ガンダムビルドダイバーズ リレーションシップ   作:二葉ベス

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復活のゼロペアー


第45話:やさぐれ女と氷結の悪魔

 ノイヤーとの遭遇戦。ある程度想定していたことではあったものの、これだけ直近で来るとは思ってもみなかったわけで。

 この前のユーカリとのデートの際にGPDで破損したゼロペアーのパーツを見ながら、わたしは考えていた。

 ゼロペアーは完全に近接格闘型のインファイターである。

 空を飛べないという都合も含めても、地上戦はほぼ無敵であると過信はしていた、のだが……。

 ナツキのあのオーバースカイ。そしてユーカリのバッドリゲイン。

 そのどちらもが、自分のファイターセンスを磨き上げた一級品であるガンプラだ。オーバースカイは自身のガーベラストレートへの信頼。そして翼を広げて空を自由に泳ぐ様はまさしくGPDという檻から解き放たれた鳥と言っても過言ではない。

 バッドリゲインは対わたしに考えられたバッドガールの改良機。シグルクローとそれに付属するワイヤーによる奇襲攻撃。ホバークラフトによる地形無視。そして本人のゲームセンス。どれを取っても練られているものと考えていた。

 

 要するに触発されたのだ。空を飛べないゼロペアーが満足に空中戦ができるわけもなく。

 かといって空で戦うことはバードハンターとしての誇りが許さない。わたしがわたしであるために。その考え方を練れば練るほど、わたしが以前考えていたシステムにたどり着いていた。

 正直実装は簡単だし、壊れているゼロペアーを改良するのであれば、これほどちょうどいいタイミングはない。

 難点があるとすれば、それはわたしがそのシステムに慣れられるかどうか。それにかかっていた。

 見積もっていたのは数週間。それでも急場しのぎと言える日数であった。

 けれど、こうしてゼロペアーの新しい姿は完成させることができた。

 

 カミキバーニングガンダムのレプリカ。バルバトスルプスの四肢をルプスレクスのものへと変貌。胸部にはガンダムアシュタロンのパーツを使ったゼロ度の心火を宿した新たなゼロペアー。

 それこそが、ガンダムゼロペアーオーバーデビル。悪魔をも超える悪魔という意味だ。

 

『……ずいぶんなことをおっしゃいますのね』

「あんたがわたしに勝てた試し、あったかしら?」

 

 あえてノイヤーを挑発する。彼女は恐らく冷静ではない。そんな相手とまともに付き合ってあげるほど、わたしもお人よしではないのだ。

 

「エンリちゃん……!」

「フレンは走って戦闘エリアから離脱しなさい」

「うん……」

 

 フレンはその場でMSを収納し、走り始めるものの、それだけでは終わらないと言わんばかりに目の前のレギルスが追撃を始めだす。だが、そんなの粗雑な行動、わたしが読んでないとでも思ってるの?

 ゼロペアーの右腕をかき上げるように虚空に弧を描けば、そこに表示されるのは氷のエフェクト。壁のようにも見えるそれは、レギルスを急停止させるには十分であった。

 

『氷……? どこから』

「わたしと戦いたかったんでしょう? フレンから通信は全部筒抜けよ」

『……なんだっていいですわ。まずはあなたから、始末して差し上げます!』

 

 レギルスのスラスターを起動させて、空を駆けながらビームの輪っかを連射させる。

 そのことごとくは恐らくABCマフラーやナノラミネートアーマーによってダメージを軽減することは可能だろう。

 だが、あれは恐らく磁気閃光システムを利用したビームリングのような物。当たればビームサーベルクラスの威力によって切断は免れない。脚部の運動をはじめ、陸上を走り始める。

 

『どうしたんですの?! もしや怖気づいて逃げているのですか?!』

 

