無様屈服ワンちゃんばかりのこの世界で俺は巨乳好き   作:飛び回る蜂

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エピローグ

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「へぇ、付き合うことになったんだぁおめでとぉー。そういえば三限って提出あったっけ?」

 

「そこまでノーリアクションだといっそ清々しいなオイ。課題出てたろ」

 

「マジ?……なんかの奇跡で終わってないかな」

 

 

 かなりの重大発表だったにも関わらず、顔色どころか話題の一つすら変えやがらねぇよこいつっ!?何食わぬ顔でバッグ漁ってやがるだと!?

 確かに食堂で言うことじゃねぇかもしんねぇけど、そんな軽く受け流していい話題じゃねぇだろ!?

 

 

「イェイやってあったぁ!!過去の僕天才だわ神すぎる」

 

「気持ちはわかる。……なぁ、マジでなんもねぇの?俺めっちゃ緊張して話したんだけど」

 

「遅っっっっせぇよ。報告が遅すぎるんだよ」

 

 

 さっきまで課題プリント手に持って気持ち悪ぃ笑顔だったのに、途端にぶすっとした表情に変わりやがった。

 いやでもよく見たら目が笑ってねぇ……!!深淵みたいな目をしてやがる……!

 

 

「……俺が遅いぃっ!?俺がスロウリィ!?」

 

「僕からすれば君に言われて一ノ瀬先輩と初めて会った日から、え?これで付き合ってないとか嘘だろ?くらいには思ってたわぁ!今更驚くかっ!」

 

「そんな前からかよっ!?」

 

 

 嘘だろじゃあ初めからじゃねぇか!

 おかしい、あの頃はそんな素振りなかったはずだろ……?

 

 

「もういい何を考えてるのか大体わかった口を開く必要はない」

 

「なにお前サトリ妖怪だったん?」

 

「今の君と相対したら誰でもサトリ妖怪になれるねぇ……。その先輩は?まだ来ない?」

 

「二限終わったしそろそろじゃね?おっ、噂をすれば」

 

 

 昼を先に済ませて駄弁っていると向こうの方から見覚えのある人影が歩いてくる。

 その足取りは軽く、いかにも『私!浮かれてます!』と言いたげでかわいい。

 

 

「お待たせぇ!待ったぁ?」

 

「待ってない」

 

「呼んでない」

 

「ひどくない?散々泣いた後しばき倒すわよ」

 

「それは乙女に擬態したバーバリアンだろ」

 

「カウンターが思ってた数倍強い」

 

 

 普段通りの生活が明日も続く。

 そんな誰もが持ってる『当たり前の生活』が帰って来たんだと思うと感慨深いものがある。

 ほんと長かった。何年もあんな環境にいたと思うと背筋が凍りそうだ。

 

 

「そういえば今度の休みってあれだっけ?エアライドやる日?」

 

「ふざけんなお前エアライドクソ強いからやりたくねーんだよ。なんで毎回一人だけ平均ステが14くれーなんだよ。つか毎回俺のルインズをスリックでぶっ壊しに来んのやめろ挙動が意味分かんねぇよ」

 

「気合気合。後は細かい積み重ねだよ」

 

「東ちゃん、なんか特定のゲームやると『持ってる』って感じるのよねぇ……」

 

 

 東はどうも親の影響か、家に置いてあったゲームをやりこんでるらしい。

 そのせいか、一部ゲームが俺と先輩で組んでも五分ってくらいに強いんだよ。

 

 

「にしても東もウチに馴染んだよなぁ」

 

「そう?うれしいこと言ってくれるねぇ」

 

「うん、ちょっと私が危機感持つくらい馴染んでるわね」

 

「危機感……?ちょっと先輩詳しく」

 

「志賀と先輩が抱く危機感、違うと思うなぁ!!やめろ志賀そんな目で僕を見るなぁ!!僕にそんな気はないってぇ!!」

 

 

 しかし東には悪いが次の休みは予定があるから集まれねぇな。

 

 

「今度の休みっつーと……」

 

「……うん」

 

「意味深な目くばせ、目の前でやられるとすっげぇめんどくさいよこれ」

 

「今のは俺らが悪かった」

 

「えっ、なにが悪かったのっ!?」

 

「「マジで言ってる?」」

 

 

 あざとい先輩もかわいいが今のはない。

 なんかあれだな、付き合ってからの先輩ちょいちょいその辺のネジ外れるな?

