ウマ娘 The Amazing Ugly Duckling 作:ヤットキ 夕一
レース展開は、オレが予想したとおり、ツインターボが引っ張った。
破天荒でめちゃくちゃな逃げという彼女の代名詞のような展開でこそなかったが、速いペースになったことは間違いなかった。
──それこそ、レコードを叩き出すことになる下地になるくらいに。
そして、そんなレースを端で見ていて、やはりメジロマックイーンには感心させられた。
この長いレースの中において、絶妙な位置取りをしている。ペースに乱されている様子も見受けられない。
「イヤな方に、予想が当たっちまったか……」
このままなにもなければ、大方の予想通りにマックイーンが勝つだろう。
オレは少し不安になりながら──マックイーンのすぐ後方に位置する、赤と黄色のドレスのような勝負服のウマ娘を、ジッと見つめることしかできなかった。
勝てる、と思ったのは驕りだったのかもしれません。
最終コーナーを抜け、先頭で引っ張っていた方はもう余力が残っていない様子でした。
横に広がり始めた集団の中で、私が意識したのはある一人。
秋の天皇賞で、真っ先にゴールに飛び込んだはずの私。でも賜杯を手にしたのは彼女でした。
私の手から「進路妨害」ですり抜けていった栄光を手にしたそのウマ娘と、今、この有馬記念という同じ場所で競っている。
その栄冠がもう戻らないことは、もちろんわかっています。
それでも今年最後のレースで、彼女に勝つことでリベンジをしたかった。
彼女の力はわかっている。あの盾を手にするだけの力はあるが──
(今の私にはそれ以上の力が出せる!)
確信し、私は外から抜け出して彼女を抜こうとしました。
(いける。天皇賞こそ逃したものの、有馬記念は私の手に──)
そう思った次の瞬間、内からすり抜けてきたウマ娘の姿が、私の目の前にありました。
紅と黄色のドレスのような勝負服。
たなびく長い栗毛。
(え? 誰!?)
多少驚きはしたが、それでも私のやることは変わらない。
彼女を抜き去って──
抜き去って──
並んで──
追いついて──
どうにか──
でも──
なんで──
──追いつけない。
私がどんなに足を踏み出しても、彼女はその前を走り続けたのです。
(勝てない!? 負けるの? 私……)
その事実を突きつけられ、私は泣きそうなほどに悲愴な表情になって──ゴールを駆け抜けていました。
その顔を後でトレーナーにからかわれるほどに。
──無論、その際には彼には制裁を加えておきましたが。
悔しく無いわけがないでしょう? それをまったくあの人は……
先頭のウマ娘がゴールへ近づき、会場全体がどよめいていた。
その動揺を肌で感じ、オレは体が震えそうだった。
誰がどう考えてもド本命、黒い勝負服に美しい葦毛をなびかせた彼女はメジロマックイーン。
そんな彼女が悲愴な表情を浮かべて走っている。
その前にいるのは紅と黄色のドレスのような勝負服で走るウマ娘。
長い栗毛を後ろに流し、おでこで風を受ける彼女は、直後を走るウマ娘とは対照的に勝ち気な笑みを浮かべていた。
完全に想定外のことに、会場はパニックになりかけていた。
「おい、アレ誰だよ!?」
「知らねえ、完全にノーマークだわ」
「つーか、マックイーン負けるのか!? そんな無名のヤツに」
そう、それは世紀の大逆転。
デビュー2戦はタイムオーバー
そんな彼女が、オレと出会い──二人でコツコツと牌を揃え、やっとこの有馬記念で完成した役。
出した者に最高点を与える役満──そんな役と同じ名前の彼女。
世間を驚かせる、彼女の名は──
──オイ、実況。優勝したウマ娘の名前を言えよ!
なんで2着の名前を叫ぶんだよ。
さすがにこれには、オレもビックリだわ。
こうして、ダイサンゲンは世間を
有馬史上、最大の事件と称されるほどに。
──まったく、史上最大のクリスマスプレゼントじゃねえか!!
