ガンダムビルドダイバーズ リレーションシップ   作:二葉ベス

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開戦、満を持して


第48話:ケーキヴァイキングとアウトロー戦役

 誰かが言っていた。正義と自由は決して相容れない概念であるということを。

 正義とは縛り付けるもの。固定概念を押し付けて、それに従わせることで体現している。

 自由とは解放するもの。自分自身を自由だと信じさせれば、それは自由だと言えるだろう。

 

 どちらが正しいとは言わない。どちらが間違いだとも言えない。

 故に、この問題は難しくて、根が深い。

 

 でも。今、エンリちゃんたちが為そうとしていることにはそんな頭を抱えるような深い悩みは存在していない。

 聞くに、1人の少女を助けるために、強大な相手を敵に回している。という事実だけ。

 なんだか昔の私たちみたいで少しだけあの時に思いを馳せる。

 思えばあの頃から私はハルのことが好きだったと思うし、向こうもそうだったんだと思う。いやぁ、なんか思い出したら心がワクワクしてきた。これだからハルは大好きなんだ。

 目の前のガ系の装備をしたアヘッドをなます切りにしながら、そう思うのだから凸待ちってのは忙しい。

 

『我らの世界にナツハルの光があらんことを~~~~~!!!』

「はーい、メロスさんありがとうございましたー」

 

:また壁のシミになっとる……

:やっぱりお前は勝てないのか……

:メロスざまぁwww

:百合の間に挟まるのはバンシィに値する

 

「すっかり名物四季さんになってるのは流石に笑っちゃう」

 

 蒼翼のサムライを前にして立てぬ者なし。

 私たち、フォース『春夏秋冬』はいつも通りのノリでヴァルガでの乱入バトルを楽しんでいた。

 もちろん、この後起きることを私たちは知っている。続々と無法者やアウトローたちが集まってきているのも存じている。その上で変だなー、というのを声には出さずに、向かってくる連中を三枚おろしにしていた。

 

「そんなに言うなら、ハルの笑い声聞きたいなー! ゲラなやつ」

「やらないし。ゲラってるならナツキの方でしょ」

「私、そんなに笑ってる……?」

 

:笑い袋だからな

:常に笑ってるイメージ

:失礼ながら、大爆笑ですな

:面白い冗談ですね、笑わせていただきます!

 

「失礼な連中だなぁ」

 

 そんな中も襲ってくる一般ヴァルガ民たちの頭を飛ばしたり、胴体に刀を突き刺したり。楽しいし、もう慣れてきたけれど、そろそろ手心というものを加えてほしいと言いますか。

 

『皆さん! 正義とは何ですか?! 自由とは何ですか?!』

 

:なんだ?

:あぁ、そういやもうそんな時間か

:イベント?

:なんだなんだ

 

 始まったみたいだ。では私たちも便乗する準備を進めるとしようか。

 ……頑張ってね、エンリちゃん。ユーカリちゃん。

 

 ◇

 

 正義とは何か。自由とは何か。その答えは誰にも分からない。

 分からないからこそ、人は考えるし、その考えを発表する。

 人に押し付ければそれは自由ではなくなる。自分だけで暴れればそれは正義ではなくなる。

 片方しか加担できないのであれば、私は迷いなくこちらを選ぶことでしょう。

 

「自由とは何か。それは己が感じるままに動くということ!」

「正義とは何か。それは民衆が考えた固定概念を押し付けること!」

「私たちはかの暴虐邪知な粛正委員会に自由を奪われた! そう、粛正委員会が考える正義とやらに!」

 

 私たちは傍から見れば正義ではない。

 だけど、私たちは私たちの信じる正義のために戦う。それこそが自由だと信じて。

 

「要するに気に入らないですよ! そんなよく分からない言い訳で、自分たちの自由を脅かされるのは」

 

 そうだ。間違いない。当然だ!

