そして新キャラも……?
ゲームに置いて。いや、この際仕事においてと言っても差し支えないだろう。
報告すること、というのは大事になってくる。報連相という概念があるぐらいなのだから、その重要性は計り知れない。
さて、なんでこんな話から始めたのか。それはターゲッティングしたモンテーロに付随する話でもあった。
このモンテーロは一見何の変哲もない普通の青いモンテーロに見えるものの、何かがおかしく思えた。
具体的に何? と言われれば正直分からないことが多いのだけど、熱源反応での僅かなタイムラグ。補足したと思ったのに、一度消えてからの再出没。これだけ聞けば、変な機体であることは確かだ。
それでも目の前にいるのはやはり何の変哲もないモンテーロ。逆に怪しい。
これだけお膳立てして出てきたのがスナイパーや奇襲系のMSなら話は変わってくる。一説によればハイパージャマーなるステルス性能に特化した電波妨害装置があるとかないとか。
話が脱線した。キルするならずっとジャミングをかけていればいい。それをあえてしなかったその理由。それが一向に理解できないのだ。
目の前のモンテーロ目掛けてドッズライフルを打ち込むが、特に変わった様子はなく、左右の大きなスラスターによって右へ左へ器用に避けてみせる。
「一見はただのモンテーロですわね」
「ですね。やっぱりただのバグだったのかな」
GBNとは言えども基本はゲームだ。故にバグというものは必ず存在する。
この世にバグを生み出さない開発者なんていないのと同じように、必然性というものは存在しない。
だから日々デバッガーなる猛者たちが日夜マ・ザイを片手にデバッグをしているんだ。
そのためこの索敵でたまたまバグが出たとしてもおかしくはないんだけど。
何故だか私の中の嫌な予感センサーがビンビンと反応している。ここで何かをスルーしてしまえば、恐らくこの戦いに敗北してしまうかのような、そんな予感。
構えられたビームライフルもモンテーロのものとは微妙に姿形が異なっており、その疑念が加速するだけだった。
ビームバルカンを撃ちまくるノイヤーさんはそれを気にするものかと、接近戦を開始する。
手のひらにむき出しになったビーム口をサーベルモードに変更して、斬りかかった。
「やっぱりジャベリンですわね!」
『やっぱりジャベリンなんだよねー!』
バインダーから取り出したジャベリンを片手にビームサーベルを防ぐ姿は間違いなくモンテーロそのもの。その身のこなしも高機動型らしく、パワーは弱いものの連続での切りかかりは十分脅威となりうるフィールを抱いていた。
ドッズライフルを片手に握りしめ、渦を巻いたビームで相手とダナジンに空間を作る。続けざまに繰り広げられるのはワイヤーフックによる奇襲攻撃。放たれたフックに引っかかることはなく、ジャベリンでフックを弾き飛ばす。
「素早い!」
「なんのですわ!」
片手をビームバルカンに、もう片方をサーベルに変更し、牽制攻撃を仕掛けながらも接近するダナジンに、ジャベリンを回転させながら、勢いよく地面を蹴り上げる。
空中を弧を描くように飛ぶモンテーロを追うダナジン。だがそこは可動領域の限界。完全に背中に回ったモンテーロのビームライフルが火を吹く。
羽根の付け根。ちょうどダナジンの主力兵器であるマイクロウェーブ受信口にビームが数回辺り爆発を起こす。
「きゃあ!」
仰け反るダナジン。なおも続く連撃は、着地したモンテーロのジャベリン攻撃。
ビーム口を発振させながら、目指すはダナジンの頭部。ヴェイガン機は基本頭部にコックピットが存在する。このダナジンも例外はないはずだった。
それを見逃すほど、私も忙しいわけではない。弾かれたワイヤーフックを器用に扱いながら、2機の間に割り込む形でモンテーロの勢いを削ぐ。注意を引かれたモンテーロ飲目の前には、以前秘密兵器にしておきたいと言っていたダナジン・スピリットオブホワイトだけの装備、尻尾のダナジンライフルが牙をむく。
