き叫びながらウィズの魔道具店を逃げ出すように出ていってしまった…じゅんの事をすっかり忘れて。
「ゆん…ゆん…いっちゃ…た」
「き、今日も勝ち!///」
「今日も勝ち!…じゃねぇ!ったくお前と言う奴ぁ~!……はぁ、それよりも」
在らぬ誤解を言われ文句を垂れようとするカズマだが、1人残されたじゅんを見て一旦保留に持ち込むことにした。
「……」
「まったく嘆かわしい事です、幼いじゅんじゅんを1人置いて飛び出すとは…同じ紅魔族として恥ずかしい限りですよ」
誰のせいだよ誰の!…とツッコミを入れそうになるも、口に出せばまたややこしくなりそうだと判断したカズマは心の中に留め、代わりにめぐみんに一つの質問を投げ掛けた。
「なぁめぐみん、ゆんゆんはここに戻ってくると思うか?」
「どうでしょうね。ああなったゆんゆんは暫くあの調子ですし、仮に早く立ち直ったとしても、じゅんじゅんを置いて行った事への気まずさと罪悪感で足踏み状態になってしまうのが関の山でしょうね」
曲がりなりにもゆんゆんとの付き合いが深い事もあっててか、冷静に分析した説得力のあるめぐみんの言葉を聞き、“さてどうしたものか”と考えようとした直後。
「…ん?ちょっとまてじゅん!」
めぐみんの言葉を聞いてた故なのか、ゆんゆんを探すべく店を出ようとするじゅん。
それに気付いたカズマはじゅんの手を掴んで立ち止まらせる。
「ゆん…ゆん…さ、がす」
「探すったって…何処へ向かったかも分からないままなのにか?」
「……」
表情こそ変わってなかったが、困った様な悲しむ様な雰囲気をじゅんから感じ取ったカズマは考える。
一緒に探すことで目の前の子にもそしてゆんゆんにも繋がりや貸しにもなりクエスト等で助けとなってもらい少しでも楽になるだろうと踏んだ。
打算しかないのは宣告承知。
自分は決して善人でもなければ聖人でもない、ピンチを切り抜き生き抜く為ならばどんな汚い手段を取るのも厭わない、この世界で転生し今もなお散々な目に遭い続けているのだからこの考えは決して変わることはないだろう……。
………もう当の昔に捨てた想いなのに……彼等は所詮人間の金儲けの為に作り出された空想の産物……子供だましのニセモノでしかない存在……そう割り切れてた筈なのに……じゅんを見ていると何故かあの言葉を…そして彼等の勇姿を思い出してしまった。
「……はぁ、しょうがね~な~!俺も一緒に探してやるよ」
沸き上がる言葉にならない感情を振り払うかのようにやけくそぎみにカズマは言った。
「…いい、の?」
「原因はめぐみんのでまかせだが、それを止めなかった俺達にも責任はあるしな」
「ちょっと何よ“俺達”って!それに私手伝うなんて一言も言ってないんですけど!て言うかガキンチョ悪魔の為にやるなんてこっちから願い下げなんですけど!」
ぎゃあぎゃあとみっともなく喚き散らすアクアにうんざりするも、それなりの付き合いを築き上げてるが故にカズマの中での対処法はある程度確立していた。
「結構だ、どうせお前の様なポンコツ女神に人探しなんざまともに出きるとは思ってねぇし~」
「んなっ!?言ったわねカズマ!良いわやってやろうじゃない!もし先に私が見つけだしたらシュワシュワをたんまり御馳走して貰うんだから覚悟なさい!!!」
乗せられたアクアを見て、“計画通り…!”と何処ぞの新世界の神になろうとした男と同じ顔を作ってほくそ笑むカズマ。
「ならば私も同行致しましょう、ゆんゆんにはこめっこの様に小さな子を持つ者同士として少しお説教が必要ですからね」
「(元凶者のお前が何を言うか)…ウィズはちょむすけと一緒に店に居てくれ。もしかしたら戻って来る可能性も否定出来ないからさ」
「分かりました、お気を付けて」
「にや〜」
夫々の行動理由は異なるも、取り敢えずは形だけでもまとまったカズマ達。
早速出向こうとする前に、じゅんは何故かウィズとちょむすけの前まで近づく。
「ウィ…ズさん」
「は、はい。何でしようか?」
「…ケーキ…おい、しかった…あり、が…とう」
そう言ってペコリとお辞儀をするじゅん。
何を言うのかと思えば感謝の言葉だったとは…幼いからこそ純粋で真っ直ぐなその言葉は心優しいウィズに届かせるのには十二分であり、満面の笑顔を作ったウィズは優しく丁重に応えてあげた。
「うふふ、ご満足して頂いてなによりです。それと…もしよろしければ、今後会う際は呼び捨てでも構いませんのでお気軽に“ウィズ”と呼んでください」
「…うん…ちょむ…すけ…ま、た」
「んなぁ〜お♪」
じゅんに撫でられどこか気持ち良さそうにするちょむすけ。
ウィズ達とのやり取りを終えたじゅんは、今度はめぐみんに近づく。
「めぐ、みんさん…どうも」
「べ、別に感謝される覚えは…私はあくまでゆんゆんを説教しに行くだけでして…それとウィズ同様に今後私の事は呼び捨てでも構いませんからね」
意地っ張りで変な所では素直になれないめぐみんは、頬を赤くしながら何とも面倒くさい言い訳をし始めようとする…のだが。
「でも」と言うじゅんの言葉に遮られてしまう。
「みつけ、ても…ゆんゆん…な、かす…だめ」
「……まぁ1割ほどですが私にも落ち度があったと認めざる終えませんからね、言葉を選んでなるべく傷付けない様に善処致しましょう」
こめっこを妹に持つ身故に、外見年齢的にもこめっことほぼ同い年に見えるじゅんに対し出来る限り優しくしようと努力するめぐみんだった。
「ちょっとそこのガキンチョ悪魔、私の事は“アクア様”と呼びなさい!」
まだ出番でないのに急かすアクアだったが、じゅんは特に気にする事なくアクアの要望通りに様付けで呼ぶ。
「ア、クア…さま…どうも…で、す」
「ま〜たくこれだからガキンチョ悪魔は困るのよね〜、喋り方だって途切れ途切れのカタコトばっかで聞き取れないったらありゃしないんだから〜ぷ〜くすくすくすくす〜♪」
ごつんっ!
「あいたっ!」
「お前ほんっとにどうしようもねぇなぁ」
もはやどっちが子供なのか…じゅんが無表情なのを良い事に小馬鹿にして笑うアクアのその姿は単なる幼稚ないじめっ子にしか過ぎず、そんなアクアを拳骨でしばくカズマは宛ら問題児を抱えた親や教師そのものである。
「カ、ズマさん…ゆんゆん…さが、す…あり…がとう」
「…へへ、気にすんなよ、そんで俺の事も“カズマ”って呼んで良いからな?」
そう言いながらじゅんの頭をワシワシと撫でるカズマ。
曲者ばかりの中で、幼いながらも数少ない善良で素直な人間(?)のじゅんに出会い、今回ばかりは打算抜きでも悪くないかもなと思いながらゆんゆんを探しに行く一同であった。
──────────カズマ「このすば!」──────────
ゆんゆんとアクアのじゅんをめぐるやり取り、初期案はゆんゆんが武器を構え敵対すると言った殺伐なシリアスを考えてましたが、序盤から重すぎると考えこのすばっぽい勢いのあるコメディぽさにしようと思い変えました。
変身は第3話からを予定してます。