 そんな声が集まってきたアウトローたちから響いてくる。

 決していいことをしているわけではない。だけど、一方的に弾圧されていいわけがない。

 こうであるべきという固定概念が自由を妨げるのであれば。

 

「不要ですよね、粛正委員会なんて?!」

「あぁ、そうだ! 俺たちはただリスキルしてただけだ!」

「俺は初心者狩りを少々」

「ハイエナ行為は日常茶飯事だぜ!!」

 

 それがいいかはさておき、一フォースが決着をつけていい内容ではない。

 正義とは、それだけ曖昧で、複雑で、面倒なものなのだから。

 だから……。

 

「私たちアウトローはここに反旗を翻す。泣き寝入りした同志たちの魂を胸に」

「今こそ、自由をこの手に!」

 

「「自由をこの手に!」」

「「自由をこの手に!」」

「「自由をこの手に!」」

 

「行きましょう! 粛正委員会を討伐します!!」

 

 広大なヴァルガに無数の機影が曇天の空を泳ぎ始める。

 その数はおおよそ200前後。これだけの復讐心がそろえられれば、それはもう大々的な戦争と言っても過言ではないでしょう。

 演説で緊張して、震えていた手を胸の手前で握る。

 やっぱり、慣れないことをするべきではない。失敗したらどうしようって、さっきまで胸が張り裂けそうで仕方なかったんですから。

 

「お疲れ様。いい演説だったわよ」

「うんうん! シャア並みだったよー!」

「なんか、ありがとうございます。これでアウトローになれましたかね?!」

「まぁ、頭張るには十分な啖呵切りだったことは認めるわ」

 

 その「見た目が悪ぶったチワワでなければね」という一言は聞き逃すまい。

 これが終わったら盛大に褒めちぎってあげることにしよう。さぞやかわいい悪魔さんになることだろう。

 

「んじゃ、アタシたちもやっちゃいますか! 打倒ノイヤーちゃん!」

「そっちは任せたわ。対処は前言った通りってことで」

「はい! それじゃあ……」

 

「フォース『ケーキヴァイキング』! 私たちの未来を切り開きます!」

「おー!」「行きましょう」

 

 ◇

 

 ハードコアディメンション・ヴァルガはとにかく広大だ。

 運営が匙を投げたエリアとか、世紀末ディメンションだとか、世界観がマッドマックスとか言われてるけど、それをどうにかするかのようにエリアを広げているという話を聞く。

 AGE-2の4枚羽がそのままシールドファンネルに変わったシェムハザを巧みに利用して、ガトリングガンとビームガトリングの両方で粛正委員会の白い機体を殲滅していく。

 近づいてきた敵は、ビームサーベル二刀流で切断。

 下からならレッグミサイルによる不意打ちの後、ガトリングでハチの巣に。

 この2週間、シェムハザが仕上がってからはずいぶんと訓練をしたものだ。今になっては壮絶で思い出したくはないけれど、それだけ経験値を積んでいるということ!

 

『なんだあのAGE-2は?!』

『ボーっとするな! 今度はバードハンターがッ!』

『フィナード?! 許さんぞ、無法者ど……ぐわー!』

「アタシも忘れんなっての」

 

 いつも通りのCファンネルを起動させて、四肢両断に加えてコックピット部分を切断したモビルドールフレンはまるでAGEの3世代編OPのAGE-FXのように爆発を背にしてファンネルを並べている。

 くー! 分かってるなぁ、フレンさん! これならグランサとダークハウンドを持っていきたかったなー!

 ノールックで近づいてくる相手からシールドファンネルのIフィールドでビームを無力化。そのまま裏拳の要領でビームサーベルで首を吹き飛ばす。

 

「というか、キリがないわねこいつら」

「粛正委員会の全勢力ってことでしょうか? こっちの被害もバカにはなってないです」

 

 臨時のパーティの中から戦力差を見極めていけば、拮抗はしているものの、練度としては向こうが高いと思われる。

 が、ノイヤーさんやあの1/60バエルもどきを目の前にすれば、おそらく戦力は大きく崩れ始める。そんな予感がしていた。

 実際先ほどパーティに加わったマッパーのハイザック・カスタムのデータリンクを見れば、赤い点を中心に数々の味方が撃墜されているのが見える。

 これがノイヤーさんと1/60バエルもどきだとしたら、相当厄介なことになる。

 私たちが取る行動は確実に一つだけだった。

 

「ノイヤーちゃんは任せて。アタシが、何とか説得してみる」

「分かったわ。わたしとユーカリで嘘つき野郎を足止めする。出来るか分からないけれど、こっちには天下の春夏秋冬様がついてるらしいから」

「あはは、どんだけ一緒に戦うの嫌なんですか」

 

 エンリさんのナツキさん嫌いはさておいて、この作戦の肝はフレンさんにかかっている。私はほとんど飛んできた告白を突っぱねるだけだから、簡単だけど、フレンさんはそれを巧みに誘導させなくてはいけない。

 それがどんなに難しいことかってことは、流石の鈍感な私も分かっている。

 だとしても、私はお願いする。私のワガママのために。

 

「お願いします、2人とも」

 