 今のわたしは冷静だ。ありえないくらい切断力の高いビームリングを連続で発射しようが、何ら関係はない。狙いがわたししかいない射撃に恐れる理由などないのだから。

 だからそんな攻撃は、わたしのハンドメイス一発で崩壊する。

 後ろに振り向く瞬間、懐にマウントさせていたハンドメイス1本をレギルスへと投げつける。

 質量に従って縦回転しながら、レギルス相手にメイスが襲来する。

 当然ながらノイヤーのレギルスは最低限の動きで回避するが、それが囮だってぐらいあんたにもわかるでしょう。フロントスカートのチェーンワイヤーを発動させ、メイスと接続。そのまま横回転に一発、回転殴打を叩きつける。

 

『それは読んでいましてよ!』

 

 空中でバク転一回を器用に繰り広げてから、ビームリングを照射。それをわたしは、フリーズさせる。

 ビームリングがこちらに近づくにつれて、氷を纏っていき、わたしが横なぎで粉砕するころには、もはや氷の破片へと姿を変えてしまったのだ。

 

『なにが……?!』

「もう一発よ」

 

 メイスの攻撃が一周し、今度こそレギルスに直撃する。

 ただ先の方に当たっただけで、大してダメージは与えていないようにも見えた。さすがにこれじゃあ倒れてくれないか。

 チェーンワイヤーをすかさず回収し、混乱が続くノイヤーへと目掛けてさらにメイス2本投げ込む。計算されていないものの、当たらなくてもいいという安心感はやはり安寧をもたらしてくれる。

 今度はメイス同士の間をくぐるようにして回避すれば、レギルスビットを展開し始める。

 

『なんだか分かりませんが、これで落ちなさい!』

 

 無数の黄色い丸がジグザグにビットを反射させながら、わたしのゼロペアーへと接近する。

 だけど、そんな攻撃じゃわたしに傷一つ付けられない。

 ゼロペアーのクリアパーツから、滲み出す冷気を瞬間的に解放させることで現れるのは氷の枝。クリアパーツを介して氷の枝たちがレギルスビットを突き刺した瞬間、ビット自体が瞬間に氷結させていく。

 出来上がったのは氷の木に実った木の実。パリーンと割れていけば、その異常性を誰もが認めることができた。

 

「ゼロ度の心火を、舐めないことね」

 

 ゼロペアーオーバーデビルに備わった大きな改良点としてはそこにあった。

 オーバーフリーズシステム。RGシステムとバーニングバーストシステムを元にエンリが手を加えたシステムであり、ツインエイハブリアクターによる余剰熱エネルギーを各クリアパーツから放出。それを炎として変換した上で、大気中の水分と融合させて氷のエフェクトとしてGBN内に召喚するというシステムだ。

 

 言うなれば、熱という熱をすべて氷に変換させることで、いろんなことができるようにしたシステム。

 制御というよりもどちらかと言えば応用力が物を言うシステムであることは重々承知している。

 だけど、あのユーカリがわたしをヒーローって言ってくれたのなら、かっこいい、ヒーローらしい力にしなくては、恋人としての名が廃るというもの。

 

『意味の分からないことを……!』

 

 だが欠点もある。例えばあのレギルスビットによるビームバリアは防げないということだ。

 巨大な黄色い球となって襲い掛かるレギルスを地面を蹴って避けていくものの、それでもダメージは加速する。

 ビームバリアが空けたと思えば今度はビームリングによる攻撃。

 ノイヤー自身もファイターとしての腕前は平均以上と言ってもいい。そりゃわたしやナツキと比べたら大したことはないけれど、それでもGBNを楽しむ程度なら、十分なスキルだ。

 だが、ノイヤーはそれ以上を望んだ。わたしに勝つという、叩き潰すという絶対なる意志。それをこの五月雨のごとく降り注ぐ攻撃から感じざるを得なかった。

 

「あんた、こんなことをしてユーカリが悲しまないって思わないの?」

『思いますわ。ですが、あなたにそんなこと言われたくありません!』

 

 おおよそノイヤーの動きとは思えないほどに繊細で、大胆で。人間らしさすら思えてしまうほどの精密な動きに圧倒される。

 ビームバリアで突撃。瞬時にビット展開し、被害を最小限に防ぎ、攻撃のスキを狙ってビームリングを放つ。避ければ今度はビームバリアで突貫しダメージを与えていく。やはり地上だけでは逃げるのには限界がある。

