史上最強の界境防衛隊員ケンイチ   作:みたけ

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第二章
BATTLE5:同学年アタッカー


 

 

 相手の死角を縫う様に放つマンティス。

複雑な軌道。

獲物を仕留める蛇の如く迫るそれ。

 

 薄皮一枚を削るだけに留まる。

死角をついたであろう。

把握するのも困難なあの軌道を。

初見で逸らされる。

多少の驚きと。

僅かな疑問を覚える。

 

 

──ひょっとしてコイツも?

 

 

 自身の持つクソ能力。

その事を思うと同時に─。

それどころではない事を思い出す。

 

 

 迫る圧力。

─何も感じない。

 既に相手の間合い。

─何も感じない。

 両手にスコーピオンを生やす。

─何も感─。

 

 

──来る!!

 

 

 突如迫る右拳。

なんとか反応し、受け流す。

少し崩される。

追撃されるが、飲み込まれないよう応戦する。

あまり使わないもぐら爪(モールクロー)を放つ。

 大袈裟に飛び退く。

()()()()()()()()()()()()

 

 

──間違いない!!!

 

 

「見た目の割には楽しめるじゃねーか!!!!」

 

 

 構える相手に突撃する。

悲しい感情が刺さってきた。

……いや、スマン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入隊から1週間ちょっとが経った。

戦闘訓練の他に地形踏破、隠密行動、探知追跡の訓練を行う。

今のところ良い成績を出せている。

 

 入隊時に担当である時枝君に教えて貰った事を思い出す。

合同訓練は週2回。

この調子ならどれだけ遅くとも今月中には4,000ポイントは超えるだろう。

もっと早く正隊員になりたいなら、C級ランク戦を行いポイントを稼ぐ事もできるとの事だ。

色々丁寧に教えて貰った。

今度お礼を言おう。

 

 さて、ランク戦のロビーに着いた。

あまり足を向けたい場所でないが、その雰囲気は知っておこうと思う。

モニターに映る戦いを見る。

 

 

─真っ二つに切り裂かれる隊員。

─蜂の巣になっている隊員。

 

 様々な姿が映し出される。

それらを見ながら改めて思う。

 

 

──うん、やっぱり怖い。

 

 

 いくら傷付かないとは言え。

積極的に参加したいとは思わない。

早く正隊員になりたいけど。

しょうがないね、うん。

地道に───。

 

 

「お!居た居た!

おーい、白浜!」

 

 

 声が掛けられる。

振り向くとそこには太刀川さんが居た。

知らない人が2人いる。

 

 少し注目が集まった。

 

「お久しぶりです、太刀川さん」

「勝負しようぜ!」

 

──…………。

 

 いきなり過ぎて、黙ってしまった。

やっぱり戦闘狂タイプなんだろう。

傍に居る二人も呆れているかの表情。

 

「いや、いきなり過ぎるでしょう、太刀川さん」

「ほら、ポカンとしてますよ」

「えー」

 

 えー、ではないが。

 

「済まないな、いつもはもう少しは落ち着いてるんだが」

「いえ、大丈夫です」

「初めて見る顔だな。俺の名前は荒船 哲次。高校2年だ」

「村上 鋼だ。荒船と同じ2年生だ」

「初めまして、白浜 兼一です。僕も高校2年生です」

 

 こちらも挨拶を返す。

 

「あぁ、ひょっとして最近三門高校に来たってやつか?」

「はい、そうです」

「そう言えばクラスでも少し話題になったな。」

 

 しばらく談笑する。

早速同い年と知り合えるのは幸運だ。

 

「なー、勝負やろうぜー!」

 

 まだ言ってる。

 

「まだ言ってるんですか、太刀川さん」

「てか白浜の格好見る限りだとまだC級だろ?」

「うん、先週入隊したばかり」

「そりゃ無理だわ」

 

 呆れた顔で太刀川さんを見る2人、

 

「何だ?まだB級じゃないのか?」

「はい」

 

 むしろ何故既にB級になっていると思ったのか。

 

「んじゃあ適当にその辺の奴らとランク戦してさっさとB級になれよ。

んで、俺と闘え」

 

 ほらほら、と背中を押される。

 

──いやいやいやいや!!