 こくり、とうなずいて同意を意を灯す。

 私たちはその場で別れて目的の場所へと行動を始めた。

 

 ◇

 

 相手は強大で、まだエンカウントエリアでないにもかかわらず、そのスケールの大きさで目立ってしまうのは言うまでもないか。

 空中を移動するシェムハザと、氷の床を作り出しながら空中を走るゼロペアー。その姿は悪魔がでかバエルをこの手で葬るために今か今かと殺意を高めているように見えた。

 

「M地区周辺のアウトローの皆さん。今から正義の化け物を討伐します! 我こそはって人は来てください!」

 

 しゃーねーなぁ! とか、面倒だが。とかそれぞれ難癖はつけても、全員が自分のために動く。例えば名誉かそれとも金か。理由は様々だろうけど、一律して言えるのは、あれが邪魔だってことだけだ。

 近づけば近づくほど大きい。移動するだけで風圧が出てくるレベルなんだから、あのバエルもどきは面倒極まりない。

 

『やぁ正義に仇名すものたちよ。この僕に勝負を挑もうっていうのかい?』

 

 通信に割り込んでくるのは癪に障る、明らかに人を下に見たような態度をした金髪緑眼の少年であった。

 おそらく彼が元凶であり、倒さなくてはいけない私たちにとっての悪。故に……。

 

「勝負? これは、殺し合いよ!!」

 

 先制攻撃はゼロペアーのメイス投擲。おおよそパターン化はしてきたものの、その威力は絶大なことには変わりない。

 確実にコックピットを狙った一撃は避けることなく直撃する。

 だが、かたや1/144のツインメイス。かたや1/60スケールの装甲。その差は、歴然であった。

 

『おや、何かしたのかい?』

 

 質量に任せたメイスによる投擲行為は装甲に少しの傷を入れる程度で、大きなダメージにはならなかった。

 エンリさんの舌打ちとともに、全軍が突撃を開始する。目標はバエルもどきの首。誰が一番強いかという、競争のようでもあった。

 

『そんな有象無象が、僕に敵うわけないだろ!』

 

 黄金色の刃をした剣を上から下へと振り下ろす。それだけで空気の変動と、天然性のエアブレードが機体を揺らす。

 

「でかすぎんだろ……」

「ひるむな! 自由をこの手に!!」

『君たちに自由なんて、あるわけないだろ!!』

 

 続く2本目の剣が風圧によってひるんでいた機体をバラバラに両断していく。

 巨大な剣によって風圧を起こし、続く2度目の攻撃によって仕留める。まさに大きさに任せた粗雑な攻撃。児戯のような剣捌きではあるものの、その威力だけは絶大なものなんだ。

 ……でも!

 

「関節だ! 関節を狙え!」

 

 ビーム群が陣をなして関節を中心に狙いを定めていく。

 いくら装甲が分厚かろうと、関節を狙われれば、ひとたまりもない。

 だからこそ、向こうのバエルもどきもこれを防がざるを得ないはず!

 

『浅はかだなぁ、有象無象どもが』

 

 スラスターウイングに内蔵された電磁砲を発揮しながら、その巨体を宙に浮かばせる。

 連射しながら、その場を離脱して、レールガンの嵐を容赦なくガンプラたちに当てていく。

 

『動けば普通当たらないだろうが!』

 

 ハイパードッズライフルで応戦するものの、相手は巨体のわりに素早い。元がバエルだからこその機動力と言ってもいい。

 加えて風圧もものすごい。動くだけでガンプラが翻ってしまうぐらいには非常識極まりない。

 風圧にやられて、次々とガンプラたちが煽られ、その都度両刃剣によってその身を粉々にしていく。

 

「エンリさんどうしましょう」

「何とかはできる。でもまずは動きを止めないことには……」

 

 あれではシールドファンネルはほぼ役に立たない。

 ミサイルも風に煽られ爆発。メイスだって傷一つ付けられなかった。

 危機的状況ではないにせよ、じり貧でこちらの戦力が削られていく。そんな嫌な予感が背中を横切っていく。

 

『ははは! たやすい! こんな児戯をやってる連中の頭なんて大したことないんだ!』

 

 それに言葉で煽ってくる彼も腹が立つ。どうにか手段を見つけなくては。でもどうやって……。

 そう考えていると、突然目の前に赤いラインがモニター上に出現し始めた。

 え、なにこれは。

 

「こちらモミジ。今から火力の妖精が制圧射撃するから。赤いラインからとっとと逃げた方がいーよー」

「……ってことは」

「やべぇぞ! ハモニカ砲来るぞ!」

「むしろこっちの方がやべぇ!!」

 