レースが終わり──ダイサンゲンが一目散にオレの下へと駆けてきていた。
「トレーナー、見た?」
「ったり前だろ。ここにいて見てなかったら、オレはどこ見てたんだよ!」
思わずつっかかるようにオレは返してしまう。
そうでなければ──
「……ひょっとして、泣いてない?」
意地悪く笑みを浮かべるダイサンゲンに、オレは怒鳴るように返す。
「うっせえ! ここで泣かなけりゃ、あとは親が死んだ時以外、いつ泣くってんだよ!」
流れる涙を隠しきれないと思ったからこそ乱暴な対応をしていたのだが、それも含めてバレバレだったらしい。
それでもオレは誤魔化すようにその態度を維持するしかない。
「オマエだってそうだろ。汗なんだか、涙なんだかよくわかんねえことになってるけどな!!」
「なッ!? ちょ、ちょっとあんまり見ないでよ!!」
慌ててバッと距離をとるダイサンゲン。
それから大きく息を吸い、深呼吸をする。汗を指摘されたからそうやって息を整えているのだろう。
「トレーナー! アタシ、あなたに言いたいことが──」
「あ? いや、それよりも……オマエ、大事なこと忘れてるだろ?」
「だ、大事なことって、今のアタシにそれ以上に大事なことは──」
オレの言葉に少し怒り気味に答えた彼女だったが、その背後から現れた人影に言葉が遮られる。
「ああ! ここにいたんですね、ダイサンゲン。さぁ、支度を急いでください!」
「はぁ!? アタシにはやらないといけないことがまだ──」
ダイサンゲンは現れた係の人にくってかかる。
だが、レース直後の興奮した勝者というのは多いのか、慣れた様子で対処する係員。
「レースに勝ったウマ娘には、表彰式とライブ以上にやらなければいけないことなんてありませんよ!」
「ま、そういうことだな。滅多に無い機会だし、それができるヤツも少ないだろ。マックイーンを従えて思う存分歌ってこい!」
「え? あ! ちょ、ちょっと、待っ──」
オレの言葉に反応する間もなく、手を引かれて連れて行かれるダイサンゲン。
それを見送るオレ。
ダイサンゲンはそれでも後方のオレを気にしているようだったが……まぁ、これで心おきなく涙を流せるんだから、ちょうどいい。
落ち着いたらアイツの控室に缶ジュースでも置いておいてやろう。いろいろ忙しいし、ジュースを買う暇もないかもしれないからな。
メモで「お疲れさん。よくやったな」と書置きでも残しておけば、オレからとわかるだろう。
──ちなみにライブはものすごい盛り上がりだった。
大本命でトップアイドルであるマックイーンを下したのだから御通夜みたいなものを覚悟していたのだが、世間はまるで無名ともいうべき突然現れたシンデレラを、レース展開の興奮もあって快く受け入れてくれたらしい。
ま、2位と3位が一番人気と二番人気だったしな。正直、それにも助けられた。
ただ、一つ残念なことは、レースそのものの表彰式に、彼女の父親の姿がなかったことだ。
弟を連れた母親は来ていたのだが──両親ともにまさか優勝すると思っておらず、父親は仕事の都合で来られなかった。
おまけに言ってしまうと、母親は子供をディズニーランドに連れて行くのが目的で、ついでに娘の勇姿を見ておこうとしたらしい。
それくらい、今度のことは想定外だった。
──うん、ダイサンゲンは怒るのはもちろん、泣いてもいいと思う。
オレ? もちろん参加したぞ。
関係者各自がことごとく準備不足──ダイサンゲンの母親は思いっきり普段着だった──な中、ただ一人正装でな。
……その後、背中にくっきりとドロップキックによる足跡が残っていたのが映像に映っていて、話題になったのは内緒だ。
おのれゴルシ、許さん……。
その後のダイサンゲンだが──結局は、これが最高であり、最後の栄光になった。
年が明けて、大阪杯ではマックイーンと同じチームでライバルのトウカイテイオーと戦うことになった。
ダイサンゲンは「アタイはマックイーンに勝った。トウカイテイオーにも勝てる」とかなり自信あり気な様子だったが──結果は6着。
それも8人中6着。つまりは後ろから3番目。
レース直後は全力使い果たし、サ〇バイマンの自爆くらったヤ〇チャみたいな
そしてその後に戻って来た時には「ぐぬぬ……」とよほど悔しがっていた。
だが、そんな姿もなんともうれしく思えたさ。
つまりはG1ウマ娘、それも有馬記念を勝ったウマ娘としてプライドが芽生えたんだろうから。
