無様屈服ワンちゃんばかりのこの世界で俺は巨乳好き 作:飛び回る蜂
「クゥリスマスがぁ今ぉ年もぉやぁってくるぅ~♪」
「浮かれてますねぇ。小学生みてぇだ」
「言っちゃダメだろ志賀。女の子はいくつになっても女の子なんだよ?」
「女子っつーか女児だろ」
「聞こえてるわよツインバカ」
今年もやってくるわねクリスマスっ!
毎年いろんなケーキ、スイーツでお店が彩られる時期っ!
これにワクワクしない乙女はいないってわけよぉ!
「先輩と東はなんかすんの?」
「ケーキ買って家で食べる」
「別に何も。友達にパーティ誘われたら行くかなぁってくらい」
「なんて味気ねぇクリスマスだ……。先輩に至っては食い気しかねぇじゃん」
「そういう志賀は何をするっていうのさ」
「家に籠る。実家は親戚集まるから極力帰りたくねぇし」
「君も大概だろ」
しけたクリスマスしてて、いっそ憐れね……。
……ティンと来た!
「ねぇ、だったらさ。クリスマスは三人で志賀の家集まらない?この調子ならどうせボッチでしょみんな」
「うるせぇ一言余計っすよ。それに集まるったって、どうせ徹夜でゲームするだけになんでしょうが」
「黙れ。せっかくだからプレゼント交換しよっ!みんなで持ち寄ってっ!」
「やっぱ俺に当たり強くねぇ?」
「ふーん、いいんじゃない?僕参加で」
っし!東ちゃん参加!
志賀はなんだかんだ言っても参加するだろうし、クリスマスは楽しいことになりそうねっ。
「んー……どうすっかなぁ……」
「珍しいね。普段の君ならすぐ乗ってくるのに」
「いやまぁダメってんじゃないけどよぉ。つかなんでそんな広くねぇ俺のアパートなんだよ……」
そりゃしょうがないわよ。
東ちゃん家はゲームあんまり置いてないし、私の方は実家になっちゃうし。
流石に実家に男二人(東ちゃん含む)連れて来たりなんかした日にはそりゃあ大変なことになるからねぇ!
「昼過ぎまでバイトなんで、その後でもいっすか?」
「決まりねっ!そんじゃ各自、プレゼントを用意しておくことっ!」
「はーい」
「うーす」
ふふふっ、楽しみねぇ!
さて、来るべき日に備えて私もプレゼントを用意しとかないとねぇ!
「うーん、プレゼントかぁ」
ふふん、プレゼント交換。
クリスマスまで一週間、今からでも楽しみすぎるな……
さて、あげるものは慎重に、慎重に選ばないとね。
ここで白けるようなものは送りたくないし、何より楽しいクリスマスにしたいからねっ。
「なんとなく欲しそうな物は分かるけど、うーん……」
となると、どっちに送られてもいいものじゃなきゃだよねぇ。
そうなってくると志賀やっぱりゲーム関連かな。
レトロゲー好きではあるけど、新しいのもやらないってわけじゃないし、そこらへん?
先輩も志賀と同じでゲーマーだし、この辺が丸い所だ。
「……でも、僕っぽくはないよね」
そう、そこに『僕らしさ』はない
せっかく贈り物をするのだからね。
そこにはやはり『僕らしさ』があった方がいいんじゃないかな?
無難に失敗しないものでもいいけど、せっかく友達に送るんだし、ちょっと冒険したい。
「よーしっ、探すぞぉ!」
「どーっすかなぁー」
プレゼント交換なんて生まれてこの方したことねぇ。
クリスマス、俺にとってあんまりいい思い出ねぇし……
いやほんと、できればクリスマスは家で閉じこもっていたい。
なぜか?言わずもがな『メスガキ』の存在があるからだ。
クリスマス、一人覇気もなく歩く冴えない男。
そんな男を見つけては声をかけるメスガキ。
『クリスマスなのにぼっちなの?うわ、かわいそ~♡』
『お、大人にそんな口を利いていいと思ってるのかっ!?』
大人(雑魚)は肩を怒らせ、なんやかんやでその男の家やホテルに二人は消えていくという始末だ。
なんでそんなことになんの?ってくらい、クリスマスは訳の分からないシチュエーションが多発する。
これがあまりに嫌すぎて外に出たくないんだよ俺はぁ!!