 

 

「まぁあれだ。ちょっと用事で出歩くからな。わりぃ」

 

「全然構わないよ。むしろ付いてったら絶対後悔するからいいよ。早く行け」

 

 

 冷てぇ……最近東が冷てぇよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日は進んで次の土曜日の昼前。

 今は先輩との待ち合わせ中であり、俺は今か今かと心待ちにしているってわけだが。

 

 

「来ねぇー……」

 

 

 普段から時間ぴったりかちょい前に来る先輩が来ない。

 

 ただこうして待ってるだけの時間が、不安だ。

 恋人を待つ時間が不安でどうにかなりそうだなんておかしな話だよ本当に。

 ようやく手に入れたこの時間が、また失われちまうんじゃないかと思うと足元がグラつく気さえ───

 

 

「しがーっ!待たせてごめーん!」

 

「ん、ああいえ、全然待ってません。むしろ助かりました」

 

「助か……?」

 

 

 とてとてとすら言いそうな軽い足取りで先輩はやってきた。

 あーもうかわいいなこの人ぉ!!

 もう悩みなんてどうでもよくなってきちまうなぁ。

 

 

「何はともあれ、今日はよろしくお願いします」

 

「いろんなとこ歩いて回るんだっけ。でどしたの急に」

 

 

 それはもちろん、確認だ。

 この世界が本当に『メスガキ同人もの世界』じゃないことのな。

 だがバカ正直に言えば

 

 

『は……?キモ……』

 

 

 と言われることは間違いない。

 もし先輩に嫌われたら俺は明日から生きていけない。

 本気で。先輩は俺の光だ。

 光のないところで人間は生きられないように、先輩のいない世界じゃ生きられないんだ。

 悔しいだろうが仕方ないんだ。

 

 

「いやぁ、よく考えたら俺、バ先とゲーセンと飲み屋以外で大学周辺そんなに知らねぇなって」

 

「健全に大学生してるじゃない」

 

「人間としては不健全極まりないっすね。そこで先輩に色々教えてもらいつつ、色々見て回りませんかってことです」

 

 

 言葉にしてみるとほんとに出歩いてねぇんだな俺は。

 その他だと商店街くらいで、子供がいそうな場所は徹底して避けてたから、必然的にそうなるってわけだ。

 麻雀パチンコはなんか合わなくて手ぇ出してないしな。

 

 

「んー……じゃ、今日は一日その敬語っぽいの取れない?」

 

「え、なんでですか」

 

 

 唐突な話し方の制限で面食らってしまった。

 なんか気に食わなかったのか?

 嫌だ先輩に嫌われたくねぇ。

 

 

「遊びに行くってのに気ぃ使うのやでしょ?」

 

「別に先輩に気ぃ使ってるつもりないんすけど。これ素」

 

「距離感じるから私がやなのっ!」

 

「かわいいかよ」

 

「えへへ、かわいいでしょっ!」

 

 

 かわいいが過ぎるだろうが。

 つっても先輩の前じゃ話し方はいつも素だし、変えんのも一苦労だ。

 

 

「それと!恋人なんだから『先輩』じゃなくて『愛佳』でしょ?」

 

「一ノ瀬」

 

「おい」

 

「……愛佳さん」

 

「……まぁ許してやらんこともないわねっ」

 

 

 ニヤニヤと喜びを隠しきれない顔でよくもまぁそんなこと言えたもんだ。

 恥ずくて顔見れねぇ俺も俺だ。情けねぇぜ。

 

 

「なんなら俺も下の名前でいっすよ」

 

「じゃあ……たっくん♡」

 

「確かに俺に夢はねぇけどさぁ」

 

