無様屈服ワンちゃんばかりのこの世界で俺は巨乳好き 作:飛び回る蜂
風の少ない快晴。気温も秋口らしく快適に涼しい。
絶好のアウトドア日和であるっ!
「やっと着いたね河川敷っ!二人は……まだ来てないなぁ」
「そりゃあ僕ら車で来てるからね。先に準備だけでも済ませておこうか」
兄さんが後部座席に積んでた折り畳み椅子や机を手際よく組み立て始める。
一時期アウトドアグッズを集めるのが趣味だったらしくて、やたらとこの手のグッズを持っている。
昨晩はむしろ僕よりウキウキして道具を揃えていたんじゃないかな?
22時ごろに「積める物は車に積んじゃおうか」とか言い出した時はやる気すぎるとちょっと引いた。
そんな準備を始めて紙皿やコップを並べ終わったころ、遠くから手を振って二人が現れる。
「早ぇって、まだ約束の時間まで20分あんぞ」
「先んずれば人を制すってね」
「何を制すつもりなのぉ……?あっ、こんにちはお兄さん」
「こんちはっす。今日はよろしくです」
二人共意外なことにしっかり動きやすい軽装だった。
志賀は動きやすいカーゴパンツにYシャツ、先輩は半袖のシャツだけど相変わらず胸元にはフリルがたくさんついている。
えっ、先輩のスカート分厚っ。流石に暑くないそれぇ?
「こんにちは。いつも妹がお世話になってます、兄の
((最も華麗な技を持つ男……))
(この二人が何考えてるか手に取るようにわかるな……)
ゴリ押しで参加させてしまったのは僕なのに、それをおくびにも出さず兄さんは綺麗な礼をする。
頭がナギッしてる2人はまず間違いなく違う人物を連想していると思う。
それにしても少々かしこまりすぎな気がする。こういうのを見ると二人はきっと……
「いや全然。んで、俺らとしては東……夕貴さんがゴリ押しして誘ったんじゃないかって疑ってるんですけど、どうです?」
「えっ。どうしてそういう風に思ったのか聞いても?」
「急な連絡ではありましたしぃ、多分東ちゃんのことだから志賀が男だって言ってなかったんじゃないかなぁと。だから不安で着いて来たかったんじゃないかなって」
「……夕貴?」
「以心伝心、友として誇らしいよ。これが日頃の行いって奴かなぁ!」
「褒めてないよ?」
嘘、今の褒められてるんじゃないの?うわ凄いジト目。
僕達の友情、その以心伝心っぷりに兄さんが感動する流れじゃなかったの!?
「ご安心ください、コイツは私に跪く為に生きてるので東ちゃんには指一本触れさせませんっ!」
「おう足でも舐めて差し上げましょうかボケが。初対面の人にかましていいジョークライン超えてんぞ。ちょっとは取り繕ったらどうですか愛佳さんやい」
「どうせお行儀なんて美味しいもの食べたらその内剥がれるのよ。なら初手から空気感掴んでもらう為にもトップスピードよ」
「掴ませる気ねぇだろ。トップスピードは腕ごと吹き飛ぶわ。……だが面白れぇ。ついて来れるか───?」
「……なるほど。面白い人達だね夕貴」
「でしょ?兄さんの周りにいないでしょ?こういう人って」
「うん。僕もこんな人達と友達になりたかった」
速攻で始まった二人の茶番を見て、兄さんの口から笑みがこぼれる。
さっきまでの心配はどこへやら、突然始まった掛け合いを笑顔で眺めてる。
「おっと脱線。何はともあれ俺らは大歓迎です。あと敬語とかも気ぃ使わなくていいんで、俺ら年下ですし」
「そうだそうだ。君ら相手に敬語使う兄さんなんて僕ぁ見たくないぞ」
「東に言われるとなんかムカつくな……お兄さんいるとまどろっこしいな、今は夕貴呼びでいいか?」
「私というものがありながら下の名前で女を呼ぶのねっ。か弱い乙女の純情を弄んで、ひどいっ」
「か弱い乙女はストⅤ時代から本田で俺を固め殺さねぇと思うんだよ」
おしゃべりしながらも二人が持ち込んだ荷物を傍に置き、忙しなく動き始める。
志賀は炭を置いて火を付け始めている。ガスバーナーである程度火をつけてうちわでバタバタと扇ぎ始めた。
一度火がつけば後は空気を送り込むのに徹した方がいいらしくて体力仕事になる。兄さんも志賀と代わりばんこに火を見てる。
僕は先輩に付いて食材の準備だ。お肉や野菜、海鮮まで持ってきてる!