 機体はこちらが上だと思っても、パイロットとしての能力は明らかにあっちの方が上だ。

 

『ナノラミネートアーマーも大したことありませんわね!』

 

 防御と繊細な攻撃を兼ね備えた攻撃。オーバーフリーズシステムを瞬間的に熟知した点は明らかにビルダーとしての力を認める。

 それ以上にこの操縦テクニックはおかしい。まるで『人間そのものと戦っている』ような気さえしてならない。

 腕部からビームを出しても、それが聞いている試しはない。先ほどまで優勢だったにもかかわらず、今は明らかに不利だ。

 

「これしか、ないわね」

『これでぇ!!!』

 

 ビットをビームサーベルに纏わせた一撃が喉元を貫かんと突撃を始める。

 わたしは左肩を代償にその攻撃を『わざと』受け止めた。

 

「あんたが何を考えているか分からないけれど……」

 

 冷気がクリアパーツからレギルス本体へと伝わっていく。

 瞬時に察したのであろうノイヤーは引き抜こうとするが、押さえられたゼロペアーの腕を振り切ることができない。当然だ。完成度が高くたって、ガンダム・フレームとしての格の違いがあるのだから。

 

「最初に言ったでしょ。引きずってでもユーカリのところへ連れていくって!」

 

 冷気が氷となって、地面を、レギルスを、ゼロペアーを凍てつかせていく。

 オーバーフリーズシステム、全面開放。このゼロペアーに備わった必殺技を今、見せようじゃない。

 

「オーバーフリーズ・クライシス」

 

 ゼロペアーの周囲が凍り付いていく。草も木も、そしてモビルスーツでさえも。

 出来上がったのは金色と黒の氷像。相打ち覚悟で凍らせた必殺技の効果は行動不能や素早さダウンというデバフのみ。故にゼロペアーは無傷。氷の花が散ると、そこにはゼロペアーのクローがレギルスの頭部をつかみ取る。

 

「終わりよ」

 

 パリパリと、まるでクッキーでも割るようにたやすく頭部にひびが入っていく。

 レギルスの頭はヴェイガン機であるためにコックピットとなっている。であれば、頭部を破壊すればコックピット判定によってゲームセット。ノイヤーの捕縛を改めて行うことができる。

 だから言ったでしょ、コックピットから引きずり下ろしてでも、ユーカリのところに連れていくって。

 

『邪魔だ、悪魔がッ!』

「ッ?!」

 

 その一撃で終わろうとしたその瞬間だった。

 突如黄金色の刃がわたしたちの間に入るようにゼロペアーとレギルスの右腕を両断する。

 あまりの風圧に後方に吹き飛ばされたゼロペアーは地面を何度かバウンドしながらも、なんとか受け身を取ることに成功した。

 そして、わたしは見た。その介入者である1/60スケールの化け物を。

 

「……バエル?」

『やぁ、初めましてだね。元、姉さんのチームメイトさん』

 

 それは巨大なバエル。大きさにすれば1/60スケールの巨大なもの。今まで戦っていたレギルスがまるで子供のようにも見える大人サイズ。

 見え隠れする黄金色のガンダム・フレームを見たことないにせよ、それは明らかに常軌を逸した存在だと言っても過言ではなかった。

 

『僕はアディN。ノイヤー姉さんの弟と言った方がいいかな』

「……なるほどね。あんたがノイヤーをそそのかしたってことでいいのね」

『賢い女は嫌いじゃないよ。だけどその汚い見た目はどうかと思うけれどね』

「エンリさん、ケンプファーの人は何とか逃がせました、けど……」

 

 ホバー移動してきたバッドリゲインこと、ユーカリも合流すれば、メインキャストはすべてそろったと言ってもいいだろう。

 

『君がユーカリちゃんか。初めまして、義姉だったかもしれない人』

 

 第一印象で分かった。こいつはわたしが嫌いな嘘を平然と付くタイプの人間であることを。

 両腕は破損状態。やれるとすればテイルシザーと脚部だけ。後ろにはユーカリがいるけれど、ここで戦闘を起こす理由は少ない。というか、1/60スケールバエルもどきと戦うだけの余剰戦力が残ってない。

