無様屈服ワンちゃんばかりのこの世界で俺は巨乳好き   作:飛び回る蜂

20 / 29
西へ東へあたふたと

・

 

 

 

「……んぅ……眩しぃ」

 

 

 ぼんやりとした視界、頭。

 起きてすぐに僕が感じたのは、布団の温かさだった。

 

 

「あれぇ……昨日はぁ……」

 

 

 昨日は……どうしたんだっけ。

 なんか久しぶりに志賀とお酒飲もうって話になって……

 

 

「いたたた……うぅ、頭が……」

 

 

 ダメだ、ズキズキと痛む頭で考え事なんかするもんじゃない。

 とりあえず水でも飲もうと体を起こす。

 

 ……が。

 

 

「……へ?ここどこ?」

 

「俺の家」

 

「んひぃっ!!」

 

 

 意外っ、それは横っ!まったく気づかなかったっ!!

 目が覚めて見覚えのない部屋だった困惑も相まって人がいることに全然気づかなかったっ!

 座布団に座って呆れた目で見ている志賀はため息を隠そうともしない。

 

 

「なっ、ななななんでっ!?」

 

「おめーが酔いつぶれたからだろ。それに東ん家の場所知らねぇし」

 

「どっ、どどどどうして!?」

 

「ほっとけねぇだろ。店の人にも迷惑かけちまうからな」

 

 

 言っててあれだけどよく伝わるねっ!?

 ってそんなこと言ってる場合じゃないっ!

 だって、だってっ!酔って同級生の男子の家に……っ!!

 

 

「……なぁ東」

 

「なっなにぃっ!?」

 

「声裏返ってんぞ。……昨日のこと覚えてるか?」

 

 

 昨日、昨日……?

 大学出て、家帰って、着替えて飲みに行って……

 

 

「……お店入った頃から、覚えてない」

 

「まぁじかぁー……」

 

 

 え、なに怖い怖い怖い。

 なんで言い淀むの。なんで顔を手で抑えてるの?

 

 

「先に言っとくけどお前が思ってるようなことはねぇぞ。俺は床に座布団とクッション敷いて寝た」

 

「オイそれどういう意味だよ」

 

「そういう意味だよ」

 

「広義的解釈ができる言葉でごまかすのやめろぉ!不安になるだろぉっ!?」

 

 

 クソォ…なにがあったんだ昨日の僕ぅ……!!

 で、でもひとまず運んでくれたことにお礼言わないとだよね。

 ここがどの辺か分かんないけど、大変だったろうし。

 

 

「その、運んでくれてありがとう。大変だったろ?」

 

「いや別に。軽かったしな」

 

 

 僕が重いなんてことは万に一つもないけど、それでもお礼は言わなきゃ。

 すっかり忘れてた、僕お酒に弱いというか、耐性がほぼ0だった……

 

 

 ……いや待った。

 ここ、志賀の家だよね。

 ここまで酔いつぶれた僕を運んだんだよね?

 

 服……変わってない。まぁ当然は当然だね。

 この感じだとシャワー……は、浴びてない。ちょっと気になる。乙女的に。

 

 

 

「……しが」

 

「……」

 

「その、さ。僕が、その……」

 

 

 うぁ、えぇ、なんて聞けば……。

 なんかほっぺたが熱くなってきた気がする……!!

 

 

「単刀直入にき、聞くからね?その、さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見た?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺は悪くねぇ!!」

 

「開き直りやがったなぁ!?」

 

 

 こっ、こいつぅ!!

 乙女の秘密を垣間見やがったくせにっ!言うに事欠いて『俺は悪くねぇ』だとぉ!?

 

 

「あんなんどう避けろってんだよッ!またバカやってるよとしか思わねぇだろ普通ッ!」

 

「避けるも何も目を逸らすとか……いや待て待て待て聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ。てことはなにか?君はあれか?僕が自発的に教えたとでも言いたいのかっ!?」

 

「むしろ俺は隠したんだよ……ッ!俺だってお前が飲んでる真っ最中にいきなり脱ぎだすとか思わなかった……ッ」

 

 

 嘘、だろ。

 僕が、お酒に酔って脱いだってこと……ッ!?

 この僕が……ッ!?

