ガンダムビルドダイバーズ リレーションシップ   作:二葉ベス

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激戦中なので初投稿です。


第21話:やさぐれ女と怒れる勇者

 女は一人ぼっちだった。

 昔は周りにたくさん人はいた。だけどそれはいつもまやかしで。

 みんな『すごいね』とか『かっこいいね』とか。そんな上面だけの言葉だけ。

 

 女は嘘が嫌いだった。

 昔からそうだった。今もなお、その嘘が色濃く嫌いになっていて。

 かつて本気で戦おうと言った相手に、勝ちを譲られた時、その言葉が嘘だと理解した。

 

 女は一人ぼっちだった。

 でも、今は……。

 

「仲間がやられるところを、黙ってられません!」

 

 ピシャリと、凛々しくも幼い声が辺り一帯に響き渡る。

 いや、通信を介しているし、今は無音の宇宙空間だから響き渡っていないか。

 ……でも挫けそうだった心に、一筋の光が射し込んだのは嘘ではなかった。

 

「っ!」

 

 スキを見てベルグリシの胴体を蹴り飛ばし、一度戦線から離れる。

 戦闘継続時間はおおよそ8分が経過。残りは1分を切っている。

 状況の整理。相手は五体満足で、武装はなくともそのクローと手癖の悪さであらゆる戦況を打破してきたツワモノ。

 かたやわたしは虎の子のテイルシザーは切断。ハンドメイスも1本、宇宙空間のどこかに行ってしまった。加えてフロントスカートは大破。満身創痍とは言えずとも、あまり芳しくない状況ではあった。

 とは言え3対1。ビーム兵器が主力の2機ではあるが、それでも仲間がいるのは心強い。

 

 ……仲間? 心強い? なんで、わたし。

 

『あんまり余裕がないんでな。3体まとめて相手してやるよッ!』

 

 掴んだワイヤーを手にベルグリシの出力で強引にバッドガールを引き込む。

 

「わわっ!」

 

 その先にいる機体。それはわたしのゼロペアーだ。

 不意に穿たれた奇襲にわたしも対応をできずにバッドガールの身体に被弾してしまう。耐久値も削れる。

 

「ワイヤー外しなさい! あんたヨーヨーにされるわよ!」

「分かってますけどぉ!」

「ノイヤー!」

「命令しないであそばせ!」

 

 ダナジンの手のひらのビームサーベルで次なるヨーヨー攻撃を切断するものの、それで止まることがないのがベルグリシだ。

 

「ノイヤー、避けなさい!」

「へ? きゃあああ!!!」

 

 真っ直ぐに飛んできたのは折れた太刀の持ち手。寸分狂うことなくダナジンの頭部に被弾したノイヤー、だったのだがここでゲームアウトすることなかった。

 煙の中からビームバルカンを連射してベルグリシに対して、牽制攻撃を行う。

 そう。あのダナジンは普通ではない。原典では頭部こそがコックピットであり、判定はそこにあると予測するのが普通だ。だが、ダナジン・スピリットオブホワイトのコックピットは腹部の青いレンズに存在する。故に、この程度では叩ききれない。

 

『そこじゃないなら、17分割でもして、割り出すか!』

「怖いこと言うのはおやめください!」

 

 ナノラミネートアーマーで全く効く素振りを見せない攻撃に突進を仕掛けるベルグリシの手には1本の太刀。恐らく最後の武装であり、これだけは手放すことはない、と思いたい。

 とは言っても機能制限までは残り40秒。であるなら、わたしも奥の手を引っ張り出すしかない。

 ベルグリシがダナジンの片手を切断しているのを目にしながら、息を吸って、吐く。儀式のようなもの。この行為に意味はなくとも、ついやってしまうくらいには負けたくないらしい。

 

「ノイヤーさん!」

 

 みんなが、勝利のために戦っている。無謀だと思う戦いにおいても、ひたむきに、真っ直ぐに。眩しいな。わたしが数年前に置いてきてしまった熱意、情熱、エネルギー。

 未だに迷っている。前を見据えるべきなのか、それとも過去を振り返るべきなのか。

 きっと、前に進んだ方が見える景色はたくさんある。でも進みたくない。あの子達の真っ直ぐな姿を見ても、身体のどこかでは拒んでいる。嘘を言っているんじゃないか。みんなと同じく、あの子と同じく。

 いい。問題は棚上げしよう。目的はフォースのポイントを稼いで、それで兄に八つ当たりすること。それでいい。まだ、最終解答を導き出すのは早い。

 

 ゆっくりと意識を鎮める。

 ここは戦場。それはいつだって変わらず。そして、いつも考えることは1つ。

 その懐にある勝利を奪い取ってでも、わたしは……。

 