あとホテルは未成年者を通すな。どうなってんだ。
「……ん、あれ?雛ちゃん?」
「あーっ!おに……じゃなくて、志賀さんっ!」
「えっ、なんで苗字」
気だるい心のまま過ごす大学からの帰路。
家の近辺に差し掛かったところ、偶然にも出会ったのは雛ちゃん。
そういえばもう小学校は下校時刻か。気づかなかった。
「そろそろおにーさんっていうより、名前で呼んだ方が大人っぽいかなーって……えへへ……」
「おぉ、なるほど。そうか、雛ちゃんもそういうの気にするお年頃かぁ」
俺自身、どんな呼び方だって構やしない。
正直お兄さんって呼び方、ちょっとビクつくからなぁ俺ぇ!
「まっ、呼びやすいように呼んでくれな。……そうだ、雛ちゃん」
「なにー?」
「今年のクリスマス、どうなった?」
そうだ、俺はこれが気になっていた。
ずっと家族と疎遠気味だった雛ちゃんが久しぶりに、ともすれば物心ついてから初めてクリスマスを過ごせるんじゃあないか?
これを聞かずに、俺は安心してクリスマスを過ごせねぇ……!
「あっ!そうだったっ!聞いて聞いてっ。あのねっ!今年はみんな家にいるってっ!」
「おぉー!マジかっ!やったなぁ!」
っしゃやったぜ!
あんだけ家巻き込んで色々あったんだ、クリスマスにまた寂しそうな顔してたらどうしようかと思ってたんだ。
最悪雛ちゃん実家に呼んでクリスマス会とかも視野にはあったから、安心したぜ……!
「おにーさんにも教えなきゃって思ってたけどあんまり会えなくて……あ゛っ」
「いーよ、呼びやすい方で呼びなって。……そっかぁ。ほんと、よかったなぁ」
「ほっ、ほんとは志賀さんとかおねーさん……一ノ瀬さんとも一緒にいたかったんだけど……」
「おいおい、それこそ勿体ねぇよ。久々なんだ、家族にいっぱい甘やかしてもらいな」
両親も姉も、それはもう必死に休みを取ったんだろうな。
そりゃそうだ、これでクリスマス一緒に過ごせねぇってなったら雛ちゃん泣いちまうよ。
考えて見りゃ、一人で家にいて静かにケーキ食べるなんて、小学生がすることじゃねぇ。
「……あのね、おにーさん」
「ん?どした」
ちょっと屈んで目を合わせてやることを忘れない。
大事な時、大事な言葉はちゃんと聞いてやらないと。
「ありがとうっ!」
「おいおい、俺なんもしてねぇんだけど」
「それでもっ!」
「……ん、そっか。お礼、確かに受け取ったぜ。先輩……一ノ瀬さんにも伝えとく」
後で先輩にも伝えてやんねぇと。
しかしちょっとしか会ってねぇのに、先輩もまぁ好かれてるもんだ。
「うんっ!じゃあ、またね!」
「おう、またなー!」
雛ちゃんは元気に、幸せそうに帰っていった。
本当に、幸せそうで何よりだ。
ここ数年で、一番安心したかもしれねぇ。
きっと雛ちゃんは、ここ数年分のクリスマスを纏めて、目一杯甘やかされることだろうな。
「……さて、俺もプレゼント探さねぇと」
ちょっとだけ、クリスマスを好きになれたような気がする。
「っていうわけなんだけど、志賀の好きなものとか知らない?」
「プレゼント交換の話だったよね?なんで個人の好みになるの?あたし分かんないけど芽衣分かる?」
「私に振らないで、美樹……」
志賀の働いてる喫茶店、そこに今っ!私は来ているっ!
特に理由はないけど、強いて言うなら双子ちゃんの顔を見にっ!
「いやね?あいつがゲーム好きなのは知ってるけど、それ以外の好きなもの知らないなーって思ってね?何か知らないかなーって」
「それこそ大学で会ってるならおねーさんの方が詳しいでしょ。いつでも聞ける環境じゃん」
いやまぁそうなんだけどねぇ。
なんというか……こう……
「今更『好きなもの何?』って聞くのもぉ……気恥ずかしいというかなんというかぁ……」
「分かんなー……。そういうのって普通に聞くもんじゃないのー?」
くっ、素直に聞けちゃう中学生のその感性がッ!
私は猛烈に羨ましいッ!