出会ったころには考えもしなかったからな。
そう思って暖かい目で見ていたら「何見てんのよ!」と蹴られた。
……八つ当たりはよくないぞ。
それで傷ついたプライドを取り戻すために「打倒テイオー」と鼻息荒く挑んだ春の天皇賞。
だがダイサンゲンのそんな思いはつゆ知らず、世間の関心事はマックイーンの“連覇”VSトウカイテイオーの“無敗”対決だ。
オレが買ってきたスポーツ新聞を勝手に見て、地団太踏んでいたから、「そんなもんだぞ?」と言ってやったら、「こっちは人生かけてんのよ!」となぜか殴られた。
……気が立ってるなぁ。
そんな感じでいつにない意気込みのダイサンゲンは、体からはオーラが立ち昇ってさえいるように見えた程だ。
彼女は「今度こそ、今度こそ勝って……気持ちを伝えてやるんだから!」となにやらブツブツ言って、さらにオーラを強くしていたが──結果は9着。距離適正があわずに無敗という看板を失ったトウカイテイオーよりもさらに後ろだった。
勝利したのはメジロマックイーン。世間ではそれを言うものはいなかったが有馬のリベンジをされてしまったわけだ。
それでからかって、強気なアイツの意気を少しでも上げてやろうと思ったんだが……
──人通りがほとんどない場所で見つけた時には、泣いていてな。
それも
……さすがに声をかけられなかったさ。
そうして、彼女は以降も目立った結果を残すことなく、引退することとなった。
おかげでファンからはこの有馬記念での大きすぎる奇跡的勝利から、「史上最強の一発屋」と呼ばれて語り継がれることになるが──それも与えたインパクトが大きかったからだろう。
マックイーンに勝ったというのも大きいが、それが酷いレースだったわけではなかったからだ。
あの時、あのレースでダイサンゲンが作ったレコードが、それ以降長くの間、更新されることがなかったのは、そのなによりの証明だろう。
そしてオレは、こうして実績を残したため、無事に彼女の引退後もトレーナーを続けることができ──
「いやぁ、今度担当することになったウマ娘もスゴいヤツでな、名前はテイエムプリキュ──ッ痛ええぇぇぇ!!」
「ぶっちゃけありえないんだけどッ!」
「全力でつねるんじゃねえよ!! 仕事なんだから仕方ないだろ! 」
オレの傍らには、その初めて育て上げたと言える、嫉妬深くもあるパートナーが支え続けてくれた。
──やがて流れるように時は過ぎ……
オレは寄る年波に勝てず、トレーナーも引退して余生を過ごす。
無論、傍らには共に年を重ねた彼女がおり──
そして、その生涯を閉じたときも、最後に見たのは彼女の顔だった。
今にも泣きそうな彼女にオレは最後の力を振り絞って言った。
「最期くらい、笑って見送ってくれや……」
今のオレにとっては精一杯の──それでも他人からは苦笑いに見えてしまうかもしれないような力ない笑顔に、彼女はそれに応じ無理をしながら笑みを浮かべた──
──それは偶然そう見えたのかもしれない。
彼女が無理に浮かべたその笑顔は、あの日、有馬記念のゴールをトップで駆け抜けた、勝気な笑みとオレの記憶の中で重なった。
「……ありがと、な。オマエのおかけで……いい人生、だった…………」
その最後の思わぬプレゼントに、オレは満足して笑みを浮かべ──あの世へと旅立った。
残して逝くことに心残りはあったが……今のアイツの周りには残した家族がいる。オレがいなくなっても大丈夫だろう。
「──さてと、年食った体から解放されたことだし、いっちょ久しぶりに、またウマ娘を育てるのも面白いかも、な……」
あの世に来てしばらくはのんびりしていたオレだったが、なにもしないのにも飽きてきた。
幸いなことに、こっちの世界にもウマ娘がいる。
のんびり自由気ままに過ごしているヤツらも多いが、やはり退屈なのか、それともその本能に“競走”というものが刻み込まれてしまっているのか、レースのようなことをやり、それが白熱している──なんて場所もあった。
そんなところをなんとなく覗けば……オレも昔の血が滾るってヤツだ。気が付けば素質がありそうなやつを目で追いかけていた。
特に──素質はあっても何らかの原因でその開花が阻害されているようなウマ娘。
「まったく、そんなヤツらばかり目に入るようになっちまったのも、アイツのせいだよなぁ」
ふとそれに気が付いて頭を掻きながら、思わず愚痴った。
