無様屈服ワンちゃんばかりのこの世界で俺は巨乳好き   作:飛び回る蜂

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 番外編です。
 もしも先輩と会う前に東と話をしていたら?というコンセプトです。
 あくまでIFルートですので、話数も少なめの予定です。
 あらかじめご了承下さいますようお願い申し上げます。


IF:feat.東 夕貴
IF:俺はただ東へ向かう


 今日の俺は疲れていた。

 一、二限の授業の後、たまたま残ってたところを教授に頼まれて次の講義に使う資料運び。

 しかも教授の長話に付き合わされて昼飯食い損ねた。教授と仲良くするに越したことはねぇけど、流石に昼食えないのは困る。

 

 

「腹減った……」

 

 

 さてどうしたもんか。外のベンチに座って考える。

 今の時間は1時半。うちの学食は2時には閉まる。

 今から学食というのも、担当のおばちゃん達に悪い気がする。

 

 かと言って外食……大学構内から出たくねぇ。

 こないだ知り合いっぽいやつがメスガキに手を引かれていたのが脳裏にチラつく。

 

 

「……チッ」

 

 

 その手を引いて行った事象(メスガキ)に苛立つ。

 そいつに声をかけてやれなかった自分に苛立つ。

 誰が悪い訳でもなく、ただそういう事象が起きているだけとは分かっていても、苛立ちが抑えきれずに舌打ちが鳴る。

 

 そういえば前に、お前はいつも眠そうな目だなんてダチには言われたっけか。

 今の俺は、どんな目をしてるんだろうな。

 鏡を見るのが嫌になったのはいつからだ?

 そんなどうでもいいことを考える。

 

 

(……考えるな、考えるな、考えるな……)

 

 

 メスガキ事象のことなんて考えても無駄だ。

 そんなことをしても俺の環境は何も変わらない。

 なら考えない。考えないで、これからどうするかを模索するべきだ。

 そう自分に言い聞かせることで、辛くて苦しい現実から時間稼ぎが出来る。

 

 

(……助けてくれ)

 

 

 俺はいつまでこんな世界で生きていかなきゃいけない?

 この世界から出ていく方法はないのか?

 俺を取り巻く全てが、俺を追い詰めるためにあるんじゃないかとすら思えてくる。

 

 

(誰か、助けて、くれよぉ……)

 

 

 疲れと苦しさから、気持ちの悪い本音が胸の渦巻く。

 馬鹿馬鹿しい。誰が信じるってんだよ、こんな状況。

 

 仲がいい……いや、仲が良かった友人の顔が思い浮かぶ。

 テメェの都合で離れていった癖に、都合のいい頭していると自嘲する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───おや。おやおやおや、随分久しぶりじゃあないか」

 

 

 項垂れた俺の頭に影が差す。

 誰だよ、今の俺に構うやつなんかいんのか……?

 そう思い顔を上げると、懐かしい顔があった。

 

 

「……東か」

 

「まったく、久しぶりに交わした言葉がそれかい?散々僕を無視して回っておいて」

 

「……わりぃ」

 

 

 東 夕貴。

 俺の、大学に入ってできた初めての友人。

 学外で吐いて倒れてたところを助けてくれた、友達思いな男。

 

 ───『大人』の疑いがある、友人。

 

 

「ここ数か月随分……いや、もうこれ以上は言うまい」

 

「……言いてぇこと、山ほどあんだろ。聞くよ」

 

「バーカ。そんな顔して言う言葉じゃないよ。鏡見る?」

 

 

 いらねぇ、とだけ伝えて突っ返す。

 こんな時にあれだけど、手鏡持ち歩いてんのかこいつ。

 女子か。

 

 

「……なぁ、今は関わんねぇでくれねぇか」

 

「はぁ?そんな余裕のない顔でどこ行こうって言うのさ」

 

「分かんねぇ。何も、分かんねぇ、けど」

 

 

 煮え切らねぇことは分かってる。

 東の言う通り、今の俺には全く余裕がねぇ。

 

 だけど、誰かに頼ることもしたくねぇ。

 誰かを信じた結果、そいつがこの世界の法則に従って無様を晒すかもしれない。

 友達から距離を取ったのだってそうだ。

 さっきまで友達だと思って話してたやつが、次の日にはどこともしれない路地や陰に消えていくかもしれない。

 

 東がそうなるのは、絶対に見たくねぇ。

 幼稚な現実逃避なのも分かってる。

 それでも目の前で起こるよりは、ずっとマシだから距離を取る。

 

 

「あのねぇ、志賀。君が何を悩んでいるのか知らないけどさ」

 

「……」

 

 

 東が俺の隣に座る。

 脚を組んで人差し指を立てて、つらつらと自慢げに語りだす。

 

 

「僕はこれでも、試験じゃいつも上位でさ。言うなればすっごい頭いいんだよ?」

 

「……その発言が頭悪そうだけどな」

 

「うるさいっ!とにかくっ!困ってるなら頼れって話っ!」

 

 

 あぁ、そうだ。

 こいつはそういう顔する奴だった。

 

 

「だいたい、友達が困ってる時に見過ごすなんて、そんなのありえないだろう?」

 

「話したくないのは分かったよ。なら聞かないでおいてあげるからさ」

 

「……だからさ、また友達しようよ」

 

「無視とかされるの、結構寂しかったし、さ」

 

 

 困ってるやつを見過ごせない、優しい奴だったな。

 

 

「……あー!それにしてもお腹空いたなー!誰か友達に無視されて傷心な友人にご飯奢ってくれる人はいないかなぁー!」

 

「何言ってんだこいつ」

 

 

 何言ってんだこいつ。

 そんなやついるわけねぇだろ。

 

 

「おーごーれーよー!友達寂しがらせたんだから当たり前だろぉー!」

 

「……ったく、しょうがねぇなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっははははっ!ほーらー!飲ーめーよぉー!」

 

「あぁぁぁぁめんどくせぇよお前ぇ!!酒癖悪いなら先に言えよマジでぇ!!」

 

 

 どうしこうなった!どうしてこうなった!!

