非科学的な犯罪事件を解決するために必要なものは何ですか?   作:色付きカルテ

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傷の付いた者達

 

 

 

 

 あの世間に大きな波紋を与えた爆破事件から一週間程度。

 そして12月も中旬に近付き肌寒さを感じる今日この頃。

 紅葉が終わりを迎え、着飾っていた木の葉のほとんどが抜け落ち始めたこの時期に、私は一人目的地に向かってふらふらと歩を進めていた。

 

 視界に入ってくるのは初めて歩く街並み。

 基本的に目的が無ければ出不精の私が、こうして自ら見知らぬ場所を訪れるなんて我ながら非常に珍しい事だと思いながら、手に持った荷物の位置を調整する。

 片手には途中の店で適当に買った食品が詰め込まれたレジ袋を持ち、もう片方の手に持つ携帯電話ではマキナに道案内をしてもらい、20分程度歩いて、私は知識だけは知っていた住所に辿り着く。

 

 その建物はオートロック式の意外とセキュリティがしっかりとしている高層マンションだ。

 そんなマンションの正面玄関近くにはちょっとした人だかりができていて、大なり小なり様々なカメラ機器を構えている姿から、彼らが報道関係の人間だというのはすぐに分かる。

 欠伸を噛み殺しながらカメラ機器を持つ彼らは長時間こうして待っているのだろうが、きっと彼らの目的の人物は迷惑しているのだろうと思うと、少し笑いが零れてしまう。

 

 改めてこんなちぐはぐな光景を見ると、彼女の住居が思っていたよりもセキュリティのしっかりとした場所である事には非常に安心する。

 取り敢えず、私はお得意の異能使用で報道陣の注目とマンションのセキュリティを軽く突破して、目的の人物が住む部屋まで一直線に向かっていく事にした。

 

 目的の部屋番号は502号室。

 廊下ですらちょっと良い匂いがする高級マンションに庶民の私は少なくない動揺をしながらも、ようやく辿り着いた目的の部屋の扉を軽くノックする。

 のそりと、扉越しに心底面倒臭そうな動きをした誰かが近付いて来るのを感じながら、私は自分の顔ににんまりとした微笑みが浮かんでくるのを自覚した。

 

 そして。

 

 警戒するように少しだけ扉を開けて顔を覗かせた彼女の表情が、みるみる驚愕に染まっていく事を確認し、私は自分のドッキリが成功したのだと嬉しくなったのだ。

 

 

 

 

 ‐1‐

 

 

 

 

 

 

 

『首輪』。

 これは私が使用する精神干渉の技術の一つであり、直接的な攻撃性能は皆無。

 設置するには時間は掛かるし手間もかかる、遠隔起爆が可能な、言ってしまえばコンピュータープログラムのような技術だ。

 

 簡単に説明すると、私が対象を捕捉して無力化させた後に実行するものであり、いずれかの要素で完全に野放しにするのは危険だと判断した相手の精神奥深くに異能の出力を潜ませておく、というもの。

 この『首輪』をしておく事で、私の意思次第で即座に洗脳、思考誘導、末期状態が可能な他、いずれかの指示を疑いなく遂行させる事も出来る、非常に優れた技術だったりする。

 危険な相手を監視や拘束する必要がない、不利益の無い合理的な技術だが、ただ一つ問題となるのが、この技術はだいぶ非人道的であるという事。

 

 ……いや、まあ、悪影響は無いとはいえ、知らない内に精神の奥深くに爆弾みたいなものを設置され、場合によっては都合の良いように洗脳されるのだから、非人道的と言うほか無いのは私だって理解しているのだ。

 

 だから危険だと思っても、その相手が何も悪い事もしていない相手だったら、こんな『首輪』なんてものを付けるのは気後れするくらいには私だって人の心は持っている。

 相手が容易く他人を害する醜悪な悪人であればそんなのはどうでも良いが、そんな奴がいるならそもそも精神を捻じ曲げるので、首輪の手間を掛けるのは比較的少ない事例である。

 

 だからこそこれは、私の技術の中ではちょっとカビが生えるようなものなのだが……。

 

 

『灰涅さん! 一言お願いします! あの爆弾の超能力を持つ犯人を捻じ伏せた貴方の圧倒的な超能力はいったいどういうものなんですか!?』

『そうだろ!? 凄いだろ!? 俺の異能は最強なんだ! 状況さえ整えれば、飛禅飛鳥にだって負けな……あ、いや、そうは言いきれないけども、勝つ可能性があるのは確かなんだよ!』

『え、あ、はい』

『灰涅さん! こちらにも一言!!』

『灰涅さん!! 映像を見た方々に貴方のファンが出来ているみたいですがそれについては!』

『わっはははは! 見る目があるなお前ら!!』

 

 

「……すっごい充実した笑顔……これ以上無いくらい調子に乗ってますねコイツ」

 

