ガンダムビルドダイバーズ リレーションシップ   作:二葉ベス

65 / 75
リレーションシップバトローグ、始まるので初投稿です


番外章:リレーションシップ バトローグ
EX1:兄と妹と義姉


 得てして、兄と妹というのは基本的に仲が悪いものである。

 何故なのだろうか。わたしだって別に仲良くしたいわけではないけれど、いがみ合うことをしたいわけではない。

 どちらかと言えば、平和で、静かに過ごしたいだけなのに。

 

「なんでこうなったのよ」

「ん。焼肉はダメだったか?」

「ユウシさん、花の大学生が焼肉なんて……私の時もあったっけな」

 

 ジュージューと肉が焼ける音を耳にする。

 赤みがかった塊が徐々に焼き目がついて美味しそうに彩られていくのを目にする。

 目の前で行われていること。それは理解できるし、わたしも好き、というかやれるなら毎週行きたいぐらいには焼肉は好きだ。人のお金で食べる焼肉は特に。

 でも、この未だ体験したことのない圧迫面接めいた、正面の二人にどう対応すればいいか分からなかった。

 

 事の発端は突然。兄であるユウシから「焼肉に行こう」と誘われたことにあった。

 元々家からいなくなっていた彼とは、最近あまり話す機会はない。アウトロー戦役前後は特に忙しかったし、なんだったら戦役以降は特に会う機会もなかったので、そのまま放置していたんだけど、まさか向こうから話しかけてくるとは。

 そして、こういう時の兄は決まって腹を割って話そう状態に突入している。

 焼肉をおごるから、その代わりに最近の近況を話してくれ、ということだろう。

 

 結論から言いたい。嫌だーーーーーーーーーーーーー!!!!

 やっぱりわたしの周辺で一番変わったことと言えば、ユカリ関連で間違いない。わたしたちの間ではあまり大きな問題にはなっていないものの、世間一般から見たら、同性同士のお付き合いって普通ありえない。

 THE・一般人みたいな二人に対して、その恋仲を明かすようなことがあれば、どんな反応が来るか、予想できたもんじゃない。

 やっぱり来なきゃよかったかな。とか思いながら焼けたカルビを口に入れる。うん美味しい。美味しいけれど、緊張で味がしない。

 

「で、最近どうなんだ?」

 

 で、出たーーー! このシチュエーションにおいてあまり聞きたくなかった台詞選手権第一位だ!

 正直、どうも何もない。ということにしておこう。そう返事したら、冗談でしょ。なんて声で、ユメカが口に出すんだ。

 

「アウトロー戦役、配信経由で見ていましたよ」

 

 詰みです。対戦ありがとうございました。

 というか、二人とも見ていたのであれば、わたしとユカリの関係は、分かってて言っているわよね。しんどいを通り越して、予定調和すぎて頭を抱えてしまう。

 

「まぁとりあえずこのトントロを食べろ」

 

 皿の上にのせられた焼けたトントロ。これが差す意味とは。いや、そんなことを知らないほど、わたしは空気が読めないとかそういうわけではない。

 この二人、わたしの恋人事情を知りたくて焼肉に呼んだんだ。この兄と義姉……ッ! 今度GBN内で会ったら絶対叩き潰す。

 進む箸が重い中、差し出されたトントロをウーロン茶で喉の奥に流す。

 かつて、こんなにもご飯がまずい焼肉を経験したことだろうか。いやない。人に恋の進展を根掘り葉掘り聞かれる準備が、こんなにも胃に重たいだなんて。19年生きてきて初めてだ……。

 

「たまには野菜も食べませんと。たまねぎです」

「ほれ、ハラミ」

 

 重い。胃もたれしそうなほどに期待が重たい。油の抜けた玉ねぎも、美味しいはずのハラミも、今はとてつもなく食べたくなかった。

 兄さんはさて、と口にすると手に持ったジョッキを持つ。

 

「ユーカリちゃんとはどんななんだ?」

 

 き、来てしまった……。知ってるんでしょ、その関係ぐらいはさぁ!

