無様屈服ワンちゃんばかりのこの世界で俺は巨乳好き   作:飛び回る蜂

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シンクロニシティなんてないったらない

 

 

 

 

 メスガキ事象について一つ、どうしてもぬぐい切れない不安がある。

 

 この現象は『オカルト』なのか『ファンタジー』なのかということだ。

 

 オカルトならば話は早い。

 俺とかかわりのある人間、あるいは寺社仏閣、教会の所在を明らかにして関係を一から洗い出し、調査をするだけのことだ。

 もし過去に俺が何か悪いことをした祟りや神罰ってんなら、自業自得と納得できる。

 解決だって、まだ希望を持てる。

 

 

 

 

 だが問題はファンタジーだった場合だ。

 ハイファンタジーやSFに限らず、人知を超えた「もの」が原因で今があるとするなら。

 無作為的に俺が選ばれ発生した現象であるとするなら。

 可能性として、この現象が生涯俺に付いて回る、ということは十分にあり得る。

 

 道を歩けば子供に声を掛けられ、聞きたくもない甘ったるい声で破滅を囁く。

 それが日に一度ではない、数度起こりうる。

 などといえば少しは格好もつくかもしれないが、ただの犯罪教唆なのだから性質が悪い。

 

 

 

 繰り返すが俺にそんな性癖はない。

 見も知らぬ子供を相手にすることも、屋外で事に及ぶことも受け入れる気は毛頭ない。

 エロ漫画って、冷静に考えてはいけないものだなと身をもって体感している。

 

 それらは避けなければ人生破滅、避ければ見るも悍ましい行為が背景で行われる。

 ただ平穏に生きているだけで、あらゆる場所で行われている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近、脳裏を過る。

 

 世界はおかしくなんかなくって、俺だけが変な幻覚を見ていて。

 

 俺だけがおかしくって、狂ってて。

 

 俺だけが、俺だけが、俺だけが───!

 

 

 

 

 

 

 

 いつもそこまで考えて、思考を振り切る。

 考えるだけ無駄だからだ。

 自分が見ているものは、誰とも共有できない。

 

 第一認めない。そんなもの認められるわけねぇ。

 だって、認めてしまえば、俺はどうなる?

 

 そんなもん、認めてなんてやるもんかよ。

 おかしいのは世界だ、狂ったのは世界だ。俺じゃない。

 

 狂ってるのは俺じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰でもいいんだ。

 

 俺にそう、言ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっ、うそ、じゃあ今も大きくなってるんですか?」

 

「めんどくさいわよねぇ。下着買い替えると高くつくしぃ?気に入った柄はサイズ違いがないとかだしぃ?」

 

「そ、そうなんだぁ……」

 

 

 一ノ瀬先輩はお喋りが好きだ。

 たとえその悩みが僕に一ミリも共感できない内容であったとしても、話をするのがうまいから聞いていられる。

 いやなくはない。なくはないんだ。

 ただ先輩に比べるとってだけなんだ。壁じゃないんだ。

 

 

「一番えぐかったのは水泳の時ね。何がって、教師よ」

 

「ご、ご愁傷さまです……」

 

「思い返すだけで気分悪くなるわほんと。……ごめんね?いやな話聞かせちゃって」

 

「いえ、気にしないでください」

 

 

 その背丈でその胸は……それはもう気苦労の方が多かっただろうけれどもっ!

 正直、とても羨ましいと言わざるを得ない……っ。

 

 

「そいえば東ちゃん、あいつとは一年の頃からの付き合いなのねぇ」

 

「はい。なんだかんだ気が合って……」

 

「フゥン?」

 

 

 口を器用に動かす人だなぁ……とぼんやり思う。

 どうして僕は、この間あったばかりの先輩と、ケーキ屋さんでお茶をしているのだろう。

 僕も大概、流されやすい性格だ。自覚もある。

 

 

「いいわね、すごくいい。一年生の時に知り合い作っとくと後が凄く楽になるからね、絶対」

 

「そんなにですか?」

 

「間違いない。考えてみて?友達グループで座ってて余ってるとこに『座っていいですか?』って聞くのよ?毎日」

 

「……考えたくないなぁー……!!」

 

