ガンダムビルドダイバーズ リレーションシップ   作:二葉ベス

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ここまで来てきた人にご褒美タイムです。
今回はイチャつきます。


第47話:ばっどがーりゅと初めての色々

【急募!】粛正委員会に粛正された人集まれ!【アウトロー】

 

1:名無しのアウトロー

粛正委員会が許せない。

なーにが正義は我々にあるだ。私たちは無法者。

正義なんかじゃなくて、自由で対抗してやろうぜ!

 

◯月×日 ◯◯時◯◯分。

ハードコアディメンション・ヴァルガにて、フォース『粛正委員会』を壊滅させる。

自由を手にしたいものよ、集まれ!!

 

 ◇

 

「こんな感じでいいんですか?」

「……まぁ、いいんじゃないかしら」

 

 作戦は至ってシンプルだ。

 粛正委員会にやられた者たちに倍返ししてやろうぜ! ってことでアウトローや無法者たちをかき集めて、一斉に反旗を翻す。勝てば官軍負ければ賊軍というわけだ。

 もちろんこの機会に粛正委員会もかき集めた戦力を絶対に逃しはしないはず。

 そもそも『正義は我々にあり』と謳っている集団だ。こんな絶好の機会に乗らない手はない。

 乗らないならそれも一興。自由の名のもとにあらゆる非道もいとわないつもりだ。どういう非道をするかは一切思いついていないけれど。

 

 ということで私はアウトローたちを集めるために初めて掲示板というものに手を出してみた。

 掲示板ってすごいですね。なんかアングラーな感じあるし。こう、影で結託した組織とかも絶対あることだろう。そう考えるだけでワクワクしませんか。

 

「あんた、掲示板にどんな夢見てるのよ」

「へ? 私、口に出してました?」

「思いっきりね」

 

 エンリさんお得意のため息を耳にしながら、同時並行しているガンプラの試作案を洗い出していた。

 曰く、今のムスビさんは常軌を逸した操作精度らしい。

 細かい制御はもちろんのことながら、ビルダーとしての知識の開花。そして今まで持ち合わせていなかったまるで人間のような動き。その全てがランカーに匹敵するとされていると聞いて、少しだけ強張ってしまう。

 それ相応の技術とガンプラが必要になる。今のバッドリゲインでは対抗できない可能性があるということで、試作案をノートに書き上げているのだ。現状、特にアイディアがないから真っ白だけど。

 

「まぁ掲示板はしばらく放っておけばいいでしょう。問題はガンプラよ」

「ベースはAGE系にしようかな、ってぐらいなので全然です」

 

 スマホでガンプラのページを眺めるも、特に目新しいものアイディアはない。

 強いて言えば、アセムが使ったAGE-2をベースにしたいなぁぐらい。

 

「まずはコンセプトよね。話はそれから」

「かっこいい系です!」

「他には?」

「アウトローな感じで!」

 

 あ、エンリさん呆れてる。だって、私AGE以外詳しくないですし。

 いきなしコンセプト、と言われても……。

 

「じゃあベースだけでもさっさと決めてしまいましょう」

「ガンダムAGE-2にしようかな、と。GBNを始めた当初からずっと考えていたんですけど、技量がないかなって思って控えてたんです」

 

 でも、今は違う。

 操作技術も上がってきたと実感できるし、この前、相打ちとは言えどもエンリさんとは負けず劣らずの勝負をしたと思っている。もちろんあの時のエンリさんは冷静ではなかったし、今のオーバーデビルの形ではなかった。

 けれど、実力自体はランカーにも匹敵すると言われているエンリさん相手にだ。

 これなら私が納得の行くスーパーパイロットだって夢ではないと考えた。

 けど、全然アイディアが見つからないんですよ。

 

「まぁ気長に他のガンプラを見るでも悪くないわね。可能性はいくらでも転がっているものよ」

 

 そうは言ってもエンリさん。やりたいことって言っても特に考えてなくて。

 あとは格闘戦ができればいいかなーぐらい。格闘戦機体ならダブルバレットでいいわけだし、うむむ……。

 

「そういえば、ユカリ。1ついいかしら」

 

 おずおずと、普段のエンリさんらしくない声の震わせ方をしながら、質問してくる恋人。当然なんでしょう、と返事をしてみた。

 

「なんでわたしを家に呼んだの……?」

「え、だってそっちの方がやりやすくないですか?」

 

 小声でぼそっと「質問を質問で返すんじゃないわよ」と聞こえた気がしたが、多分気のせいだと思う。

 そう、今は私の、イチノセ家の一室。私の部屋にエンリさんをご招待しているのだ。

 

「今家族は?」

「出かけてますよ」

 

 スマホをイジりつつも、通販サイトであーでもないこーでもないとプラモデルを探していく。やっぱりコンセプトを見つけないと、こういうのを探してていてもひらめきはないのかなぁ……。

 

「あんた、そういうところは気にしないのね」

「何がですか?」

「今、恋人のわたしとユカリ。家には2人だけなのよ?」

 