「そもそも交換するんでしょ?東さんに渡るかもしれないんだからおにーさんのこと聞いても仕方ないでしょ?」
「ん?あぁ、そっちはもう決めてるわよ」
「へぇ!?」
「じゃあ、なんでお兄さんの好みを……?」
なんでって、そりゃあ決まってるじゃないのよ。
「交換とは別に渡すからだけど」
「やほー、メリクリ。遊びに来たわよぉ」
「お邪魔するよー!メリークリスマース!」
「あい、いらっしゃい。東テンションたっけぇなぁ」
「はいこれ。スーパー寄って晩ご飯の買い物してきたわよぉ。冷蔵庫しまっちゃってね」
「二人とも寒い中あざーす」
夕方を少し回り、日も暮れかかってきたところ。
先輩と東は手に荷物を抱えてやってきた。
「……あのさぁ。東」
「ん?なんだい?」
「そのバッグからはみ出たクソデカいボードゲームっぽい箱なに?」
「おっ、鋭いねぇ。交換用のプレゼントだよ」
「……じゃあ先輩、その抱えてるデカい箱は」
「よく気づいたわね。プレゼントよ」
二人とも隠す気ゼロすぎんだろ。
なんで二人とも包装してる箱のデカさが50センチ超えてんだよ。
「とりあえずそこ置いとけ。邪魔すぎる」
「今僕のこと邪魔って言った……!?」
「今日のお前なんなんだよ。情緒不安定がすぎるだろ」
もう若干疲れた。
これから飯作ったりケーキ切ったりするのに疲労感が半端じゃない。
バイト帰りっていうのもあるだろうが、今日の東はヤバいかもしれねぇ。
「はいはいちゃっちゃと晩ご飯用意するわよ。私準備やるから。志賀、運ぶのだけ手伝ってもらっていい?」
「えっ、いやいや。客に飯用意させるわけにいかねぇですよ。俺やりますって」
「疲れてるでしょ。いーから座ってなさい」
……先輩いい人すぎんだろ。
でもなんもしねぇってのも気が引けるし、箸とか器とか必要なもんだけテーブルに揃えとくか。
「まっかなおっはなーのー♪トナカイさっんはー♪」
「先輩テンションたっけぇなぁ。なぁ東」
「いっつもみんなのー♪わーらーいーもーのー♪」
「オイオイオイ」
ヤベェなこの空間、IQ20くらいまで下がってんじゃね?
台所で夕飯の準備してる先輩と、エアコンかけて暖かい部屋でこたつに入ってる東。
相乗効果でこの部屋のテンションがえらいことになってやがると見た。
なんでぇ?
「「ジー……」」
「……でもーそのーとしのー」
「「クリスマスのー日ー♪」」
「サンタのおじさんはー」
「「いーいーまーしーたー♪」」
凄まじい圧に負け、歌っちまった。
いまいち俺がノれてないと見るや否や連携取ってくるの、結束力が強すぎるだろマジで。
「……仕事終わりの志賀、買い物帰りの先輩。始まる夫婦みたいなやり取り、僕じゃなきゃ見逃しちゃうね」
「なんか言ったか?」
「いいや何も」
「志賀ー!お鍋できたから運んでー!」
「あいー」
おっと、飯ができたっぽい。
米は炊いてあるし、三人集まるということもあって今日は鍋だ。
ここ数年、クリスマスは家に閉じこもって外の情報をシャットアウトする生活だったから、すっげぇ大学生っぽいことしてると思うと涙が出そうになる。
「あら、用意してくれてたのね。ありがとっ」
「いやいや、僕は何もしてないよ」
「ほんとに何もしないでそれ言うやつ初めて見たかもしれねぇ」
こんな下らないことでも笑える。
この時間が、いつまでも続けばいいのに。
「ほら座って座って。……東ちゃぁん?寝ちゃダメよ?」
「……ハッ、寝かけた」
「飯用意してる間コタツで寝るその度胸、いっそ褒めてやりてぇよ」
「だろ?」
「今日のお前無敵か?」
「はいはい座って起きてっ!準備できたわね!それじゃ……」
「「「いただきます」」」
「……くー……くー……」
「んでまた寝てんすか東は」
「おなか一杯だしゲームしたしではしゃいだから疲れちゃったんじゃない?」
「それはもう幼児だろ……」
ご飯も済ませケーキも食べ終わって、先ほどプレゼントの交換も済ませちゃったからね。
東ちゃんが寝ちゃうのも、致し方なしね。
(にしても東ちゃん、いくらバレてないとはいえ男の家で寝るのはどうなのかなぁーって思っちゃうわね……)
「にしても一瞬で終わりましたね、交換。まぁ実質二択だからしゃーないっすけど」
「そうねぇ……ぷぷっ、枯山水て……ぷぷぷ……」
「これマジでどうしたらいいんすかね、枯山水。積まれた徳奪うゲームってことは知ってるんすけど」
後輩の手にはボードゲーム『枯山水』。
このメンツでこのゲームを選んだ東ちゃんのセンスはかなり光るものがあるんじゃないかしら。
これをドヤ顔で解説する東ちゃん、思い出すだけで笑顔になってしまうわねっ!
