ガンダムビルドダイバーズ リレーションシップ   作:二葉ベス

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始まる2度目の復讐。
今回と次回は割と長め


第59話:ケーキヴァイキングと春夏秋冬

 暗い部屋。目の前に置かれているのは黒塗りのソファ。そこに座るのは4人。

 彼女たちは黒いサングラスと、漆黒に溶けそうなスーツのダイバールック。

 膝に肘を置きながら、トップバッターというべき、スラっとしたモデル体型の女性が前のめりでこう語り始める。

 

『わたしたちケーキヴァイキングは、フォース春夏秋冬に宣戦布告するわ』

 

 やや棒読みながらも、凛々しく数年前まで聞きなれた低音が耳の中に入ってくる。

 

『わたくしたちは日々あなた方を目標として修練をしてきました』

『よーするに、アタシたちの目の上のタンコブってこと』

 

 白銀と黄金の声を重ね合わせながら、彼女たちは淡々と、それでいて闘志を込めて言葉を紡ぎ出す。

 

『〇月×日の19時。私たちはあなたたちに挑戦状をたたきつけます。もちろん、受けてくれますよね?』

 

 それはある種の確信。ひときわ小さい女の子がその日時を告げる。

 もちろん、動画としてこの公開した以上、どちらも逃げも隠れもできない。元よりそんな情けない真似をするはずがない。

 

『ナツキ、わたしはあんたに勝つ』

 

 どこで買ってきたかは分からないけど、おもちゃの銃を突き付けられた動画は銃弾をガラスに撃ち放ったようなエフェクトを出して暗転する。

 誰が編集したかは分からないけれど、エンタメ性は十分だと思うよ、うん。

 

「挑戦状、叩きつけられちゃったね」

「そうだね」

 

 あのグラン・サマー・フェスティバルから数か月。

 噂はかねがね聞いていたけれど、そっか。エンリちゃんは乗り越えられたんだね。

 物思いに耽っている私のほっぺたを突いて、強引に話題をそらさせる恋人。

 

「他の女の事考えてる」

「また嫉妬?」

「そんなんじゃないけど、今の女はわたしなんだよ?」

「もう、また嬉しいこと言っちゃってー!」

 

 額をまるでキスのようにこすり合わせて熱を、愛を表現する。

 でもさ、私とエンリちゃんは切っても切り離せない関係なんだよ。最高のライバルで、私にいっぱいいろんなこと考えさせて、あなたに、ハルに出会わせてくれた。

 その点は感謝する。でも、それと本気で戦わないことは違う。今度は見せてくれるよね、エンリちゃん。

 

「わたしもさ、初めてビビッとくる感覚に出会ったよ。エンリって子に感じてたことってこんな感じだったんだね」

 

 真剣なまなざしでハルがそう言っているんだ。冗談は抜きで返事をする。

 きっとユーカリちゃんのことだろう。同じ近接のビット使い。これだけで相対する理由は十分なんだろうけど、ハルにはきっと何か感じるものがあったのだろう。

 

「セツ以来だな、本気で戦いたいって思ったのは」

「セツ以来なの?! やったー!」

「はいはい。作戦はどーする? いつも通りちびっこぶっぱに便乗して狙撃。混乱に乗じてナツハルがぶった切る感じ?」

 

 さすがに2年は一緒にいる相手だし、イチャイチャしててもお構いなしらしい。

 今はまじめな話してたし、それに混ざるのは当然の事か。

 確かにいつもの戦法であれば十分押しつぶせるだろう。けど、今回はそういう圧倒する戦い方はしない。

 あくまでエンリちゃんは私目当て。ハルはユーカリちゃん目当て。なら話は一つだ。

 

「ううん。向こうの作戦に、乗ってあげようかなって」

 

 今最高に悪い顔をしている自覚はある。でもこういうのは楽しまなきゃ損というもの。

 私、ナツキはあなたからの宣戦布告を丁寧に受け取るとしよう。

 そして、今度も勝つから。

 

 ◇

 

「うわ、動画結構伸びてるんだけど。ウケる」

「完全に注目の的じゃありませんか!」

 

 動画を作ろうと言ったのはフレンさんからだった。

 どうせ復讐をやるならド派手にやろう。冗談まがいに撮ったマフィアちっくな宣戦布告の出来に内心震えが止まらなかった。アウトローだよ完全にこれ! 私が求めていたもの!

