戦国無双4 武田ノ章 甲州の傾けし龍躑躅ヶ崎を発つ   作:佐室小路治

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この物語はいくつものシリーズに分けて連載します。
作者のオリジナル展開がいくつもあります。
それを承知の上で読み進めてください。


第一話 出会い

時は群雄割拠の戦国時代。

東では武田、北条、今川そして上杉が、西では尼子、大内が覇を競っている時代。

 

これはそんな時代を生き抜く一人の武士の物語である。

その武士の名は一条信龍。

甲斐武田氏第十八代当主武田信虎の八男として生まれる。

 

1560年6月、信龍20歳。

彼は見聞を広げる為、躑躅ヶ崎館を離れ旅に出たのである。

 

その際彼は一人の忍びを供として連れる。

その忍びの名は猿飛佐吉、武田が誇る間諜集団「三つもの」に所属する若き忍びである。

 

「なぁ、旦那何処旅するんだ?」

木から木へ飛び移りながら質問を信龍に投げかける。

「さぁ?」

信龍の間の抜けた返事に落ちかける佐吉。

「って何にも考えなしかよ!」

思わずため息まじりに言う佐吉。

「せめてここって決めた場所はないのかよ旦那?」

 

佐吉の返しに信龍は一つの思いを口にする。

「尾張に行ってみるか」

なんとなく予想はつくが理由を聞いてみる佐吉。

「どうしてまた尾張なんだ?」

その問いに信龍はこう答えた。

「尾張のうつけが見たい」

 

佐吉は、やっぱりかと思いながら理由を聞く。

「何でまたそんなもん見に行くんだよ?」

言葉を続ける佐吉

「うつけなんかより堺の街とか見たほうがいいだろ色々情報も手に入るだろうし」

 

最もな意見だが信龍にはそれなりの考えがあった。

「見ておきたいんだよ尾張のうつけが単なるうつけなのかそれとも」

佐吉は信龍の言葉に聞き返す。

「それとも?」

 

信龍は遠くを見るような目をしながら言葉を紡いだ。

「相模の獅子のようにうつけと見せかけてその実懐中に気高いモノを持っているのかを」

 

その言葉に得心のいく佐吉。

相模の獅子とは北条氏康の異名である。

 

尊敬する自身の兄であり甲斐の虎と恐れられる武田信玄、そして海道一の弓取りと謳われる今川義元の二人と並び称される人物である。

 

故に信龍はうつけと称される信長を警戒している、いずれ兄信玄の前に立つのではないのかと。

「なるほどなぁそいつは確かめといたほうがいいかもな」

 

前例がある以上警戒するのも分かると同意する佐吉。

「この調子なら夜頃に尾張だなぁ、旦那オレが先に行って宿取っとくか?」

佐吉の提案頷く信龍。

「頼む」

佐吉は短く返答して去る

「あいよ」

 

それを見届け信龍も歩く速度を速めた。

それからそれからしばらくしたときのこと、尾張犬山に入り佐吉のとってくれた宿に向かう途中のことである、

 

何を思ったのか信龍は尾張犬山城の近くまで来ていた。

「……。」

ふと星空を見上げていると視界の端に悲しげな表情を浮かべる一人の女性を捉えた。

「星きれいですよね」

どうしたんですか、と投げかけるのは気が引けたのでそう投げかけると

「少し一人になりたくて」

驚く様子もなく答えてくれた。

 

「邪魔してしまいました」

すいません、と告げ去ろうとしたとき後ろから声がかかる。

「いえ、気にしないでください、それより少し話に付き合ってもらえませんか?」

不思議と断る気にもなれず少し話に付き合うことにした。

 

それから暫くして彼女が言った。

「話に付き合ってくてありがとう御座いました、よかったらお名前教えてもらってもいいですか?」

少し驚く信龍に彼女は言葉を続けた。

「また会えるような気がして、私はお市といいます。」

 

そう言葉を口にする彼女に不思議と惹かれている自分がいた。

「俺は一条信龍です」

儚く美しくも懐中に強さを持つ、それがお市に持った印象だった。

「お市様」

そう思いながら名前を口にしようとしたときお市の後ろからお市を呼ぶ声がした。

「そろそろお帰りいただかないと城の者達が心配します。」

 

お市の後ろにいる白い衣類に身を包んだ男が告げる。

「えっと…あなたは?」

信龍の言葉に白い衣類の男は此方に視線を向けた。

「…………」

しかし白い衣類の男は終始無言だった。

「あ、俺は一条信龍っていいます」

 

