ガールズバンドとヴァイオリニスト   作:アリアドロス

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復帰、頑張ります


優しい道化師

 事務所に通されて十五分そこら、彩達と別れて十分。

「こ、こちらコーヒーになります。ミ、ミルクと砂糖は添えてありますのでご自由にお使いください!! 」

 そう言って受付の女性はカップを前に滑らせてくれるが征は静止させるよう手で合図する。

「悪いんですがコーヒーは飲めないんで、そのまま下げてもらって代わりに飲んでください」

 征は女性社員にそう言うと添えられていたシュガースティックだけソーサーから取り、包装紙を破るとそのまま砂糖を口に流し込む。

 社員は征の予想外の行動に思わず目を剥いてしまう。

「そうだ社長さんに言ってくれ。待って後十分、それ以上待たせるのならビジネス話じゃ無く賠償金の話だって」

 懐中時計を取り出し現在の時刻を確認した征はソーサーを持つ女性社員を見つめる。

「あと九分十五秒、急ぐべきですよ。人の怒りは取り繕うのに三十秒は必要ですから」

 顔面を蒼白させる社員は慌ててその部屋を出て行く。

 征はそんな彼女に視線を外すと懐からスマホを取り出しダイヤルを押していくと耳に当てる。

『何かしら兄さん』

「瑠衣、今すぐ荷物をまとめてベイガリットマンションに来い」

『兄さん、それはどう言う意ーー』

 征は妹の言葉に耳を傾ける気などないのか強制的に通話を切りった。

 妹なら意味など言わなくてもそれが合理的な事だと理解してその通りにするだろう。 

「千聖一人ならまだしも瑠衣まで来るとなると練習部屋も用意しなければいけなくなるから部屋数が足りないな……」

 征は一分程物思いに耽ると再びスマホでダイヤルを打っていく。

『はい、此方ベイガリットマンションホール受付になります、八潮様いかなご用件でしょうか』

「両隣の二部屋を追加で購入したい、片方の部屋は今夜から使う予定だからメイキングしといてくれないか」

『承知いたしました、直ぐに手続きもできるよう書類も一式揃えておきます』

 ありがとう、征はスッタフにそう告げるとスマホを耳から離し、画面をワンタップすると元の場所へとしまいこむ。

 時間で換算すると合計で五分程度であったがその五分で征にとっては僅かばかりに興味が引かれる疑問が生じた。

 何故か妹とスッタフが自身の携帯番号を把握していた、自身が把握している限りではこの携帯なる物の番号は千聖しか知らない筈、なのに掛けてみれば二人して知っていた。

 (考えられるのは二つ、スタッフが探偵を雇って調べあげたのか、携帯はかける相手に自動で誰か分かる様になっているのか)

 内心で斜め上の事を推理していると本人的には未だ解決に至っていないタイミングでノックがされる。

「……どうぞ」

 時計を確認して少し眉根を寄せた征は、人間は実にくだらないなと心の内で呟くと彼女等を迎え入れる。

 その呼び掛けにノックされた扉が大きく開かれ千聖と彩、二人の成人した男女が入室してくる。

「いやー八潮さん、お待たせして申し訳ありません。少し段取りに手間取ってしまってーー」

「建前は結構です、時間内に来たんだから咎めるつもりは有りません。それにアポイントメント無しで来たこちらにも非はあります、それより本題の話をしましょう、こちらも暇では無くなったんで」

 成人した男女は生意気な小僧と言わんばかりの怒りを内心に秘めながらも今の立場を天秤にかけ、征の言葉に肯定を示すと彼と対面になるように座り、千聖と彩はその二人の側で控える。