アイツのことをどこか思い出しているのかもしれん。
なにしろ長年付き添ったツレだ。
無論ケンカだってしたさ。それほど数限りないほど。
アイツも気が強かったし、オレもこんないい加減な性格をしてるからな。
それでも、別れることなく、それこそ死ぬまで一緒にいられたのは、やはり──性格、“ウマが合う”というものだったんだろう。
──だが、会うことはできない。
なにしろオレは死んじまったんだから。アイツを残して。
(あの時は“死が二人を分かつまで”なんて誓っちまって、オイオイ、そんなに長くて大丈夫か、なんて心配したもんだがな……)
式を思い出して、一人苦笑する。
そんなことをしながらバ場を眺めていると──気になるウマ娘を見かけた。
「ふむ……悪くないな。いや、素質は申し分ない。それが開花していないだけで……」
思わず口に出して呟いてしまう。
だが、周囲にそれを聞いている奴なんていないだろ。オレは周りを気にすることなく、彼女をじっと見つめる。
「うん、うん……」
その走りをじっと見つめ──
──トントン
不意に肩を突かれる感触がきた。
だが、そんなことでオレの集中力は途切れない。
久しぶりに見かけた逸材は、オレのずっと昔に消えたトレーナーとしての火を完全に燃え上がらせていた。
「いいねぇ、やるなぁ、アイツ……」
思わずポツリとつぶやく。
だが──
──トントン、トントン
再度、肩を突かれる。
オレは集中の邪魔をされ、無意識のうちにその突いてくる手を振り払った。
まったく、邪魔するんじゃねえよ。人が久しぶりにやる気になってきたっていうのに。
オレは意を決してそのウマ娘に声をかけようと──
すると──ガッと背後から肩をつかまれた。
急に動きを制されたオレは、「なんてしつこいヤツなんだ!!」とカッとなって振り返り──
「……………………なんで?」
呆気にとられた。
いるはずのないヤツが、そこにいる。
しかも見慣れた──とは少し違う、遥か昔に見慣れていたその姿は、彼女が全盛期だった時の姿。
白髪になっていたその髪の毛は、美しい栗毛を取り戻し──
年齢によって刻まれた皺は、瑞々しく張りのある肌によって消え──
走るのをやめて闘争心を失ったからなのか、温和に下がっていた
そしてその服は──あのときの、
「なんで、って……なにがよ? いいえ、こっちこそ聞きたいわ。アンタはいったい、あのウマ娘を見て、何をしようとしていたのかしら?」
強気な彼女は不満を隠そうともせずに、オレを睨んでいる。
そんな姿でさえも、その姿は全く色褪せず──オレの視界がにじむ。
「お前、なんでこんなところに……いるんだよ。お前が、いるわけないだろ?」
「なにそれ? 浮気でもしようとしていたの?」
腕を組み、憤然とする彼女。
そんな態度も懐かしく──
「お前は、ここにいたらダメだろ、ダイサンゲン……」
涙がこぼれるのと同時に、オレはそう言っていた。
そう、ここはあの世だ。
オレたちが一生懸命生きた世界から隔絶された──でもつながりのある──死してやっと来られる世界。
そこにいるってことは、コイツも──
「なんか勘違いしてない? アタシがアンタなんかの後を追って……な~んて命を絶つわけないでしょ!?」
心外だ、と言わんばかりに「ふん」と鼻を鳴らすダイサンゲン。
彼女はそっぽを向いて、付け加える。
「アタシもあの後、ほどなくしてお迎えが来たのよ。天寿を全うしたってワケ。まぁ、アンタのすぐ後を追う形になったけど……残してきた子たちにはアンタとアタシの喪中が一度で済んでよかったんじゃない?」
視線をそらしたまま、顔を少し赤くして言い放つ。
素直じゃないところは──彼女が一番輝いていた、最も速かったあの頃に戻ったかのようだ。
「ああ、そうだな。だから、もしよければここでも……」
「あら、アタシはアンタが嫌がっても、そのつもりだったけど?」
涙交じりに笑みを浮かべるオレに対し、彼女はずっと強気の調子のまま。
オレが差し出した手を、今度は彼女が両手でしっかりと握る。
二人の初めての契約──オレが彼女のトレーニングを申し出て、それをアイツが受けた時とはちょうど逆の形になった。
「死んでも永遠に……ってね」
「ああ、オレの最愛の──」
まさか、こうして追いかけてくるなんて──本当に後追いで先行に追いつくのが性に合っていたんだろう。
目の前のウマ娘を、オレは精一杯の力で抱きしめた。
