無様屈服ワンちゃんばかりのこの世界で俺は巨乳好き   作:飛び回る蜂

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後日談6 取り繕うのも大人の技術

 泣いて泣いて泣き腫らした目で、それでも初対面の時よりずっと優しい笑みを浮かべたご両親を前に私の緊張は再度高まっている。

 お父様の前で啖呵切った手前、もはやキャラ崩壊など許されない。今日一日徹底的に擬態し通すっ!!

 後輩への目配せ、ヨシ!私のウインクを見て頷いた。これは恐らく了解の意。後輩だって恋人である私のイメージはいいに越したことはないでしょう。

 このまま清楚なお嬢さんとして乗り切ることこそ幸せへの第一歩。ご両親に安心して送り出して貰えるよう……全力でっ!可愛い彼女を遂行するっ!!

 

 

「そう言えば巧。一ノ瀬さんとはどう知り合ったんだ?大学?」

 

「確かレポート書いてたら横からダメ出ししてきたんだよな。初対面で」

 

「ちょっと?」

 

 

 おっと示し合わせたのに話し合わせないアホがひとり登場~。じゃあさっきのアイコンタクトなんだったのよっ!!

 

 

「んで流れで呑み行ったら酔い潰されて……そっからは流れ?」

 

「最近の若い子って皆そうなの……?」

 

「ちゃいますちゃいますちゃいます!!(おいテメー!!)」

 

「(いいじゃないすか、取り繕うよりその方が魅力的っすよほんとほんと)」

 

「(パチこいてんじゃないわよ!!??私にも建前ああいや順序ってもんがあるのよっ!)」

 

「(順序はともかく建前は無い方がいいんじゃないすかね、今は)」

 

 

 もっともな正論を前にぐぬぬと唸るしか出来ない。しかしこのままでは私の清楚なイメージが……!

 あ?なんだその眼は後輩。そういうとこだぞとでも言いたいのか。どつき回すぞ。

 

 

「そうか……巧もお酒が飲める歳か。今日までそんなことすら僕は忘れてしまっていた」

 

「お酒飲まれるんですか?」

 

「……まぁまぁね。けどそろそろ控えるべきかなと思ってるよ。僕も、もういい歳だ」

 

 

 その回答を聞いて即「これ以上突っ込むべきじゃない」と強く感じ取った。これは話題を切り替えるべきだ。断じて一緒に飲みましょうとかお酌しますよとか言っていい気配じゃない。

 ぱっと見お恥ずかしいと言いたそうな雰囲気。けどこれは、どうしても心が耐えきれず以前にお酒を頼っていたんじゃないかしら。

 以前旅館に行った時後輩の電話でも1時、深夜にお酒を飲んでると言っていた。泣き上戸とも。

 次がお休みの日でも1時までお酒を入れるのは次の日相当苦しい筈……習慣化しているのかも。それを止めるきっかけが今日来たのなら、これ以上私がそれに触れるべきじゃない。

 そうと決まれば話題の方向転換!まだ間に合う、ここから清楚を取り戻す!

 

 

「そういえば、お父様はゲームはされるんです?巧さんと意気投合したのはその辺もあるといいますか、趣味が合いまして」

 

「ゲームは母さんと葵の影響だね。僕はあんまりしない方。最近のゲームはよく分からない」

 

「あっ、お母様の方……?何と言いますか、意外ですね」

 

 

 はーん、後輩のゲーム好きはお母様由来か。いいこと聞いたっ!お母様と良好な関係を築くためにもここは話題を広げておきたい!

 後輩が深く突っ込まなさそうなのがちょっと気にかかるけど、ここは押せ押せドンドンよ!

 

 

「まだこの辺りにゲームセンターがあった頃は大会にも出てたの。結婚を機に止めちゃったんだけど」

 

「ギャップが強すぎるっ!!」

 

「お袋大人げねぇんすよ。俺と姉貴がK´とか庵で盛り上がってるのにネームレスしか使わねぇの。2002UM。触れらんねぇんすよマジで」

 

「そこからかしら、そればっかりじゃ教育に悪いと思って色々なゲーム触れさせてたら2人ともハマっちゃって。葵はMMOがメインで、巧は据え置きに好みが別れたの」

 

「え、英才教育ぅ~。お父様は良かったんですか?」

 

「ゲームがダメとは全く思っていないよ。人と直接接さず、作品のテーマから意図を読み解くのは本を読むことと同じだ。葵はともかく、巧にはそれが必要だと思ったし、その結果がこの出会いを紡いだのなら、尚更素晴らしいことだと思うよ」

 

 

 ただし、とお父様は真面目な顔で続けた。

 

 

「もちろんそればっかりと言うのはいけない。人と関わることも関わらないことも選択肢の一つでしかない。子供達が選べる未来を増やすのが大人の務めで、ゲームは選択肢の一つであるべきだと僕は思う。巧と相性が抜群に良かったのは事実だけどね」

 

 

