ガールズバンドとヴァイオリニスト   作:アリアドロス

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お忘れだった方、待ちわびていらした方、大変にお待たせいたしました。約一ヶ月の空間を開けてしまったことを深くお詫び申し上げます。今回から再び二週間以内の投稿を心掛けて参ります。


機械の会合

「相席良いですか? 八潮さん」

 征は偶々通りがかった喫茶店、『羽沢珈琲』で羽を伸ばしていると、背中にギターケースを背負った学生服の少女が声をかけてきた。

 自分も有名になった者だと目の前にいるマーメイドグリーンの髪を腰まで伸ばした少女を見つめながら思った。

「えぇ、どうぞ」

 少女は征から了承を受けギターをゆっくり壁に立てかけると席に座る。

 征は彼女が着席した事を確認するとメニューを開き、差し出した。

「ありがとうございます」

 少女はメニューを受け取ると早々と決めたのかスタッフである近くの少女に話しかけ注文すると軽く談笑する。

「知り合いなんです、ここの店員さんとは」

 少女の言葉に征はそうかとだけ答えると手元に置かれているティーカップに口をつける。征からしたらだから何なのか、と内心で呟きそうになったが人当たりが良い人間を装っている以上余計な事を呟かない様に口を慎む。

「実は私あるバンドのギターをしているんです。彼女も所属は違いますがよく一緒にライブしたりするんです」

 少女は数分後に運ばれてきたコーヒーの香りを嗅ぐと口元を少し緩ませる。

「それは凄いな。その若さで同じ音楽を携える者として少数での晴れ舞台は羨ましい限りだ」

「独演会まで漕ぎ着けたあなたに言われるとなんだか照れますねーー」

 少女は水面に僅かに写る自身を見つめると、それと同時に溜め息を彼に対してついた。

「白鷺さんが言ってた通りですね」

 その言葉に征は一瞬にして顔を崩した。

「……千聖から聞いたのか」

 少女がコクリと頷くと征は彼女を睨み付ける。

「アンタ、名前は? 」

「先週、言いましたが? 」

 征はその言葉にまずったと内心で舌打ちをする。

「やっぱり、覚えてないんですねーー」

「アイツが話したのか? 」

「いいえ。彼女はあの日の事を頑なに話そうとはしませんでしたよ、最後は根負けしましたが」

 千聖なりに頑張ったのだろうなと口をつぐんでくれた此処には居ない少女に感謝するとカウンターに向けて手をあげる。これで何度目だろうかの紅茶のケーキセットを好青年の態度で注文し、彼女に対してのケーキも注文する。

「本当に甘いものが好きなんですね。白鷺さんは此処を足蹴なく通えばいずれは会えるって言っていましたが此処までとは」

「千聖はなんて言っていたんだ? 」

 運ばれてくる二種のケーキを征は彼女にどちらが良い? と彼女に対し見せる様に向ける。

「彼は人付き合いが苦手で甘いものには目がないと」

 少女はショートケーキを指さすと征は了承したのか、彼女から見て見た目の良い角度にし差し出した。

「正確に言えば人の名前と顔を覚えるのが苦手なだけだ」

 嘘は言っていない、千聖が濁してくれたのだからこのまま話しを流すべきだろう。

 征は内心でそう呟くと自身のケーキを切り分け、そのまま口に入れていく。シンプルなガトーショコラだが生クリームとチョコの配分がマッチして苦すぎず甘すぎない絶妙なものになっていて紅茶が進む。

「そう言う事でしたら改めまして、氷川紗夜です。Roseliaのギターをしています」

「ならこちらも改めて氷川さん。それで、アンタは何の用で此処で待ち伏せていたんだ」

 こうは言ったものの、征にはこの手の類の用件は何となくは察しがついていた。

「貴方の音楽を私に教えて欲しいのです」

 征は紅茶のカップを音をたてることなくソーサーに置くと、だろうなと溜め息をはく。

 別に初めての事じゃない、フランスでも似た類のものは何人も見てきた。演奏終了後の出入り口で当人が出てくるまで張り込んでいていざ出てきたら直談判し、教えを乞う人間は此処でも同じだっただけだ。