オレが育てた、最高で最愛のウマ娘を──
それにしても──まったく、振り返ってみても最高の人生だった。
あの時、彼女に出会えたのが、やはり最高の幸運だったんだろう。
なにしろオレの手牌に──まずありえないと言ってた──
◆解説◆
【
・今回のタイトルは「闘将!!」と書いて「たたかえ!!」と読む、キン肉マンの外伝漫画を意識しました。
【赤と黄色のドレスのような勝負服】
・アニメでのダイサンゲンの勝負服は黄色のスカートに、胸元と袖口・肩口が黒、胴と腕が赤い、ドレスのようなデザインのもの。
・スカートが広がっていて、正直とても走りづらそうだが……まるで重量ハンデのような招き猫背負って走る勝負服のウマ娘もいるのだから関係ないのだろう。
・ドレスを着て走る姿はさながら“シンデレラ”を彷彿とさせる。このレースで世間を驚かせた彼女をシンデレラに見立てのデザインなのかもしれない。
・この赤・黄色・黒はおそらくダイユウサクの勝負服から。袖が黄色く、赤地に黒の模様が入ったものだった。
・なお、赤と黄色は手綱の色もそうであり、それと繋がったハミを支えている頭の帯も黄色くなっており、とても鮮やか。
・初登場の2期3話はともかく、4話の冒頭ではダイサンゲン自身がかなり気合の入った作画になっており、とてもモブキャラの勝負服には見えないレベル。
【制裁】
・アニメ2期3話、ダイサンゲン初登場である回想シーンの直後に行われた、新年初制裁のこと。
・一見、アルゼンチンバックブリーカーに見えるが……これまで彼女がトレーナーに繰り出してきた制裁が、パロスペシャルやクロスボンバーという元ネタがキン肉マンである技なのを考えると、ロビンマスクの必殺技であるタワーブリッジと考えるべきだろう。
・見た目は同じだが、威力は段違いらしい。背骨がへし折れるほどの破壊力があるとのこと。
【8番? いえ、知らない
・そんなところで何やってんすか、赤城さん。
【なんとビックリ、マックイーン! まさかまさかの2着~】
・あの有馬記念でのゴールの際の実況。
・元ネタになった実況は「これはビックリ、ダイユウサク!」。フジテレビの競馬中継での堺正幸アナウンサーのもの。
・別の人の実況ではゴール直前に「ダイユウサクだ」と名前を連呼する中、「メジロマックイーンは二番手」とポロっと言っているので、それを合わせたものかもしれません。
・まぁ、アニメ2期の物語がマックイーンとトウカイテイオーの話なのだし、そもそもあの登場時にダイサンゲンって名前も出てなかったですし、実況がそうなるのはわかりますけど……
・でもやっぱり寂しいですね。あそこは「これはビックリ、
【有馬史上、最大の事件】
・前話でさんざん書きましたが、単勝の倍率は137.9倍。
・これは有馬記念では史上初めての単勝万馬券。とりあえずアニメ放送までの有馬記念(2020年まで)で単勝万馬券は唯一であり、有馬では最高配当を誇っている。
・91年の中央競馬における全レースの中でも単勝最高配当という記録だったのでした。
・ちなみに翌年の92年の有馬記念では16頭中15番人気のメジロパーマーが勝利。二年連続のブービー人気が勝利。ただし単勝オッズは49.4倍と及ばず。
・ただし2着も5番人気だったので馬連では315.5倍にもなった。対照的にダイユウサクの時の2着は圧倒的一番人気のマックイーンだったので76.0倍とそれほど伸びていません。
・ところで、有馬記念の勝利馬は──
88年 オグリキャップ
89年 イナリワン
90年 オグリキャップ(2回目)
91年 ダイユウサク
92年 メジロパーマー
93年 トウカイテイオー
94年 ナリタブライアン
95年 マヤノトップガン
と1988~95年の間での勝ち馬でウマ娘になっていないのはダイユウサクだけ。
・その前にルドルフ(84、85)がいたり、後にもグラス(98、99)、オペラオー(00)、マンハッタンカフェ(01)、ゼンノロブロイ(04)、スカーレット(08)、ゴルシ(12)、サトノダイヤモンド(16)、キタサン(17)と実装済みウマ娘は多い。
・88~95年を完全網羅するためにもダイユウサクの実装が待たれる。
【控室に缶ジュースでも置いておいてやろう】
・レース後のダイユウサクの馬房に、厩務員だった平田氏が夕食を終えて戻ってきたところに、缶ビールと書置きが。