「あんたは夢じゃなくて私を守れりゃいいのよ」

 

「へへ、違ぇねぇや」

 

 

 いつまでもこうして駄弁っていたいが、今日の目的はおしゃべりじゃない。

 この世界に帰って来たんだという実感が得たいがための、要はただの散歩。

 

 

「それじゃ早速行くか。最初に行く場所は決めてるんすよ」

 

「へぇ?期待してるわよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい到着しました、近所の公園。ゲストは雛ちゃんです」

 

「志賀さーん!一ノ瀬さーん!こんにちはっ!」

 

「やだ~~~~~!雛ちゃん久しぶり~~~~!!かわいい~~~~~!!」

 

「はいはい先輩どうどう。雛ちゃんこんー」

 

「こんー!」

 

 

 志賀に連れてこられて到着したのは何気ない近所の公園。

 デートで公園に連れてこられたときは百年の恋も冷めるかと思いきや、どうも雛ちゃんと待ち合わせしてたっぽい?

 ……ならよしっ!

 

 

「まぁ待ち合わせってんじゃなくて、雛ちゃんが友達と遊びに行くのと時間被ったからその前に一ノ瀬さんに会いたいってなりまして」

 

「もうっ、動機までかわいいっ」

 

 

 そっか、お友達と遊びに行くのね。

 そりゃそうよね、こんなかわいい雛ちゃんだもの、誰もほっとかないわよねっ。

 

 

「一ノ瀬さんにもお礼が言いたかったの。仲直りさせてくれたからっ!」

 

 

 笑顔がまぶしいっ。

 私にとって妹にも等しい(本当のお姉さんには悪いけども)雛ちゃんの笑顔!

 あぁ……何物にも代えがたいわ……

 

 そんな笑顔を堪能していると志賀が私に小声で語り掛ける。

 

 

「あれから随分自然に笑うようになったんだそうで。学校じゃ人気者なんだとか」

 

「そりゃあそうよ私の雛ちゃんだもの。学校一、いや地域一……私がいるから地域二可愛いのよ?」

 

「そこは譲ってやれよ大人げねぇ」

 

「一ノ瀬さんは私よりかわいいよ?」

 

 

 う゛っ、邪気無く言われると、嬉しさと罪悪感がこみ上げるわね……

 しかもそこに志賀のジト目が突き刺さる……!

 

 

「まぁなんだ。雛ちゃんが笑顔で元気にしてるんならそれが一番だ」

 

「……うん、本当にね」

 

 

 私も雛ちゃんと仲良しといっても、まだまだ日は浅い。

 だとしても、それでも雛ちゃんにはずっと笑顔でいてほしいの。

 ……なんでかしらね?私って、別に子供好きってわけじゃなかったと思うんだけど。

 

 

 

「うんっ!……じゃ、私行くね!」

 

「ん、いってらっしゃい」

 

「友達と楽しんできてね!」

 

 

 あぁぁぁぁ……雛ちゃんが行ってしまう……

 私の癒しぃ……!よよよ……

 おい志賀なんだその目は。

 バカにしてんのか。

 

 そのまま走っていくかと思いきや、雛ちゃんはくるっと振り返った。

 まるでいたずらっ子のような顔で。

 

 

「ふふ、なんかパパとママみたいだった!」

 

「……は?」

 

「へ?」

 

「じゃーねっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行きますか」

 

「そう、そうねっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後も二人でいろんなところを回った。

 

 

「いらっしゃいませー。……げ」

 

「私見てげって何!?私なんかした!?」

 

「いやー……何したってわけじゃないんですけどぉー……。ただでさえ片方だけでも空気が甘いのに的なぁー……」

 

「うー……美樹を叱るべきなんですけど……言いたいことは分かっちゃうね……」

 

「ちょっと志賀。私がいないとこでなにを話した。吐け」

 

「黙秘権を使用させていただきゃーす」

 

 

 志賀のバイト先にちらっと顔出したり。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら。あらあら志賀君。あらあらあらっ!」

 

「ッスゥー……どもです寧さん……」

 

