史上最強の界境防衛隊員ケンイチ   作:みたけ

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皆様、お久しぶりです。
リアル生活が忙しくなり時間が作れませんでした。
半年以上投稿が無いにもかかわらず、感想やメッセージを送付してくださった方々がいらっしゃり、とても励みになりました。
心より感謝いたします、ありがとうございます<m(__)m>



BATTLE8:二宮隊

 柿崎さんと出会った次の日。

ラウンジでゾエ君と話していたら話しかけられた。

 

「やっほー、ゾエ」

「あ、犬飼君に辻君。それに鳩ちゃんまで」

 

 声のする方を向く。

もさっとした髪を前方に流している男性と黒髪の男性と女性がこちらに向かっていた。

3人ともお揃いの黒スーツを着ている。

 

「ひょっとしてそちらは噂の白浜君?」

 

 人懐っこい笑みをでこちらを見据える。

 

「初めまして。白浜 兼一です。高校2年生です」

「犬飼 澄晴。同じ高2だよー、よろしく」

「辻 進之介です。高校1年生です」

「うん、よろしく。犬飼君、辻君。それに鳩原さん」

「あれ?鳩原ちゃんのこと知ってるの?」

「クラス同じだしね」

 

 話したことないけど。

今も軽く目配せする程度だ。

もう1人の黒髪、辻君からこちらを伺う視線を感じる。

なんだろ、嫌な感じじゃないけど。

 

「そう言えば白浜君さー」

「ん?」

「女性隊員に手を抜くって噂本当?」

 

 うぐぅ!!

ドストレートに来たな。しかもそこそこ大きな声で。

周囲の目のが集まる。 

 

なのに犬飼君はなんかいたずらっ子みたいな顔をしている。何なんだろう?

 

「いや、犬飼君、それは」

 

 北添君が犬飼君に話しかけるけど片手を上げて遮る。

 

「いや、手を抜くなんて事はしないよ。失礼だしね。

…けど、苦手なのは否定しないよ」

 

 正直な事を話す。

どう取られるかはもう任せるしかない。

 

「あ、そうなんだ。じゃあ、手を抜くってわけではないんだ」

「それはそうだよ」

 

 驚いた風な表情。けど全然驚いてない眼の色。器用な人だな、と思う。

 

「……白浜先輩」

「ん?」

 

 辻君がこちらに近づいてくる。眼にははっきりとした感情が浮かんでいる。

 

「俺も同じです」

 

 同類を見る眼だ。

 

「?ひょっとして──」

「そ。辻ちゃんも女の人が苦手なのさ。モテる顔してるのに勿体ないよねー」

「苦手なのはしょうがないじゃないですか」

 

 どうやら非難しにきたわけではなさそうだ。

それにしても3人ともスーツ似合うなー。

 

「3人ともお揃いのスーツ着てるけど、それって隊服?」

「そ。俺と辻ちゃんは同じ二宮隊なの」

「二宮隊って……。確かA級の!?3人とも凄いんだねー」

 

ゾエさんもA級ですよー

 

「いやいや、白浜君だって凄いんでしょ。入隊してすぐにカゲと互角の戦い繰り広げたんでしょ?」

「噂だと太刀川さんにも勝ったことがあると聞きました」

「そうそう、二宮さんも気にしてたし」

 

 なんか色んなところに話が広がってるなー。

 

「そんな有望な新人が女性隊員に対して手を抜くって聞いてさ。是非とも1回話してみたかったんだよね」

「うーん、やっぱそんな風に広まってるんだ。でも広がるのは止められないしなー」

「え?別に気にしなければ良いんじゃない?」

 

 簡単に言うなー。

 

「いや、でも凄い目で見られるし」

「気持ちはわかるけどさ。言えばいいじゃん、そいつらに対して」

「……何て?」

「文句あるなら俺を倒してみろよってさ」

 

 凄い良い笑顔で犬飼君が提案してくる。

 

「いや、それは……」

「うーん、犬飼君の言うことは乱暴だけど一理あるかなー」

「ゾエ君!?」

 

 まさかの背中からフレンドリーファイヤーが来るとは。

 

「いやいや、白浜君は気にし過ぎだよ。そもそも女性と戦う白浜君がアウトなら同じ辻君もアウトな訳で」

「そうそう。それに辻ちゃんだけじゃなくて鳩原ちゃんなんかもっと大変だよ」

 

 あぁー、確かに、と。ゾエ君と辻君が同意している。

鳩原さん?なんで?

 

「あぁ、白浜君は知らないか。うちのスナイパーの鳩原ちゃん。この子女性が苦手とかそんなんじゃなく、単に人が撃てないやつなんだけど」

「……普通じゃない、それ?」

「そうだね、戦闘員でなければ」

 

 鳩原さんを見ると自覚があるのかはにかんでいる。

……その眼には気になる暗さ(ひかり)が浮かんでいる。

何か思うところがありそうな色だ。

 確かに、人型ネイバー、だっけ?

そんなのが出て来た時に戦わないといけない戦闘員としては、その欠点はキツイかもしれないが。

 

「でもそれはやり方次第じゃない?チームなら尚更」

 

 美羽さんも僕と居る時は女性と戦うようにしてくれてたし。

それにトリガーという武器自体を破壊する、とか?

