史上最強の界境防衛隊員ケンイチ   作:みたけ

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来月のワートリが休載との事を聞き、途中ですが投稿する事にしました。

葦原先生の体調が無事な事を祈ります。




BATTLE7:柿崎 国治

 

 

「ふふ、さーて、何を買おうかなー!」

 

 独り言を言いながら店内を眺める。

今まで溜め込んだ感情を吐き出すかの如く。

目に映る色が部屋に与える彩りを夢想し、それを目移りする全てで行う。

 

「こんなにあると迷うなー!」

 

 あぁ、見るだけでも、迷うだけでも癒される!

美羽さんが猫を追っかけるのも納得だ。

好きな事こそが荒んだ心を落ち着かせてくれる。

 

 

 三門市にある生花店─Flower Shop 楓─。

僕は今そこに居る。部屋に癒しを飾る為だ。

 

 

「ユキダルマキング、僕の事をわかってくれるのは君だけだよ」

 

 

 そう、今僕には精神的な負担が掛かっている。

 

 

 香取さんとランク戦をしてここ数日。

ボーダー内で注目を集めてしまっている。

入隊したばかりの時とはまた違う視線の色。

 

『ほら、あいつだぜ』

『あぁ、例の』

『女性だからって手を抜くっていうやつ』

『フェミニスト気取りかよ』

 

 剝き出しの嘲笑が聞こえる。

いや、それだけならまだ良いのだ。

 

 問題は女性隊員達からの視線だ。

軽蔑の視線が増えていっている。

女性だからと手を抜く、という事を快く思ってないのだろう。

 

 

──手を抜く、なんて言ってないんだけどなー。

 

 

 そんな失礼な事はしない。

やるのであれば自分にできる全力を尽くす。

話しかけてくれれば、その旨を伝える事ができるが。

 

 

──自分で宣言するのもなー。

 

 

 話しかけてくれないのであれば、その誤解を解くのは難しい。

結果としてその誤解が広まるのを止められていないのだ。

 

 

「なーんで、僕は毎回こんな気持ちにさせられるんだ」

 

 DオブDの時にもレイチェルさんにこんな感じで噂を広められてしまった。

思い返すと小学生の時も……。

僕は何もしてないのに…。

 

 いや、今回に関してはそう言われるのも仕方ないのかな。

 

 重い息が漏れる。

 

「ん、白浜君じゃないかね。」

 

 気配の方を振り返る。

 

「えっと、根付メディア対策室長?」

「久しぶりだね」

「はい、お久しぶりです!」

 

 入隊前にお会いして以来だ。

 

「それで、どうしてここに?」

「えっと、実は園芸が趣味でして」

「ほう!そうなのかね!?」

「えぇ。前の学校では園芸部に入っていましたし」

「格闘技をやってる位だから、興味ないのかと思ってたよ」

「いえいえ。むしろ武術の疲れを癒してもらってましたよ!」

「わかる、わかるね、その気持ち!!」

「では根付メディア対策室長も!?」

 

 どうやら庭いじりが趣味らしい。

2人して花について語り合う。

周囲から少し奇妙な視線を感じるが、無視無視。

 

「む、そうだ、白浜君。この後時間あるかね?」

「?はい、大丈夫です」

「じゃあ、少し頼まれてほしいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまないね、大きな荷物になって」

「気にしないでください、鍛えてますから!」

 

 今根付さんと共にボーダー本部のメディア対策室に向かっている。

メディア対策室に観葉植物を増やしたい、との事だ。

どうやらここの所、職員が疲労しているらしい。

少しでもその気晴らしになれば、との事だ。

その為に鉢やプランター、苗、土、等を運んでいる。

何往復かは必要になりそうだ。

 

「そうか。しかし、本当に鍛えてるんだねぇ。正直あまりそう言う風に見えなくて」

 

 見た目結構な量を抱えているからか、そう言われた。

重さはそうでもないが、量が嵩張って大変だ。

 

「よく言われますよ。正直花を育ててる方が性に合っていると思いますし」

「そうだね、その方が君には似合ってる気がするよ」

 

 他愛のない会話をしながら通路を進む。

 

「根付対策室長!」

「ん?」

 

 向こうから職員が話しかけてくる。

 

「すみません、少しお時間いただけますか?」

「全く、休む暇もないねぇ。すまないね、白浜君。少し行ってくるよ」

「はい、では僕の方で持って行きますね!」

「いや、君まだ道を──」

 

「お、根付さんじゃないですか。どうしたんですか?」

 