 

 一ノ瀬先輩、想像してた以上に優しい人だなぁ。

 超かわいいし、服にも明るいし、ちょっと子供っぽいところもあるけどそれもかわいいし。

 背は低いけど。

 

 

「にしても、ねぇ。話し方ちょっと窮屈じゃない?後輩……志賀と話してた感じでいいわよぉ?」

 

「……窮屈そうでした?」

 

「ちょびっとね」

 

 

 窮屈そうなのは先輩の服じゃないの?とか考えてしまうあたり僕ってほんとバカ。

 それにしても先輩はよく見てるなぁ……

 

 

「……でもいいのかい?先輩だし、嫌じゃ?」

 

「うん、そっちのがしっくりくるわ。全然いいわよ?志賀とか見てみなさいよ。素の口調との温度差半端ないでしょ?」

 

「ふふ、違いないね」

 

 

 うぇへぇ、ほんとよく人を見る先輩だぁ。

 正直敬語使って話すの凄く苦手だし、好意に甘えさせてもらおう。

 

 

「ここいいとこでしょー。程々に静かで、ケーキも美味しくて、お茶するのに持ってこいなの」

 

「うん、すごくいい所。……僕、この辺のこと全然知らなかったんだなぁ」

 

「あら?じゃ東ちゃん、大学入ってこっちに越してきた口?」

 

「うん」

 

 そう、何を隠そう僕は家を出て大学に通う一人暮らしの大学生である。

 別に深い理由はないけど。ちょっと一人暮らしとかに憧れてただけだけど。

 ただ、一人暮らししてるーっていう関係で志賀と話が弾んだりもしたので、どう転ぶかわからないものだねぇ。

 

 

「ほーん。ねぇ東ちゃん、甘いもの好き?」

 

「え、藪から棒。そりゃもちろん大好きだよ、乙女的に」

 

「ほんとっ?ねっ、よかったらさ、この辺の美味しいケーキ屋さん教えてあげましょっか?」

 

「えっ、いいの!?うわぁ、楽しみにしてるっ!」

 

 

 僕だって女だし、甘いものも、かわいいものも大好きだ。

 カフェで新作が出てればつい寄っちゃうし、通りすがりに犬猫の散歩を見れば思わず顔が綻ぶくらいには好きだ。

ついでに「女子かよ」って爆笑しやがった志賀にローキック叩き込もうとして回避されたことを思い出してしまう。

 あいつあれで運動神経いいんだよな、けっ!折れろっ!

 

 

「最近女子会してないしねぇ。そろそろ女子成分を補充しないと干からびそう」

 

「ひ、干からび……。でも先輩しょっちゅう女子会してそうな感じだけど。人気者そうな」

 

「んー……。ま、色々あるのよ。それに、ほら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなにかわいい後輩ができたんだもん、かまってあげたくなっちゃうじゃん?」

 

 

 ……あー、そういうことか。

 志賀は、この笑顔にやられたんだ。

 

 

「……先輩、それはずるいと思う」

 

「ふふん、先輩はずるいのよ」

 

 

 くそぅ、先輩さては自分の顔の良さ自覚してるな!?

 じゃなきゃこんなことできるはずないよっ!!

 

 

「そういう顔で志賀を落としたんでしょうけどね、僕はそうはいかないからねっ」

 

「へっ?い、いや、後輩をって、いやぁそんな、ことは無いと思うけどぉ……えへへ……」

 

「うわぁ!急にしおらしくなるなぁ!テレテレすんなわけわかんなくなるだろぉ!?」

 

 

 そんなかわいい顔を急に見せるなぁ!情緒めちゃくちゃになるだろぉ!?

 つかなに!?絶対付き合ってるでしょ!?

 これで違うとか絶対嘘だよっ!百歩譲っても恋人だろっ!