 何事も容量用法だね、とお父様が締めくくった。……私の前で朗らかに笑うお2人は、私が思っていた以上にずっとずっと凄い人達だった。

 蔵書を見ればすぐ分かった。今にも発狂しそうな苦境に苛まれた子供に、一つでも多くの選択肢をと思って沢山の本を集めて読んで、自分達の好きな物をいっぱい共有して。絶望の中で苦しむ子供に何か1つでもいいから希望になって欲しいと祈る思いだった筈。

 ほんの一年前まで友達と肩組んでバカやって、活発に元気に走り回っていた。笑顔と期待、それが全部失われて尚、世界に2つでも希望を見出してほしいと願ったに違いない。

 暗闇のドン底にいる息子に少しでも笑ってほしいと、かつて自分がのめり込んでいた遊戯を時間の許す限り一緒に遊んだり……ほんの僅かでもいいから、またあの時みたいな笑顔でいてほしいと願う日々を送っていた筈。

 子供が突然心を病んで恐らく4、5年。自分達が気が気でない中それ程までに愛情をかけ続けたご両親を想うあまり、今度は私が泣いてしまう番だった。

 

 

「せ、先輩!?ど、どうしたんすか急に?調子悪い?」

 

 

 何が何やらな後輩を他所に、全部察したのだろうご両親は笑って見せる。涙で滲んで前が見えないけれど、きっと真っすぐに私を見ている。

 想像してしまった。頭を抱えて今にも泣き叫んで狂ってしまいそうな巧と、それを支えなくてはと心を痛ませるお父様とお母様。

 誰もが狂気を孕んだ世界で、自分もいずれはそうなってしまうのではという恐怖の中。それでも誰に当たることもせず、自分の心を殺し続けてでも生きる選択を取り続けた巧。

 誰にも理解することができない心の苦しみを子供が抱えてしまった時、2人はどれほど嘆いただろうか。お酒に頼らなければいけない日だってあった筈。そんなものは気の迷いだ、心の病なんてものは無いんだと言いたくなった日もあるでしょう。

 そんな2人をどれだけ悩ませ苦しめているのかと、巧は自分を責める日だってあったでしょう。

 外野でしかない自分には、それに思いを馳せることしか出来ない。知ったようなフリをすることしか出来ない。

 けれど祈らずにはいられない。これからの未来、巧とそのご家族全員が幸せでありますようにと。どうか、どうか、二度と彼らから微笑みが奪われませんようにと。

 それが守られるなら、皆が笑顔になれるなら。私は喜んで全ての愛を捧げる私が持ち得る全ての愛で胸中を満たしてみせる。私が皆を幸せにしてみせる。

 だからどうか、いつか心から幸せだと言える日が来たのなら、その輪の中に加わることを許してほしい。

 

 

「私……私もいつか、お2人のようになりたいです」

 

「……巧に出会ったのが、貴方のように優しい人で良かった。どうか幸せになってください」

 

「いつでも家に来てね。私達は一ノ瀬さんを心から歓迎するわ」

 

 

 どれ程の苦境にあっても誰かの幸福を願える人に、どうか絶え間ない幸福が降り注ぎますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家族との顔合わせも終わり、お昼ご飯を共に過ごし親睦を深めた所で一度後輩の部屋を訪れることになった。

 と言っても後輩自身帰ってくるのは大学入学前、2年と半年ぶりのことらしく今どうなっているのか想像もつかないとのこと。

 でも私の予想が正しければ……ううん、間違いなくそう。きっと家を出た時と何も変わっていない筈。

 

 

「……何も変わってねぇ。布団は取っ払ってあるけどそれ以外は何もだ」

 

「愛されてるのね」

 

 

 内装はいたって普通。ベッドがあって小さなテーブルがあって、テレビとその下には台がある。

 隅の棚には本が詰まっていて、クローゼットの中には服が入っていて、目を引くような個性的なインテリアは見当たらない。

 よく言えば質素、悪く言えば簡素。けれど長きに渡り後輩の心を守ってきたこの部屋は、私の知らない特別な意味を抱えているに違いない。

 

 

「そうだよな、ずっと帰りを待ってたってことだもんな。まぁ座ってください、ここは俺にとって世界で一番落ち着ける安全な場所だ。先輩もいるから尚更」

 

「じゃあ遠慮なく」

 

 

 そのままテーブルの前、座布団に腰を下ろす。椅子と机をセットで部屋に置いている身としては何となく新鮮なような、けどあのアパートで過ごした時間がそれなりに長いからか普段通りで落ち着くような気もする。

 後輩は一息ついてから同じように座り込み、どこかしんみりとした様子で呟いた。

 

 

「……先輩も何となく察してると思うんすけど」

 

「うん。2人共詳しい事情を知らないのね?」

 

「はい。親父もお袋も、俺が病んで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、という認識でいます。ロリコンがどうとか、メスガキがどうとかそういうものは一切知りません。というか詳しくあって欲しくないです、切実に」

 

 

 やっぱりか。そりゃあそうよね、絶対に理解は得られない。素直に全部話したとて、精神の病み具合が極めて深刻なものであると認識されるだけ。

 最悪、後輩自身がそういう性癖なんじゃないの?と疑われてもっと肩身の狭い思いをすることになっていたかもしれない。

 言っちゃ悪いけど、あのすごく優しそうな2人にそういったその……ニッチな性の話題を提示するのはとても悪い気がするし、理解を得られるかも定かじゃない。私や東ちゃんみたいに友達とか、ある程度気兼ねなく話せるようになってからも話すか躊躇う内容だ。

