無様屈服ワンちゃんばかりのこの世界で俺は巨乳好き   作:飛び回る蜂

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東雲はもう近くに

 

 

 

 

「ふーんふーんふふふふーん♪」

 

「浮かれてんなぁ」

 

「もう無理……死んじゃうぅ……」

 

「先輩はもうちょい体力つけた方がいいと思います。……おっ、見えてきた。思ったより近ぇな」

 

 

 浮かれていた。

 それはもう、初めて遊園地に来た時くらいにテンションぶち上がってた。

 フロア熱狂だった。

 

 

「とーちゃっくっ!あっ!鍵開けといたから!荷物は入ってすぐの部屋に置いといてねっ!」

 

「テンションたけーなぁ」

 

「おもちゃ買ってもらったワンちゃんみたい」

 

「次俺の前でワンちゃんって言葉使ったらいくら先輩でも捻じりますよ」

 

「後輩の地雷が所在不明すぎる件っと……」

 

「クソスレ立てんな」

 

 

 別荘の傍に沢があることは伝えてあるからか、今日は僕含めて全員軽装。

 先輩も……いや、フリルのたくさん付いた服は着ていない。

 白ワンピースがよく映えていて、先輩がいつもとは違う清楚感を出している。

 ……けど、それ以上に主張が激しいそれが目に付く、付いてしまう。

 

 

(でっか……)

 

 

 なん……なんだあれ。でっか。

 先輩は小さくてなんかかわいい人だと思ってたのに、先輩の先輩はでかくてなんか凄いものだったよ……

 

 

「……」

 

 

 ギャイギャイしてる二人に背を向け、自分の胸に触れてみる。

 硬い。いや硬くはない。

 ただあれと比べると、比較するまでもなく、硬い。

 ペタ、ペタとすら聞こえてきそうですらある。

 なぜか、無性に泣きたくなった。

 

 

「……まだ、まだだから。これからだからね、うん」

 

「なに立ち止まってんだ?」

 

「うひぃっ!!変態!!」

 

「お前こないだからなんなの?社会的に人を殺してぇならそう言えよ」

 

「後輩そういうところあるわよねぇ。社会的制裁を受けやすいというか」

 

「ねぇよっ!つーかあってたまるかよっ!!ったく、これから掃除だってのにお前らはよぉ……」

 

 

 ドサリと荷物を降ろし、肩をグルグル回している。

 誘った時から思ってたけど、なんか志賀は結構協力的だなぁ。

 こういうのめんどくさがりそうなもんだけど。

 

 

「随分やる気じゃないか。どういう風の吹き回し?」

 

「ん?別に理由はねぇよ。今日が楽しみだったっつーのはあっかもしんねぇけど」

 

「おぉ?じゃあ今日の働きぶりは期待してよさそうだねぇ」

 

「おうよ。水道と電気は通ってんだろ?さっそく水汲んでくるわ」

 

 

 そう言うとバケツを二つ持って行ってしまった。

 な、なんだ。今日は妙に協力的で気持ち悪いなぁ。

 普段だったら「っしゃ、ゲームしようぜ」とか言うはずなのに。

 

 

「東ちゃんの頭の中であの後輩がどういうキャラなのか。とっても気になるわね」

 

「んひぃっ!せ、先輩までっ!後ろから急に来ないでもらえるかなっ!?」

 

「急に、後輩達が、かわいいことしてたので」

 

 

 いひひっ、と笑う先輩、控えめに言って絵になる。

 白いワンピースも相まって、まるで存在しないはずの青春時代のワンシーンを切り取ったような美少女に見える。

 見えるだけ。

 

 

「こういうの業者さんに頼むもんじゃないのぉ?」

 

「普段はそうなんだけどね。でもせっかくの夏だし、みんなと一緒に過ごしたいって思ってたから」

 

 