 

 今は特に悪い事をしていない“紫龍”に仕込んでいた『首輪』なんてものを使用した事にミリ単位の引け目を感じていた私だったのだが、その当の本人は現在テレビの取材に囲まれて幸せそうにしている。

 

 というか、テレビ越しにコイツの顔を見る日が来るとは思ってもいなかった。

 来たとしてもせいぜい犯罪者としての顔写真とかだと思っていたのだが、人生中々分からないものである。

 

 そしてテレビに映る“紫龍”の姿はまさに単細胞ここに極まれり。

 ちやほやして放置しておけば無害な小物の様相を公共電波で全国に見せつけている。

 恐ろしい程にアホである、コイツには羞恥心とか無いのだろうか。

 

 そんな酷い事を考えていた私に対して、不貞腐れたような態度を見せていた隣の彼女が声を掛けて来る。

 

 

「……それで、事前に話も無く家まで突撃しに来て何が目的なのよ」

「えー? そんなのー、この前異能開花したての相手に負けちゃった飛鳥さんが元気ないだろうなって思ってですね? うぷぷ、異能を扱う先輩として飛鳥さんを優しく励ましてあげないといけないかなーって思いまして、こうしてお家にお邪魔してる訳で――――あっ、嘘嘘嘘です。青筋が額に浮かんでますよ飛鳥さん! ほら、深呼吸深呼吸。笑ってー!」

「……ひ、人が気にしてることを、よくもまあここまでズケズケと……! 気が済んだらもう帰って頂戴!! 私だって今は色々本調子じゃないのよ! さもないと滅茶苦茶にして抱き枕にするわよ!!」

「なんで何かにつけて私を抱き枕にしようとするんですか!? そういうのは飛鳥さん裁縫得意なんだから自分で良い感じのものを作ればいいじゃないですか!? ほらっ、そこら辺にある凄く上手いぬいぐるみ的な感じに!!」

 

 

 彼女の趣味である可愛らしい手作りのぬいぐるみが綺麗に陳列されている棚に視線をやりながら私はそう叫ぶ。

 ぬいぐるみと言えば先日の、“人をぬいぐるみにする”異能を思い出すが、精巧の一言だったあの男のぬいぐるみに比べ、飛鳥さんのものはどれも可愛らしさが重視されている作品だ。

 うまい具合にデフォルメして、ぬいぐるみに落とし込んでいる飛鳥さんの技術はあの男とは別種の方向性に高められているのだと思う。

 

 いつかじっくりと作品を見させて欲しいと思いながらも、今はただ必死に話を逸らす。

 

 

「そっ、それにしても、犯罪者のアホの“紫龍”がここまで持ち上げられる日が来るとは思いませんでしたね! 最初に会った時は私一人に対して一方的にやられてますし、暗闇に閉ざされた病院での時は私と一緒に怯え切ってましたし、私同様、持ち上げられるような器じゃない筈ですし」

「……“煙”の異能は強力でしょ。それに自分を比較対象に置いてる燐香のその情報は信用できないし、アイツ自身に頭が無い分、駒として動かすなら凄く優秀だと思うしね」

 

 

 そうやって、若干呆れたような態度で彼女、飛禅飛鳥さんは溜息を吐く。

 

 あの世間を騒がせた一連の爆破事件から数日。

 爆弾犯の宍戸四郎は“紫龍”の鋼鉄の煙に成す術無く無力化され、警察本部の倒壊と被害を受けた負傷者の数々が病院に運ばれる事態となった。

 当然宍戸四郎がネットに流した映像と報道陣が撮影した映像が及ぼした世間への影響は少なくはなく、特に映像にあった過去の未解決事件である“北陸新幹線爆破事件”の隠蔽工作の件は少なくない議論が生み出されていたりする。

 

 そして現在、どのような議論においても名前が出される当の飛鳥さんは、ただただ呆れたような顔でテレビに映る臨時の同僚の姿を眺めている。

 

 

「……それにしても、コイツの情報は機密にされている筈なのにどこから漏れてるのよ。しかも通勤というか、搬送してる時を記者に捕まるって……まあ、どうせ犯罪者を使う事に反発のあった警察内部の奴が漏らしたんだろうけど……はぁ」

「飛鳥さん休みの日ですらそんなことを悩まなくちゃいけないんですね……えへへ、組織人じゃない自分の身軽さが改めて貴重なものなんだなって思えちゃいました」

「……」

「む、無言でにじり寄ってこないでください! ちょっとした小粋な冗談じゃないですか! あ、ほら、“紫龍”の奴が鬼の人に首根っこを掴まれて建物の中に連行されていきましたよ!」

「当然の対応よ。本来は取材に応じるのも禁止してるんだからね、まったくあのアホは……っていうか、鬼の人って柿崎さんの事を言ってるの? アンタ本当に、人の名前を覚えないで変な渾名を付けるわよね」