 と、出来が良ければ、話題性もばっちり。

 なんと再生回数は1万越え。G-Tuberの再生数も真っ青だ。話題性ナンバーワンのケーキヴァイキングと今をときめく春夏秋冬の決戦に湧かない観客はいないわけで。

 

「派手にやりすぎたわね」

「あはは、結構映えてますね」

 

 俗にいうバズってる、というやつだ。

 エントランスロビーを歩く際もダイバールックを変えないと声を掛けられるなんてのも日常茶飯事だったし、その影響力は計り知れない。

 でも何故か私のことはバレるんだよね。なんでだろ。

 

「掲示板も盛り上がってるっぽいし、当日はめっちゃアガりそー!」

「え、ホントですか?!」

 

 ちらりとエンリとムスビさんの顔を見る。

 二人してその意図を察したのだろう。にっこりと笑って、それから……。

 

「見たらダメよ」

「ユーカリさんには早すぎますわ!!」

 

 と、掲示板を見ることを断られている。

 何故なんだろう。アウトロー戦役前まではちゃんと見てもいいよと言われたのに、それが過ぎてからはすっかりバツ印だ。

 今度フレンさんやムスビさんが見てない隙を狙って見ようか、ぐらいのことは考えているけれど、そのタイミングに限って二人とも私のところにいるし。暇なのかエスパーなのか。

 

「作戦はあれでいいんだよね?」

「えぇ。というか、これしかないですわ」

 

 ムスビさんが提案してくれた作戦は以下の通りだ。

 春夏秋冬の火力担当であるセツさん、索敵担当のモミジさんの二人を、ムスビさんとフレンさんが釘付けにする。

 その間に私とエンリでナツハルを分断。エンリとナツキさんの1対1を再現するというものだった。

 もちろんこれに欠点があるとすれば、エンリ以外のメンバーがやられた場合のケアができないこと。分断後に合流なんてされたら、流石のエンリも対応ができない。

 

「この作戦は誰かが戦闘不能になれば、その時点で瓦解する。キーパーソンは特に、ユーカリさん。あなたですわ」

 

 ナツハルのコンビネーションを止めるにはハルさんと対面する私が撃墜されないことが条件だった。

 ハルさんの実力は未知数だけれど、分かっていることがあるとすれば、ナツキさん並みに強いということ。これは動画を見ていれば分かる内容だった。

 

「時間稼ぎとは言いません。絶対に叩きます」

「頼もしいわね、ユーカリ」

 

 決戦日までは近い。だからそれまでに仕上げる。

 ハルさんの胸を借りるだなんて言わない。絶対勝つ。

 

 ◇

 

 ◯月×日。フォース戦のバトル場所にやってきたのは私たちケーキヴァイキング。

 4人の視線の向こう側にいるのは、春夏秋冬の4人であった。

 

「逃げずに来たことは褒めてあげる」

「お褒めに預かり光栄だよ、エンリちゃん」

 

 龍と虎のように牽制し合う2人は置いておいて、私はフォース戦の申請を行う。

 

「バトルはフラッグ戦でどちらかのフラッグがやられたら負け。どうですか?」

「なるほどね……」

 

 ナツキさんが納得したようにちらりとエンリの方を見た。

 そう。今回のフォース戦をフラッグ戦にする理由はたった1つしかない。

 ナツキさんとエンリの一騎打ち。そのためにエンリの戦いやすい舞台である地上を選んでいる。重力がある方が戦いやすいらしいし。

 ただ、相手は空域の支配者と蒼翼のサムライ。どちらも空中戦のエキスパートだ。

 でも、関係ないですよね、エンリ。だって、あなたは私の……。

 

「いいよ。春夏秋冬のフラッグは私、ナツキがやる」

「え?!」

 

 明らかな挑発行為。まるで『戦うことを誘導』しているかのような不自然さだ。

 そういう事なら話は早い。エンリとアイコンタクトをして、おもむろにうなずく。

 

「分かりました。こちらも相応しい相手をフラッグにさせていただきます」

「それはよかった!」

 

 差し伸べられる手の意味は間違いなく握手。

 

「お互い、悔いのないように頑張ろう」

「……はい!」

 

 これはエンリのもう一度の復讐。巡ってきた彼女への機会。

 大丈夫です。エンリなら絶対成し遂げられる。

 ナツキさんの手を握って、勝利のためにと心に誓う。このための、この日のために私たちは頑張ってきたんだ。だから、絶対負けない。いや、勝つ!