 

 

「いや酒に弱いことは自覚しとけよ」

 

「うっさいっ!そんなことより責任取れよぉ……うぅ……」

 

 

 ……冷静に振り返ると、僕は何を言ってるんだ。

 酒の席のことを責任を取れと、むちゃくちゃにもほどがあるよ。

 うぅ、色んな恥ずかしさがこみ上げて顔が熱いし涙が出そうだ……っ!

 

 

「……ああくそっ、分かった。俺にできることならする」

 

「……ほんと?」

 

 

 僕が言うのもなんだけど、志賀はちょっと人が良すぎると思うんだよ。

 詐欺には合わないだろうけど、簡単な嘘だったら引っかかっちゃいそうな気がする。

 ぅ、ここにきてなんだか付け込んでるみたいで罪悪感が出てきた……。

 

 

「女泣かせたんだからそりゃまぁ、責任取らねぇとだろ」

 

「むぅ……」

 

 

 律儀な男だよ本当に。

 酒の席でのこと、流したって責めはしないのに。

 ……でもちょっと後ろ向きな感じがマイナスポイントだ。

 

 

「い、いや。僕もずっと分かってて隠してたし。これまで通りにしてくれれば……それで……」

 

「……お前がそういうんならあんま言わねぇけどよ。ほんとに悪ぃけど、俺にもどうしたらいいか分かんねぇし……」

 

 

 そう言うとバツの悪そうな顔を上げて、何かを思い出したようにテレビ前の棚を漁りだした。

 ガチャガチャ音がするけどあれは……コントローラー?

 

 

「詫びになるかは分かんねぇけど、面白れぇゲームならあるぜ。せっかくだしやってかね?」

 

「……ふーん、面白くなかったらどうしてやろうねぇ」

 

「そんときゃ奴隷でもなんでもなってやるよ」

 

「言ったなぁ?」

 

 

 ふふん、これでも僕はゲームやりこんでるんだよ?

 やってた機種は古いけど……よく見たらこの家にあるのも結構古いなっ!?

 

 

「対戦とRPGどっちがいい?」

 

「RPGがいいな。うわぁ、ゲームするの久しぶりだよ」

 

「おっ、いいね。んじゃこれにすっか、メタルマックスリターンズ」

 

「これみよがしに見える聖剣伝説やロマサガを勧めない当たり自信があると見た」

 

「紋章の謎でもいいぞ」

 

「名作ラインナップだなぁ……」

 

 

 今やVCがある時代でこれほどのソフトを管理してるなんて正気の沙汰とは思えない。

 これゲームソフトだけでも相当な価値があるんじゃ……!?

 

 

「まぁ……なんだ。少しでも楽しんでもらえたら、嬉しいんだがよ」

 

 

 なんというか、なんだその、いじらしい表情はよぉ!?

 こんなっ、こんなの許すしかないだろうがよ……っ!

 

 

「……まったく、気にしないでいいよ。友達だろ?」

 

「ありがとよ。……っし、早速始めっか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういやこれのキャッチコピーってなに?竜退治はもう飽きた的な」

 

「『首は貰った』。今作から賞金首狩りが更に捗るぜ」

 

「なぁこれ女子に勧めるゲームじゃなくない?」

 

「め、名作なのは間違いねぇから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 志賀の家でゲームを満喫した次の日、僕は相も変わらず登校する。

 講義に出るのは大学生の義務であり、権利である。

 したがって講義に出るのは当然。

 

 

(だるい~~~~~~)

 

 

 すごくだるい。

 結局昼前から夕方までぶっ通しでメタルマックスしていたせいでその余韻が抜けきらないからかな。

 講義に出ている今、ゲームがしたい気持ちでいっぱいで全く身が入らないよ。

 志賀はこの選択単位取ってないし、退屈さに拍車をかけている。

 

 これはあれだな、凄い嫌な予感がする。

 ここから成績と単位を落としまくる最悪の未来な予感。

 そう考えると少しは気持ちに喝も入る。

 

 にしても志賀にあんな誠実な一面があるとは。

 最近まともに話してなかったし、どんな風になってるかと思えば、存外普通だったし?

 

 

(……っかしいなぁ、ここしばらくは一人で勉強してたはずなのに)

 

 

 こうして一人で講義を受けているとなんか、調子狂う。

 まるで気分は小学生だ。

 なんだろうな、久しぶりに会えた友達と早く遊びたい、そんな気持ちが先走っている気がしてそわそわしている……!