「志賀」

 

「違います。この人はそういんじゃないです。信じて」

 

「後で詳しく」

 

「……うす」

 

「ふふっ、そうなの、そうなのね。その人が『先輩』なのね!会えて光栄だわっ!」

 

「ねぇ。ひょっとしてあんた、色んなとこで私のこと言いふらしてない?」

 

「……黙秘権っすね」

 

「吐けコラーッ!!」

 

「あらあら。……ふふっ、素敵ねぇ。憧れちゃう」

 

 

 志賀の行きつけらしい和菓子屋さんに寄ったり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイオイオイオイ。先輩俺がゲーセン行ってねぇ間に腕上げました?レゾン叩けると思ってなかったっすよ」

 

「ふふん。答える必要はない」

 

「まぁスコアは俺の方が上ですけどね。罰ゲーム確定っすねぇどんな気持ちぃ!?」

 

「クソわよっ!!!!」

 

「マタカップルデゲーセンキテルゾ」

 

「シンドイ……キョウタイカエシテ……」

 

「カノジョガホシインジャナイ。アンナカノジョガホシインダヨ……」

 

 

 あの日遊んだゲーセンでリベンジしたり。

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、楽しいなぁ。

 

 ねぇ志賀、そう思うわよね。

 

 でも教えて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を、焦ってるの……?」

 

「……」

 

 

 今日一日遊んでいて感じた。

 志賀はずっと必死になって『何か』を探しているみたいだった。

 それが見つかってほしいのか、見つからないでほしいのかは分からないけど……

 

 ベンチに座ってさっき買ったアイスクリームを食べてる志賀は一瞬、ポカンとした顔で。

 そしたらまた、変に作った笑い方をして話し出す。

 

 

「……はぁ、先輩にはなんでもお見通しっすねぇ」

 

 

 フードコートで買ったアイスをさっさと口に放り込んで、咀嚼している。

 私は飲み込むまで、待つ。

 

 

「ごちそーさまでした。さて何から話したらいいやらだなぁ。人気が無いのはラッキーって感じだけど……」

 

 

 直に夕暮れといった時間、確かに周りには人はいない。

 んー、とか。あーでもなぁ……とかボヤきながら頭をガシガシ搔いている。

 そんなことを少しして、私もアイスを食べ終わったくらいになって決めたみたいで。

 

 

「じゃ、一から言ってくか。言っときますけど、クソバカみてーな話だけどノンフィクションです。口調は、まぁ、こっちが素みたいなもんだから勘弁」

 

「そっちの方が男前じゃない」

 

「うっせ茶化すな。なぁ先輩さ───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───消失、読んだことあります?……前にも聞いたことあったっけか」

 

 

 そこから志賀は、長い話を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───これで、おしまいです。倫理観と価値観のイカれた世界で孤軍奮闘する男の話でしたっと。……どうでした?」

 

「ど、うって。そうね、まだ理解しきれてない、わね……」

 

 

 話は荒唐無稽の連続だった。

 メスガキ?世界改変?転移?

 猜疑心と苦難に満ちたそれは、フィクションと笑うにはあまりに真に迫る話。

 

 

「じゃあさ、もし俺が『今の話全部フィクションでーす』つったら信じてくれます?」

 

「志賀」

 

「……ごめん、今のは俺が悪かった」

 

 

 腑に落ちる点は確かにある。

 電車に乗る時、ゲーセンにいる時、一緒に出掛けるときはいつもそうだったもの。

 いつもさりげなく周りを見ては落ち着かなさそうだった。

 

 

「だから今日出歩いたのは確認の為……ってのが一番の理由っすね。すんません、みっともなくキョロキョロと」

 

「じゃあ、初対面の時かなり辛辣だったのは……」

 

「その節は本当に申し訳ない。愛佳さんもそういう……イベント?みたいなもんだと疑ってたんで」

 

 

 周りを気にするのは志賀が優しいから、私に気を使ってくれてたと思っていたけれど違った。

 あれは志賀なりの、生きる上で身に沁みついた警戒心だったのね。

 志賀はため息も隠さず、俯きながら額を手のひらで抑えて、苦しそうに言葉を漏らしてる。

 