「志賀がねー、せっかくなら輪切りにしたイカをホイルして焼きたいって」
「いいね、すごくいい。あれ?そのタッパーなに?」
「塩おむすび。バーベキューと言えば焼いたお肉、塩むすびじゃなぁい!お酒はお兄さんもいるし今日は無しで」
「お気遣いありがとう。ほんとに楽しみだなぁ、そう言えば僕バーベキューって初めてかも」
思えば家族でそういうのしたことないなぁ。
父さんも母さんも忙しくて兄さんと二人でいることが多かったから、火を使うようなことできなかったし。
兄さんも兄さんで家に友達呼んだりとかは少なかった。
友達いないの?と聞いたらい「い、いるよ!?」と食い気味に返って来て以来聞けてない。
聞いちゃいけない気がするんだ。
「ふふっ、なら今日は最高の一日にしないとねっ」
「頼りにしてまーす」
「そろそろ代わろうか?」
「うす、お願いします。網と飲み物用意しますね」
動き始めたら自然と男女に別れたのはまぁ、普通なことだと思う。
いや気軽にいいよとは言ったものの、初っ端友達の兄と二人っきりは結構キツいが!?
ずっと笑顔なのがかえって怖ぇ。何を考えてるかさっぱり分からん。
何の話題振りゃいいんだよ、先輩と違って社会人だぞ相手。
サブカルの話題は当たり外れあるし、無難な話題振っても進展しねぇし。
「志賀君って言ったね。夕貴から聞いてるよ、いつも仲良くしてくれてありがとう」
「えっ、いやいやこちらこそ」
「僕もあんまり口が回る方じゃなくってね。単刀直入に聞くけど、夕貴とどんな関係?」
ぶっこんで来たなぁ。そう来るとは思ってた。
いや今日どっかで聞かれるだろうなと思ってたけど早ぇよ!
一応答えも用意してはいたが、変に誤魔化したらめっちゃ怒りそうだなこの人。
「友達っすね。分からんところ教えてもらったり、面白いもん見つけたら共有するくらいには」
「ちょくちょく家にお邪魔してるって聞いたけど本当?」
「あー……本当っす。誓って手は出してません。俺には先輩、愛佳さんしかいないんで」
「
ヤベ、口が滑った。まぁいいか。
久しぶりに男同士で安心して話せる機会が来たんだ。多少本音吐き出したって構わねぇだろ。
本当に、安心して会話できる男っていうのも久しぶりだ。
「夕貴さんを蔑ろにしてるわけじゃないです。ただ、俺が人生か命掛けて誰かに尽くすとしたら、それは先輩だけなんですよ」
「家族でもなく個人かぁ……重いね?」
「仰る通りで。けど一生掛けて俺を肯定してやるって言ったのは向こうなんですよ。地獄も一緒に歩いてやるって言われたら、そりゃ惚れません?」
「……今、心の底から君が羨ましいと思ったよ」
「あげませんよ。あの人は俺のもんで、俺はあの人のもんなんです」
都生さんの顔には先程のニコニコとした笑顔はなく、どことなく哀愁を感じる顔になった。
今の所ちゃんと腹割って話せてる気がする。
ありがとう先輩。先輩のお陰っす、多分。
「いや僕も夕貴も顔いいでしょ?いいことだけど、そのせいでトラブルとかしがらみも多くってね。迂闊な事言えないんだよ」
「まぁド直球に言えば面以外見られることなさそうなくらい顔いいっすね」
「辛辣だなぁ!まぁそうなんだけど。いいなー、僕も一緒に幸せになりたいって人と添い遂げたいよ。どうやったら会えるの?」
「俺の場合は超レアもレアなケースなんで当てにしない方がいいっす。強いて言うなら運と忍耐ですかね」
言えねぇよ……おかしなパラレルワールドに閉じ込められた挙句そこで出会って心を救われましたとか。
書いてるレポートに文句つけられた挙句酔い潰されてゲームしたのがきっかけですとはさぁ……言えねぇよ。
「身も蓋もないなぁ。馴れ初めとか聞いてもいい?」
「男二人で火ぃ炊きながらするのがコイバナ!?他になんかあるだろ!?というか夕貴さんとの関係聞きに来たんでしょ」
「それはもういい、君を信じるから。教えておくれよー、真実の愛はどこにあるんだよー。あと友達になろう?敬語もいいよ、そこまで歳変わんないでしょ?」
「早い早い距離の詰め方エグいんすよ!いくらなんでも急接近しすぎだろ!」
しかも真実の愛とか言い出したぞこの男。心中お察しするが、俺に言われてもふっつーに困る。
それにこの口調といい距離感と言い、なんとなく東と似ててやりづれぇ!