 バトル承認の合図とともに、ガンプラが召喚される。フォース戦のゴングが鳴り響いた。

 

 ◇

 

 作戦通り、まずはわたくしのヴァイキングギアとゼロペアーのメイスで土煙を作成。紛れてその場を離脱してから、フレンさんのミランド・セルでヴァイキングギアごと隠蔽する。

 背中に乗ったモビルドールフレンと共に砲撃ポイントに移動し始めた。

 

「分かってると思いますが、この戦いはエンリの復讐戦です。なので……」

「分かってるってば! アタシたちはギャルとセッちゃんを釘付けにする。混乱に乗じてナツハル分断ね!」

 

 『混沌のシグマシスバースト』はとにかくチャージに時間がかかる。やってることはサテライトキャノンですからね。

 場所を特定される心配もあるから、狙撃攻撃にはフレンさんが控えているクイーンズランド・セルを起用している。防御面はこれで問題ない。のだが……。

 

「なるたけ低空で、ジグザグに。でないとモミジちゃんの『目』に引っかかる」

 

 ハイザック・バトルスキャン、その性能はとにかく索敵に長けている。

 6基のドローンと3基のリフレクタービット。そしてバックパックに存在している3本の猟銃。ビームランチャーとヅダの対艦ライフル。そして中近距離のビームライフル。そのどれもが中距離戦以降での戦いを重点においている。

 曰く、そのギャルは13km先のハシュマルの頭部を貫いた。そんな噂まで広がっているレベルだ。故に、目がいいのは確かである。

 

 そう、だからだ。早々に仕掛けてくる自信があったのは。

 ビームの音と共に上空へ一本の閃光が通過する。

 

「仕掛けてきた?」

「いえ、あれは恐らくわたくしたちの炙り出しでしょう。少し高度をあげますわ」

 

 ヴァイキングギア・シドはその巨体から地面スレスレで飛べば土煙が必ず上がる。

 だが上空に上がりすぎれば、それだけ索敵に引っかかる可能性がある。

 ミランド・セルの隠蔽機能も、どこまで対応しているか分からない。

 ですが遙か上空を通り過ぎたビームでなんとなく理解する。今は当たりを付けている段階。つまり、こちらの隠蔽精度のほうが上。

 

「フレンさん、熱源はどこからですか?」

「んーっと。ちょっと分かんないから、2射目待ちかな」

 

 こちらに気を取られている間に、決着が着けばいいのですが。正直、怖くてたまらない。

 その時だ。2射目のビームの閃光がわたくしたちがいた高度を通過する。

 

「あっぶなー! でも特定できたよ! だいたい3時の方向、詳細をデータリンク!」

 

 よしよし。情報アドバンテージはこちらの方が上。ならばこのままさっさと『混沌のシグマシスバースト』を放って、ユーカリさんのところに合流すれば……。

 だが、そうは問屋が下ろしてくれないのは相手のギャルスナイパー、モミジさんであった。第3射目は、明らかにこちらを明確に狙ったスナイプショット。ギリギリのところでシドユニットの翼を翻して、ビームが空中を割く。

 

「はっ? どゆこと?!!」

 

 どういうことか聞く前にデータリンクによって確定した情報をわたくしに共有する。

 1射目から3射目。どれもビームの角度が違うのだ。1つ目は5時方向。2つ目は3時方向。3本目はなんと7時の方向。

 

「フレンさん。ひょっとしてこれは……」

「間違いないっしょ。アタシら、もう補足されてる」

 

 リフレクタービットの存在を忘れていたとは言わない。だがこういう跳弾は基本受け取る側のテクニックの1つだ。だから攻め側が意図的に、計算しながら寸分違わない角度からの一撃をできるわけがない。

 てっきり驚異はセツさんの方だと思っていたが、それは誤ちだった。

 正確には、どちらも驚異。そして、イカれているのはギャルスナイパー、モミジさんの方であることだ。

 

「どうするんのさ、アタシらまだ向こうを補足してないのに!」

 

 戦闘の基本は相手の裏をかくこと。だけど、あまりにも情報が足りない状態で、切り札を切るのは早計すぎる。どうする。必殺技なんて逆転技能はなく、肉食動物に狙われる獲物の気分でいるわたくしたちになにか逆転の一手は……。

 

「や、一つだけあるかも」

「……恐らく、それしかありませんわね」

 

 思いついた作戦は至ってシンプルながら、この状況であれば最適解かもしれない。

 問題は向こうがデコイやミラージュコロイドを見抜いた場合ですが。

 

「ダイジョーブ! アタシを信じてよ」

「はぁ、分かりましたわ。フレンさんにこの作戦の全権を担ってもらいますわ」

「合点承知!」

 