「うっ……それはその……は、反省します」

 

 

 思わぬ反撃を受けた、しかも結構痛い所である。

 鯉田さんをギャル子さんと呼んでいたり、柿崎という方を鬼の人と呼んでいたり、神楽坂さんを老け顔おじさんと内心で呼んだり、自分の過去の所業でちょっと思い当たる事がある。

 これは流石に私の悪い所かと反省するが、そう簡単に治る気はしない。

 

 視線を合わさないようにと目を動かしていた私の額を小突いた飛鳥さんは、簡単にひっくり返った私の姿を見て軽く溜飲が下がったのか鼻で笑う。

 

 

「……まあ、内心で渾名を付けるのが一概に悪いとは言わないけど。失礼だと感じる奴もいるんだから、口に出すのは気を付けなさいね」

「む、むぅ……」

 

 

 諭すようにそう言う飛鳥さんに、私は反論できず押し黙る。

 何から何まで飛鳥さんの言う事は正しいし、私を一方的に否定するような態度でも無い事が、逆に飛鳥さんの正当性に拍車を掛けている気がする。

 数か月前まではもう少し同じ土俵で争っていた気がするのに、いつの間にか飛鳥さんだけが大人になってしまったようでちょっと寂しさを感じてしまう。

 

 いやまあ、飛鳥さんは成人を迎えているのだから私よりも大人であって当然だとは思うが、それはそれだ。

 

 私ももう少し大人な態度を普段から見せていくべきかと頭を悩ませていると、飛鳥さんは時計に視線をやってふらりと立ち上がろうとする。

 

 

「……ふぅ……せっかく燐香が家に来てくれたんだから何か料理でも……」

「あっ、私、材料買ってきましたから保存が利くものを何品か作りますよ。飛鳥さんは体調が良くないんですし、今は休んでいてください」

「……本当に悪いわね」

 

 

 私の言葉に逆らうことなくそう言った飛鳥さんの姿はどこか疲れを感じさせる。

 だがそれもその筈で、飛鳥さんは先日の爆破事件の、肉体的かつ精神的な疲労が今も尾を引いているのだ。

 

 あれだけ大きな事件があってからまだ数日、それも限界以上に異能を酷使したのだから、今の飛鳥さんの体調の悪さは当然だと思う。

 飛鳥さんが今感じている疲労は普通に運動をしたものとは別種の、中々経験し得ないものの筈だから、私としても心配なのだ。

 

 

「……やっぱりまだ辛いですか? さっきの確認の時に出来る限り調整はしましたが、私の異能はそもそも治療系統では無いですし」

「だいぶ楽になってはいるから大丈夫よ。調子に乗って異能を酷使したのは私だしね」

 

 

 全治9日。

 それが飛鳥さんの負った怪我に対して下された結論だった。

 数日入院して経過観察をした上で自宅療養とする、と言う今回の措置。

 飛鳥さんの外面上の怪我の具合は決して重いものでは無いけれど、異能の酷使で発生した出血をどう治療したものか頭を悩ませた一般の医者が結果的に下した結論がそれだった訳だ。

 

 その医者としては真剣に考えたのだろう。

 レントゲンや現状の各種診断では何も異常は見つからないのだから、判断材料が少ない中で必死に考えたのだと思う。

 だがその判断は、異能を知る私としては不安な判断だったため、私が自宅療養となった飛鳥さんのお世話と容態確認をするためにこうして家に訪れている、というのが現在の正しい状況だった。

 まあ先ほどは、遊び心に駆られ事前連絡なしで訪問したものだから、私の姿を確認した飛鳥さんに鼻先でドアを閉められてちょっぴり傷心したりするアクシデントもあったがそれは割愛する。

 

 

「改めて言いますけど、異能の出力を調整する部分が損傷しているようなのでしばらく……うん、今からもうあと二週間は異能の行使は絶対に控えてくださいね。小さな物を浮かすのも駄目ですよ」

「二週間……」

「全然長くないですからね。完全に自己治癒に任せるんですもん。むしろ短いくらいだと思います。私が行った強制的な出力強化は例の薬に比べれば負担は軽いですけど、それでも負荷は通常以上にはあります。その状態で無理をしたんですからこうなることは予想できた筈ですよ」

「分かってるわよ……でも、その二週間の間に何かあったら支障が出そうで」

 

 

 深刻そうな顔でそう呟いた飛鳥さんの様子に、私は思わず笑いを溢してしまった。

 何だか最近の飛鳥さんは気を張り詰めすぎてネガティブ思考が過ぎる気がする。

 

 ここは私が異能を扱う先輩としての余裕を見せつけて、飛鳥さんに安心感を与えてあげるべき場面だろう。

 

 