・熊沢騎手が残したもので書置きには「ダイユウサクと先に祝杯をあげておきました」という内容で、帰路の都合上、先に帰るしかなかったようです。
・さすがにウマ娘的に缶ビールではマズかろうと思い、缶ジュースに変えました。
【表彰式】
・元ネタの表彰式はこの波乱に大混乱。
・そもそも馬主さんがまさか勝つとは思っておらず、会場どころか地元の名古屋にいた。
・忘年会に参加しつつ抜け出してテレビで観戦──なんて状態で、テレビの前でその瞬間を見ていた。当然、いけるはずもない。
・代わり表彰式の馬主席に出たのは、子供を東京ディズニーランド(当時は当然シーは無い)へ遊びに連れてきていた馬主さんの娘さん。「東京(千葉だけど)に行くならついでに見てきて」と頼まれており、この想定外の状況に、急遽の代理として表彰式に参加したそうな。
・……ん? ということはその子供は馬主さんから見ればそれはお孫さんにあたるわけで、それはつまり名前の由来になった「コウサク」くんではないだろうか? ──というわけで本作では母親が男の子(弟)を連れてきたことになりました。
・ちなみにお父さんが「勝たないと思って地元の忘年会に参加してこなかった」はあまりに可哀想すぎるので、仕事の都合としました。 ……忘年会かもしれないけど。(笑)
・もちろん、正装で会場に来ていた内藤調教師だけは準備万端で表彰式に臨みました。
【サ〇バイマンの自爆くらったヤ〇チャみたいな
・アニメ2期4話「TM対決」の4分47秒付近参照。
・この4話で描かれた大阪杯は、良い作画な上にセリフ付きのアップシーンというダイサンゲンにとってアニメでの最大の見せ場。
・今まで「アタシ」でしたが、あえてアニメ通りの「アタイはマックイーンに勝った~」というセリフにしました。なんか舞い上がって噛んじゃったんでしょう。(ぇ
・ちなみに、この元ネタ(?)であるあの有名なポーズが出たのは、アニメ「ドラゴンボールZ」の第23話「ヤムチャ死す! おそるべしサイバイマン」。
・その放送日は1989年の10月18日──史実でのダイサンゲンの有馬記念どころか、オグリキャップの引退有馬よりも前でした。
・まさかそれよりも古いネタだったとは!? もっと後と思い込んでいたのでショックでしたね。(原作漫画ならさらに前ですし)
・しかし次回予告でネタバレするサブタイトルといえば「城之内死す」が有名なものの、このドラゴンボールZの23話以降も結構ヒドい。
【オーラ】
・アニメ5話の春の天皇賞で常にオーラを出し続けるダイサンゲン。
・結果は──あの通りなわけですが、ネット界隈でも「なんで?」というのが話題に。
・本作ではダイサンゲンは有馬の時から「勝利してトレーナーに告白!」と考えており、有馬では周囲のドタバタのせいでできず、大阪杯は決意したものの見事に敗退し──この天皇賞にかけているゆえのオーラ、ということにしました。
・オーラ出して目立つ背景になっているダイサンゲンですが、マックイーンの落鉄にオーラが消えるほど心配しており、無事に終わると一人だけホッと胸をなでおろしてます。
・優しい性格なんだな~と伺えるシーンですが、そんな細かい描写をしてもらえるほどに愛されているキャラなんですね。
【史上最強の一発屋】
・ダイユウサクのあだ名。
・「世紀の一発屋」とも。
・生涯的な実績を言えば、金杯も勝ってるんだけど……やっぱり有馬の万馬券勝利のインパクトが強すぎて、しかもそのあと勝ってないから、どうしてもそうなってしまうんでしょうね。
・ただ、年齢的なことを考えればその結果も仕方がないかと。オグリキャップと年齢は同じですからね。
・ただ、ネタ的にはかなりおいしい実績だと思います。
【レコード】
・ダイユウサクが91年の有馬記念で残したレコードタイムは2分30秒6。
・その後、この記録は12年間も破られずに残ることになる。
・更新したのは2003年。シンボリクリスエスが、コンマ1秒破っている。
・現在の最高記録は翌年2004年のゼンノロブロイ。記録はなんと2分29秒5と1秒も更新。中山芝2500のコースレコードでもある。
・つまりダイユウサクの勝利は、決して、遅いペースの中で偶然転がり込んできたようなものではなく、実力で掴んだ栄冠だったということ。
・そう! 93年優勝のトウカイテイオーよりも0.1秒速い記録なんだから。トウカイテイオーにも勝ったんだよ!!