 実は父さんにはちょっと無理言って開けてもらっているんだよね……

 懇意にしてる業者さんに今から断り入れるの大変なんだぞーって怒られたりもした。

 それでも許してくれるあたり、自分で言うのもなんだけどそれでいいのか。

 

 

「いい子か。……ん?ちょっと待って。一つしつもーん」

 

「はーい。なんだい?」

 

 

 手を挙げて質問するその姿は幼女にしか見えない(一部除く)。

 しかし質問?今更何を質問するというんだい。

 

 

「持ち物の中に着替え一式って言ってたわよね?」

 

「言ったよ。汚れたらお風呂入りたいだろう?」

 

 

 当然だろう?これから大掃除して、少し休んだら沢で遊んだりご飯食べたりするんだから。

 

 

 

 

 

「今日ここで泊るの?」

 

「え、うん。みんなでおしゃべりしたり夜更かししたい」

 

「かわいいか。……あのさ、確認なんだけどさ」

 

 

 

 

 

 

 

「志賀、男。私、東ちゃん、女。オーケー?」

 

「? オーケー」

 

「オーケーじゃねぇのよ。なにもオーケーな要素ねぇのよぉ!!」

 

 

 先輩が急に発狂した。

 なに?何が問題だっていうのっ!?

 友達とお泊りなんて誰でもしてることだよ!?

 

 

「おバカっ!このかわいい生き物っ!!そのままでいてっ!!」

 

「おいおいおいなにくっちゃべってんすか。オラ水汲んできたから掃除すんぞ」

 

「はいはーい。部屋はそんな多くないからちゃっちゃと手分けしてやっちゃおうか」

 

「オーケーじゃねぇのよぉ……えっ、これどうするべき?別室は当然としてもひとつ屋根の下よ?後輩達の倫理観どうなってんのぉ??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいお掃除しゅーりょーっ!着替えて遊びに行くぞーっ!」

 

「うーい」

 

「……そうねぇ!いきまっしょかぁ!!あー楽しみねぇー!!」

 

「どしたんすか急に」

 

「もうヤケクソよぉ!!ふっつぅーに楽しむって決めたのよぉっ!!」

 

「はぁ、そっすか。よくわかんねぇけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば晩御飯どうするのぉ?なにも買ってきてないけど」

 

「あっ」

 

「バカがよ……」

 

「冗談だって。カレーの材料買ってきてあるから作ろっか。みんなで」

 

「東お前料理できんのか?」

 

「努力はするっ!」

 

「……はい、そこに座っててちょうだいねぇ」

 

「なんでぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふふふふふふ、マズいな笑顔が止まらないや。

 楽しすぎるなぁこれ!

 

 

「……人が洗いもんしてるときになにニヤついてんだてめ」

 

「じゃんけんだから仕方ないよねぇ。いやごめんって、そんな目で見ないでくれよ」

 

 

 ジト目の志賀がシンクから顔を上げてこっちを見ている。

 僕はそれを横目に悠々自適にソファでくつろいでいるってワケ。

 さっきまでエプロンをつけてガチャガチャと洗い物を進めていたが粗方片付いたのかな。

 ……エプロン似合うなぁ。

 

 

「作るのも片づけすんのも嫌いじゃねぇしいいけどな。先輩は?風呂?」

 

「だよ。……あっ、覗くなよ」

 

「ハッ、金積まれたって行かねぇよ」

 

 

 お、思ったより強烈な拒絶。

 んん?あんまり人のこと悪く言う奴じゃないはずなんだけどな。

 ちょっとその辺聞いてみるか。

 

 

「嫌いなの?あたり強くない?」

 

「……嫌いってわけじゃねぇ。レポートとか助けられてるし、すげぇいい人だよ」

 

「どうしてかって聞いて大丈夫なやつ?」

 

 

 食器を拭く手を止めて考えこんでいる。

 悩んでいるし、使う言葉を慎重に選んでいるといったようにも見える。

 

 

「あの人は俺にとって重要な……なんて言やぁいいんだろうな、証明?証拠?みたいなもん、だと、思う」

 