「東ちゃん、私のプレゼント喜んでくれててよかったわぁ。もうすっっっっごい可愛かったわね!」
「東にデカいぬいぐるみってのはいいけどさぁ。あれ俺に渡ってたらどうすんすか」
「いいじゃない、そん時は大事にしてくれたでしょ?」
「そりゃまぁ……」
なんとももどかしそうな後輩の顔に、どこかいじらしさを感じてしまう。
どうしていつも、心をくすぐるような顔をしてくれるのかしらね後輩は。
どうしてそんなところが、たまらなく愛おしく見えてしまうのかしら。
「んで先輩は俺のやつ。ミルとドリッパー、豆のセットっすね」
「ありがとう、大切に使うわね」
「……東が持ってたらドジって壊しそうな気がするんで、実はちょっと安心したんすけどね」
「あははっ、なんか想像できるわねっ!」
『うわぁぁぁ豆こぼしたぁぁぁ!!』とかすごく言いそうじゃないっ!?
想像するだけでちょっと面白いとかズルじゃないっ!?
「まっ、先輩が貰ってくれるんなら長持ちしそうっすね。大事にしてください」
「当然じゃない。いつかめちゃめちゃ美味しいコーヒー淹れてあげるわよ」
「お?吹かしますねぇ、現役喫茶店員の前で。楽しみにしてますんで」
お互い挑戦的に、にししと笑ってる。
うん、いつか、いつか淹れてあげる。
それがずぅっと先になったとしても。
……約束したからねっ。
「あー先輩」
「んー?どしたの?」
「……これあげます」
そう言った後輩が渡してきたのは、小さな紙袋。
重さ的には……かなり軽い。
小物が一つ入ってるかどうかって感じ。
「……ぷっ、あっははははっ!!そんなとこでも私達って似るのねー!」
「え、なに。つーことは先輩も?」
「うんっ。はいどーぞ」
「なんつーか、こっ恥ずかしいっすねぇ……」
双子ちゃんに聞いて、その上で私なりに精一杯考えて選んだプレゼント。
ふふっ、喜んでくれるといいんだけど。
「いいじゃないの。……ふふ、今から開けるのが楽しみよ、私」
「さいで。……そうだ。ちょっといいお酒買ったんですけど飲みます?」
「おっ、いいわねぇ。ワイン?」
「日本酒」
「お鍋の時に出せばよかったんじゃないのっ!?」
「返す言葉もねぇぜ……。取ってきますね」
それこそお鍋と合わせればよかったんじゃないかなぁ!?
もちろんいただくけどっ!
後輩が一言残して台所に歩いていく。
「ねぇ、先輩」
後輩が燗する用意をしながらこちらに視線をやり、言葉をかける。
なんとなく、やわらかい雰囲気で、いつもより気分がよさそう。
「俺さぁ、クリスマス好きじゃなかったんすよ」
「へー、意外。独り身云々気にするような性格じゃないって思ってたけど」
「そこは気にしてねぇっす。まぁなんだ、色々ありまして」
湯煎して温めた、これまたちょっとおしゃれな徳利に入ったお酒を持ってくる。
寒い日に、これはいいものねぇ……!
後輩気が利くぅ!
「だから、今日は二人が来てくれて嬉しかったです。また来年もやりましょ」
「ふふっ、もちろん」
その時はまた、三人で。
言葉にはしないけど、きっと後輩ならわかってくれるはず。
「日本酒片手に言うのもなんですが。メリークリスマス」
「ここまでくるといっそ面白いわね。メリークリスマス」
プレゼント、喜んでくれるかな。