 

「恋人さん、なんですよね」

 

 追い打ち。いや、逃げ場を失わせるように義姉が背後に回り込む。

 完全に逃げ道を失った。背後を取られたわたしに出てくるコマンドはたった一つ。戦うだけだ。

 

「ま、まぁ……。そうね」

 

 これまでにないほどきらきらと瞳を輝かせるユメカさんと、美味しそうにジョッキビールを飲む兄さん。やっていることは別々でも、その行動原理がどちらも一緒なのは夫婦故なのか、それともわたしをいじめたいだけなのか。

 この夫婦ども。絶対今度叩きのめす。

 

「ユーカリさんのどこが好きなんですか?!」

「そうだな。それは気になる。ナイスだユメカ」

 

 どこもナイスではないのだけど。あんなにおしとやかだと思っていた義姉さんがこんなにも色恋沙汰に対してグイグイ来るとは。人の恋愛事情を知って何が楽しいのだろうか。

 そこで蘇るフレンとムスビの恋愛事情の記憶。まぁ、あれはよかったわね。あんな気持ちなのでしょうね。

 

「どこって……それは……」

 

 思い返してみれば、いろいろあるんだと思う。

 しっぽをちぎれんばかりにブンブン振って興奮する感情豊かさ。

 アウトローを自称しているけれど、結局空回りで周りをほっこりさせるかわいらしさ。

 ここぞというときには自分の決意に従って、行動するかっこよさ。

 低身長巨乳とかいう恵まれた体型のくせに自覚していない危うさ。

 そのどれもがユカリの魅力の一つなのだけど。強いてあげるのであれば……。

 

「わたしのことを、どこまでも受け入れてくれるような懐の深さ、かしら」

 

 なんと言ってもそこだと言っていいかもしれない。

 ヒーローと言われたのだって嬉しいし、強いわたしも、弱いわたしも受け入れてくれる沼みたいな存在。あまりにも深くて、沈んでしまえばそこから抜け出せない優しさ。それが彼女の今の印象だ。

 だからわたしは思う。あの子はそういう意味で本当に魔性の女であると。

 

「ひゃー!」

「お前もついに人の心を……うっ……!」

「煽られてる感じしかしないわ」

 

 ウーロン茶を一口飲んで、塩キャベツを一口。パリパリとしてさっぱりとした食感が美味しい。

 今の鬱屈した感情にはぴったりの一品だと言ってもいい。どこかの誰かさんたちのせいではあるが。

 

「予想以上にぞっこんですね、ユウシさん!」

「あぁ……兄さん感動してるぞ」

「ホント、勘弁してよ……」

 

 それから根掘り葉掘り聞かれるのはわたしたちが何をしてきたのか。わたしたちの馴れ初めだとか、どんなことをしていたとか、そんなの。

 逐一答えるのも面倒くさくなって、途中から自分で暴露することにはなったけど、仕方ないわよね。これもすべてユカリが悪いってことにしておけば。わたしを惚れさせた方が悪いのよ。

 

「エンリさん、ユカリさんとはどこまで行ったんですか?」

「どこまでって。どこまで?!」

「女同士でもいろいろできるからな……」

 

 何のいろいろよ?!

 このダメ大人二人はいったいわたしたちが、その……一線超えたとでも思っているんだろうか。

 この前ナツキがいろいろとぶっちゃけてたのは知っているけど、そんな赤っ恥の下ネタをこんな焼肉屋で言うなんてことできるわけないし、そもそもわたしたちはまだそんなところまでは言っていない。ゆくゆくは、とかは思ってるけど……。

 

「アンドロイドが出てくる世の中です。そろそろ同性同士での赤ちゃんとかも作れるかもしれませんよ」

「…………わたしとユカリの子供……」

「おい、俺たちだってまだそこまで行ってないだろ」

「でも私もそろそろ欲しいなー、とか思いますよ? どうですか、せんぱぁい」

「お前……。帰ったらな」

 