 わたくしたちは作戦を遂行するために、持ち場から2方向に別れる。

 1つはわたくしの『混沌のシグマシスバースト』を発射するために。

 もう1つは、クイーンズランド・セルを起動するために。

 

 ◇

 

「うーん……」

「どーかしたの?」

「いや、反応が妙なんよ」

 

 索敵範囲に突如現れたヴァイキングギア・シドはその場で待機している。

 おかしい。フレンちのミランドは隠密に優れていると聞いていたけど、こんな簡単に燃料切れするかフツー。

 

「ね、撃ってもいい?」

「ちびっこはサテライトキャノンへの対抗策だからダメ」

「ケチー」

 

 今、撃ってもいいはずなんだけど、何だこの踊らされている感じ。

 狩りをしていたと思えば、実はあたしたちの方が包囲網で囲まれていたような、獣に牙を突き付けられているような。

 

「ちびっこ、今からヴァイキングギアを攻撃する。あんたは嫌な予感がしたら、ハモニカ以外で攻撃して」

「おっけい!」

 

 ガンダムXディバイダー由来のビームマシンガンを手に、空中を睨むちびっこ。

 さーて、鬼が出るか蛇が出るか。引き金を引こうじゃんか!

 狙いを定めて、あたしはビームランチャーの引き金を引いた。

 ぐんぐん伸びるビームの閃光はヴァイキングギアの胴体を貫き、爆発させた。

 そう。まるで『バルーンが弾けたように』

 

「でかお姉ちゃん、上!」

「やっぱり来たか!」

 

 敵影は……は?!

 

「5機のヴァイキングギア?!」

 

 索敵に突如現れたのは5機のヴァイキングギア。

 4機は後方に待機。1機がこちらに接近。

 そうか、さっきのはデコイにGN粒子とミラージュコロイドを混ぜた偽物。2つの粒子を混ぜて、反応をヴァイキングギアのものにすれば、目視で捉えられない距離なら偽装は可能、ってことか!

 

「ど、どれー?!」

「後方4機のどれかが本物。で、こっちに来るのはフレンちだ!」

「んじゃあ!」

「ハモニカ砲スタンバイっつーことで!」

 

 ヴァイキングギア・シド。いや、偽装したフレンがこちらにスタングルライフルを撃つ。

 その場から散開。更に熱源反応が月から接近って、相手バリバリにサテライトキャノンを撃つ気満々じゃん!

 あのフレンを処理しなくちゃハモニカ砲は撃てない。

 だけど、処理している間にサテライトキャノンが放たれる。考えたじゃんか。

 

「でも!」

 

 スキーヤーのように移動しているけれど、所詮は思考する獣。ならば、そこに癖がある。例えばそことか!

 

『っ!』

 

 フレンの肩シールドにヒット。まだ足りない。

 

『こっちだって!』

 

 構えた瞬間に放たれたのは爆雷の雨。舌打ちしながら、その場を離れつつ、牽制球として1本ビームの跳弾を撃ち込む。

 クイックステップによって躱されるものの、こっちの攻撃に耐性はないらしい。なら踊ってもらおうじゃん。

 ビームランチャーを即座に手放し、サブアームからビームライフルを取り出す。

 放ったスタングルライフルがビームランチャーを貫通させるけれど、そんなのは関係ない。リフレクタービット3基の連携攻撃。その中心にいるのはフレンち、あんただけだよ。

 放った一発目のビームライフルがリフレクタービットに跳弾。光の翼を掠めるもののそれだけじゃ終わらないのがこのビームサーカスだ。

 

『ちょ?! 2発目? や、3発?!』

 

 ビームサーカス。それは読んで字の如くビームの跳弾を利用した監獄。

 まだ計算が間に合ってないから失敗する事が多いけど、足止めするには十分だ。

 

「ちびっこ!」

『ムスビちゃん!』

 

 周りのデコイが爆発しながら、眼前には蒼い星。

 レーザーで周囲を焼き焦がし、自身も排熱のために光らせるその身はビッグバンにも似たような、そんな蒼き龍の姿。まるで、破壊神だ。

 

「クアドラプルハモニカ砲……」

『混沌のシグマシス……』

 

 呼応するのは火力の妖精をほしいままにしたELダイバー。

 破壊神が相手ならば、こちらも破壊神を出すしかない。

 

「はっしゃー!!」

『バーストォオオオオオ!!!!』

 

 交差する蒼き閃光と、76ものビームの雨。

 ぶつかり合う魂たちが、今対峙する。




蒼い巨龍VS火力の妖精
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