 声のした方に顔を向ける根付さん。

 

「柿崎君!丁度良い所に!」

 

 根付さんが話しかける。

その先には短い髪で柿色の隊服を身に着けてる、しっかりとした体型の男性隊員が居た。

落ち着いた雰囲気を感じる。

 

「何してるんですか、こんな所で」

「すまないが、少し急用ができてね。彼をメディア対策室まで案内してくれないかね?」

 

 こちらに向けられる視線。

 

「了解っす」

「すまないね、それじゃあ頼んだよ!」

 

 根付さんは早足で廊下を進んでいく。

 

「それにしても凄い荷物だな」

「あ、はい。メディア対策室に観葉植物をいくつか飾りたい、との事です」

「ん?これ以外にも荷物ってあるのか?」

「はい。車に積んでます」

「そうなのか。よし、俺も手伝うぜ!」

「え、いや、いいですよ!ちょっとの往復で済みますし」

「だったら尚更2人でやった方が早いだろ!」

 

 爽やかな笑顔。

 

「すみません、ありがとうございます。」

 

 そう言えば

 

「僕は白浜 兼一と言います、高校2年生です。よろしくお願いします」

 

 少し目を開き

 

「俺は柿崎 国治、高3だ。よろしくな、白浜!」

 

 

 

─────────

 

 

 

 それから柿崎さんと話をしながら荷物を運ぶ。

話していて分かった。この人滅茶苦茶良い人だ。

 

「そう言えば高校の入学祝いの花として、なんか良いのってある?」

「えーっと、男性ですか?それとも女性ですか?」

「女性だな。2人とも隊の一員なんだ」

「あ、でしたら────」

 

 

「結構力あるのな。何かスポーツでもしてたのか?」

「いえ、武術を少々」

「へー!格闘技かー!空手とか?」

「はい、それに加えて中国拳法、柔術、ムエタイですね」

「多すぎだろ!!なんか理由でもあるのか?」

 

 

「そもそも対人の模擬戦って怖いんですよ、僕!」

「あぁ、わかる。俺も最初は何でネイバーと戦うのに対人戦するんだって思ったし」

「そう、そうなんですよ!」

「…なぁ、なんでボーダーに入ったんだ?」

「街の人を守りたい、そう思ったからです」

「!!そう、か。そうだよな!」

 

 

─────────

 

 

 全ての荷物を運び終わった。

とりあえず今できるのはこれ位かな?

 

 一息をつくと同時に。

後ろから何かが近づく。

 

「うん?」

 

 急に振り返るとそこにはジュース片手の柿崎さんが居た。

 

「格闘技やってるって本当なんだな!?漫画みてーな反応だったぜ!」

 

 どうやら驚かそうとしたのだろう。

 

「悪い悪い。ほら、おつかれさん!」

「あ、ありがとうございます!」

 

 ソファに座りながら貰ったジュースを飲む。

 

「……なぁ、白浜」

 

 隣を見る。

真っ直ぐな視線。

 

「噂でおまえが女性だからと手を抜く隊員、って聞いたんだが」

「…それは」

 

 片手で遮られる。

 

「あぁ、待て待て。おまえがそういうやつじゃないってのはよーくわかった。おまえは良い奴だ」

 

 微かな笑み。

少し確信の色が浮かんでいる。

 

「だからこそ、何でそんな話になってるのか気になってな」

 

 変わらない視線。

 

「実は──」

 

 

 

「なるほど、ね。香取がねー」

「そうなんですよ!それ以来女性隊員の視線が厳しくて厳しくて!!」

 

 ついつい項垂れる頭。

泣き言の様に愚痴を言ってしまう。

 

「すまないな、香取も悪い奴じゃないんだが」

 

 そう苦笑交じりに言われる。

別に柿崎さんが謝る事じゃないだろうに。

 

「いえ、まぁ、良いんですけどね。人の噂も七十五日って言いますし」

 

 まぁ、その間が少し憂鬱なのだが。

 

 

 

「いや、そこは大丈夫だろ」

 

 

 聞こえる強い断定。

顔を上げる。

訝しげな僕の視線に気付いたのだろう。

 

 

 

「なんたって」

 

 

 

 強い確信の色を帯びながら。

 

 

 

「ボーダーには良い奴が多いからな!」

 

 

 

 春光を思わせる笑顔があった。

 

 

 

 

 




照屋「ワートリ23巻に柿崎さんの良い所が詰まりすぎてて2万回見ました!」

隠岐「ウソつ、、いや、あり得るか」
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