「またまたまたー! そんな二週間程度の間に何かある訳ないじゃないですか! 日本は無法地帯でも無いんだから! 飛鳥さんは考えすぎですって、まったくもー!」

「……自分のそういう言動がフラグになってるって考えないのかしらね」

 

 

 返って来た冷たい反応に逆に焦る。

 もう少し乗ってくれると思ったのだが、どうやら飛鳥さんはそういう気分ではないようだ。

 

 

「あ、あれ……? 飛鳥さん、なんですかその頭の弱い子を見るような顔は……? と、ともかくっ、そんなに心配することは無いです! 私だって色々対策して考えているんですから! 多分ですけど、他のどの国よりも今は日本が一番安全ですよ!」

「……まあ、燐香がそう言うなら信じるけどね……」

 

 

 半信半疑を態度に出しながらも飛鳥さんは何とか納得する。

 

 別に私のこの自信は全く根拠のないものではない。

 私がネット上の異能開花薬品の取引全般を封鎖している以上、紛失していた5つの異能開花薬品だけが不安要素だったが、それも全て宍戸四郎が自身に使用した事が判明した。

 だから一応、“無差別人間コレクション事件”や一連の爆破未遂のような異能の関わる大きな事件が再び日本で起こる確率は非常に低い筈である。

 ネット上の情報統制及び監視を行えるマキナの存在があれば、異能開花薬品の流通によって起こる異能犯罪は最小限まで抑え込むことが出来るのだ。

 

 …………まあ、それもこれも私によく似たあの存在の事は考えないものとしてなのだが。

 

 そんな致命的なまでの要素を脳裏に浮かべて、私はそっと目を逸らした。

 

 自分の異能の調子を調べるように、飛鳥さんが目を閉じて体内の出力を確認しているのを私はぼんやりと眺めて考える。

 飛鳥さんの言う『もしも』が起きた時は彼女が動員されるのは目に見えているので、体調の良くない飛鳥さんの身を思うなら、その『もしも』があった時は私が迅速に何とかするべきであるだろう。

 その上、完全に私の想定外の立ち位置にいるあのアホ(“百貌”)が動いた時は、何とか大事にされる前に私が背後を取って刺さないといけない。

 神楽坂さんと協力を始める前よりは確実に悪意の芽は絶つことが出来ている筈なのに、考えれば考えるだけ、私のやることが多い現状に思わずげんなりとしてしまう。

 

 色々と考えて元気の無くなっていく私の様子に、自分の調子を確かめ終わった飛鳥さんが不安げな表情を向けて来た。

 

 

「……なんだか元気が無いけど大丈夫? 何か問題や悩み事があれば私の体調なんて気にしないで、使ってくれても……」

「大丈夫ですよ。飛鳥さんは何よりも自分の体を気遣ってですね……あっ、でも、飛鳥さんにちょっとだけ相談したい事があったんですよね」

 

 

 私の言葉を聞いて、パチパチと飛鳥さんが何度も瞬きをする。

 まるで未確認生命体を見付けた生物学者のような反応だ。

 

 恐る恐る、慎重な様子で飛鳥さんは口を動かし始める。

 

 

「燐香が……私に? えっと、えっと。そう……そうね、ちょっと待ってね。ちょっと落ち着くわね。ふう……落ち着け私。焦る必要は無いわ。大丈夫。ようやくこの時が来たんだから慎重に……うん……よし。えっと、それは『UNN』の事? それとも宍戸四郎に異能を与えたとかいう奴の件? それとも何か手に入れたい物でもあるの? 何のことか分からないけど、取り敢えず今の私の立場を使って叶えられる事なら別に何でも……努力だけはしてみるけど」

「あ、えっと、そういうのじゃなくてですね」

 

 

 私はふと思い出した相談事を、何故だか使命感に満ちた表情でいる飛鳥さんにこっそりと問い掛ける。

 

 

「その、ある友達がしつこくお泊り会をしようって誘ってくるんですけど、どうやって断るのが後腐れなく誘いを断れるかなーって悩んでまして……飛鳥さんって、ほら。見た目チャラチャラしてて、遊んでそうで、コミュニケーション能力高そうですし、そういう他人の誘いのあしらい方が上手そうかなって。私ってほら、基本的に異能を使わないと人とのコミュニケーションが下手ですし」

「…………………」

 

 

 すんっ、と飛鳥さんの表情が消えた。

 いつもは表情がコロコロ変わる飛鳥さんの、ましてや整った容姿を持つ飛鳥さんの無表情は何か妙な圧力を感じさせてくる。

 

 何か失言してしまったかと怯んだ私を据わった目で見つめたまま、飛鳥さんはゆっくりと口を開く。

 

 

「……それで、宍戸四郎に異能を与えた奴の話なんだけど」

「えっ、嘘っ、何の反応も無くスルーされた!? 聞く価値も無いですか今の私の悩み!?」

 