 

 これ終わったら学食で集合予定だし、それまで気を張らないと。

 ……よっし、頑張るぞっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───つーわけでさっき知り合ってレポート教えてくれた。先輩、自己紹介どーぞ」

 

「一ノ瀬愛佳ですっ!よろしくねっ!」

 

「キッツ」

 

「表出ろやコラ」

 

 

 ……は?

 

 

「は?」

 

「えなんでキレてんの怖い怖い怖い」

 

「あんたがなんかやったんじゃないの?」

 

「今のやり取りでなんかやったように見えんのかよ先輩乙」

 

「いい加減にしないとぶつわよっ!?」

 

 

 ……面白くない。

 僕が、一年かけてやっと友達に戻れたのに、平然とやり取りしてる。

 

 

「な、なぁ、なんか俺東の機嫌悪くするようなこと言ったか?」

 

「べっつにー。僕が必死にノート取ってる中他の女子生徒にうつつ抜かしてたなんて気にしてないし?」

 

「語るに落ちてない?なにこのウルトラかわいい子。友達?」

 

「かわいいかはさて置き友達。……東、俺はこれが女子だから関わってるわけじゃねぇぞ」

 

「どうだかねぇ……」

 

「これ?この後輩今私のことこれって言った?」

 

 

 どーせ男なんてみんなこういう、小さくてなんかかわいい人に庇護欲を抱くんだ。

 悔しいだろうが仕方ないんだ。

 

 

「僕みたいな中性的なのはニッチ層にしか受けないんだぁ……!!」

 

「そんなことないと思うんだけどねぇ。東ちゃんって言ったっけ、こんなに素材がいいのに……」

 

「……こいつが女だって、つい昨日まで気づかなかったやつがいるんですよ。俺なんですけど」

 

「はぁっ!?嘘でしょこんな可愛い子をぉ!?」

 

「訳あって最近までこいつとの交流絶ってまして。いや誰が悪いかっつったら100俺が悪いんですけど」

 

「ふぅーん」

 

 

 ムカつく、ムカつく、なんかムカつく。

 僕より後から出てきて、僕と違って『異性』っていう認識をされてるのもそう。

 

 

 そしてなにより、その事にデレデレもせず普通に過ごしてるこいつっ!!

 理屈もないし理由も思い浮かばないけどなんか腹立つぅ!!

 

 

「それはもうあれね。恋ねっ!」

 

「「なにいってんだこいつ」」

 

「先輩への敬いとかない感じ?あと東ちゃんは初対面よねっ!?」

 

「そんけーしてまーす」

 

「初めまして僕は今不機嫌です」

 

「二人ともクセが強いのよ……」

 

 

 一番クセが強い人が何言ってんだろう。

 というかフリル多っ。春先とはいえ暑いでしょ絶対。ある意味尊敬する。

 

 

「んまぁあれだ。言うまでもねぇかもだけど、俺はお前と友達やめたわけじゃねぇからな」

 

「……乗り換えようとしてるわけじゃない?」

 

「友達を乗り換えってどういうことだよっ!?」

 

「友達グループの乗り換えってなんか生々しくて嫌ね。サークラして次行くヤバいやつみたいで」

 

「志賀は……なんかナチュラルサークラ感あるよね。一人と仲良くなってそのままズブズブ周り巻き込みそうな」

 

「うわタチ悪っ」

 

「サークラっぽいって悪口なの分かってんのかテメー」

 

 

 ……あれ、気づいたら普段通りみたいな空気になってる。

 むむむ。この先輩、さては結構志賀と似たタイプと見た。

 ほぼほぼ初対面であろうにこの連携の良さ、相性の良さを感じてしまう。

 

 

(そこにいたの、僕だったのになぁ)

 

 

 なんだかちょっぴり、寂しい気もする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、東ちゃんって呼んでもいい?」

 

「いやです。志賀を取ったので」

 

「えっ」

 

「あっ。志賀っ、今のは」

 

「……あ?わり、昼飯のこと考えてた。なんか言ったか?」

 

「クソボケがよ」

 

「ちょっと人生やり直してきなさいよ」

 

「なんでそんなボロクソ言うん?」

 

 

 

 

・

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。