 

 

「ちっ、違うわよっ!?別に志賀とはそういうんじゃないので!ほんとなのっ!」

 

「どうせ女子会とかも『最近あいつ男の影あるからそっとしとこう』的なあれなんだろ!」

 

「なっ、まるで見てきたかのようにっ!」

 

「分かるわっ!もうそのご友人達のほほえまな眼差しが目に浮かぶよっ!」

 

 

 くそっ、甘ったるい雰囲気にしすぎた。

 思わず紅茶を一気に口に流したけど、なんか口の中が甘ったるい気すらしてくる。

 

 

 

 それもこれも志賀のせいだ……っ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……」

 

「おにーさん、すっごい声出てる」

 

「マジで気ぃ狂いそう……」

 

「本格的に参ってるんだねぇ」

 

「美樹、あんまりからかうのよくないよ?」

 

 

 今日のおにーさんはお休みっぽくて、お客さんとしてうちの喫茶店に来ている。

 のだけど、こういうの、くだを巻く?っていうんだっけ。

 今日は他のアルバイトさんが仕事場に立ってるけど、みんなちょっと心配そうに見てる。

 

 

「なんもわかんねぇ……なんで俺は何もわかんねぇんだ……」

 

「そっから?そっからなん?」

 

「わりぃな二人とも……今俺はダメだ……」

 

「見りゃわかるよ」

 

「見ればわかります」

 

「……だよなぁ……あぁぁぁぁ……」

 

 

 あたし達の向かいに座るおにーさんは机に突っ伏してぼやいている。

 

 普段割と気ぃ強めなおにーさんがこの有様だ。

 それはもう大変なことが起きたに違いない。

 ちょっと面白そ……いや今までの恩義に報いるべく真摯にお話を聞くのが誠意ってやつじゃないかな!?

 

 そういう下心が顔に出てたのか、芽衣が私の頭にポスンと手をやる。

 

 

「めっ」

 

「ごめんてー」

 

 

 これで叱ってるつもりらしいから、私は芽衣が大好き。

 いつか悪い人に騙されちゃわないか心配すぎる。

 

 

「んでだよ……教えてくれよ先輩ぃ……東ぁ……」

 

「ほほぅ?」

 

 

 ふむふむ?『先輩』さんと『東』さん。

 このお二人のことで悩んでる様子。

 

 

「ねー、よければちょっと話してみない?言ってる途中で整理されることもあるんじゃない?」

 

「美樹、またそうやって……」

 

「まーまー芽衣。人助け人助け」

 

「……もうっ」

 

 

 とか言いつつ、芽衣も聞きたがってるのは間違いない。

 もちろん心配してのことだろうけど、興味がないってわけじゃあないんだよね、分かるよ。

 

 それにさっき、周りに座ってるお客さんがチラとこっちを見てた。

 おにーさん、お客さん人気が高いってパパが言ってた。

 だからそういう事情を聴きたいに違いない。

 それにゴシップはスイーツみたいなもんなんだからねぇ。

 

 

「……まぁ聞きたいんならいいけどよぉ。あ、店長には内緒な。悪いこと吹き込むなってまた怒られちまう」

 

「分かってる分かってるー」

 

「ほんとかぁ?んじゃ話すけどよぉ……」

 

 

 はてさて、どんな話題が出るのやら。

 芽衣は真剣な顔してるけど、お隣席のお姉さん達が途端に話止めたのには気づいてなさそうだなー。

 

 

「俺さぁ、仲いい先輩がいんだよ。その人とはここ半年くらいでめっちゃ仲良くなって……あ、こないだ来てたヒラヒラした服の人な」

 

「おー、覚えてるよ。フリフリだしかわいかったしでよーく覚えてるよ」

 

「だろ?……で、自分で言うのもなんだけどさ、かなーり仲いいんだよ。家でゲームしたり、どっか遊び行ったりもしてたし」

 

「うんうん、なんとなくわかるよ」

 

 

 その先輩さんの話をしてる時、すっごい寂しそうな顔するんだなぁ……

 ……これひょっとして聞くのマズい?

 

 

「んでついこないだ、俺の男友達を先輩に紹介したんだよ。こいつ俺のダチなんですーって」

 

「ほうほう」

 

「そしたらよぉ、なんか初対面で気ぃ合ったみたいで?今度どっか行こうみたいな話しててさぁ」

 

「……うん」

 

「今二人きりで遊びに行ってんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっばー」

 

 

 これはやばい。

 聞いちゃいけなかったかもしれない。

 

 大人だ。

 大人の世界の話だ。

 

 

「あわわわわ……」

 

 

 芽衣はもう壊れた。早いよ。

 とはいえ私もギリギリのとこで踏ん張ってるけど、ちょっと衝撃が強すぎたなぁ!?