 

「せっかく頼りになりそうな人に相談できると思ったのに」という私の叫びを聞き流し、極寒のような薄ら笑いを浮かべた飛鳥さんが逃げられないように私の両肩をガシリと掴んだ。

 

 ……原因はちょっと分からないが、何故だかとっても嫌な予感がする。

 

 

「柿崎さんから連絡があって、尋問した宍戸の話では、何の面識も無い少女の姿をした“百貌”って奴に異能を開花させられたらしいのよね。面識のない少女が周囲にいた私達に視認させないで宍戸のみに接触した。これって他人の感覚に働きかける異能よね」

「!?」

 

「薬品を使ってもなお異能が開花しなかった、異能の才能が全くない宍戸四郎を異能持ちに仕立て上げる。まあ、薬品の過剰摂取で体内に異能の力が無理やり押し込められていた状態ではあったから、出力の元を生み出す力があるかはともかく、それを異能という現象に変換できるようにさえすれば表面上の異能持ちとしては完成されるわよね。つまり、源泉じゃなくて変換器の方を作り上げたと考えるのが妥当。それを成し得る感覚に働きかける異能って、どれくらいの種類があるのかしらね」

「!!??」

 

「で、そもそも私としてもあの時感じた異能の出力に既視感があったんだけど、よくよく思い出してみたらあの感覚って私が異能を手にした時と凄く似てたのよね。自分の異能に対する理解も無い状態でいた私に、突然異能の開花と使い方をねじ込む技術。これって何だと思う燐香?」

「!!!???」

 

「――――ねえ、燐香。知ってる事全部吐きなさい」

「!!!!????」

 

 

 とんでもない話の飛躍でいつの間にか私が追い詰められていた。

 碌に異能に目覚めていなかった時の事なのに、なんでこの人はこんなにも変なところで記憶力が良いのだろうか。

 だが私は少し疑われた程度で白状する犯人とは違う、最後の最後まで黙秘や言い訳で抵抗して、飛鳥さんの疑いを誤魔化し切ってみせる。

 

 

「な、ななな、何のことか分からないですね……!! 飛鳥さんの勘違――――」

「“百貌”に“顔の無い巨人”。なんだか関連性のありそうな二つの名前よね。ううん、どちらかというと、“百貌”と名乗った奴の方が一方的に意識している感じがある。信者か、それとも関係者か。私はそのどちらかじゃないかって考えているんだけどどう思う?」

「――――だからっ、その推理力は何なんですか!? お兄ちゃんといい、飛鳥さんといい! 私を追い詰める専用の思考回路が別にあるんですか!?」

「語るに落ちたわね」

「ぴっ……!?」

 

 

 どうやら今日の飛鳥さんは記憶力だけじゃなくて推理力も良いらしい。

 据わった目で淡々と追い詰めてくる姿に私が本気で怯え始めると、飛鳥さんはふっと表情を和らげた。

 

 どこか温かみすら感じさせる柔らかな表情。

 その長年の友人に向けるような柔らかな表情は、思わず今の状況を忘れて無条件で気を許しそうになってしまうほどの力を持っている。

 

 

「アンタの事だから少なくとも何かしらは情報を掴んでいるんでしょ? それが心当たりあるかどうかは別として、分かっている情報を少し私にも教えて欲しいのよ。なによりね、私にとってアンタが過去に何をやらかしていようと今更なの。神楽坂先輩と違って、最初にアンタの異能に救われていた私にとっては全部今更。アンタがとんでも無い奴だってことは前々から分かっているからさ。今になって何が出て来ても私はアンタの味方のつもりだし、何を秘密にされていたとしても私は燐香を疑うような事するつもりはないけど……でも、でもね。必要以上に隠し事をされていたら……やっぱり少しだけ傷付くのよ」

 

「追い詰めてからの優しさ!? せ、攻め方が上手すぎる……! まさかこれが、警察が所有する犯罪者に自供を促す時の高等技術なんじゃ――――あ、いたいいたい痛いです飛鳥さん!? 頬を引っ張るのを止めて下さい!!」

 

 

 浮かべていた柔らかな表情が嘘のように。

 再び能面のような無表情になった飛鳥さんによる、いつも通りの頬引っ張り攻撃に、私は無抵抗のまま悲鳴を上げるしかなかった。

 

 

 

 

 ‐2‐

 

 

 

 

 そんなこんながあって。

 

 

「――――なるほど、やっぱりと言うか。何かしら燐香に関係がある訳ね」

「い、いや……その、まあ、そうなんだと思います。多分……」

 

 

 あの後、観念した私は宍戸四郎が異能を手に入れた瞬間に見たことを飛鳥さんに話した。

 進んで情報を吐き出すつもりは無かったとはいえ、神楽坂さんとは違って、過去の私によって異能を開花させた経緯があり、異能犯罪に対して誰よりも矢面に立っている飛鳥さんにはある程度正直に話しておかないといけないとは前々から思ってはいたのだ。