 平然とこの夫婦たちは……。

 でもわたしとユカリの子供。そんなもしもを考えるだけですごく胸がドキドキとざわつく。

 今はアンドロイドさえ生まれて、別のゲームでは人工知能AIがNPCとして生活している。いずれはそんな摩訶不思議な魔法だと思われていたことが、科学の力で復元する。それは素晴らしいことだと思う反面、遠いところまで来たんだなというやや寂しさ半面。

 

「って、そうじゃない! 結局どこまで行ったんだ、エンリ」

「どこまでって……。ファーストキスまでよ」

「……え、そこまでですか?」

 

 何よ。悪いの。

 二人して困惑する顔を見て、不機嫌になりながらホルモンをかみ砕く。

 

「確か夏ごろですよね、付き合い始めたの」

「そうよ」

「まだ、ファーストキスだけなんですか?」

 

 ファ、ファーストキスだって結構緊張したのだけど?!

 あの時は、ちょっと気持ちが高ぶったからというか、その場の雰囲気に呑まれて思わずキスしたというか、そんな機会がなければファーストキスもまだ先だったかもだし……。

 言ってて自分が情けなくなってきた。確かに、夏ごろ付き合い始めて季節が変わってもまだキスだけとか、恋人繋ぎしたことないとか。らしくないことをやっているのは分かっているから、余計に恥ずかしいんだ。

 

「エンリさん奥手っぽいですしね」

「その通りだ」

「こ、これでも頑張ってる方なのよ!」

 

 奥手、というより経験がないと言った方が適切だ。

 今までこんな経験したことなかったんだから、当然でしょう。

 ライスを口にしながら、次はどうやって攻めようか。なんて考える。

 

「距離感の縮め方は人それぞれだが、やっぱりこう、ガツンといかないとな!」

「ユウシさんがそれ言います?」

「ま、まぁそうだが……」

 

 そういえば兄さんとユメカの馴れ初めの話って聞いたことがないかもしれない。

 大抵兄さんが誤魔化して聞けないのだ。今がチャンス、復讐の機会なのでは?

 

「そういえば兄さんの話も聞きたいわね。ユメカが義姉さんになった経緯とか」

「お、お前っ!」

「聞きたいですか~? 聞きたいですよね、私たちの馴れ初めの話!」

「ユメカ、お前!」

 

 得てして兄と妹というのは仲が悪いものである。というが、わたしたちに関しては少し違う。

 普通、というのが正解。距離も関係も、恐ろしく普通。お互いに人並みの好奇心を持っている。興味があるのだろう、身内の色恋話というものは。

 義姉と妹はそういうところでは結託してしまう。単純に兄を追いつめたいから。

 なんだかんだ関係は薄くても、そういう女の絆はだいたい無敵なんだ。

 

◇本日の注文

妹の恋人話

兄の馴れ初め

義姉の惚れ話

 

以上、ご注文ありがとうございましたー。




今日も人の恋話で飯が美味い!


◇ホシモリ・ユウシ(拙作:GBNで小悪魔系後輩に煽られてるんだが)
エンリの兄でユメカの旦那。新婚だが、子供はまだ。
この後、兄の恥ずかしい話を聞いた妹は大爆笑でカルビを貪っていたとか

◇ホシモリ・ユメカ(拙作:GBNで小悪魔系後輩に煽られてるんだが)
エンリの義姉でユウシの嫁。夜はどちらかと言うと彼女が攻め。
実際エンリのことが好きだし、義妹として可愛がりたいけど、
それはそれとして、あまり接点がないから微妙に手が出せない。

リレーションシップの世界観は私の過去作とちょっとだけ統合させてたりします。
気になる方は「NPCが友達の私は幸せ極振りです。」で検索をかけてみてください(ダイマ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。