そしてアンケート、ありがとうございます
「んっんつー、うん? 」
千聖はまだ冴えない目を擦りながら起床すると見たこともない空間に疑問を持つ。
「漸く起きたか、朝食を用意させるから和食と洋食どっちが良い」
「よう、しょくでーーって。えぇっ!!?」
千聖は部屋奥から顔を出した征に驚きを隠せず大声を上げると、ベットのシーツを掴み上げ自身の体を確認する。その姿は昨日着ていた学園の制服とは違い、外着にしてもなんの問題も無さそうな服に袖を通されていた。
「千聖の家を知らなかったんだ。その場に置き去りにして風邪をひかれても後味が悪いからな」
征は彼女に対し肩をすくめてやると、顔面に枕を投げつけられる。
顔を真っ赤にした千聖はシーツに
「はぁ、何に怒っているか知らんが二十分後に着替えて隣の部屋に来い、ルームサービスを頼んでおくからそれを食って早く学校に行け」
枕を投げられた事を気にも止めていないのか征は軽いため息を吐くと、顔色を変えず千聖にそう言い残し部屋を出て行った。
「っつううーーーー!? 」
消えた部屋の主人を恨めしく思いながらも千聖は同時に敗北感を覚えた。自慢じゃないが自分の容姿には自信がある、なのに彼は誰にも見せたことのない裸や寝顔を見ても朱色にする事はおろか上擦った声ひとつ無かった
「最悪、ね」
彼の音楽を聴いて心を揺らめかした自分が恥ずかしく思う。千聖は内心でそんな事を呟くとベットから抜け出し、吊るされてある制服とワイシャツを手に取る。二年間着てきた制服を手に取った千聖は違和感を覚えた。
「ワイシャツにアイロンがかかってる、制服もノリがついているみたい……」
千聖は不思議に思いながらも自身の制服に袖を通すと先程まで着ていた服を抱え、隣の部屋へと入る。
「ありがとう、このチップを担当に当たってくれた料理人に頼む」
この建物のスタッフであろう人がお金の入った封筒を恭しく受け取るとこちらにも一瞥をし、部屋を後にしていく。
「……さて、丁度来たところだから冷めない内に朝食にしよう」
征はテーブルの上に大量に並べられたデザートの前に座るとその向かいに座る様に千聖を促す。千聖は服を彼の視界に入らないとこへ置くと一般的なホテルの朝食が並べてある彼の向かいの席に座る。
「随分と甘い朝食ね……」
千聖は目の前で綺麗に飾られた甘味達にげんなりとした声で言うと征は気にした様子も無くそれらを切り崩していく。
「ーー人間のガソリンはブドウ糖だ。それにケーキは同時にビタミンも取れる優れものだ」
征は苺がのったショートケーキを口に入れると満足そうに咀嚼していく。
「その服、ちゃんと持って帰ってくれ。置いていかれても困るからな」
その言葉に千聖はムッとした表情をする。
「その事で何か言うことはないのかしら」
「金の事は気にするな。もし気になるのなら後で請求してやる」
「違うわよ!! 」
女の気持ちを全く理解しない征に対し癇癪を挙げると、征は口に運ぼうとしていたケーキを地面にこぼしてしまう。
絶望した様な顔をする征に千聖はそれでも怒りが収まらないのかキッと彼を睨み続ける。
「女の裸を見たのに詫びのひとつもないのかって聞いてるの」
「指示はしたが細かい事をしたのはここのスタッフなんだがーーこれ食べれるかな? 」
征は未だに落ちたケーキに視線が外せないのか手を伸ばしたり戻したりしているが、話は聞いているのかいつもよりトーンが低い声で答えた。
「やめときなさい、それより今の言葉どう言う意味かしら? 」
「そのままの意味だ。千聖をここまで運んできたのは確かだが、後のことはスタッフに全て任せたんだ。その所為で昨日は久方ぶりに何も無い床で寝ることになってしまった」
征は溜息を吐くと柏手を二回打ち「頼む」と玄関の扉に向けて言い放つと、待っていましたの如くホテルマンが入室し床に落ちたケーキの処理を始める。
「……随分高いところに住んでいるのね。ホテルマンが常時身の回りの事をしてくれるなんて」
「一様はプロだからな、他に金の使い道も無いしーー」
傍目に終わったのか征はホテルマンに手礼をすると、彼は無言で一礼し部屋を後にした。千聖は彼が出ていくのも目で追い確認すると征の方へと向き直る。
「さっきの事は謝るわ。ごめんなさい疑ってしまって、あまりにも唐突だったものだから」
征は首を横に振ると「謝るなら料理が冷めないうちに食べてくれ。せっかく用意して貰ったんだから」と言い、征はまたケーキに手を伸ばすと口に含む。
千聖もそんな征の姿にそうねとクスリと笑い、まだ暖かそうな朝食を口にしながら時々、征に話しかけるのだった。
朝食を共に終えると征は衣装ダンスから高級そうなスーツを取り出しそれを腕にかけると空いた片手でヴァイオリンケースを持つ。
「何処かへ行くの? 」
千聖は何となくではあるが理解していそうな顔で確認を兼ねて征に言葉を投げかける。
「あぁ、九時から演奏会なんだ。それが終わったら一時から高校生以下の音楽コンクールの審査員として呼ばれていてそれが六時位まで続くんだ」
「思っていたよりハードスケジュールね……」
千聖はげっそりとした顔で征を見つめると彼は肩をすくめて仕方ないと呟いた。
「先に行くが後のことは好きにしろ」
そう言うと征は玄関の扉を開けスタッフに荷物を持たせると慣れた手つきで革靴を履いていき何も告げず玄関奥の廊下を曲がって行った。
取り敢えず、千聖さん回は一区切り
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