 

 強引すぎる。

 

「いや、そりゃ無茶でしょ」

「ていうか何でそんなに白浜と闘いたいんですか?」

 

 あ、なんか嫌な予感がする!!

 

「入隊前にちょっと手合わせする機会があってな。

いきなり2本取られたからなー。

今ならもっと面白そうじゃん」

 

 しんっとする空気。

集まる視線。

 

「……まじか?」

「……うん、まぁ」

「その時初めてトリガーに触れたんだろ?」

「…………うん」

 

 徐々にざわめき始める周囲。

より集まる注目。

 

「ほら、そこに丁度良さそうなのが2人いるじゃん。

やって来いよ」

 

 視線を向ける。

同じC級隊員の服を着ている。

肩を大きく震わせ。

─視線を逸らされた。

 

 そりゃそうだ。

何たってA級隊員に黒星を付けたなんて情報が出て来たのだ。

しかも何やら勝負仕掛けられそうな話の流れ。

僕だって逃げる。

 

「今ポイントは?」

「えっと───」

「じゃあ、本当にもうすぐじゃないか」

「よし、何人か見繕ってくるから待ってろ!」

「え、いや、ちょっと!!」

「諦めろ、俺も荒船も少し興味湧いて来た」

「お、いいねいいね!」

 

 断れる雰囲気じゃなくなってしまった。

 

──仕方ない、か。

 

 諦める。

どうせいずれ必要になっただろうし。

その後何人かとランク戦し、無事B級になった。

 

 寺島さんの所に顔を出してトリガーをセッティングしてもらった。

初めて会った時からお世話になりっぱなしだ。

改めて挨拶に来よう。

 

 その後太刀川さん、荒船君、村上君とランク戦した。

休憩を挟みながら5本先取を何回か行う。

 その際に妙な事があった。

村上君が凄い勢いで僕の動きに対応し始めた。

実力としてはそんなに大きく変動してない筈だが?

 

「あぁ、それは俺の副作用(サイドエフェクト)の効果だ」

 

 また出てきた。

 簡単に説明を受ける。

トリオン量が高い人間に発現する超感覚の事。

そして村上君の場合は強化睡眠記憶。

睡眠をとる事で学んだ経験をかなりの高確率で自身に反映させる事が出来るらしい。

 

 羨ましいと素直に思った。

けど同時にそんな能力持ってたらあの師匠達に今以上に無茶をさせられるのでは?

─そう思うと途端に羨ましくなくなった。

 

「便利な部分もあるけど、それ以上に大変そうだね」

「!──そうか。」

 

 少しほっとした表情。

きっと苦労してきたのだろう。

 

 荒船君と太刀川さんが出て来た。

 

「さて、もう一戦お願いできるか?」

「良いよ、よろしく!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日。

 

──落ち着かない。

 

 ラウンジでお茶を飲む。

少しでも心が落ち着けば、と思ったが。

焼け石に水だな、こりゃ。

 

『アイツだぞ、噂の』

『太刀川さんに勝ったって奴?』

8,000ポイント超え(マスタークラス)の荒船さんにも勝ってたって』

『まじかよ』

『何者なんだ?』

 

 なんか噂になってる、らしい。

 元々人に注目されるのは苦手だ。

早いところ席を外そうと思いお茶を一気に飲み干す。

 

「おい、お前!」

 

 声が掛かる。

 黒色のバサバサした髪の男の人だ。

黒を基調とした格好にマスクを付けている。

鋭い視線とその容貌に少し怯えてしまう。

 途端、より鋭くなる視線。

 

「ちょっと、ちょっと。もう少し違った声の掛け方あるでしょ。

ごめんね、白浜君」

 

 この人は確か。

 

「北添君、だっけ?