「お喰らいあそばせ!!」
勢いよく噴射したビームライフルはモンテーロに命中する。
当然のごとく起こる爆発。晴れた先にはデータの破片が散り散りになって、ノイヤーさんのダイバーポイントが少し増える、はずだった。
爆風を切り抜けて現れたのは一筋の黒と金の閃光。ジャベリンを手に持った『彼女』はビームを発振させ、ダナジンの尻尾を斬り落とした。
刹那の爆発。強靭な足腰をしているはずのダナジンが吹き飛ばされ、地面を転がる。
斬り裂く爆風の先。そこには白いシャツのような見た目をした金髪の女性像の姿があった。
◇
モビルドール。それが意味することはたった1つであった。
「EL、ダイバーですの……?」
ELダイバー。近年発見された電子生命体の一種であり、このGBNで生まれ落ちた命であるとWikipediaで読んだことがあった。
まさかこんなところでその本物に出会うことがあろうとは。
いや、それよりも、だ。
『あっちゃー、バレちゃったかー』
「どういうことですの?! さっきまでモンテーロでしたのに!」
一言一句私とノイヤーさんの今考えていた思考が一致した瞬間だった。
どうして。さっきまでモンテーロと戦っていたはず。それが何故に武器をそっくりそのまま持ち替えた金髪のモビルドールと戦っているのか、理解できない内容であった。
ELダイバーは回線を通じてモニターから姿を現す。その見た目はモビルドールとそっくりそのままだ。
ノイヤーさんとは真逆で明るめの金色の髪に朱色のメッシュが左前髪に1本通る。
左側にまとめたサイドテールと結び目の赤いリボンが頭を動かす度にふわりと舞い、白い襟付きのシャツにクリーム色のカーディガンが光る。
まさしく理想とする学生の姿。まさしく雑誌で見たことがあるギャルの姿そのものであった。
彼女はニィと笑って、目を細める。
『知らない? ミラージュフレームっての改造パックなんだけどー。GN粒子とミラージュコロイドを組み合わせて、なんやかんやするとさ! あれなんのよ、モンテーロ』
「……え?」
『だーかーらー! モンテーロ! 要するに擬態的なやつ!』
「そういうことでしたのね」
あれ? 私、もしかしてこの状況についていけてないタイプなのでは。
ミラージュフレームってそもそも何? AGEにはそんな物はなかったし、ミラージュコロイドっていうのも名前だけは聞いたことはあっても、作品の出自元であるSEEDは見たことがない。
それに何より、なんで雑談しているように敵と話してるの! 危うく私もうっかり反応しそうになっちゃったんだけど。
「そうじゃないですよ! えっと……」
『フレン! よろー』
「フレンさん! 今、戦ってる最中ですよね?!」
『そーそー。でもさー、いい感じのウデマエ見せられちゃったら気になっちゃうじゃん? そゆことよ』
「どういうことですか!」
なんというかELダイバーってもっとふわふわとしていて、生まれたてということで曖昧なイメージがあったのだけど、蓋を開けてみれば、そこにいるのはただのギャル。ギャルがモビルドール持ってやってきたのである。
『ミランドやられちゃって、アタシやばいんだよねー。助けて?』
「まぁ私がやったようなものですし……」
「流されてはいけませんわ! これは罠です!」
命乞い。あまりにも自然な命乞いに、私一回騙されてしまった。危ない危ない。危うくそのまま助けてしまうところだった。
じゃなくって! グダグダし始めた私のもとにさらなるレッドアラートがコックピット内に鳴り響く。数はおおよそ3機。新たなチャレンジャーのエントリーである。
手負いのダナジンとモビルドールフレンは臨戦態勢を取るも、私はその場で混乱が先にやってくる。恐らくこの2機を抱えながら戦うのはハンディマッチに近い行為だ。うぅ、こうなったら……!