 

 だからこそ。

 

 一つ、飛鳥さんも覚えがある通り昔私が使っていた技術に酷似している事。

 二つ、宍戸四郎の視界から確認した姿が過去の私そっくりだった事。

 三つ、はっきり言って私自身に心当たりはない事。

 

 これらの要点を踏まえた話を飛鳥さんに白状したのだ。

 

 現状を分かっている事のみに限定したとはいえ、やっぱり過去の黒歴史に少しでも近付く事情を話すのは恥ずかしい。

 

 

「心当たりは無いんですよぅ……私の昔の、正確には小学生くらいの時の姿を模している奴がいたのを確認しただけで……」

「燐香が心当たりは無いって言うならそれは信用する。でも、相手にとってはそうではないから姿が似通っているんでしょう? 偶々、本当に偶然姿や異能が似通うなんて、可能性としてはほとんど無いと思わない?」

「……それはそうなんですけども」

 

 

 早速遠慮のない正論で殴られて失神しそうである。

 とはいえそんな正論で殴られても、出てくるのは真実ではなく私の涙くらいなのを飛鳥さんは早々に理解するべきだと思う。

 

 異能による覗き見。

 先日使用したあれは“白き神”が使用していたような相手の意識に潜り込むことによって強制的に感覚のジャック(今回は共有だが)を行う技術。

 それによって見た光景は、私にとっては身に覚えが無く、だが同時にどうしたって私に関連するようなものであった。

 

 正体の分からない、宍戸自身も覚えのない“百貌”と名乗った存在。

 捕まった宍戸四郎が口を割ったその異能を与える存在については、存在自体が今なお最上位の秘匿情報として扱われており、私も視認したあの存在の脅威度は正直言って計り知れない。

 昔の私の姿を、マキナさえも『私』として認識するほど精密に模倣するだなんて、そんなとんでもない話は完全に想定外だ。

 わざわざ昔の私の姿を模倣して悪さをするだとか、そんな傍迷惑すぎる事をされる覚えは微塵も無いのだが……。

 

 

「……警戒してましたけど、結局あの後最後まで干渉してくることも無かったですし……窮地に陥った宍戸四郎の補助をするかと警戒してたのにそれも無かったですし……逆に、宍戸四郎に異能を与えた目的が分からなくて不気味なんです……」

「でも分かることもあるじゃない。今の燐香じゃなくて、昔の燐香にそっくりっていう情報があるんだから、少なくとも昔のアンタに関わりがある筈でしょ?」

「……そ、そんな事言われても……」

 

 

 私からの情報に、飛鳥さんは特に大きな驚きを見せることなく頷き、さらに私が気付いていない何かしらの情報が無いかを探り始めている。

 

 私としても協力しない理由が無いので、飛鳥さんの質問に対して血を吐く思いで頭を悩ませる事にした。

 

 

「うぅぅ……確かにあれは私が過去に飛鳥さんにやったような異能の開花ですし、あの姿は多分小学校の真ん中くらいの私ですし……でもでも、あの頃はもうむやみに他人の異能を開花する危険性に気が付いて控えるようにしたのに……」

「小学生の燐香ね。ちょっと見てみたいけど…………まあ、私が言えた義理じゃないけど、見知らぬ相手に異能を与えるなんてとんでもない話よね。まんま今の『UNN』がやってる悪行だし」

「ええええっ!? あ、飛鳥さんっ!? そんな見捨て方ありますか!?」

 

 

 今さっき「何があっても味方」とか言っていたのに、早速酷い裏切りの言葉を向けられて思わず絶叫してしまう。

 が、飛鳥さんに裏切りの自覚は無いのか、大して気にした様子も無く「それで」と続けた。

 

 

「なんにせよ、その当時の燐香の性格、行動、考え方を言っていきなさいよ。ほら、そこら辺を知っておいたら対策とか出来そうじゃない? ……わ、私個人としても、小学生の燐香には興味が――――って何その絶望した顔!?」

 

「……………………うそでしょ? そんなはずかしいことをしなくちゃいけないの?」

 

 

 私は呆然と呟いた。

 

 いや、言いたいことは分かる。

 実態はどうあれ、異能の技術や見た目が模倣されているのなら、考える材料として模倣されているものの情報はあればあるだけ良い事は分かる。

 

 でも、そこから起きる被害は甚大だ。

 黒歴史の序章を自分自身が話すという極刑に近い行為により、私の羞恥心が完膚なきまでに破壊される。

 というか、現時点で私の情緒は既に崩壊を始めている。

 

 