「証明ぃ?なんのさ」

 

「俺が……まともだってことの、だと思う。すまねぇ、どういえば伝わるか……」

 

 

 吐き捨てるように言う志賀の顔はひどく歪んでいる。

 泣きそうとも、怒っているとも、悩んでいるとも取れる表情だ。

 

 僕は一度だけこの表情を見たことがある。

 あの時、ベンチに座って項垂れてた君に声をかけた時だ。

 

 

「誤解されたくねぇんだが、友達やってんのは自分の意思だ。それは」

 

「分かってる分かってる。打算だけで人付き合いできるほど君は器用じゃないだろ」

 

「……うっせぇよ」

 

 

 気配りできるくせに、変なとこで不器用なんだからな君は。

 しかし証拠と来たか。存在そのものが証拠……。

 この男が幼児性愛で悩んでいるとは考えにくい。

 もしそうだとしたら僕にその片鱗を打ち明けたりはしない。

 いやされても困るけども。

 

 

「ここに誘ってくれたこと、本当に感謝してる。……ここは、静かだ」

 

「静かなのは大事なこと?」

 

「大事だ。俺にとっては」

 

 

 結局よく分かんないな。

 この間は人は多い程いいとか言ってたはずなのに、今は静かなのがいいという。

 

 引っかかるのは、まるで誰かから逃げ回ってるみたいな意識の割き方ってことくらいか。

 流石に借金してるってわけではないだろう。バイトしてるし、そもそもお金借りるほど生活に困ってるわけじゃないだろうし。

 ……ないよね?

 

 

「心配すんな、今は割と持ち直してるからな。……ケリもつけてぇと思ってたところだしな」

 

 

 話ながら、いつの間にか洗い物を拭き終わっていたみたいだ。

 するとつかつかと歩いてきて、おもむろに僕の隣に座る。

 手には……あっ、こいつしれっと冷蔵庫のお酒持ってきてやがる。

 

 

「あん時お前に声かけられなかったら多分、俺はあそこで終わっちまってたかもしれねぇ」

 

「縁起でもないこと言うなよ……」

 

「わりぃわりぃ。でも、ありがとうな」

 

 

 改めて言われると、なんか、恥ずかしいなぁ……!

 僕は別に何もしてないからなおさらに。

 

 にしても人に感謝を述べながら飲む酒はうまいか?

 見たことないラベルだ、さてはこいつ持ち込んで早々に冷蔵庫入れてやがったな……!?

 

 

「……僕も飲む」

 

「やめろ。お前が俺に何したかわかってねぇのか」

 

「覚えてないからノーカン!!」

 

「俺が覚えてんだよぉっ!!」

 

 

 ひゃぁーっ!ガマンできねぇ、お酒だーっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいお湯でしたぁーっとぉ。次どっちぃー?」

 

「だぁーかぁーらぁー!君はぁ、僕の魅力をなぁんにもわかってなぁいっ!!」

 

「っだぁぁぁ!!分かったから手ぇ放せっ!!つか組み伏せようとすんじゃねぇ!ブラウスのボタン外れてんだよ前開いてる隠せぇぇぇ!!」

 

「んふふふ、なに?気になっちゃう?気になっちゃうの?しょうがないなぁ、君ならまぁ……いいよ?」

 

「いいわけあるかとっととしまえやバカがぁ!!……あっ先輩!助けてください襲われてるんですっ!!このままだとソファから落っこちちゃう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「めんどくさ。寝ていい?」

 

「隠しもしねぇよこの幼女」

 

「うわっ、先輩でっか。ヤバ……」

 

「ふふん、触ってみる?」

 

「うん」

 

「……疲れたんで俺は寝ます。おやすみなっさい」

 

「「おやすみなさーい」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「同級生の、首から腹にかけてまで真っ白な肌見てさぁ」

 

「寝れるわけなくね?」

 

 

 

 

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