 

「俺も初めはさ、子供の言うことだしって笑ってたんすよ」

 

「……でも、その内少しずつ、怖くなった」

 

「どの子もみんな、おんなじ表情なんだよ。同じような顔で、同じような状況で、同じようなことを言いやがる」

 

「俺がおかしいんじゃねぇ、世界がイカれてんだ。……って何度も思った。でも世界が俺を否定してるみたいで……そのせいかな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その辺歩いてる子供まで怖くなって、普段使ってる道も歩けなくって」

 

「夢も諦めた。最高に輝いてた思い出も、ついこないだまで忘れかけてた」

 

「つらかった。どこか行けなくなったとかそういうことがじゃねぇ」

 

「普通に生きてて、ある日突然、それまでの自分の過去が全て否定されるのは信じらんねぇほど苦しいし、なによりさ……」

 

「……大切な思い出も、全部嫌いにならなきゃいけなくなるのは、死にたくなるほど、悲しかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……でも、今日はすっげぇ楽しかったです。久しぶりに先輩と何の気兼ねもなく遊べましたし。だからあー、なんです?今は落ち着かないかもしんねぇけど……」

 

 

 ───馬鹿か私は。

 なにが気を使ってくれてる、よ。

 なに自惚れてんのよ。

 すぐ傍で友達が、苦しいって、助けを求めてたってのに。

 なんて私は……どうしようもない……っ!!

 

 

「だからいつも通りにしてくれると早く……あれ?愛佳さん?先輩?どうし───」

 

 

 

 

 

 

 

 だから私は立ち上がって。その泣きそうな顔を両手で捕まえて。

 

 馬鹿な後輩に、できる限り優しく。

 

 キスをあげた。

 

 

「───ッ!?とっ、突然何───」

 

「うっさい。そのまま聞いて」

 

 

 立ち上がろうとした志賀をベンチに座らせたまま抱きしめる。

 できるだけ苦しくないように、優しく。

 

 

「ずっと独りぼっちだったんでしょ……?苦しかったんでしょ……!?」

 

「なら、どうしてよぉ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、助けての一つも、言わないのよっ!?」

 

「私はそんなに、頼りなかったっ!?後輩の悩みを聞きもしない奴だって思ったのっ!?」

 

 

 友達がこんなにも苦しんでいたのに、頼られるどころか、気づきもしないなんて。

 涙が止まらない。

 情けない、情けない、情けない───!

 

 

「……言ったって、誰も信じちゃくれないでしょ?笑われて『アニメの見過ぎだ』って言われんのがオチだ」

 

「友達が苦しんでるのを笑うわけないでしょっ!?」

 

「にしたって荒唐無稽が過ぎる話だ。友達がいきなり『最近メスガキばっか見かけるようになった』とか言い出したら心の病気を疑うのは当然ですよ」

 

 それでも諦めたような笑顔を崩さない。

 傷ついて、半死半生みたいな顔でっ、なんてこと言ってるの……っ!

 

 

「それに先輩には十分って程助けられてました。先輩がいなかったらきっとどこかで折れて諦めて死んでた。だから先輩は俺の、命の恩人ですよ」

 

「救われてなきゃ助かったも何もないでしょっ!?今だってそんな顔してるのに……っ!」

 

 

 志賀はまるで子供を安心させる様に、私の背中に手を伸ばす。

 違う、違うっ!

 それが必要なのは私じゃないっ!

 そうされなきゃいけないのは()()()()()でしょ!?