「フレンさん! ここまで来たら運命共同体ってことで、ノイヤーさんと逃げてください!」
「いいんですの?!」
「私も混乱してるんです! でも命乞いしてきた相手を見逃すなんてできませんから!」
『あんた……サイコーの女だね!』
「調子のいいこと言っているんじゃありませんわ! とっとと退きますわよ!」
『あんたもサイコーじゃん!』
飛行形態へと姿を変えたダナジンはモビルドールフランを乗せて合流地点であるK点へと撤退を始める。
もちろん殿は私たった1人。エンリさんにも通信したけど、合流するにはおおよそ1分半必要らしい。てことで私1人で3機の相手をしなくてはいけない。何という災難。やっぱり今日は厄日だよ。
「でもバッドガールには相応しいかも」
厄いってことはバッド。バッドと言えばアウトロー。アウトローと言えば私。
ほっぺたをパチンと叩いて、やや残る頬の痛みとともに私は集中統一のスイッチを入れる。
「よし。バッドガールユーカリの、初陣。行こう!」
敵は3機。それぞれガンダム、Zガンダム。ZZガンダムと初代主人公の3機が勢揃いだった。いいじゃん。三世代編がまとまったようなAGEらしさを感じる組み合わせ、悪くないと思うよ。
ドッズライフルを手に持った私はまずはZガンダムに乗ったガンダムへと射撃を開始する。
連射性能はDODS効果を与えた分、やや下がっているものの、三点射するには十分な連射速度だ。両脇を2発で埋めてから最後の一発をガンダムへと向けて、撃つ。
螺旋を描きながら伸びる桃色のビームに対して、ガンダムが取った行動は至ってシンプル。Zガンダムを踏み台にしたジャンプ行動であった。
「な?!」
予想外ではない。あの状況ではそれが一番適切な行動と言っても過言ではない。
次にやってくる行動は決まっている。ビームライフルでの対応。ダブル・ビーム・ライフルに通常のビームライフルの行動を回避するべくジグザグに行動しながら次の行動を考える。
ABCマフラーがある以上、合計5発までなら耐えられる。問題はZZの火力にZの機動性をどうやって封じるかだ。
火力問題はおおよそ不可能。今のバッドガールの装甲では撃ち抜くことはできない。それができるのがたった1人、エンリさんのゼロペアーだ。あのガンプラのナノラミネートアーマーと質量攻撃でなら突破は可能だ。つまりZZガンダムに対しては一旦回避に専念するという結論でいい。
Zの機動性ならこちらが上とは言わないが、ワイヤーフックによる奇襲攻撃が可能だ。対処するならこっち。
手が空いたガンダムは必ずこっちに向かってくる。流石に2体同時にやるのはきつい。だけど、やるしかない。
ドッズライフルを握りしめて、ZZの射線から逃げるように射撃を開始する。
三点射撃を心掛けながら、Zの行動範囲を狭めていく。その間もガンダムの相手はしなくちゃいけないし、ZZガンダムの射線からは逃げなきゃいけないしで、脳内のマルチタスクがヒートアップしているが、音を上げている場合ではないのだ。
ワイヤーフックで牽制しながらガンダムかZを引っ掛けられれば、そのまま盾にもできる。だからこのフックには当たりたくないはずだ。
左右に振りながら、時にはワイヤーを止めながら、緩急をつけながらガンダム釣りを始めておおよそ30秒。状況が動き出したのはフックの先にZガンダムを捉えた瞬間だった。
「なんか、掴めてきたかも」
ワイヤーフックの無限の可能性。ゲーマーだからこそ分かる感覚。弱い点ももちろんある。だけど、使い方さえ分かってしまえば……!
必死にもがくようにZガンダムは逃げようとするものの、もう遅い。ZZの射撃から隠れるようにしてZの土手っ腹をビームライフルの射線上に引いてみせる。
『こいつッ!』
『俺のことは構わず撃……』
「遅いよ!」
ちょうどZZを挟んで対面。撃ち放ったドッズライフルのビームドリルはZガンダムの胴体をクリーンヒット。続けて貫通したビームはダブル・ビーム・ライフルを掠める。まさにアセムのハイパードッズライフル2枚抜きにも似た高等テクニックで、Zガンダムを1機沈めた。
「よし!」
『俺を忘れるな!』
右側から襲ってくるのはRX-78-2ガンダム。左側だったら危なかったけど、右ならっ!