「『落とせ、ゼロペアー』」

 

 モーター音がオオカミのような遠吠えに聞こえる。

 瞳の色が赤く塗りつぶされて、閃光が宇宙に滲んでいく。

 40秒だろうとなんだろうと、その上からわたしが叩き潰してやるよ。

 全身のスラスターを展開させながら、目標はまず太刀を潰すこと。この一点を脳裏に入れて、通常の3倍もの出力を持て余すことなくベルグリシに突き立てる。

 

『そうでなくっちゃなぁ!』

 

 肩アーマーの延伸腕部を起動し、普段よりもリーチの長いハンドメイスをダナジンに襲いかかる刃に打ち当てる。

 金属音とともに叩き落とされた太刀筋は怯むこと無く、続けて上に上がってきて、わたしの胴体ごと切断する気でいる。

 さっきから必殺の一撃しか撃ってこない。全く厄介な師匠だこと。

 浮かび上がる線をどうやって防ぐか。そんなの、腕ごと押さえれば上がってこないでしょ。

 伸びている腕部で上昇する腕をなんとか押さえつけるけど、こいつやっぱ力強い。

 ギリギリと火花を散らしながら、剣先をどうにか胴体に貫かせないよう立ち回っているけど、これじゃ時間の問題だ。

 

「ここならっ!」

 

 突如。ベルグリシの関節部分――ナノラミネートアーマーが届かない領域を攻撃するのは黒い海賊バッドガール。

 ビームサーベルで貫いた腕から熱が滲んでいく。これなら、止められる。そして反撃に移れる。

 エンリさん、ノイヤーさん! そんな声が通信から聞こえてくる。分かってる。化け物を倒すなら、3人がかりでないと無理だ。

 フラッシュアイを起動したユーカリのバッドガールは、至近距離にいる3機を飲み込む。そのスキを狙い、上からメイスによる強撃。更には戦線から離脱していたダナジンによる脚部パイルバンカーのキック。まさしく挟撃。どちらかを潰せばどちらかがコックピットを潰す。

 

「これでもッ!」「お食らいあそばせ!!!」

 

 メイスが頭部を潰し、パイルバンカーがコックピットを貫く。

 勝ちたい。その欲求だけがフル起動状態のベルグリシを叩き潰したのだ。

 

『お前たちの全力、見せてもらったぜ』

 

 刹那の爆発。暗い宇宙空間に瞬くビックバンが巻き起こる。

 残り時間0秒。わたしたちの、勝ちだ。

 

 ◇

 

 わたしたちのフォースネスト『ロイヤルワグリア』にて、フォースメンバー4人と兄さん、ユメ、サラーナの3人がくつろいでいた。

 訂正。ノイヤーとフレンはくたばっていた。

 

「悔しいです、せんぱい! 膝枕してください!」

「それを言うなら逆だろ! 俺が膝枕されたい!」

 

 何故かいがみ合う夫婦。イチャイチャなら他所でやってほしいのだけど。

 睨むような、というよりも恨みを込めた視線を向けていると、何故だかユーカリがわたしの肩をちょんちょん突いてくる。

 

「エンリさん、勝ちましたね!」

「そうね」

「嬉しくないんですか?」

「別に。ちょっとそんな気分じゃないだけよ」

 

 過去の話半分。それと、目の前の兄にタイマンでは歯が立たなかった半分。

 反省点はいくらでもある。恐らく地上であれば話は変わったかもしれないし。たまたま宇宙というステージだったから勝てただけで、わたしのホームグラウンドである地上戦で勝てるか、と言われたら微妙。それだけにベルグリシの強さが異常だった、ということ。

 当然の結果といえばそうなんだけど、さ。やっぱりちょっと、悔しい。

 

「でもすごかったですよ、あれにずっと耐えてたじゃないですか!」

「防衛戦だけならね」

「あとで戦闘ログ見ますね!」

「勝手にしなさいよ」

 

 正直今日は放っておいてほしかった。傷心もあるけれど、あんなに熱くなってしまったのが珍しくて落ち着かない。

 たかが兄でこれなんだから、わたしの過去の因縁の塊であるナツキと会ったら。そう思うだけど、身の毛がよだつ。自分が自分でなくなってしまうような、そんな悪い感覚。嫌だな、わたしって女は。

 

「エンリさん」

 

 またもやわたしに絡んでくる少し甘ったるくも優しく触れてくるようなミルクキャラメルのような声。

 つい返事してしまうわたしは堪え性ではないらしい。この声、苦手なのよ。

 