「まずはこの度二人が起こしたことに不祥事に対して謝罪をさせて頂きたい、この度は誠に申し訳ない」

 四人は一斉に頭を下げると男だけが頭を上げ、一枚の用紙が入ったファイルを征の前に置く。

「つきましては今回の事に対しての償いとは言いませんがこちらの紙に記載されていることをさせて頂こうと思っております」

 征は堅苦しく書かれた書類に視線を落とすとこんなものに用はないと言わんばかりにそれを手に取るとファイルから取り出し、その場で破っていく。

「なっ!? 」

 あまりにも予想外の事に二人を本人と千聖以外は口を開け呆けてしまい、千聖は想像ができていたのか眉間に皺を寄せて溜め息をはいてしまう。

「謝罪しろと求めたつもりはありません、()()()は先に電話でもお伝えした通りビジネスの話をしに来たんです」

 唯我独尊、征にとっては自身が発言し、求めるもの以外は只の邪魔物。

「少し考えれば分かる通り、鼻から今回のコンサートに彼女達をゲストとして招待している時点で多少のイレギュラーは覚悟の上です、勝手な解釈をしないで頂きたい」

 例え相手が自身より一回り以上歳をとった人間でも容赦も怖じ気付く事はしない。所詮は社会のはぐるま、彼らは体裁を乱すことを是としない愚者の集まりだ。

「話を聞かないアンタ達の事ですから大方二人を叱りつけるだけ叱りつけたのでしょう」

「そ、それは我々は貴方の今後の事を思ってであって! 」

 女性が頭を上げ慌てて征に対して反論した、だがそれは征の機嫌を損ねてしまう悪手であった。

「余計なお世話です。彼女達とは個人的な付き合いがあるんだ必要があればこちらから言うのが筋でしょう」

 相手のペースに乗ってはいけない、それが社会を生きる人間達と関わりを持つ時の鉄則だ。

「それよりあなたは先刻電話で会話した人間ですよね」

「そ、そうですが、それが一体なんだと」

 征は表情変える事なく彼女を見つめる。

 不愉快である。自分が傷付く事を恐れ、他人を貶める。人間はどれだけ齢を重ねても我が身だけが可愛いのだ。どんな過程があろうと所詮は体裁を気にして、平謝りを周りに行い、しっかりと教育しますと言えば自分は傷付くことがない。

 常識を越えてしまえばそれは全て悪、その者の真意を汲む事なく絶対なる悪とする。

「征! 」

 千聖の呼び掛けに目線だけを向けると分かったと言わんばかりに両手を上げる。

「さてと本題に入る前に一つ題材はあまり変わりませんが、社長さん彼女達に謝罪の土下座をしてください」

「あなた、私達が下手に出ていれば何なのですか! 失礼にもほどがありますよ! 」

「何も間違っていませんよ。彩と千聖に頭を下げろと言ったんです、彼女達は理由も無くアンタ達に罵声を受け、相当心が傷ついた事でしょう謝罪を受けるには充分です」

 征は不敵に笑みを作って足を組む。

「征君、まさかこの事を見越してーー」

 彩の発言に征は指で静止させる。

「あと少しだけだ、そうしたら今日は一緒に帰ろう」

 征は笑みを崩さず彩にそう告げると再び二人の方を見る。

「筋は通っている筈です、何せ彼女達には非は無いのだから」

 成人した男は苦虫を噛み締めた様な形相をし、体を彼女達に向け頭を下げようと体を傾けた。

「社長! お待ちください!?」

「まぁ、冗談なんですけどね」

 征はこの空気を消す様に体をグッと伸ばす。

「いやー、慣れない事はする物じゃありませんね。元々こういう性格なんで無理して作ると変に迫真になってしまうのが困った物ですね」

 その言葉に二人は口を魚の様にパクパクしていると征はその顔にクスッと笑ってしまう。

 掌で踊らされている、彼の前では倍以上齢を重ねた自分たちも等しく道化でしかない。下手に打てばこちらの首を人形の様に折られかねない。

 「さて本題なんだが、貴方達が主催する彼女達のライブにゲストとして招待して欲しいんですが可能でしょうか? 」

 




恥ずかしくも帰ってきました。
相変わらず豆腐メンタルで頑張っていきます、いつも通り誤字や脱字、わかりづらい、意味不明☆な言葉使いが有れば報告お願いします。
気づき次第随時更新します

復帰に対して

  • おかえり
  • 新作も並行してかけ
  • 誰だお前
  • これを完結させろ
  • トウフ
  • トウフ(求めてた続編と違う感)
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