しぐれさんも武器組との戦闘時は武器を壊すようにしてたし。

 

「そうそう、そんな2人が居る二宮隊(ウチ)がA級なんだし。

メンバーに文句あるならおれ達倒してみろよってね!」

「隊長がそもそもそんなスタンスですしね」

「そう言う意味なら影浦隊(うち)も文句あるなら倒してみろよってスタンスだしねー」

 

 そう言えば影浦君もサイドエフェクトの影響で態度悪く思われてるんだっけ?

 

「だから白浜君も堂々と挑発すれば良いよ。

『文句あるならいつでも受けて立ってやるぞ』ってね」

 

 なーんかさっきから文句あるなら、を強調してない?

 

……あ、もしかして。

これって僕にでなく周囲の隊員に言ってる?

犬飼君の眼を見てみる。

僕の視線に気付いたのか、滅茶苦茶良い笑顔を浮かべて。

 

「白浜君も正面から文句言えない奴の言葉なんて聞く必要ないでしょ?」

 

 うわ、ドストレートに明言した!

周囲の人もざわざわし始めてる。

でもこれが元々の目的だったのだろう。

親切な人だな、とは思うが。

しかし同時に別のことも考えている人特有の眼をしている。

 

 嫌な予感が囁き始めてる。

厄介事に対しての僕の直感は鋭い。

こういう時って大抵──。

 

 

「じゃあ、正面から文句言わせてもらいます」

 

 

 少女特有の高い声が響く。

視線を向けると小柄な身体と特徴的な2つ結びの髪が目立つ娘が歩いてくる。

 

黒江 双葉さんだ。

 

「こんにちは」

「あ、ヤッホー」

「ぁ、ど、ども」

 

 各々挨拶を交わす。

こちらに眼を向けてきた。

……少し鋭い眼だ、嫌だなぁ。

 

「挨拶は初めまして、だよね?白浜 兼一です。よろしく、黒江さん」

「……はい、よろしくお願いします」

「あれ?2人とも知り合い?」

「入隊時期が同じなんだよ。所謂同期ってやつ」

「……白浜、先輩が先に正隊員になって、私は、本日、ようやく、ですけどね!」

 

 あれ!?

なんか地雷踏んだ!?

先程の会話の流れから、この展開だ。

 

──目的は、恐らく。

 

「それで、白浜君に文句言いに来たの?」

 

 煽る犬飼君。

 

「はい。皆さんの話は聞かせていただきました。

なので正面から文句を言いに来ました」

 

 はい、ですよねー。

 

「だってさ白浜君、どうする?」

 

 ニヤニヤ笑いながら場を仕切る犬飼君。

……これも目的かー。

 

 これまでの話の流れ的にも、周囲の視線的にも。

何より黒江さん意志的にも。

まるでこの機会を待っていたかの様な光。

 

 これは──断れない。

 

「……、、、。模擬戦、やりますか?」

「はい、お願いします!」

 

 即答されたー!

はぁ、やりますか。

 

「がんばれー2人ともー」

 

 適当な声援を掛ける犬飼君。

良い性格してるなー。

 

 

 

 

 5本先取の結果は僕のストレート勝ちだった。

あまり苦戦せずに倒せた。

黒江さんは正隊員になったばかり。

もはやC級の時と殆ど変わらない装備だったがそれはお互い様。

弧月のみだったが、それに合わせて僕もレイガスト一つの使用だったし。

 

それよりも大きな要因が一つある。

 

「……ありがとうございました」

 

 ブースから出て顔を合わせた瞬間、挨拶された。

滅茶苦茶不満気の色も出てるしすぐにでも踵を返しそうな雰囲気だが。

その前に気になることが。

 

「ありがとうございました。ねぇ、黒江さん少し良い?」

「……なんでしょうか?」

 

 辛うじて視線を向ける、といったところ。

少し傷付くが興味が勝った。

 

「黒江さんって昔棒とか枝とか、そういうの振り回して遊んでた?」

「??えぇ、まぁ」

「あぁ、道理で。長物振るのに慣れてそうだったけど、軌道が読みやすかったから。

武術習った感じが無いから多分遊びで慣れてるのかなって」

 

 振り自体は鋭いものがあったけど所謂テレフォンパンチみたいなものだった。

流石にあれには当たってあげられない。

 

「……そういうのわかるのですか?」

「うん。少し覚えがあってね」

 

 しぐれさんが戻ってから武器を振る基礎中の基礎中の基礎だけ習ったからね。

センスのかけらも無いと言われたけど。

 

「長物振り慣れてるなら、ちょっと意識するだけですぐに良くなるよ」

 

 僕と違って。

 

「……白浜先輩は」

「うん?」

「何か武道をされているのですか?」

 

 

「確か空手、ムエタイ、柔道、中国拳法に剣道だっけ?」

 

 

 横合いから声が聞こえてくる。

 

「あ、柿崎さん」

「柿崎先輩こんにちは」

 

「よ!白浜、黒江!」

 

 そこには柿崎さんと1人の女性が居た。

 

「えーっと……」

「こんにちは、熊谷先輩」

「こんにちは、黒江ちゃん。

それと初めまして、白浜先輩。熊谷 友子と言います、高校1年生です」

「ありがとうございます、白浜 兼一、高校2年生です」

 

 互いに挨拶を交わす。

 

「な、だから言った通りだろ?噂は所詮噂だって」

「うーん、ザキさんの言う通り、確かに普通に女性とも戦ってましたね」

「そういうわけで、すまんが皆に話を通しておいてくれないか」

 

 頼み込む柿崎さん。

それを聞きこちらに視線を向ける熊谷さん。

何なんだ、一体?