 俺はただ昼飯食ってる時に「そういや最近飲みに行ってねぇな」って言っただけなのにッ!

 

 そしたら『じゃそれも奢りでいいよ』とかこいつが抜かしやがって。

 まぁ今までの行いの分返すと思えばいいだろ……とか思った俺が浅はかだったよ畜生がぁ……!

 

 

「どうせぇー、僕に隠れて男でも作ってたんらろぉー!?今まで何してたか吐けぇー!」

 

「それを言うなら女だろ……。あと先に吐きそうなのはどう見てもお前だぞ」

 

「僕ぁ酔わないんだよぉ!」

 

「うぜぇぇぇぇ……!絡み酒かよこいつ……」

 

 

 大誤算だ。こいつの酒癖を知ってるなら絶対に居酒屋には来なかった。

 幸いなことに今座ってるのは半個室。

 背もたれの壁が高くなっていて他の個室は見えなくなってる。しかも廊下側はカーテンがある。

 すなわち、このバカの醜態は人目に晒されないし、喧騒に紛れて何言ってるかも聞かれない。

 それだけは東にとって不幸中の幸いかもしれない。

 

 

「僕というものがありながらぁ!どこの誰にうちゅちゅを抜かしてぇ!」

 

「お前は俺のなんなんだよ。ただのダチだろ。ほら水飲め」

 

「んくっ……ぷはぁー!僕ぁねぇ!君がぁ教室から出てく時ねぇ!ねぇ!いーっつもさびしそーにしてるのを心配してねぇ!」

 

「分かった分かった、悪かったと思ってる……」

 

「わかってなぁーいっ!」

 

 

 もうどうすんのが正解なんだよこれ。

 酒癖がおかしい奴は先に酔うのが正解(正解ではない)なんだがこいつ酔うのが早すぎる。

 まだ二杯目だぞ。しかもウーロンハイしか飲んでねぇ。

 

 

「君はいっつもそうだぁ!友達思いな癖にぃ、デリカシーってもんがないよぉ!」

 

「それ今言うことか?大体男同士にいるもんじゃねぇだろ」

 

「カッチーン!」

 

「自分で言うのか……」

 

 

 俺の言葉の何が気に食わなかったのか。

 それを考える間もなく、東がおもむろに席を立って俺の隣に座る。

 

 

「なぁーなぁー!ほんとにぃ?何にも分かんないのかぁい!?」

 

「何がだよ……。ああいや、心配かけたのは悪かったって」

 

「そこじゃなぁーいっ!」

 

「ハァ?」

 

 

 酔っぱらいの思考回路はもう何も分かんねぇよぉ……!!

 もうあれか?さっさとお勘定済ませて出てった方がこいつの為なんじゃねぇのか?

 

 そう思ってた矢先、東が唐突に来ているYシャツのボタンを目の前で外しだす。

 

 

「上等だぁ。見れろよぉ……!」

 

「おいやめとけやめとけ。いくらお前でもそんな趣味俺には───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……じゃーんっ!ほらぁ!ちゃーんと見ろぉ!僕だってブラくらいつけてんだろうがよぉ!」

 

 

 脳が、思考を止めた。

 

 俺の目には、薄いピンクの、───

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!?バカッ!!隠せ隠せ隠せッ!!」

 

「ほぶっ」

 

 

 脱いでいた上着を頭から被せて東を覆う。

 周りの、そして俺の視界に入らないように。

 

 急いで周りを見る。

 が、さっきも言ったがここは半個室。

 座席で立ち上がりでもしなければ覗かれる心配はいらない。

 ……だが、分かっていても心臓に悪い。

 

 

「は……?え……?いや嘘だろ……」

 

 

 信じたくない。

 え、俺ってそんなに鈍いことあるか?

 だって、だってこいつとはもう一年近い付き合いがあって。

 

 

「え……?じゃ、じゃあ俺は今まで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し、考えた。

 

 

「女……女ァ!?!?!?」

 

 

 クソバカ過ぎるだろうが俺ェ!!

 何が『大人』だよッ!何が『メスガキ』だよッ!!

 俺が勝手に疑心暗鬼になってただけってことじゃねかよぉーっ!!

 

 

「あぁぁぁぁぁ……マジで最悪だ俺……。トリプルで最悪だ……」

 

 

 友人を勝手に疑って勝手に離れたこと。

 その友人の性別を一年間勘違いしてたこと。

 挙句の果てにそれを本人の与り知らぬ所で、しかも嫁にいけないような形で知ってしまったこと。

 

 

「ヤバいヤバいヤバい……!」

 

 

 脳裏からさっきの光景がチラついて離れない。

 薄いピンクに、大きくこそないが確かにある膨らみ。

 真っ白な肌に映えるピンクが焼き付いて───

 

 

(考えるな、考えるな、考えるな……!!)

 

 

 それのせいか、酒のせいか、アルコールが入った頭では分からない。

 だが頬が熱い。

 心臓がバクバクと音を立てて周りの音が聞こえない。

 

 

「……?」

 

 

 さっきから上着を被った東がしゃべらない。

 細心の注意を払って顔だけ出してやると……

 

 

「すぅー……すぅー……」

 

 

 勢いよく被せたせいか、そのまま勢いで俺の太ももの上に頭を乗せたらしい。

 そして、そのまま寝やがった。

 

 

「……どうすりゃいいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

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