「そんなに恥ずかしいものじゃないでしょ!? だ、だって……私を助けてくれたくらいの事なんだから、当時の私からしたら、その、凄く格好良かったし……」

「ぅっ……!! わ、わたし……ぐぅうぅ……!!!」

「凄い死にそうな声!? す……凄かったわよ!? 格好良かったわよ!? 何も希望を持てていなかった私が、黒い靄みたいなアンタの言葉や存在にどれだけ救われたと思ってるの!? 恥ずかしがる必要なんてないのよ!! 頑張れ頑張れ!」

 

 

 とはいっても私だって今回の相手の厄介さは充分に理解している。

 私の羞恥心一つを理由に信頼できる相手への情報提供を拒むほど、子供ではないつもりだ。

 

 

「ひ、引かないでくださいね……」

 

 

 先日の神楽坂さんの大人の精神性を思い出しながら、謎の応援をしてくる飛鳥さんを前に、私は覚悟を決めて必死に言葉を紡いでいく。

 

 

「あ、あの当時の私は…………自分の異能の理解が進むと同時に色んな人の精神の奥深くを直視して、私は人間に対する一種の見切りを付け始めていました」

 

 

 そんな出だしから、私の黒歴史が絞り出される。

 

 

「……色んな人の外面と内面の違いや善良な人達を襲う醜悪な悪意による不幸を見て、この世は不幸や悲劇が醜悪な悪意を産み、産まれた悪意が次なる悲劇を産む螺旋構造だと理解しました。人間という種には醜さが付き纏っている。この社会は善人よりも悪人の方が世の中を上手く生きられて、努力家や正直者の大部分は醜悪なものに貪られる。昔見た、大多数の者に排斥された、翼が折られていた少女の境遇のように。どこまでも救えないような、きっとそんなつまらないものだって。でもそんな構造だと理解したからこそ、視える不幸を救っていけば、いつかきっとこの世から不幸は無くなるとも幼かった私は思っていたんです。いつかきっと……不幸から生まれる悪意が無くなって、多くの善性に世界の醜悪が淘汰されていくと心のどこかで信じていたんです」

 

「だから、今よりもずっと、視えてしまった苦しむ人や悲しむ人をどうしても見捨てられない時期でもありました。人間の醜さを嫌悪しながらも、苦しみを抱えた人達を最も救っていたのがあの時期です」

 

 

 ふうっ、とせり上がって来た恥ずかしさを少しでも落ち着けるために息を吐き、私の言葉に困惑した表情の飛鳥さんの目を見返した。

 

 

「それは……確かに偏った考え方だけど、それほど悪いものでも無くない?」

「全てが悪いとは言っていません。でも、そんな考えの末路なんて大抵決まっているものです。そしてその考えは同時に、自分以外の人間の善性を全く信じていない事でもあったんです。つまり、自分の関わらないものは全て信用しない。私が関わっていないものには手を加えないといけない。そして、今の醜悪な世界を形作っている支配者は全て役立たずであり諸悪の根源。世界に存在していたあらゆる組織や団体、国家や宗教、全部が大嫌いだったんです」

 

 

 雲行きが悪くなってきたことに気が付いたのだろう、飛鳥さんの表情が曇る。

 我ながらとんでもないと思うが、あの頃の私はそんなことを真面目に考えていたのだ。

 

 

「ごく普通の小学生がこんな考えをしても別に世界に影響は無かったでしょう。問題は、影響を出せるような種類の力をコイツが持っていた事です」

「……」

「醜悪な世界を形作る現状の支配者が大っ嫌いなソイツは、いかに自分の力で平和を築こうかと考える訳です。自分の異能は理解した。情報を統制する土台は作った。次の段階はどうすれば、『私の平和』を世界規模で広げていけるかを、本気で考えていた訳なんです」

 

 

「……まあ、考えていただけで、その当時の私は結局大きな行動をしませんでしたけどね」、なんて結果の話は何の慰めにもならない。

 

 何だか悲しそうに表情を歪めた飛鳥さんに私は誤魔化すような笑いを向ける。

 改めて口に出してみて再確認したが、とんでもない危険思考だと思う。

 

 

「まあ、うん。そんなものが幼少期燐香ちゃんの歪みまくった思想だったんですよ! 本当に、今思い出すと顔から火が出そうなんですけどっ、あの当時はほら、人の心の奥底にある醜い部分を視過ぎて捻くれ曲がってた部分があったんです! 今だって捻くれてないとは言いませんけど、昔の私はそういう方面への思想が本当に尖ってたんです! ちっこい癖に可愛くないですよね!」

「……よくここまで丸くなれたものね」

「それは……手痛い経験がありましたからね」

 

 

 思い出したくも無い事を脳裏に映しながら私はそう言った。

 やっぱり過去の自分自身の精神性の話だなんて、誰だって好き好んでするものじゃない。

 ぞわぞわとしたなにかを感じて、私は改めてそう思った。

 

 