ガンダムが仕掛けるビームサーベルをもう必要ないとドッズライフルを投げ込んでわざと切断させる。
瞬間。爆破が起これば、今度見えるのは明確なスキ。リアスカートから取り出したビームサーベルを手に、全力でブーストをかける。
「これでぇ!!!」
右上から降り注ぐビームサーベルをガンダムが受け止め、鍔迫り合い状態に。
だけど、オービタルとスパローのブーストは伊達ではない。フルブーストをかけるバッドガールに出力負けしたガンダムが後方へと押され始める。
『だが決定打は!』
「ここにあるんです!」
天空に突き立てるのは先程から戻していたワイヤーフック。
ガチャンと、心地の良い機械音は相手を壊すという意志の現れ。
必死にバルカンで対応する彼であったが、時既に遅し、というやつだ。
振り下ろされたフックがガンダムの胴元を抉るように突き立てられる。南無三。これが腕1本を犠牲にし作り上げられたワイヤーフックの威力。貫通したガンダムの胴体を投げ飛ばして爆発によるダメージを回避する。
「これで2機!」
『だが今のキミに、俺は倒せない!』
後方から襲いかかるのはZZガンダムと従来の1.5倍ものサイズのビームサーベル。
咄嗟に左腕の電磁シールドを加えたチェーンシールドで防ぐものの、バリアを貫通して徐々にビームの刃が左腕を溶かしていく。
残りは何秒だ? 分からないけど、後は逃げ続けるしかないんだ。
胸元のフラッシュアイを起動させて、一時的に閃光を相手の視界へと叩きつける。
左腕を切り捨てながらも、私が選んだのは逃走。フルブースト状態でならZZガンダムは振り切れるはずだ。
『させるかぁああああああああ!!!!!!』
視界が意外にも早く開いたのか、手に持っていたビームサーベルを勢いよく投擲する。
ビームサーベルで弾き返そうとするが、この火力だ。弾き返せることもなく右腕ごと貫かれた。
だ、けど! これでならあとは逃げるだけ。そう考えていた私の目の前には絶望が降りかかる。
額の発射口が口を開いたのだ。ハイ・メガ・キャノン。一説によればコロニーレーザーの20%にも匹敵する超高火力であり、私が受けてしまえば確実に塵に帰ってしまうほどの火力を有していた。
首を動かせば射線はいくらでも変えられる。もはや、これまでか。
チャージされたビームが風船のように膨らんでいく。
目を閉じて、これでおしまいであることを受け入れる他なかった。
「諦めるつもり?」
「え?」
桃色の閃光。額から放たれたビームが受け止めたのは腕を十字にクロスさせた黒い悪魔。ゼロペアーの姿だった。
「エンリ、さん?」
「教えてなかったけど、ガンプラバトルは、諦めなかった方が勝つのよ!」
ナノラミネートアーマーによってその高出力ビームのダメージを1/10まで軽減させたゼロペアーはテイルシザーでZZガンダムのコックピットを貫いていた。
「そう。諦めなかった方に、ね……」
ZZガンダムの爆発する花火は周囲に響く。
行くわよ。その言葉で再起動した私の意識はエンリさんに釣られるがまま、撤退ポイントまで足を進めて、ログアウトするのだった。
ストックが無くなりました。
モンハンもやってるので、今度こそ不定期になります
・ガンダムAGE-1バッドガール
名前の由来は悪い女、アウトローやヒールという意味。
エンリに憧れたユーカリがガンダムAGE-1を改修したガンプラ。
AGEシステムの代わりにドクロのレリーフが施され、
ダークハウンドの海賊ガンダムをモチーフに設計されている。
白兵戦に特化させた機体であり、
AGE-1を主軸にして、左腕にはアンカーショットを移植したチェーンシールド。
機動性を重視した両腰のAGE-3オービタルに加えて、AGE-2のリアスカートはビームサーベルを収納している。
足はスパローの脚部パーツを採用しており、防御力は低いが機動性は凄まじい
また首周りにはエンリをリスペクトしたABCマフラーを身につけている。
・特殊システム
ABCマフラー
フラッシュアイ
・武装
ドッズライフル
ビームサーベル
アンカーショット
ビームバルカン
ニードルガン
チェーンシールド