慌てて名を名乗った信龍に白い衣類の男はその名を静かに呟く。

「……一条信龍」

静かに成り行きを見守っていたお市が口を開く。

「吉継名乗りを」

吉継と呼ばれた白い衣類の男はお市の言葉を聞き一瞬お市に視線を投げかけて此方に視線を戻す。

「……大谷吉継、いまは縁あって織田家で軍師をしている」

 

静かにそう語る吉継の言葉にお市が補足するように話す。

「彼は織田家で軍師とは別に世話役の様なこともしてくれているのです」

吉継は静かにしているだけだった。

「私は現織田家当主織田信長の妹、つまりは織田家の姫なのです」

 

その言葉に少し驚いた様子の信龍を見てお市は言った。

「やはり驚きますよね、現織田家当主といえば尾張のうつけと有名ですからね」

無言だった吉継が口を開く。

「お市様そろそろ戻りましょう」

 

吉継の言葉に少し残念そうな顔をしながらいう。

「私はもう戻らないといけないので、明日また今日みたいに同じ位の時に来てくれるとうれしいです」

 

お市の言葉に吉継が言う。

「あまりお城を抜け出されても困りますが少しくらいなら瞑りますよ」

吉継の言葉にすまなそうにしながら信龍に別れを告げ城のほうにも戻っていくお市と吉継。

 

二人を見送っていたその時ふと木の陰に気配を感じた信龍は名前を呼んだ

「佐吉か?」

やれやれ、といった様子で現れた佐吉が言う。

「ったく、お供ほって逢引とはねぇ」

佐吉は続けて言った。

「でも可哀想にあのお姫様死ぬことになるかもな」

 

動揺を隠せない信龍は理由を聞く。

「な、なんでだよ!お市さんに何かあるのか!」

信龍の焦り用に少し驚いた様子の佐吉。

「いや、旦那今の武田の同盟相手思い出しなよ」

佐吉の言葉に思い返す信龍。

 

「相模の北条と駿河の今川……そうか!」

思い返し納得する信龍。

「駿河の今川は上洛に集中する為にうちと相模の北条と同盟を組んだんじゃなかよ」

 

佐吉はこれに付け足すように言う。

「つまり、上洛する際その道途中にいる織田は降伏か戦うかを迫られるのさ」

今川に比べ大した領土を持たない織田が戦えばどうなるかは自明の理。

 

「しかし戦いは数じゃない、この圧倒的差を覆せるかで奴を測れる」

その言葉に佐吉が呆れたように言う。

「いや、旦那いくら戦いは数じゃなっていったって勝てないぜ織田は」

 

佐吉の言いたいことは分かる、何せ相手は東海一の弓取りと謳われる今川義元公なのだから。

「しかしこの不利を覆せれば信長は単なるうつけでは無かったと証明される」

 

佐吉は信龍の言葉に頷きながら返す。

「確かにな、そうなればここまで来た甲斐はあるな」

信龍はもう一つ判断材料を口にする。

「いまの今川には雪斎和尚いない、これで勝機が見えたな」

 

雪斎程の軍師がいれば織田に勝機を見つけるのは難しい。

「この好機をどう活かすかで信長の器量が測れる」

そう語った信龍に佐吉が言う。

「いくらあのお姫様に死んでほしくないからってそこまで期待できるのか織田にってどうした旦那?」

何か確信したような表情を浮かべる信龍に問いを投げかける佐吉。

 

「なぜだか信長がこのまま終わるようには思えないんだよ」

一方清州城では……。

「人間五十年~、下天のうちを比べぶれば~夢幻の如くなり~」

織田信長が敦盛を舞っていた。

「一度生を享け~滅せぬものもあるべきか~」

彼は突然舞うことをやめ言い放つ!

「陣貝吹け!乱世の開幕、ぞ!」

すると信長は小姓衆五騎を伴い出陣し、熱田神宮で軍勢を集結させた。

 

「数にしたらざっとニ、三千って言ったとこか」

離れた場所に佐吉はいた。

「こんだけの軍勢で今川二万に挑む気か?」

正直正気の沙汰とは思えない、しかし旦那があそこまで言うのだから、と確かめられずにはいられない佐吉であった。

 

「おっと、織田が動いたな」

方向で言えば義元公の本陣のある方向である。

「お手並み拝見だなこれは」

暫く後を追うと義元公の陣営が見えてきた、すると信長が叫ぶ!