「ありがとうございました。私、正直負けると思ってたので」

 

 実際、わたしもそうであった。作戦や奇襲が効く相手ではない。けれど用いなければ負けていた試合。3対1であったから勝てたようなものだし、それに……。

 

「あんたのおかげでしょ、胸を張りなさい」

「へ?」

 

 あの状況。打開策のきっかけとなったのは紛れもなくユーカリのおかげだ。

 あの場で関節部分を狙ったビームサーベルで威力を殺さなければ、貫かれていたのはわたしだ。

 だから褒め言葉を言う相手は自分であって、わたしではない。

 

「そうですかぁ? 私は何も……えへへ」

 

 嬉しさで緩みきっただらしない顔は到底人が見れるようなものではない。

 ほんと、こんな女のどこがいいんだか。ユーカリから見たわたしも、わたしから見たユーカリも。

 

「そういや、お前サマーフェス行くのか?」

「サマーフェス、って何」

「季節イベントです。フォースしか参加はできないんですけど、今年はエンリさんも参加できますから」

 

 あぁ、そういえばそんな季節だったっけ。季節なんて関係なく戦闘に明け暮れてたソロ時代はもうないんだ。

 ちらりと横目でユーカリの顔を見れば、そこにはもう次のイベントに対して期待を寄せる面倒な瞳でわたしを見ていた。

 

「な、何……」

「エンリさんの水着、見たいです」

「はぁ?」

「綺麗なんだろうなーって! ツインテールだって素敵なんですから映えますよ絶対!」

 

 期待を寄せてもらっても構わないけど、わたしは水着を着たくない。

 いや、言われれば仕方がなく着てあげるけど、積極的に見せるものでもない。だって……。

 

「こいつの水着って、うっすい胸してるのに?」

 

 失言の限りを尽くす兄の膝下を蹴り飛ばす。

 人には言っていいことと悪いことがあるって、お前から教わったんだが?

 

「うわ、せんぱいドン引きです。最低。クズの中のクズ。兄としてクソ」

「言いすぎだろ?!」

「いえ、私でも今のはないと思いました!」

 

 養護する義姉と友達はさておき、水着。水着ねぇ……。

 アバターで少し盛ったことはあっても、自尊心が耐えきれずに、すぐに戻した覚えがある。人には人に合ったバストというのがあるんだ。悲しいね、バナージ。

 まぁ、わたしの心情を置いて、フォースのメンバーと一緒にフェスに出るのは、確かに悪くないと思う。このメンバーなら、そう考えることが最近増えてきた。

 ……悪くない、このメンバーなら、か。また、嘘じゃなきゃいいのだけど。

 

「いや、だってこいつは!」

「義姉としてそれ以上は許せませんよ、ユウシさん」

「友達として見過ごせません!」

「分かった! 分かったってば!」

 

 ロールプレイを忘れるほどの義姉のマジトーンには流石に驚いた。今度挨拶にでも行こうかな、庇ってくれたお礼ってことで。

 

「楽しみにしますね。エンリさん!」

「はぁ……分かったわよ」

「ありがとうございます!!」

 

 太陽のような笑顔は、夏場のギラギラしたものではない。

 ただ眩しく、そこにあるものを輝かせる魔性の笑顔。

 わたしは、何を期待しているのだろうか。彼女なら。ユーカリなら、って。

 

 ――でも。

 

 助けたことに、得がなかったかと言われたら、それは違う。

 わたしの心を揺れ動かす1人なんだ。あの日、気まぐれで助けて、正解だった。

 

 もうすぐ7月になる。誰かと一緒の夏、悪くない。




これはヒロインが少しだけ前に進む話


・ガンダムベルグリシ
ガンダムバルバトスルプスを改造し、
大型バスターソードをメインに、ディテールを西洋のサムライらしくした姿
袴部分にはスラスターが設置されており、正座もできる。

ガンダムティターンを前身にした改造が施されており、
エイハブ・リアクターを超えたGBN限定の架空コア『デザスト・リアクター』によって
エイハブ時の3倍。常時リミッターを解放しているかのような出力を生み出している。
しかしながら、フル出力での起動時間は9分が限度。
それ以上は必ずリアクター側の冷却時間が入る。

・特殊機能
ナノラミネートアーマー
デザスト・リアクターリミッター解除
合言葉は「怒れ、ベルグリシ」

・武装
超大型バスターソード
巨大な両手持ちの大剣。前よりもパワーアップしてる。
質量破壊兵器であり、基本的に叩きつけることを目的としている。
VPS装甲だろうが力いっぱい叩けば壊れるだろ思想

太刀
ナックルロケット砲
クロー
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