同じクラスの」

 

「あ、覚えててくれたんだ、ありがとう。

ほら、カゲ!」

「……影浦 雅人だ」

「白浜 兼一です」

「あ、カゲも同い年だよー」

「あ、そうなんだ。よろしくお願いします」

「ちっ!おい!本当にお前太刀川に勝ったのか!?」

 

 それが気になって来たのだろう。

一通りの経緯を話す。

 

 話している最中に髪をガシガシ搔きむしり始める影浦君。

 心なしか、イライラしてる?

 

「─あの」

「あァ!?」

 

 睨まれる。

 

「─僕、貴方に何かしましたっけ?」

 

「…ちっ。別にお前のせいじゃねーよ。」

「ごめんねー、白浜君。

カゲって感情受信体質のサイドエフェクト持ちだからさー」

「おい、ゾエ!」

「サイドエフェクト……。」

 

 簡単に説明を受ける。

自分に向けられる感情や意識がチクチク刺さるらしい。

だからギャラリーが多いとその分イライラするそうだ。

 

 

──なるほど。

 

 

 眼を見る。

こちらに怪訝な顔を向ける。

 

 

──あぁ、そうか。

 

 

「影浦君は」

 

「優しいんだね」

 

 

 

「────あ?」

 

「相手の感情がわかってしまうから。

相手を傷つけたくないから。

怖い格好して遠ざけるようにしてるんだね」

 

 ヤマアラシのジレンマみたいなもの?

それとはまた違うか。

なんかヤマアラシの格好をしている影浦君を想像してしまった。

途端に微笑ましく思えてきた。

 

「────────」

 

 固まっている影浦君。

どうしたんだろう?

具合でも悪いのかな。

 

 

「──────おぃ」

「ん?」

「今から勝負するぞ」

「───え?」

「サンドバッグにしてやる!」

「え、いや、何で!?」

「うるせぇ、来い!!」

「いやいやいやいや!

いくら照れ隠しとは言え──」

 

「いいから!!黙って!!!ついてこい!!!!」

 

 引きずられる僕。

助けを求める様に北添君を見る。

爆笑している。

助けてくれないらしい。

 

 はぁ。

仕方ない。

本当の事を言われて強引な態度を取る姿。

谷本君そっくりだ。このツンデレ────。

 

「もうてめぇは何も考えるな!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ。じゃあ白浜君って格闘技やってるんだ」

 

「うん。

昔っからどうもいじめられてたからね。

その対策として」

 

「あー、目に浮かぶな、その光景」

 

「それじゃあ、強くなって見返したりとかしたの?」

 

「いや、そんな事したら彼らと同じじゃない」

 

「おー!!カッコイイ!!」

 

「いやぁ、それほどでも」

 

「ただのお世辞に何照れてんだ」

 

「いいじゃん、褒められ慣れてないんだから。

あ、ゾエ君。ジュースご馳走様。

明日お金返すよ」

 

「いやいや、良いよ。それ位」

 

「お、3人とも何やってんだ?」

 

「あ、荒船君」

 

「個人ランク戦の帰りだよ」

 

「おめーこそ何してんだ?」

 

「チームミーティングの帰りだ。

あ、そうだ白浜。丁度いい。

これやるよ」

 

「うん?何これ?」

 

「ボーダーで使われている主要なトリガーの情報だ。

昨日見た限りお前トリガーの知識殆ど無いだろ」

 

「良いの!?ありがとう!!!」

 

「何だ、優しいじゃねーか」

 

「いずれ自分用に纏めるつもりだったからな。

鋼の分と併せてついでに作った」

 

「流石、マメだねー」

 

「これで泳げれば完璧なのによぉ!」

 

「うるせぇ、関係ねーだろ!」

 

「ありがとう、後で見させてもらうよ!」

 

「おう。

そう言えばカゲと戦ったんだろ?

どうだった?」

 

「ハッ!ボコボコにしてやったぜ!!」

 

「いやいや、ふっつーに5分5分だったでしょ」

 

 

 

 

 こうして1日が過ぎていった。

 

 

 

 

 




???「カゲさんはすごくやさしい」

???「そうだね、カゲさんはやさしいね。」
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