「狙うは今川義元ただ一人!」

信長が言い終えると同時に織田軍が今川本陣めがけて突撃を開始した。

 

「お、織田軍!いつの間に現れたのか、の!の!」

織田軍の奇襲に動揺し、浮足立つ義元と今川軍。

「なるほどな、雪斎和尚がいればこうはならなかっただろうな」

 

今川の様子を見て納得する佐吉、するとそこに。

「お前がなんでここにいる佐吉」

声を聴き振り返るとそこには同じく三つものに所属する霧隠れ三蔵がいた。

「旦那に言われて見に来たんだよ」

 

佐吉の返しに三蔵が言う。

「じゃあ信龍様も尾張に?」

ああ、と答えたところで声が上がる。

「今川治部大輔義元公が首、この毛利新助良勝が打ち取ったりぃ!」

 

その声を聴き今川軍の足軽たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

「さて、俺は帰るが佐吉!信龍様をしっかり御守りしろよ」

そう言って去る三蔵。

「分かってるよ!俺も帰りますか」

 

翌日そのことを伝えると信龍は。

「やはり信長は勝利したか」

そうつぶやくと信龍は佐吉と手分けして美濃とその周辺国の動向を探り始めることにし信長は必ず大きくなると確信するに至った。

 

調べている間も夜には必ず犬山に戻りお市と約束した場所にいき何度もお市と話していた。

そして調べを終えて犬山に戻った日の夜のこと。

「また来てくれたんですね」

お市は嬉しそうに言った。

「大したものじゃないけどこれお土産」

 

そういってお市に藤の花の髪飾りを手渡した。

「綺麗ですね、これを私のために?」

信龍は静かに頷き言った。

「お市さんに喜んでもらいたくて」

その言葉を聞き嬉しそうにつけた。

「似合いますか?」

その言葉に信龍はこう漏らす。

「似合ってます、綺麗ですよお市さん」

 

信龍の言葉に顔を赤らめながらいう。

「は、恥ずかしいです」

こうしてまた二人の幸せなひとときが終わり、何時しか二人は別れを惜しむようになっていた。

「また会えますよね?」

 

お市の言葉に信龍はしっかり頷き答えた。

「必ず会いに行きます」

しかし次の日からお市は約束の場所に来なくなり心配した信龍は佐吉に調べさせた、するとお市は信長命令で近江の大名浅井長政の下に嫁ぐことになったがお市はそれを嫌がり次の日の朝に自ら死を選んで亡くなったという、それを聞くと信龍は自刃しようとした。

 

「やめろよ!旦那ぁ!」

信龍は涙ながらに言う。

「お市さんがいないのに生きてたって仕方ないだろっ!」

佐吉は引かずにとめた。

「こんなことしたってお姫様は帰ってこないし、喜ばねえよ!」

二人が組み合う最中白い衣類の男、大谷吉継が現れた。

「お市様は死んでいない、案内するから詳しくは本人から聞け」

 

そういうと吉継は二人をお市の遺体が埋葬される予定とされる寺に案内した。

そこにはお市の遺体が横たわっていた、信龍は涙を流しながらお市の頬にふれた。

「冷たい、やっぱりお市さんは……」

そう言って触れていたその時、お市が静かに目を開き起き上がった。

「っ!」

驚いていた信龍をよそにお市は信龍の胸に顔を埋め言った。

「会いたかった!」

そこから彼女を語ったのである、こうなっt経緯を。

「お兄様に近江の浅井長政様の下に嫁ぐよう言われましたが、私はあなたと離れたくなかった、だから吉継に相談したら死を偽装すればいいと、言われ偽装したんです」

 

お市の言葉に涙の止まらない信龍。

「でもこのことがお兄様に知られたらあなたはただでは済まない」

お市の言葉に決心した信龍は言う。

「お市さん、いや市!共に生きて支えてほしい俺の妻として!」

 

信龍の言葉に口元を手で押さえながら大粒の涙を流しながら強く頷くお市。

「佐吉!今すぐ甲斐に帰るぞ!」

そう言って強くお市の手を引く信龍、その手を強く握り返すお市。

 

その様子を見て言い放つ。

「生きてお市様を幸せにしろよ!」

信龍とお市は振り返らずにただありがとうと言って甲斐に向け歩き出した。

                      

 

                           続く




二次創作の小説作成は初めてですがどうぞお手柔らかにお願いいたします!

さて連載を始めたわけですが、第一弾は武田の章です!
果たしてどの様に話が進むのでしょうか?
お市、信龍そして佐吉の三人の次回号での活躍はいかに!

最後に、佐吉と三蔵はそれぞれ猿飛佐助、霧隠れ才蔵がモデルです(笑)
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