作者はとてつもなく不安です
「両親は元々女の子が欲しくて子供を作った。だけど最初の妊娠で分かったのは男の子だった、今のご時世、大の大人が障害のない子供を下ろしたなんていえば後ろ指を指される。二人が手をこまねいている内にも日は着々にも進み中絶ができない期間になってしまった」
父は有名なヴァイオリン奏者だった、母も大企業の社長で側には常にパパラッチが
「そして僕が生まれた、近所の人から聞いた限りじゃ瑠唯の泣く声は聞いた事あるが僕のは無かったらしい。それから二年後に瑠唯が産まれて僕は必要な時以外ずっと何も無い自室で過ごすようになった。もし、一歩でも廊下に出ようものなら平手や拳が飛んできた」
だけどそれは全くもって苦ではなっかた、一番苦しかったのは何も無い事だった。
征は、遠い目で月も無い空を見上げると少し離れた所から照らす公園の照明に目を細める。
「瑠唯が物心ついて一年位経った頃、瑠唯が大きなぬいぐるみと沢山の絵本を両親へとねだり、プレゼントしてもらった」
「ーー羨ましかった。自分も真似てランドセルが欲しいとねだったら、その場で蹴り飛ばされたのは良い思い出だよ」
千聖は無意識のうちに征の手に自身の手を添える。征はそれに気付いていないのかずっと上を見上げており、時節悲嘆な溜息をついていた。
「そして瑠唯が一年生になってヴァイオリンを始めた頃、瑠唯は両親に駄々をこねて僕と一緒にヴァイオリンがしたいと言った」
征の脳裏に残るいつ壊れてもおかしくないヴァイオリンを渡して、忌々しそうにその場を立ち去る両親に泣いて礼を言った自分とそれを嬉しそうに見つめる妹。
「あの時は嬉しくてずっと外でヴァイオリンを練習していた、瑠唯も負けじと講師の先生に付きっきりで教えてもらっていたよ」
だけど両親にはそれは面白く無かった、ボロとは言え愛していない子供に金を使い、それどころか講師付きの娘より遥かに上達が早く楽譜も何も無いのに曲まで演奏している。
「後はーーうん、疲れたから瑠唯と彩にでも細く聞いてくれ。その頃から僕は人に興味も期待もしなくなったってだけ言っておくよ」
短くかい摘まれた会話を途中で切った征の姿に千聖は膝の上に置かれている空いた手を強く握る。
「それで、貴方は幸せになれると思う? 」
「いや、悪魔に魂を売った存在に幸せなんて来る事はない、だからアンタが気に病む必要もひとつもない」
「でも、それじゃ貴方はずっと……」
千聖は投げかけても無意味なのではと理解してしまう。今の今まで気づかなかったが彼の瞳には光は見えず吸い込まれるような黒い物が蠢くように写っていた。
「……もう遅いから送って行く」
「待って! 」
腰を上げ、公園の出口へと向かおうとした征の腕を千聖は掴む。
「一曲だけ弾いてくれないかしら」
演奏なら今日はもう遅いからしないと征は口を開くと千聖は首を振るう。
「違うわ、貴方の本当の演奏を聴きたいの。誰かに合わせた演奏じゃなく貴方だけの音楽を」
千聖の言葉に征は溜息を吐いた。関わるなと言ったつもりなのにどうして近づいて来ようとするのだろうか、征は千聖の手を振り払おうとすると千聖は離すまいと力をより強くする。
「彩ちゃんにはこの事は言わないからーーお願い!! 」
知ってどうするのだーー同情するのか? 理解したつもりでいるのか? それこそもっと迷惑だ。ただアンタは太陽である彩にさえ黙っていてくれれば良いのに。
征は自身の内からドロドロと形容しがたい物が溢れてくるのを感じてくると耳元に聞き慣れた何かが囁くのを感じた。
「…………一曲だけ弾いてやる、ただ約束は守ってくれ」
征はヴァイオリンケースから道具を取り出すと解放された自身の腕で弓を持ち、構えた。
辺り一帯は既に静寂に包まれており風が僅かにそよいでいる。
目を閉じ、精神統一を促す。全て囁きに身を任せ自身は寸分違わず完璧な音色を奏でる。いつものように、そういつものように
千聖も固唾を呑む。風は間もなく収まるそんな予感がする。
「……さぁ、楽しもうか」
その言葉に風が止むと征はヴァイオリンを大きくも美しい音色を奏で始める。
「ーーっうく!? 」
まだ一章節目、だと言うのに千聖の心は悲鳴をあげる。重い音だというのに透き通り、軽い音色の筈が何処までも振るわせる。一人だけの演奏が複数人の演奏を聴いているかの様に錯覚してしまう。
(これが彼の実力ーー経験が浅い私でもわかる、彼は既に人の領域を逸脱してしまっている。才能と努力を兼ね備えた人のその先にある世界、二つ名の『悪魔』は音楽を奪うだけでなくここからも来ているというの!? )
千聖は頬に雫を流す、精錬された音にではなくその根底に眠る彼自身の心の内に。
彼の音には孤独が見える、常に一人で同じ風景を見続け、時節会う人には罵声を浴びせられる。助けを求めても誰も振り向いて貰えず、彼は次第に下を向き始めた。誰も見てくれないのならいっその事何も見なければ良い……と
彼と彼女の友人である少女は言っていた、彼は私に会うまでずっと独りだったと、偶に通り掛かる河川敷でずっと一人で誰にも見向きもされずヴァイオリンを弾いていたのだと。
(誰かが囁いている、彼女の音も奪ってしまえと後ろでケタケタと笑いながら囁いてくる。悪魔はなおも囁く、次の音でその次の音の動作で殺してしまえと)
征は瞼を力強く閉じ、一気にサビまで駆け上がって行く。
千聖はテンポアップした音色に心臓辺りを押さえながら何とか体を足で支える。速くなったというのに一切の乱れを感じさせない重圧のある音、だがその中に微かではあるが何かに抗う征の姿が千聖には感じられた。
ここで倒れてしまえば自分では二度と彼を救うことができない気がする、千聖は唯それだけの自身には形容し難い感情だけで彼の演奏を終わるまでサビを通り抜けた演奏を聴き続けた。
「……驚いたな、演奏を聞いて立っていられたなんて」
征は純粋なる賞賛を千聖に送る。
息を荒げる千聖は称賛を聞くとその場で崩れて行く。征はそんな彼女を慌てて支えると玉の汗をかいた彼女の額から髪を避け、ハンカチで汗を拭っていく。
「優しいの、ねーー」
「喋らない方がいい。アンタ、体力を限界まで使ったんだ今日は
「千聖よ、覚えて征」
彼女を背中に乗せるとわかったと呟き、ヴァイオリンなどの荷物を手に持ち公園を歩いていく。
「ありがとう、千聖。僕を受け入れてくれて」
静かに寝息を立て始めた少女に征は心からの感謝を込めると、いつもより足取りを軽やかそうに帰路へと着くのだった。
凄い、二週間以内での投稿なんて今日は雨なんじゃ。
あっ、関西は今日雨だった
面白いのこれ?
-
面白い
-
つまらん
-
とりま、見てる
-
興味ないね