「断る」

「何故か教えていただいても?」

 征の発言に最初から紗夜も分かりきっていたのか特に様子を変える事なく言葉を切り返す。

「先ずは楽器が違う事、次に単純に弟子を取らない決めている事」

 征は淡々と自身の心の内を述べると話は終わりと言いたいのか財布から一万円札を三枚ほど取り出しテーブルに置くとヴァイオリンケースを肩に担ぎ始める。

「釣りは返さなくて良い」

 鼻から取りつく島を与えるつもりは無いのか、征は紗夜にそう言うと店主に手を挙げ、店を出て行った。

 一人残された紗夜は、テーブルに置かれた自身のケーキを切り分け口に運ぶ

「何だか同じ年齢とは思えない位に大人な人でしたね 」

 そんな彼女に声をかけたのは此処の店主の娘である羽沢つぐみだった。

「それだけ彼が実力の世界で生きてきたと言うわけでしょう」

 そう、彼の音楽からは圧倒的なまでの技術が感じられた。一つ一つの動作が洗練されたパーツの様に組み上げられ奏でられている、努力のその向こう側にある私自身が求める最高の音楽。頭の中で今でも反復するかの様に思い出せてしまう程に印象を与える音色

「なら一緒に行ってみない? 紗夜ちゃん」

 自身が物思いに耽っている内にお客として入店していたのか、情報をくれた白鷺さんが友人の松原さんと共に自分の側にいた。

「それはどう言う意味ですか? 」

「そのままの意味よ。明後日の土曜日に彼のソロコンサートがあるのだけれど、もし良かったらと思って」

 彼女は先程まで征が座っていた席に座り、花音もそれに習ってその隣に座る。

「彼に次のコンサートのチケットが欲しいて言ったら何を考えたのか三枚も渡してきて……」

 彼女は鞄からチケットをとりだし、テーブルの上を滑らせるように彼女に差し出す。

「良いのですか? 私なんかが行って」

 紗夜の発言は至極当然だと彼女の隣に座る花音も頷く。

 千聖も本来なら自分のみでいく予定だったのだが、身内席の一番前でなおかつ左右空いているとなると否応にも目立ってしまう。女優である自分にはそれはマズイ、花音や紗夜ちゃんには悪いが此処は隠れ蓑になって貰おうと考えたのだ。

「えぇ、B席で八千円もするコンサートなのだから行かない方が損だと思うわ」

 千聖は内心を取り繕いながらそう話すと、自身の前に一口しか食されていないケーキを征が使っていたフォークで口に運んでいく。

「ふうぇぇ!? ち、千聖ちゃんそれはーー」

 だが時は遅くすでに咀嚼していた千聖は何のことだろうかと、改めて手元を見ると無意識だったのかこの事を思い出し頬を赤く染める。

「ち、違うのよ、花音!? 無意識だったのよ」

 珍しく慌てふためく千聖の姿に、自身らが知っている千聖とは違う千聖の姿を見た気がした。むしろ、彼と会ってからの彼女はどこか生き生きとした顔をすることが多くなった気がする。

「と、兎に角。チャンスをみすみすと逃すのは良く無いと思うわ。だからよく考えて」

 紗夜は千聖の言葉に静かに頷くとそのチケットを只、みつめるのだった。




でっひーーさん感想有り難うございます。初のコメント嬉しく思います。これからも努めさせていただきます。
また誤字や脱字をしてくださった皆様有り難うございます。


Ps,コメントは物によって一人一人返信させて頂きたく思いますのでどしどしお願いします。(励みになります)

作者ーー

  • GOMI
  • はよ書け
  • 死ねー!!
  • 変人
  • 神だー!
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