 それの何が問題なんだろうか。

 泥棒が入らない可能性はないとも言えないけれど、電気をつけてるし、誰かがいるって分かれば意外と入らないものだと思う。

 じゃあエンリさんは何がイケないと考えているんだろう。

 思考する。ポクポクポク……。分からない。

 

 そう答えれば、エンリさんは頭をガックシと落としてため息をついた。

 私、何か間違ったことでも言ってしまったのだろうか。

 

「……そんな………ない…ね、わ……」

「何か言いました?」

 

 後ろの方で「やるしかない、わね」と一言つぶやいたように聞こえて、流石に振り返る。

 エンリさん、もしかして何か困ってるのかな。考えてゆっくりと振り向けば、いつの間にか距離を詰めていた彼女。距離は恐らく人の頭一個分ぐらいの近さだと思う。

 

「わたしが男じゃなくて良かったわね」

「……エンリさん?」

 

 彼女の顔が少しずつ。少しずつ迫ってくる。

 えっえっ。思わずエンリさんの綺麗で整った顔を見つめてしまう。その瞳。その鼻筋。そして形の良い唇。

 右手も、左手もどっちもエンリさんに掴まれて、みるみる内にその距離は目と鼻の先に。

 いくら鈍感だと罵られていた私でも流石に気づいてしまった。

 気づいた瞬間。胸の音がドンドンと激しく脈を打ち始める。

 2人っきり。家族はいない。恋人同士。目と鼻の先。……彼女の唇。これだけ揃ってしまえば、期待しない方が無理な話だった。

 

「嫌だったら、言ってくれてもいいのよ?」

 

 嫌、なんて、そんな事思ってない。

 でも緊張して声が出ないだけ。声を出そうにも声帯が胸のドキドキにかき消されて聞こえていない。

 

「ぁ……ぇっと……」

「ユカリ」

 

 それはこの先に行ってしまってもいいか、という最終警告。

 超えてしまえば最後、戻ってこれないほどに甘い甘いひとときを迎えることになる。

 こんな、恋心を教えてほしいって言われて、最初のお勉強がこんなにも急でいいんだろうか。いやいや待って。いや待たないで。私、まだ心の準備ができていないっていうか。その……。

 

 そんな事を知らないのだろう。最後のリミットを超えた彼女は吐息のかかる距離に到達する。

 嬉しいとか嬉しくないかと言われれば、嬉しいに決まってるけど、こんな急にっていうか。二人っきりだったらそうなんですけど、でもそれとこれとは違うって言いますか。あ、でも私たち恋人同士なんだからそういうことだってありますよねって、あー! 違うんですよエンリさん。今日はそういう意図で呼んだわけではなくて。えっと、その……。

 

 戸惑って、とりあえずこういう時って目を閉じるのが普通なんですよね。じゃ、じゃあ目を閉じた方がいいですよね?! と慌てながらまぶたを閉じる。

 幾拍かの鼓動と、時計の音と。そして……。ひんやりとしたおでこの感覚。

 

「えっ?」

 

 思わず目を開けて、彼女の顔を見る。その顔は、してやったり、といった私を罠にはめて楽しげに微笑むエンリさんの姿だった。

 

「エ、エンリさん!」

「ごめんなさい。でもこういうこともあるのよ?」

「……エンリさん、最近ずっとこれですよね」

「それだけユカリが愛おしいってことで、勘弁してちょうだい」

 

 卑怯だ。そんな事言われたらぐうの音も出ない。

 初めてのキスだと思って、緊張と不安と、少しばかりの高揚を胸に抱いていたのに、結局はおでこ同士のくっつけ合いって、なんか少しガッカリだ。

 そっか。私、今ガッカリしたんだ。エンリさんと口づけを交わすことができなくて、胸の奥にもやもやを抱えてしまったんだ。

 

「……エンリさんなのに」

「何よ」

「ちょっと、期待してたんですよ。……その、エンリさんとのファーストキス」

「そ、そう……」

 

 攻撃力ばっか高いくせに、防御力はちっとも成長している気配はない。

 まぁ、そんなところがかわいいんですけども。

 

 ◇

 

 そのガンプラは、1人の作成者の元から生まれた。

 ラプラスの箱を探し終えたユニコーンガンダムに訪れたのは役目を終えたモビルスーツがやってくる解体場であった。

 古きMSを解体し、新しい機体の材料として移植する。そんな役割を担ったユニコーンガンダムは解体されていく。彼は、どんな思いだっただろうか。疲れた休ませてほしい。もっと戦いたかった。平和を享受したかった。

 そんな様々な意志とは別に、戦うために生まれたのがガンダムAGE-2。

 彼へと組み込まれていくのはまさしくユニコーンガンダムのパーツたちだった。

 古きを知って新しきを得る。そんな温故知新精神が宿ったガンプラ。

 

 ――その名も。

 

「ガンダムAGE-2 シェムハザ、ですよ!」

「ユーカリちゃん、テンション高いねー!」

「今朝からこんな調子よ……」

 