 

「あなたが、ノイヤーさんを……!」

『誤解しないでほしいなぁ。僕は姉さんを誘っただけ。自分でノッてきたのはほかでもない、姉さんだよ』

 

 見えてきそうで、見えてこない会話。交渉術がうまいと言えばそれまでだが、それが本当であるかどうかを決めるためにはノイヤーに聞くしかない。

 

「ノイヤー、あんた何があったの?」

『…………』

「ノイヤーさん!」

『……わたくしは、自分の意志でここにいますわ。それは他の誰でもないわたくしの決断です』

 

 今までのノイヤーの行動を整理するしかなさそうだけど、ここじゃあまともに考えることもできない。

 一つ舌打ちする。おおよそ相手の手のひらの上だったとしても、このまま引くしかなさそうだ。

 

「ユーカリ、引くわよ」

「でも、エンリさん!」

「フレンのことも気になる。そういうことにしてちょうだい」

 

 建前はそれだけでいい。

 通信を聞いている限り、お気に入りだった相手からの真っ向からの拒絶。

 ELダイバーであれば、そんなこと初めてだろうし、ケアは確実に必要だ。今のフレンは、何をするか分からないのだ。

 

「……わかりました」

『話が早くて助かるよ、薄汚い賢しい女』

「今度覚えてなさい、嘘吐き野郎」

 

 腕がなかったから親指を下に向けることはなかったが、心の中でそうしておく。

 しばらく離れてからバトルモードを解除させると、すぐさまフレンの居場所を探し始めた。幸いにもわたしやノイヤーと違ってログイン情報を隠したがる性格ではないのだろうが、その場所が少し厄介だった。

 

「……マギーさんのフォースネスト、みたいですね」

「やけ酒とか、やめてもらいたいのだけど」

 

 仕方ないギャルだこと。まぁ、そんな相手だから気を許せるのかもしれないけれど。

 わたしたちはとりあえず落ち込んでいるであろうフレンの元へと走り始めた。




オーバーデビル。それは悪魔を超えし者


・ガンダムゼロペアー オーバーデビル
名前の由来は悪魔をも超える悪魔、と言う意味合い。
ナツキのオーバースカイと真似たダブルネーミングでもある。
ユーカリのヒーロー発言に対して、期待に答えるべく改修した新たなゼロペアー

ゼロペアーと名は付いているが、実際はほぼ別物に近い。
両腕両脚部をバルバトスルプスレクスのパーツに変えつつも、
各所にビルドバーニング、トライバーニングのバーニングバーストシステムを採用し、クリアパーツが多めに起用されている。
胸部はアシュタロンのパーツを採用しており、両肩からマシンキャノンが撃てる

別名:ゼロ度の心火(自称)
バーニングバーストシステムの氷バージョンである、
オーバーフリーズシステムというオリジナルのシステムを起用している。

・特殊システム
ABCマフラー
ツインエイハブリアクター
ナノラミネートアーマー
リミッター解除:
合言葉は『打ち砕け、ゼロペアー』

オーバーフリーズシステム:
RGシステムとバーニングバーストシステムを元にエンリが手を加えたシステム。
ツインエイハブリアクターによる余剰熱エネルギーを各クリアパーツから放出。
炎として変換された熱エネルギーと大気中の水分を瞬間凍結させ、
氷のエフェクトとしてGBN内に召喚するシステム。
このため、リミッター解除による熱のバックファイアを軽減しつつ、
自身の強化にも当てているため、実質リミッター解除の時間を飛躍的に向上させている

オーバーフリーズ・クライシス:
ゼロペアーオーバーデビルの必殺技。
オーバーフリーズシステムを全面解放し、周囲を凍てつかせる事ができる。
これによって行動不能や素早さダウンなどのデバフ状態が発生する。

・武装
ゼロペアークロー
クロービーム砲
ツインメイス
テイルシザー
シザー・アンカー
ショルダーバルカン×2
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