いや、いつもでした…。
Battle10:諏訪隊
■■■
『
本部オペレーターからの指示が聞こえる。
レーダーによると近くのトリオン兵は2体。
1体はこちらに近いがもう1体は少し距離がある。
「諏訪さん、どうしますか?」
「離れてる方に味方が1人近づいているから俺はそっちを片付けてくる!
日佐人は近くのトリオン兵を抑えてろ、無茶はしないようにな!」
「了解です!」
本部オペレーターと連絡を取りすぐに近くのトリオン兵に向かう。
おサノ先輩以外のオペレーターとやり取りをするのは久しぶりだな、と思いながら。
敵が位置する場所に到着する直前。
オレ以上の速さでトリオン兵に向かう人がそこに居た。
トリオン兵、モールモッドの全身が見えた瞬間。
「チェストーーー!!!!」
大きな声と同時に吹き飛ばされるモールモッド。
近くの瓦礫に頭から突っ込む。
視線の先にはモールモッドを殴り飛ばしたのであろう人物が居た。
「白浜先輩!」
B級フリー隊員の白浜 兼一先輩だ。
「やぁ、日佐人君。1人?」
「はい、そうです!近くのもう1体の方に諏訪さんが向かってます!片付け次第こちらに向かうそうです!」
「そっか、じゃあ足止めで十分かな?」
こちらを向いて話している白浜先輩の後ろでゆっくりだが、動きを再開しているモールモッド。
片腕も捥げ、見るからにボロボロの姿だがまだ活動できるのだろう。
構える自分に対して自然体で振り向く白浜先輩。
立ち上がったモールモッドに対して──。
降り注ぐキューブの雨。
コアを貫かれ、崩れ落ちるモールモッド。
「おー、無事か、おめーら!」
「珍しく詰めが甘いね、ハマシラー」
「諏訪さん!」
「や、やぁ、王子君。ありがとね」
キューブの飛んで来た先を見ると諏訪さんと王子先輩がそこに居た。
諏訪さんが向かった先に居た隊員王子先輩だったのだろう。
王子先輩と白浜先輩が会話をしているが、白浜先輩が少しぎこちない感じがする。
ひょっとして王子先輩が苦手なのだろうか、と思うと同時に。
──オレも他人のこと言えないけどさ。
前期のランク戦最終戦時、王子先輩に笑顔で切り捨てられた。
その苦手意識がまだ少し残っている。
トリオン体相手とは言え、笑顔で切り飛ばす人って王子先輩と犬飼先輩位しか知らない。
「──そっか。じゃあまた気が変わったら声掛けてね。ハマシラーならいつでも歓迎さ!」
「う、うん、ありがとう」
「それじゃあ僕はこれで!またね、3人とも!」
そう言い残して別の場所に駆けていく王子先輩。
それを見て息を吐き出す白浜先輩。
あれ?本当に苦手なのかな、王子先輩のこと。
「何だ、白浜。おめー王子が苦手なのか?」
──ストレートに聞くなぁ、諏訪さん。
「苦手というかなんと言うか。なーんか僕の不良っぽいやつアレルギーが反応してるんですよ」
「何ですか、それ?」
相変わらずよくわかんないことを言い出す人だ。
「そう言えば王子とは何を話してたんだ?」
「あー、あれです。チームに入らないかっていう勧誘です」
「んで断ったのか?」
「……えぇ、まぁ、はい。そうですね」
少し歯切れが悪い返事。
白浜先輩はいつもチーム加入の話になると言い淀むことが多い。
──こんなに強いのになんでチーム組まないのだろうか?
そう、白浜先輩は強い。
影浦先輩や荒船先輩と互角以上の戦いが出来る。
トリオンは少ないが守りがとても上手い。
足を止めた白浜先輩を攻め切るのは、ハッキリ言ってマスタークラス以上でないと無理だろう。
少なくとも今のオレではできない。
この前も模擬戦をしてもらったが、振った弧月が当たらずに向こうの正拳突きが当たった時は何が起きたのか全く理解できなかった。
そんなに強い白浜先輩だが、結構誘われているのにチームを組もうとしない。
コアデラの2人も隊に勧誘していたし、弓場さんにも誘われたことがあるらしい。
──どこのチームに入っても問題なく活躍できると思うんだけどなー
「ったく。まぁチーム組むかどうかは自由だが、チームの方が採れる行動は広いぞ」
諏訪さんに言われ少し考え込む白浜先輩。
こんなに悩む位だから何かしら思うところがあるのだろう。
「おら、任務終了だ。帰るぞ、日佐人」
「了解です。それでは白浜先輩、失礼します」
「あ、うん。またね、日佐人君。お疲れ様です、諏訪さん」
□□□
諏訪さんと日佐人君の姿が見えなくなった。
防衛任務は終わったので僕も戻って良いのだが。
少し考えたいことができた。
──チームの方が採れる行動は広いぞ
諏訪さんに言われたことが頭に残ってる。
そう、確かにチームで動いた方が採れる行動があるのは間違いないだろう。
特にこういった防衛任務などでは尚更、チームの方が良い。
それは今までの経験からも分かっている。
ボーダーに入り3ヶ月が経った。
その間に結構多くの隊からチームに誘われた。
さっきの王子君だけでなくゾエ君とかも誘ってくれたりしたけど。
頑なに断っている理由はただ一つ。
──根本的に僕って『チーム』で動くのに向いてない気がするんだよなー
そう、僕の最優先行動は人を守ることと自分の信念を守る戦いこそを優先すること。
それに反しない限りはチームでの行動に専念できるだろう。
しかし、それは裏を返せば自身の信念と反する場合チームの行動に反するということだ。
いや、チームどころかボーダーという組織の命令であっても逆らう可能性が高い。
最悪大きな組織の場合はその行動をフォローができるかもしれないが、チームというより小さな組織の場合僕というノイズは致命傷になり得るだろう。
新島にもさんっざん言われている。
お前ほど組織として扱いにくい馬鹿は居ない、と。
そして僕もそれは理解している。
そんな融通の利かない僕がどうやって周りと歩調を合わせることができたのか。
──こういう時に美羽さんのありがたみを感じるなー
そう、美羽さんの存在だ。
僕の考えを理解してくれて、足りない部分をフォローしてくれていた存在。
改めて彼女に助けられていたと思う。
とは言え、彼女に頼りっぱなしで成長しないようではいつまで彼女に相応しい男にはなれない。
それを克服する為にもどこかのチームに加わるのはありなのだが……。
「まぁ、今すぐに答えを出さないでも良いか」
とりあえず今できることをしっかりとしよう。
チームを組むかどうかも大事だが、他のチームの人達とコミュニケーションを取るのも大事と東さんには言われた。
実際何回か防衛任務に参加して他の部隊の人々とコミュニケーションを取る重要性は理解できた。
だから今はできる限り多くのチームとコミュニケーションを取れるようにしていくことも大切だ。
──こういったコミュニケーションは新島が得意だったな
今度はアイツのコミュニケーション能力に感謝することになるとは……。
癪だがアイツなら僕の考えを理解した上で上手く運用するだろう。
そういった人身掌握術はアイツが一番だし。
「おっと、考えすぎてた」
気が付いたら結構時間が経っていた。
僕も本部に戻ろう。
ついでに明日の防衛任務のシフトも確認しておこうかな?