 細部を語ることなく秘めた後輩の判断は、決して間違いではなかった。それは今この時間が証明してる。

 

 

「言ったところで、悪くはなっても良くなることはまずねぇと思ってたから……」

 

「大丈夫よ、巧は間違ってないわ。私だってそうすると思う」

 

 

 どうせ親は私に関心なんかないし、言ったところで病院送りにされて人生終わるのが目に見えてる。

 だったら黙って解決策を自力で模索する方が遥かに賢明。後輩のそれとは意味合いがまるで違うけれど、私でも同じ判断をした筈。

 都合がいいから、都合が悪いから。本質は違うけれど、私達はきっと同じ選択をする。

 

 

「それはそれとして、子供が突然「自分の性癖じゃないエロ本の導入が身の回りで起こるようになった」とか言い出したら普通親泣くよな」

 

「泣くか、大困惑するわ。間違いなく」

 

「俺も自分の正気を疑ったからな。いや一応な、親父の部屋にいたから多分聞いてると思うんだけど。最初は本当に誘拐事件だと思ってたんだよ。でも何回か見てると会話が明らかに変で、子供は笑顔だし大人は怒ってるし、なんか怖くて外出たくねぇってなっちまった。そしたら……こう……思ったより悲惨な感じに伝わって……」

 

「いやいやいや、アブノーマルな性のそれだから多少ギャグっぽいけど相応に悲惨な目に会ってるからねっ!?というかそれで日常生活送れてる巧のメンタルが強すぎるだけだからねっ!?」

 

「そうかなぁ……そうかもしれねぇ……?」

 

 

 普通自分がパラレルワールドに入っちゃったってなったら、まず脱出するために生活投げ捨ててでも解決策を模索するでしょ?

 いや、でもそれまで自分が生活を送って来た痕跡は確かにあるわけで、それを捨てるのは確かに……そう考えるとキョンも巧も凄いメンタルと閃きで現状を乗り越えてきたのね……。

 

 

「さて先輩。それよりも一つ確かめなきゃなんねぇことがある」

 

「な、なに?い、言っておくけど小さい頃の写真とかは貰ってないわよ!?」

 

「別にそこは心配してねぇよ。欲しければあげます。……先輩、ご両親の話題避けてるよな?仲悪かったりする?」

 

 

 ……い、今かー。その話題ちょっと今は厳しいなぁー……。

 

 

「俺が覚えてる限り、先輩は今まで親のことほとんど口にしたことなかったよな。言いたくないことならごめん。でも卒業後のことを見据えるなら、俺も挨拶に行くべきだと考えてる」

 

「……できれば、後にしたい、かなー、なんて。いやダメってわけじゃないんだけど、今日は今日でとても大切な日だし、ちゃんと整理を付けてから話したい、かな」

 

「先輩がそう言うなら俺は待ちます。大丈夫っす、何があっても俺は先輩の味方なんで」

 

 

 信頼されてるぅー……うぅ、いや本当に全然ダメってワケじゃないんだけど。

 ただちょっと……素敵な関係ではないから、少なくとも今日の延長線上で話すとかは極力避けたいのよねぇ……。

 

 

「またいつか準備が出来たら教えてください。大丈夫っすよ、どんな苦難でも俺達なら乗り越えられる、でしょう?」

 

「……うん。分かった、約束する。近い内私の家にも顔出してもらう。覚悟はしといてね」

 

「望むところっすよ。湿っぽい話はここまでにしましょっか。この後どうします?ゲームします?」

 

「それもいいけどせっかくご実家に来たのだし、親睦を深めたいところね。そこで……」

 

 

 おもむろに席を立ち、後輩を立たせてベッドに座らせる。

 怪訝な後輩に笑顔で近づき、そのままベッドの上に一緒になってもたれこむ。

 驚いている驚いてる。でもさっきまでの話で結構疲れちゃったの。きっと後輩もそう。

 

 

「手始めに、一緒に少し休みましょ?」

 

「……………………そすね」

 

「それとも休憩がいい?朝言ってたこと確認しちゃう?……ごめん冗談だから。恋人の実家でそんな提案しないからそんな目で見ないでぇっ!?」

 

「……俺にも我慢の限界があるってことは忘れないでください」

 

「はい……ふふ、素敵なご家族だったわぁ」

 

「俺も、そう思います。今ならどれだけ助けられたか、今だからこそちゃんと分かる気がする……」

 

 

 お互い気を張っていたからか、ウトウトし始めたらあっという間に眠りに落ち……お姉さんが起こし来るまで仲良くお昼寝をしたのであった。

 

これから書くので時間かかります

  • 東と一線を越えてしまう話(if要素強め)
  • 大学卒業後(if要素強め)
  • 先輩が志賀の家族へご挨拶する話
  • 男女逆転ワンちゃん世界if
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