こっちが素か?にしても悩みに直面するとダル絡みするところまで似なくてもいいだろ。
「僕だってコイバナしたいんだよ?でもさぁ、僕がそういう話題振っても『お前は困らないからいいよな』としか言われないんだよ。失礼じゃない!?」
「それは……ちょっと嫌っすね。都生さんにも未来のお相手の方にも」
「でしょ?いいことと同じくらい嫌なことも起こってるよ……あっ、そろそろ火着いた?」
「ん、炭パチパチいってますね。そろそろいけっかも。せんぱーい!」
「はぁーい。今持ってくわねぇ」
都生さんが今日の為に用意したという大きなテーブルに食材が乗っていく。
折り畳み式だってのに四人で囲むには十分なほど大きい。なんでこんなもん持ってんだ?
と思ったが運動会の時とかに使うテーブルに椅子かと思い当たる。
運動会、あんまりいい思い出がねぇなぁ……。
都生さんは結果がどうでもすげぇキャーキャー言われてたんだろうな。嫌そうなのが目に浮かぶぜ。
「んじゃ都生さんに音頭取ってもらいましょう」
「なんで?初対面が半分な上に発案者でもないよ!?」
「さんせー」
「さんせぇ」
「賛成、これが民意っすね」
「言うこと聞かない民衆を滅ぼす時が来たか。まぁいいや、僕もお腹空いたしささっとやろうか。じゃあ飲み物持って、今日という何でもない幸せな日に」
「「「「かんぱーい!」」」」
「しーがー!ご飯ばっかじゃなくてお肉食べなさいよぉ!」
「焼肉と言ったら白い飯でしょうが。俺は人間火力発電所だ」
「肉を!魚を!食え!減らないでしょっ!あっ都生さん人のおにぎりとか大丈夫な人……?」
「大丈夫。中は何も入ってないよね?」
「そこはかとない含みを感じるよ……兄さん……」
「都生さん意外と食いますね。肉取りますよ」
「ありがとう。普段外回りが多い体力仕事だから、食べれる時に食べる社会人の習慣だねぇ」
「兄さんは朝昼しっかり食べるけど夜はそんな食べないんだよ。食べる時はストレス抱えてる時だから分かりやすい」
「そういう事言わなくていいの東ちゃん。それにしてもモデルみたいな生活してるのね、すごぉい……」
「コソコソ……」
「何をコソコソしてやがる。つーか口で擬音言うとか……おまっ、酒はダメだっつったろ!隠れて持ち込みやがって!」
「い、いいじゃん!僕は兄さんの車で帰るもん!誰にも迷惑かけないもん!」
「そういう問題じゃねーから!ケアが必要な時点で迷惑に……あーっ!速攻で開けて飲みやがった!お前介抱すんのが誰だとっ!」
「夕貴……僕の前でお酒飲まないのに二人の前では飲むんだ……」
「都生さんそんなこと言ってる場合じゃないんだけど!?」
「くぁー……」
「やっぱりこうなんのかよ……先輩そっち持って。都生さん後部座席開けてもらって。放り込むんで」
「はいはぁい。んもー、東ちゃん飲むといっつも大暴走して電池切れちゃうんだから」
「ははは……妹がご迷惑おかけしてます……」
大満足、後大暴れした東を先輩が寝かしつけて宴も酣。
幸せそうにぐーすかしてる東を車に放り込み、さっさと後片付けに移る。
炭もトングでつつけばボロボロと崩れる、楽しい時間だっただけにあっという間だった。
楽しいな、何の不安も無い生活ってのは。後片付けまで楽しく思えてくる。
いややっぱ普通に面倒くせぇな……
「つっても紙皿紙コップに割りばし纏めたらもうあんまりやることねぇな。先輩そっちは?」
「……開けてないビール缶が4本あった」
「バカがよ……とりあえず持ち帰ってもらおう。いっすよね都生さん」
「うん。ひょっとして夕貴って外じゃいつもこんな感じなの?実家だと真面目というか……そんな感じなんだけど」