「えっと、異能の強さに関しては出力だけを見るなら強力ですが、あの頃の私は直接異能持ちと戦闘なんてしてませんし、本格的な想定もしてませんからね。異能の種類的に戦闘の必要が薄いとはいえ、経験不足であり手札不足なのは事実。万全の飛鳥さんがちゃんと対峙できれば問題なく押し切れる筈です。今の私を相手取る時にも言える事ですが、単体を狙ったものでは無く周囲全体に攻撃を撃つのがコツです……とは言っても、それをさせないように思考誘導はすると思いますが…………こんなところですかね」

 

 

 あの頃完成させていた技術はいくつあっただろうか、なんて考えながら私は自分の攻略法を飛鳥さんに伝えた。

 

 模倣元である当時の私の性格や思考、異能への対処法。

 そうした伝える必要のあった話を全て終え、私は精魂尽き果て机にうつぶせになる。

 何もしていないのに非常に疲れた。

 これまで戦ってきたどんな異能持ちよりも、今回の相手は強敵だったかもしれない。

 

 

「……いっぱい恥ずかしい話をしました……もう誰にも会わないで一生を過ごしたい……」

「もう、何言ってるのよ。ほら、全然笑ってないし引いてもいないでしょ。それで、ちなみになんだけど小学生の時の思想がその後どんな風になっていったかっていうのは……」

「うぅぅ……押し入れの中に引きこもりたい……」

「うん、無理そうね」

 

 

 呆れたような微笑みを溢した飛鳥さんが、うつぶせ状態でいる私の頭をポンポンと叩いてくる。

 筋肉質で固かった神楽坂さんの手とは違う柔らかな感触に癒されて、少しだけメンタルを回復させた私はそっと顔を上げた。

 

 仕方のない娘を見るような優しい顔。

 そんな顔を私に向ける飛鳥さんを見ていると、私の脳裏に遠い昔の母親の記憶が蘇った。

 高校生にもなってこんなことを想起してしまう自分が情けなくて、思わず自嘲するように笑ってしまう。

 

 私は、頭に浮かんだ光景を忘れるように頭を振る。

 

 

「……そういえばですけど、私がでっち上げた“ブレーン”の話。飛鳥さんが拡散された動画内で口にしちゃってたから反響が凄いらしいですよね。放置してれば収まるかと思ってたら、なんかファンクラブサイトみたいのが立ち上げられているらしいですし。私は恥ずかしくて見てないですけど……警察の権力で潰せないですかね、不届きなアホが作ったその変なサイト」

「わっ、私のせいだって言いたいの!? あ、あれはアンタが私をからかうから意趣返しの意味で言っただけで。そもそも動画を撮られていたなんて知らなかったし……フ、ファンサイトね……あれね。なんか入るとあの時のアンタのデフォルメされたイラストが貰えるらしいわね。その上、アンタがあの時着ていた神楽坂さんの上着を特定して、商品への直接リンクが張られたりして、どこの誰が作っているサイトかは知らないけど随分精力的に活動してるのよね。この前私が入……確認した時はそのサイトの会員が1万人を突破してたし」

「…………はい?」

 

 

 飛鳥さんから返ってきた言葉を理解するのに数秒要した。

 なんだか、とてつもなく重大な情報を教えられた気がする。

 

 つまりなんだ。

 映像では欠片しか映ってなくて碌に活躍もしてないから、たとえ妙なファンが出来ていたって気紛れ程度の軽いものになるだろうとしていた私の判断は大きな間違いで、熱心な推し活動を継続して行う存在が出てきている、と。

 そしてその存在のせいで、変な人気を持った私のでっち上げ(ブレーン)の知名度は独り歩きをしていて、妙なデフォルメイラストまで扱われるようになっている、と。

 

 ……いや、いやいや、いやいやいやいや、そんなアホな展開があってたまるか。

 

 

「な――――なんですかそれ!? 私知らないんですけど!!??」

「私も確認したけどアンタの素性がバレそうな情報は無いし、違法なことはしてないみたいだから警察で潰すのは無理っぽいし。まあ、しばらくやりたいようにやらせておけばいいんじゃない? なんか今後はスタンプを実装するとか、サイト内の更新を増やすとか、テレビや報道に取り上げられた場面のまとめを行うとか、色々やりたい事が書かれてたけど……あっ、ち、ちょっと暴れないでよ燐香!」

「ば、馬鹿なんじゃないですか!? 誰ですかそのサイトの制作者!? 貴重な時間と労力と技術をいったい何処に注いでるんですかそのアホ!? そ、そのサイトを早く潰さないと!! マキナ! マキナー!!」

 

『…………』

 

 

 さきほどまでの羞恥心がどこかに吹っ飛んだ自覚も無いまま、何故だか返答の無いマキナに向けて私は悲鳴に近い声をあげた。

 

 

 

 


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