 エンリさんと示し合わせて、とりあえず赤いラインの外側へと移動する。

 瞬間。サブモニターに映し出されているのは1つの機影。両腕サブアームに計4枚のハモニカ砲を装備したガンダムXディバイダーとグシオンリベイクフルシティのミキシング。

 その主であり、私も見覚えがあった、その妖精は高らかに宣言した。

 

「クアドラプルハモニカ砲、はっしゃー!」

 

 咲き誇る76門のビーム群。その全てがバエルもどきのいる場所、ないし進行方向を経由する。

 いくら1/60スケールの装甲だろうが、この攻撃を受けてしまえば甚大なる被害を受けることになる。急いでよけようとするものの被弾を余儀なくされるバエルもどきに対して、さらなる一撃と言わんばかりに鈍色の流星が腰を狙い撃つ。

 徹甲弾だったらしく、ガンダム・フレームの溝に弾丸が入り込めばその場で爆発する。

 

『だがっ!』

 

 傷つきながらも、邪魔者は必ず排除するべくバエルもどきが走り始める。

 今のヘイトはセツさんとモミジさんの2人。つまり私たちはフリー。

 

「皆さん、背を向けた正義にビームを!」

「へへ、悪者らしく背中を狙わせてもらうぜ!」

「邪魔もんは死ぬがよい!」

 

 どんだけ個体が強かろうが、その対応力には限度がある。

 レイドボス みんなで叩けば こわくない 理論で倒す!

 

『まずは君たちからだ!』

 

 動く気配のないセツさんとモミジさん。危機的状況にもかかわらず、2人とも口元は上に上がっていた。

 

「ハル! タイミングは合わせて」

「うん。ナツキもよろしく」

 

 はるか上空から雲を切り裂くように急落下してくるのは、2機のガンプラ。

 1つは知っている。蒼き翼をその身に宿したガンダムアストレイ。

 そしてもう1つは桜色をしたサバーニャの改造機。骨のような三又のスラスターが目立つその2機は、迷うことなくバエルもどきへと会敵する。

 

「「ジューンブライド・エクステンション!」」

 

 高らかに宣言するのはナツキさんの必殺技。

 2機で1つの光の刃が2人の間に生成。そして、それぞれがつかみ取り、2本の超高出力ビームサーベルとして具現化される。

 光の流星は2本。雄たけびを上げながら、襲い掛かる刃をバエルもどきは黄金色の刃をした2本の剣で対応する。

 

『勇ましくて結構。だが僕には……!』

「「今っ!」」

 

 その2人は囮。そう言わんばかりに関節部位を狙ったいくつもの攻撃が襲い掛かる。避けようがない。避けきれない。そんな数十のビーム砲や刃をその身に受け、バエルもどきは爆発にその身を委ねることとなった。




大混戦。それが一人の少女を救う戦い。


◇ガンダムAGE-2 シェムハザ
堕ちた天使の名前を持つユーカリの新しい機体。
劇中の設定ではなく、ユーカリ自身の妄想から生み出された産物であり、
不要になったユニコーンガンダムのシールドファンネルを再利用するべく、
開発された新しいガンダムAGE-2のウェア、という設定。
全体的には黒色の塗装をされているものの、両肩のシールドファンネルのみ白くなっており、まるで堕天使のようにも見える、と評されている。

ストライダーモードをオミット。
代わりにガンダムAGE-2 シエルグを参考にした、
ガトリング付きシールドファンネルを装備している(分離可能)
また、脚部からはミサイルを出すことができ、不意打ちによる一撃を与えられる。
もちろんエンリからもらったABCマフラーは継続装備。愛の結晶である。

・特殊システム
サイコフレーム
Iフィールド
フラッシュアイ
ABCマフラー

・武装
ハイパードッズライフル
ビームサーベル
ミサイル×2
シールドファンネル×4
ドッズビームガトリング×4
シェムハザ左翼に装備されているシールドファンネルに1枚2基セットで搭載
一発一発が貫通力を高めたDODS効果を与えており、とにかく攻撃力が高い

ガトリングガン×4
シェムハザ右翼に装備されているシールドファンネルに1枚2基セットで搭載
実弾として左翼のドッズビームガトリングとは差別化されており、
相手に応じてビームと実弾を使い分ける。

レッグミサイル
ふくらはぎ部分に2門ずつ。計4門搭載。
下方向に向かって発射される。
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