「ハメ外す時はいつもこうっすね。ゲームするときは高笑いとかしますよ」
「高笑いっ!?そ、想像できないなぁあの夕貴が高笑いなんて」
手際よく片付けていく中で不思議と、自分が笑顔だってことに気付いた。
別に楽しいことをしてるわけじゃない、むしろ楽しいことは終わった後だ。
なんだかな。日常を噛み締めるっていうのはこういうことなのかもしれねぇ。
そんなことを考えてたからか、ふと隣を見れば先輩がじっと顔を見てた。
「じー……」
「口で言うなや。なんすか」
「別に?楽しそうだなぁって」
にこにこと、何が楽しいのか俺の顔を見ては先輩も笑顔でいる。
かなりむず痒いが、不思議と嫌じゃない。むしろそのまま近くにいて欲しいとすら思ってる。
おかしいな。俺はこういうキャラじゃなかったはずなんだ。もっと硬派で……硬派?だった。
「先輩が近くにいると安心する」
「どうした急に」
「言葉にしておきたいんだよ。こんな当たり前が、当たり前に過ごせるんだから」
「そういうもん……そういうもんね。おっけ、私はずっと傍にいるから」
理解が早すぎるぜ先輩。そういうところ本当に好きだよ。
訳も分からんのになぜか笑いが出てくる。先輩も笑ってる。
幸せだよ、本当に。
「夕貴がはっちゃける理由が分かったよ。これはそうなる」
ジャリジャリと足音を立て、都生さんが歩いてきていた。
自分には当分回ってこないであろう玩具を見た子供の様な顔をしててちょっとウケる。
「都生さん。積み込み終わったんですか、早ぇ」
「慣れてるからね。そりゃこんな空気感の近くにいたらアグレッシブにもなるね。嫉妬で気が狂いそうだ」
「都生さんもいつか出会えますよっ」
「だといいけどね。しばらくは仕事と妹の世話で手いっぱいだよっと」
都生さんの車のドアが閉まる。残った食材と飲み物は東の希望もあって持ち帰ることにしてもらった。
こっちは徒歩なこともあってあんまり多く持って帰れないしな。
都生さんは東を連れて一度実家に戻るらしい。お酒との付き合い方には家族会議も辞さないという。
大正解だと思う。むしろ一人暮らしの男の家で酔い潰れたりしてた今までがおかしいんだ。
そこんところちゃんと相談してもらいてぇ。一応、一応な。
俺には先輩がいるわけだし間違いは起きないと思うが。
「それじゃ僕らは帰るよ。二人を乗せてあげられたらよかったんだけど……」
「荷物多いししゃーないっすよ。後部座席夕貴さんが寝て埋めてますし」
「ほんとごめんね……今度から夕貴が出先で潰れたら遠慮なく連絡してね」
「了解っす。また遊びましょ」
「今日はありがとうございました~!」
「こちらこそ楽しかったよ、またね!」
都生さんの車を見送りつつ、いくらかの手荷物を持って俺達も帰路に着き始めた。
「ちょい疲れたな。眠い」
「分かる。私も帰ってお風呂入ったらちょっと寝ようかな」
「飯食った後で身体に悪いとは分かってんだけどなぁ。この眠気に抗える奴は無条件で尊敬する」
「じゃあ一緒に寝ちゃう?私も家帰るのめんどいし」
「あー……いっすね、寝ちゃいましょう。不摂生、皆で寝れば、怖くない」
何の味もしない会話ではあるが、それが無性に心地いい。
人生で一番楽しいバーベキューの時間だった。
「お、おはようございます……」
「おはよう夕貴、家のソファで酔いから覚める気分はどう?これから家族会議すっ飛ばして家族裁判だよ」
「すみませんでした……うぅ、ついにバレた……」
「隠してたんだ?それならしばらく禁酒ね。ちょっとハメ外しすぎ」
「そんなぁっ」
これから書くので時間かかります
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