 ガンプラの組み立ての息抜きにとGBNにログインすればすぐさま粛正委員会の話題が耳に入ってくるが、それは一切合切シャットアウト。

 今は私たちのアウトロー戦役のために頑張るぞいするところなんだから。

 シェムハザのコンセプトは堕ちた天使と中近距離による戦闘だった。

 前者は身体を黒くする代わりにユニコーンガンダムのシールドファンネル4基のみを白く塗装することで完遂。まさしくその身を落としてもなお、天使であり続ける様と言えるだろう。

 後者は私の戦闘スタイルから。

 アセムのビームサーベル二刀流を視野に入れながら、連射性の高いガトリングガンをシールドファンネルに装備させている。両手両足にはミサイルもついていて、奇襲性もこれで確保できる。

 バッドガール、バッドリゲインから問題視されていた汎用性という面で大きく改善されたと言ってもいいだろう。

 

「今は組み立て中ですね。フレンさんの方はどうですか?」

「もち! マギーちゃんに手伝ってもらいながら、クイーンズランド・セルも完成に近づいてるよ!」

 

 簡単に言えば全部乗っける事を視野に入れたのがクイーンズランド・セル、だとのことだ。問題点は色々見つかっているみたいだけれど、マギーさんならきっとなんとかしてくれることだろう。

 

「スレッドもかなり人が集まってるみたいね。粛正委員会の被害に受けた連中が結構いるってことね」

 

 掲示板の方もエンリさんが言った通りかなり人が集まってきているらしい。

 マナー違反者はもちろんのことながら、無実の罪で殴られたダイバーまでいるとのことらしいので、その影響力は計り知れない。

 これだけ耳に入れば、恐らく粛正委員会も動かざるを得ない。残り2週間後。それが決戦日であった。

 

「長かった夏も終わりね」

「秋は秋でシン・マツナガ狩りレイドとかあるし、みんなで一緒にやりたいよねー」

「はい。みんなで、4人でですね!」

 

 決意は硬い。やることと言えばノイヤーさんをフるってことなんだけど。

 罪悪感がないかと言われれば嘘になる。私だってノイヤーさんを、ムスビさんを傷つけたくない。

 でも、一度壊さなければ作り直すこともできないってフレンさんが教えてくれた。

 私の思いは、決意はたった1つだけ。みんなと一緒にいたい。ただそれだけなんだ。

 だから、今度はムスビさんが私のワガママに付き合ってもらう番です!

 

 ◇

 

「相変わらずだな、ユーカリくんは」

 

 ウィンドウ内のとあるスレッドを見ながら、とある同志の事を思い馳せる。

 確認した限りでは、彼女たちの勇気によって1人の少女の心を開いたそうだ。

 恐らく今回も必ず成功させることだろう。

 

「僕も行きたかったなぁ」

 

 本音を言えば、ユーカリくん率いるケーキヴァイキングと一戦交えてみたくもあるし、逆に協力してバトルをしたくもある。

 こんな機会でなければ、仮面を被ってでも参戦したいところだったのだが、そうは行かないのも実情だった。

 ワールドランキング1位というのは僕が思っているよりも影響力が大きい。

 例えばマナー違反者の味方をしたともなれば、その噂はたちまち広がっていき、違反者たちこそが正義であるかのような振る舞いになりかねない。それこそ粛正委員会の二の舞だ。

 だから今回は陰ながら応援することとする。

 

「でもキョウヤちゃんは、あの子達の力になってあげたいんでしょう?」

「だから君にも協力してもらおうと思ってね。この戦闘にフォース『春夏秋冬』を招待してほしいんだ」

 

 この戦役には証人が絶対に不可欠である。そう。『ノイヤー家が敗北した』という証人が。

 それで1人の少女が幸せになれるというのであれば、僕は喜んで鬼にも悪魔にもなろう。

 

「たまたまヴァルガで凸待ち配信をしていたら、戦役が発生。春夏秋冬はそれに便乗、というのはどうかな?」

「あなたも相当のワルね。表では決して言えないわ」

「友のためだ。このぐらいの支援をしても、バチは当たらないだろう」

 

 野暮ではあるかもしれない。

 だが、このGBNという広大な世界で、たった1人のために巨大な相手と戦う君の姿は、かつてのリクくんを見ているようで、少しワクワクしてしまう。

 

「彼女たちも、会いたがっているのだろう。ケーキヴァイキングに」

「しょうがないわ。そ・の・か・わ・り! お代はきっちり取らせてもらうわ!」

「あぁいいだろう。ウィスキーのボトルをもう一杯いただけるかな?」

「は~い! ボトル一本入りました~!」

 

 可能性を見た。未来へと歩く可能性だ。

 背中を押すことすら叶わないその可能性を、僕は陰ながら応援する。

 必ず救ってほしい。そしてもう一度。今度は4人一緒に会おうじゃないか、ユーカリくん。




シン・マツナガ狩りレイドはマツタケ狩りに似たなにかです
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