・ただ、ウマ娘には史実の年が関係しないので、翌年とか数年後にシンボリクリスエスとかゼンノロブロイが出てきて更新しかねないところですが……(ゼンノロブロイはウマ娘化してますし)
【テイエムプリキュ──】
・ご存じ、テイエムプリキュア。主戦騎手が同じ熊沢騎手ということで登場。
・その名前のせいで、権利関係では
・その名前が印象的だが、2005年の第57回阪神ジュベナイルフィリーズを制覇した立派なG1馬。
・その後はなかなか結果が出ず、引退レースとした日経新春杯(GⅡ)を勝利で飾り、引退──
・──のはずが、その結果で現役続行が決定。「ハッピーエンドだ、テイエムプリキュア~」という名実況が可哀想なことになった。
・その後の2009年のエリザベス女王杯ではクィーンスプマンテと“ふたり”で大逃げでのワンツーフィニッシュ(テイエムプリキュアは2位だったが)するあたり、わかってやってるとしか思えない。
・あのブエナビスタを抑えたそのレースは、まさに痛快劇で必見……危うく差されかけた、ブエナの追い上げの恐ろしさも含めて。
・ウマ娘実装は──やっぱり難しいですかねぇ。
【アンタのすぐ後を追う形に】
・2013年にダイユウサクを担当した内藤調教師はお亡くなりになっているのですが、その後を追うようにダイユウサクもこの年に亡くなりました。
・偶然とはいえ、そこに切っても切れない二人の絆を感じて、是が非でもこのエピソードだけは入れたいと思い、このような人生の最期までを描いたエンディングとなった次第です。
・なお、その「あの世までついていった」ということで、それ程までに“想いが強いウマ娘”となり、本作劇中ではダイサンゲンを嫉妬深いという性格付けをしました。
あとがき
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
ダイユウサクが好きで、競馬にそれほど詳しいわけでもないのに、つい本作を書いてしました。
ファンとしてはやっぱりあそこは「これはビックリ、ダイユウサク~」という実況がほしかったんですよね。
それと主人公の最期の「オマエのおかけで……いい人生、だった」というセリフは解説にいれませんでしたが、ウマ娘も競馬も関係なく、さださまし氏の名曲『関白宣言』からです。
解説にいれると文字色が変わるので、さすがにぶち壊しになるなと思い、外しました。
このセリフを最期に言えるような一生を送りたいと思っているのですが……難しいですね。
それにしてもダイサンゲンはてっきり名無しの一発キャラだと思ったら、次の話(なんとセリフ付き)とかそれ以降にも登場しているあたり、制作陣にもきっとダイユウサクのファンがいると思ってます。
ウマ娘としては「ダイサンゲン」としてアニメには登場しましたが、実のところ、EDのクレジットで表記されているだけです。
つまりは許可さえ出てしまえばそこを変えて、彼女を「ダイユウサク」とできなくもない──是非、ウマ娘として実装してほしいものです。
…………ただ、そうなると、本作は非常に困ったことになるんですけどね。
麻雀ネタをかなり盛り込んでいるのですが、それは彼女がダイサンゲンという名前だからこそ。
ダイサンゲンが跡形もなく消え去ってダイユウサクになってしまうと「なんで麻雀ネタ?」となってしまうのです。
ともあれ、本作を読んで、少しでもダイユウサクに興味を持たれた方がいたなら、是非、きちんとその一生を見てあげてほしいと思います。
元々、人気のある馬ですし、ダイユウサク熱が盛り上がって、ウマ娘実装!! なんてことになれば──微力ながらその一助になれたのだとしたなら、本作も私も本望でございます。