 

 

「……ねぇ、どう思う?」

 

「……アウト、よねぇ」

 

 

 ほらもう隣のお姉さんがアウト判定出してる!

 もうこれはダメ!私達が踏み込んじゃいけないものだった!藪突っつきすぎた!

 

 

「……なぁ、なんか変な勘違いしてねぇ?」

 

「ひぇっ。か、勘違いとか、して、ないんじゃないかなぁ!?」

 

「してるって言ってるようなもんだろ」

 

 

 勘違い、勘違い?

 ここまで来て勘違いってことある!?

 

 

「俺は、東が……友達と先輩の気が合うことにはなんも思ってねぇよ?」

 

「「えっ」」

 

「「えっ」」

 

「……なんだよその反応は」

 

「だって、ねぇ……?おにーさんが、好きな人取られちゃった話じゃん……?」

 

「ち、違うんですか……?」

 

「違ぇよっ!!全く違ぇよっ!先輩はそういうのじゃねぇよっ!?」

 

 

 違うのっ!?

 えっ、絶対そういう話って思うじゃんっ!?

 むしろここまでの話で違うなんてことあるわけないでしょお!?

 

 そう言うとおにーさんはぽつぽつと喋りだした。

 

 

「……いや、まぁ、そういんじゃ、ねぇんだけどよぉ」

 

「別に、先輩と東がそういう関係になったって俺は構わねぇ。それは間違いないと思う」

 

 

 そうは言うけど、おにーさんはすっごくもやもやしてるんだと思う。

 コーヒーカップをしきりに傾けては止めて、中のコーヒーをじっと見てる。

 

 

「でもなんつーか、先輩が、すげぇ遠くに行っちまうんじゃって、焦るっつーか」

 

「……打算だったんだ。近くにいたのもどうしようもねぇ理由で、俺自身どうしようもなくて……」

 

「でも、ここ最近ずっと先輩と一緒だったから、一緒にいんのが当たり前になってて」

 

 

 ん、と呟いておにーさんはぴたりと動きを止めた。

 

 

「……あー、そうか。分かったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずっと傍にいてぇって思うくらい、俺はあの人の隣が好きなんだ」

 

「先輩がいなくて、寂しんだな、俺」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時のおにーさんはきっと、憑き物が落ちたような顔をしていたに違いない。

 

 

「はーすっきりした。ったく、我ながら女々しんだかガキなんだか……」

 

「悪ぃね、美樹ちゃん、芽衣ちゃん。つまんねー話に付き合わせて……美樹ちゃん?芽衣ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょっとこっちはそれどころではない。

 

 

「「はわわわわ……」」

 

「ちょっとぉ!?なん、なんでそんな反応になんだよぉ!?」

 

 

 いや、だって、無理だって。

 こんな、こんな、大好きですみたいな雰囲気出して、正気でいるの無理。

 

 

「まさかこれで好きじゃないとか言ってんの……!?」

 

「シラフで言えるの強すぎ……」

 

 

 いやでもだってこんなん、おにーさん絶対『先輩』さんのこと好きじゃん!

 むしろなんでそこまで行ってて『先輩が好き』って感情に行きつかないの!?

 なんで!?なんで『隣』なのっ!?

 

 

「無理……しんど……」

 

「若さ、これが若さなのね」

 

 

 うわ周りの席が死屍累々だ。

 まぁそれはそうか……という気持ちにもなってしまう。

 

 

「……うん、まぁ、悩みが解決したのなら、いいんじゃない?」

 

「おう、だな。いや悪かったな、変な話聞かせて」

 

「ほんとだよ」

 

 

 ほんとだよ。

 

 思わずすごい投げやりな言葉になっちゃったよあたし。

 聞いてるこっちが胸焼けしそうな勢いだったよ。

 

 

 

 

 

 ……んでもまぁ、おにーさんの役に立てたのなら。

 これはこれで、めでたし、なの、かなぁ……?

 

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