 

「うん、そうですね、本当に誤解そうですし。

わかりました、他ならぬザキさんのお願いですしね。

女性隊員には私や茜達でそれとなく噂が嘘ってこと話しておきます」

「わりぃ、助かる」

「貸し一つですよー!」

 

 そう言って離れていく熊谷さん。

 

「あの、柿崎さん?」

「あぁ、悪い悪い。意味わからんよな。えーっとなんて言えば良いか」

 

 簡単にまとめると僕の【女性隊員には手を抜く】という噂を修正するよう、熊谷さんに頼んだそうだ。

とは言え、当初その噂を信じていた熊谷さんはそのお願いを拒否していた。

なので柿崎さんはその誤解を解く為に、一度僕と熊谷さんに模擬戦してもらおうと連れてきたところ、既に僕と黒江さんの模擬戦が行われていた。

観戦したところ誤解が解けたので、熊谷さんが女性隊員に誤解だと伝えてくれるそうだ。

 

「昨日話して白浜が良い奴ってのはわかったからな。

気にすんなって言ってもどうせなら気になることが無いほうがいいだろ?」

「……何から何までありがとうございます!」

 

わざわざその為に柿崎さんは色々動いてくれたのだ。

この人良い人過ぎない!?

 

「何か僕で力になれることがあればなんでも言ってください」

「あ、じゃあ今度柿崎隊(うち)の隊員に弧月教えてくれよ。剣道経験者の目線というかさ」

 

 いつの間にか剣道経験者ということになってる。

まぁ、教えられる程ではないけど武器の基本中の基本だけは少し教えてもらったし。

 

「はい、力になれる範囲でなら!」

「おう、頼むぜ!」

「……白浜先輩、私も良いですか?」

「良いよ、黒江さんならすぐ飲み込めると思うよ」

 

「お、モテモテだねー、白浜君」

 

 北添君が話しかけてくる。

あれ?そう言えば。

 

「あの3人は?」

「隊長が呼びに来てたよ。なんかチームMtgだって」

 

 そうなのか。

挨拶位したかったが。

 

「あ、犬飼君が伝えてくれって」

「なんて?」

「ありがとう、と予想以上に強くて驚いたってさ」

 

 僕の実力測る目的もあったというのを隠しもしない。

喰えない性格だなー。

 

「お、もうこんな時間か。じゃあ、俺もチームMtgあるからこれで」

「私もこれから正隊員用のトリガー調整がありますので、これで失礼します」

「あ、はい。ありがとうございました、柿崎さん。またね、黒江さん」

「はい、また声掛けさせてください」

 

 2人が去って暫く後影浦君がやって来た。

 

「おう、待たせたな」

「カゲおっそいよー」

「でも良いタイミングかもね。じゃあ、影浦君の家に行こうか」

 

 3人でその場を後にする。

今日は色々あったな、と思いながら。

 

 

 

 

 

 

 黒江さんとの模擬戦から数日後。

今僕はついつい鼻歌が出てしまう位穏やかな気持ちでメディア対策室の花の世話をしている。

ついでに本部にある花も少しいじる。

 

 根付さんから時間がある時にでも花の面倒を見てほしいと言われたのと。

何より女性隊員からの目線が和らいでいるからだ。

 

 熊谷さんが話してくれたのもあるが。

黒江さんも僕との模擬戦を聞かれた際にちゃんと戦ってくれたと話してくれたらしい。

実際に黒江さんとの模擬戦を見た人が多かったのも影響しているのかもしれない。

 

 どちらにせよ数日前とは偉い違いだ。

そのお礼として今日熊谷さんと黒江さん、後柿崎さんの隊員の方に少し武器の振り方を教えることになった。

あまり期待はしてもらいたくないが、しぐれさんから指導してもらった分ある程度ちゃんと教える必要があるのがちょっとしたプレッシャーだが。その時間までの空き時間を利用して花の世話をしている。

 

 自分が何かを教える、ということに緊張しているのもあるだろう。

少し気を抜いていた面もあったのだろう。

鼻歌を歌いながら葉や花の整理をした際のゴミをボーダー外のゴミ捨て場に捨てている最中。

 

「あなたがシラハマ ケンイチですか?」

 

急に話しかけられた。

振り返るとそこには。

黒い髪に冷めた雰囲気。

そして隠し切れない、尊大な(貴族の様な)雰囲気を纏った。

綺麗な女性がそこに居た。

 

 

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