 

 

「……それはそうかもしれません。でも助けてくれっつったって、どうしようもなかったんすよ。世界全部が俺の敵みたいなもんでしたから───」

 

 

 ……っ、ああそう。

 そういうこと言うのねあんたは。

 

 

「……なら誓ってやるわよ。よく聞きなさい」

 

「はぁ……?」

 

 

 その頬を両手で抑えて、しっかりと私と目を合わさせてやることも忘れない。

 これは私なりの、決意表明だ。

 

 

 

 

 

 

「私はっ!一ノ瀬愛佳はっ!!」

 

「たとえ世界中が、志賀巧を否定したってっ!世界が敵になったってっ!」

 

「ずっと傍にいてっ!間違ってないって言うからっ!!」

 

「もし本当にあんたがおかしくなってたんだとしてもっ!私だけはあんたを肯定し続けるっ!!」

 

「それくらいしてやんないで、何が友達よ。何が、恋人よっ!!」

 

「私はあんたを、絶対に独りぼっちになんてさせないんだからっ!!」

 

 

 自分のことながら、きっと酷い顔をしてるのが分かるわ。

 メイクは涙で落ちて跡ができてるでしょうし。

 息だって荒げてぜぇぜぇいってる。

 絶対乙女がしちゃいけない顔だって手に取るように分かる。

 

 ───だから?それがなに?

 そんなこと、苦しむ友達(恋人)を前に、些細なことでしょうがっ!!

 

 

「私は、あなたが、好き」

 

「……俺もです」

 

「苦しいときは絶対に言って。私が一緒に支えたげる。眠れない時も言って。眠れるまで傍にいてあげるから」

 

 

 

「それが私の、あなたへの愛だから」

 

 

 そんな簡単なことで、安心して夜眠れるなら安いもの。

 もし逆の立場ならこいつだってきっとそうしてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱ、先輩には敵わねぇっすよ」

 

「当たり前でしょ、先輩だもん」

 

 

 恋は盲目と笑わば笑え。

 こいつは生意気で、私とゲームで張り合うやつで、いっつも気だるげで。

 一緒にいると犬みたいに傍に来て、私と一緒にいてくれる。

 

 そんな、私が一番愛する人なのよ。

 欠点まで全部愛してて、好きじゃないところなんて一つもない。

 そんな大好きな、大切な人なの。

 

 今だって私の肩に顔を預けて、下手くそに涙を隠してる。

 愛した人が私に身を預けて泣いている。

 それを愛おしいと言わずしてなんと言うの。

 依存?好きなだけすればいい。私もするから。

 

 

「今日は……いい夢見て、眠れそうです」

 

「あら、添い寝はいる?今みたいに泣いちゃわない?」

 

「泣かねぇし添い寝もいらね。でも泊ってくならどーぞ」

 

「じゃお言葉に甘えるわね」

 

 

 さっきまでの情けない顔はしゃっきりとしてて、吹っ切れたようにも見えた。

 きっと、これからは大丈夫。

 大丈夫じゃなくても大丈夫。

 私がずっと傍にいて支えるって決めたから。

 その代わり……

 

 

「こんだけ女に言わせたんだもん。絶対幸せにしてよねっ!」

 

「……なぁに当たり前のこと言ってんすか。ほら、行きましょ」

 

 

 お互いにししと笑い合う。

 うん、やっぱり私達はこうじゃないとねっ!

 そうと決まれば早速向かわないとっ!

 

 

「愛佳さん」

 

「ん-?なに?」

 

「愛してます」

 

「知ってるわよ。……志賀っ!」

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……多分これから、色々大変だと思うけど、頑張ろうね」

 

「俺ならもう、大丈夫。だって、愛佳さんがいるから」

 

 

 どんなに苦しくっても、どんなにつらいことがあっても。

 どんな場所だって、二人一緒なら幸せになれる。

 信じてるからね、志賀。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや職質とか。私連れて歩いてたらほぼ確実に捕まるわよ」

 

「……いやそこは自分で否定しろよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ばいばーい♡」

 

 

 

 

 

.




 今話で当作品は完結となります。
 沢山の感想、評価、お気に入り登録、FA、誤字訂正等々、心から御礼申し上げます。
 途中、私の至らなさが故にご迷惑をお掛けしたこともあり、それでも読んでくださった皆様へ、本当にありがとうございます。


 改めまして、本作品を読んでくださった皆様に感謝申し上げます。
 誠にありがとうございました。
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